感想、評価、ここすき、毎回とても嬉しいです。
ラスボスの正体……皆さんに驚いて貰えて良かったです。
感想1000件、評価500件突破!ありがとうございます!
本当に嬉しいです!今少しお付き合い頂ければ幸いです!
うたが私のせいで死んで……私が縁壱から逃げ出した時、私の手の中にあった胎児。
頭を齧られてしまっていた、助かる筈もない命。
それが、まだ、ほんの僅かに生きていることに気付いてしまった。
生きているなら、もしかして、と血を与えてみたが……直ぐに再生して鬼になり生き返る……とはいかなかった。
命だけは取り留めたものの、鬼になりきることなく、人間のままでもなく、目も覚まさない。
どうなるかわからない状態が続いた。
その存在は私以外知ることなく、暫くは私の体の中で、後に研究室へと安置することになっていた
少しずつ、少しずつ変化していく。
鬼としても人としても、酷くゆっくりとした成長速度で、大きくなっていく。
目を覚ましこそしないが、その容姿が縁壱に似ていくのが見ていて辛かった。
縁壱もうたも、この子の成長を見れなかったというのに。
こんなそっくりな子、二人は溺愛しただろうに。
きっと、幸せな家庭を築くことが出来ただろうに。
そう思えば思う程、悲しかった。
頭に過る、もしも。
あの粗末なあばら家で、縁壱達三人が慎ましく暮らして、そこに時折私が顔を見せる。
また大きくなったなぁと縁壱に似てきたなぁと抱き上げて、他愛もない話をする……なんて。
自分の罪深さを棚上げしてそんな妄想に耽る自分に自己嫌悪していた。
そうして時は過ぎていって……とある日にあの子は目を覚ました。
ぼう、と此方を見るあの子の目に意思も理性もなく、呻き声をあげるだけだった。
ああ……駄目だったかと、その時はそう思った。
ただ生きているだけ、そんな存在だと思った。
話し掛けても何の反応もない事に落胆しながらも、その経過を観察していた。
けれど、それは厳密には間違いだった。
とある日、突然あの子は動き出した。
我が居城、無限城から力業で無理矢理地上へとかけ上って行ったのだ。
そこは……かつて縁壱とうたが住んでいたあばら家があった場所……もしかすると父親と母親を探していたのかもしれない。
だがそこにはあの頃の小さなあばら家はなく、暮らしていたのは炭焼きの家族。
ただ、彼等は善良だった。
日が暮れた雪の積もった山に、薄着の子供がいれば、放っておくことなど出来なかったのだろう。
……それが、悲劇の始まりになってしまった。
あの子を、黒曜を観察していてわかったこと……。
それは数多の鬼の中で最も私に近しい体質を持ち、縁壱のように才に溢れていることだった。
当時は、それでも意思がない故に宝の持ち腐れだな、と思っていた。
そしてもう一つ……体温が異様に高いこと。
それが原因かは厳密にはわからないが、黒曜の周囲には血が気化したかのように、赤い霧が常に浮かんでいた。
……鬼の血は人にとって猛毒となる。
常に血の霧を散布してしまうこの子は、間違っても童磨のように人の世に出ることは、人前に出ることは出来ないだろうなと思っていた。
だからこそ無限城を出た黒曜の後を私は即座に追った。
けれど……そうして追い付いた時には、手遅れだった……。
私があの家を訪ねた時、散布されていた血は、既に彼女達の体を蝕んでいた。
血を吐き倒れていく彼女達を、その時点で救う事は……本当は出来たのだ。
しかし、だらだらと涎を垂らし、苦しむ子供達に今にも歯を突き立てようとする黒曜を、止めなければいけなかった……。
血を吐き、苦しみながらも、子供達を守ろうと覆い被さる女性に尊敬の念を抱きながらも、私は必死で黒曜を止めようともがいた。
小さな子供だというのに、私が全力を込めなければ止めることは叶わず……。
果ては聞き覚えのある呼吸音が聞こえた瞬間、私は体の中の血鬼術を発動させていた。
最も効くと本能的に判断した、童磨の氷の血鬼術を。
体温が下がり、動きが鈍り始めた黒曜は、力を振り絞って一度私の拘束を振りほどいた。
そうしてそのまま外へと逃げ出してしまった。
すぐに追いたかったが、まずは目の前の命をと私が彼女達の容態を確認した時は……既に殆どが力尽きていた。
一人の、少女を除いて。
……そう、禰豆子だけは血に耐え、辛うじて命を繋いでいた。
だが、それも風前の灯火……ただ無造作に与えられた私と同格の血に、その体は破壊されようとしていた。
私は、その血を幼い体が耐えられるように調整することしか出来なかった。
血を抜き取ったとして、変容を始め破壊されていた体はもう、人として再生することはないとわかってしまったから。
本来なら見守り続けなければいけなかった。
鬼として目覚めたのならば、周りにある死体を喰わない理由はない。
それが、家族だったとしても。
だが、黒曜を放っておくことも出来なかった。
童磨の血鬼術で体の動きは鈍っている筈だが、時間が経てばすぐに元の動きを取り戻すだろう。
そしてそのまま人里にでも降りてしまえば……被害はこの家族の比ではなくなる……。
断腸の思いだった……私は禰豆子だけが鬼として目覚められるようにして、その場を後にした。
本当に申し訳ないことをした。
下手をすれば、禰豆子に消えない罪を背負わせてしまうところだった。
彼女の強さに、救われたよ……。
結局、黒曜を捕え、童磨の血鬼術によって封印した時には既に、お前達は鬼殺隊に保護されてしまっていた。
鬼に変じた禰豆子が家族の死体を食わず、君を襲いもしなかったことには驚いた。
いや、今に至るまで一度も人を喰らっていないことに、今も驚いている。
そのような特性があったからきっと、禰豆子は太陽を克服することが出来たのだろうな……。
その間に炭治郎、君の並々ならぬ努力があったことは想像に難しくない。
……君はよくやった。
本当ならばこのまま休ませてあげたいくらいだ。
……だが、すまない、きっと黒曜はこのままでは止められない。
縁壱の才を色濃く受け継いだあの子は……天に、太陽に愛されている。
予感がするんだ、あの子はきっと……その身に太陽を浴びれば即座に克服してしまうと。
炭治郎……どうか私の最期の頼みを聞いてくれ。
君は今死にかけているが、僅かに残った私の力の全て、私の残る血を全て与えた。
きっと、鬼として君は目覚める筈だ。
食人衝動も最低限に……なる筈だ。
全てが終わってから、鬼を人に戻す薬を摂取すれば、人に戻れる筈だ。
だから……どうか、黒曜を止めてくれ。
誰かを、その手に直接かける前に……。
君の家族が死んだのは私のせいだ。
私ならばあの時、紙一重であろうとも救えた筈だったんだ。
それでも、私はあの時黒曜を選んでしまった。
君の家族を見捨てたんだ。
そんな私からの願いなんて聞きたくないかもしれない。
だが、どうか頼む……。
黒曜を、あの子が罪を犯すその前に……。
あの子を、止めてくれ。
私には出来なかったことを押し付けてしまって、本当にすまない。
だがどうか……どうか頼む。
あの子を止めてくれ炭治郎、私の最期の願いを叶えてくれ。
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太陽を克服した鬼が現れた……。
半天狗の最期に見た光景に、朝日が昇る中体を焼かれていない少女の鬼の姿があったらしい。
そんな鬼の存在を知ってしまった無惨様は、即座に現在配下にしている鬼達を集められた。
鬼殺隊がその鬼を手放すこと等考えられなかったが、万が一、億が一、無惨様の支配下にない鬼の手に落ちれば、世はその鬼に支配されると危惧なされたのだ。
故に、今まで先延ばしにしていた鬼殺隊との決着をつけると決断なされた。
それは、配下の鬼からすれば喜ばしいことだった。
何せ、鬼殺隊は我々が敬愛する無惨様を殺そうとしている集団であり、無惨様のお心を苦しめる輩達であるから。
故に我ら配下の鬼達はその来るべき時まで、その身を無限城に隠した。
無惨様が自ら囮となり、鬼殺隊を無限城へと誘い込むとの事だ。
鳴女がいれば無惨様に万が一はなかろうと私は納得し、ただその時まで刃を研ぎ澄ませていた。
そういえばその直前、太陽を克服する鬼が発見される前に、数人の鬼殺隊を斬り殺したのだが……最後に残った男がいた。
雷の剣士であり、単純な実力では柱に準ずる程の力量ではあった。
しかし今一歩足りぬ……何よりも雷の呼吸の基本の型である壱ノ型を使えぬという有り様であった。
それぞれの呼吸の特色を理解していれば、その有り様は正に論外。
更には一人になった途端に命乞いをする始末……。
その姿にかつての私が重なった。
それは同族嫌悪だったのだろう。
私は気付けばその男を切り捨てていた。
……少し惜しい事をしたとも思ったが……矜持の肥大化した男だ、鬼にしたとていずれ暴走することが目に見えていた。
故にその事は忘れ、鬼殺隊との決戦に臨んでいたのだ……が。
壱ノ型・霹靂一閃・八連!
「む……これは……どうだ……?」
漆ノ型・厄鏡 月映え
全方位に月の刃をバラ撒く技……万が一にもあの速さで突っ込めば、容易く両断されるが……。
ダンッ
動きの軌道が、一つの帯のように伸びて月の刃の展開前にすり抜けていき。
ズダダダダンッ!
その間を見事に駆け抜け、
ギィイイインッ!
私の手に持つ刃と音を鳴らした。
「くそっ……!」
私が即座に切り返せば、すぐに身を翻し距離を取る。
目にも止まらぬ速さでの一撃離脱、まさに雷の剣士を体現したような剣士だ。
我妻、と呼ばれていたか。
その瞳は、表情は私への怒りや憎しみに彩られているものの、その動きに淀みはない。
自分の出来ること、するべきことを理解しているのだろう……。
迂闊に傷をつけることが出来ない風の柱、単純に手強い岩の柱、新たな呼吸で戦う私の子孫、霞の柱。
既に戦闘を行えない程に痛め付けた霞の柱は兎も角、他二人の柱と比べて、我妻が最も厄介であった。
単純な実力では無論柱が上だ。
だがあの速さと、月の刃をすり抜ける身のこなしは、相性が悪い。
柱達も放っておく訳にはいかない。
刀は既に大太刀とし、攻撃範囲を広げ、我妻への牽制を兼ねて柱達へも攻撃しているが、流石に片手間でやられるような剣士達ではない。
猗窩座が死んだ今、ある程度余力を残さねばならぬと、形振り構わない全力を出し切れていなかった。
……それが、仇となった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「……なに……!?バカな、鳴女が……!?」
無限城全体に広がる揺れ、各所に見られる崩壊、そして無惨様越しに感じる、同胞の消滅の感覚……。
ついでに下弦も全滅したようだが、鳴女がやられた時点でそうなることはわかりきっていた。
だが、鳴女は違う。
私でも捉えきれぬ特異な血鬼術と、使いこなす実力、無惨様の片腕として最も相応しい鬼だった。
無惨様も彼女を重宝していたし、信頼し……愛していたのだ。
そんな彼女がやられてしまった……無惨様の苦しみはどれ程のものか……想像も出来ない。
恐らく無惨様が支配権を得たことで、無限城の崩壊は止まったが、その時間も有限。
無惨様の精神的な負荷を少しでも和らげる為に……今目の前にいる者どもは、本気で切り捨てなければならぬ。
今、すぐにでも。
私は改めて思い直し、刀を握る手を強めた。
それは、油断だった。
鬼殺隊の隊服を着ていたが、日輪刀を持たぬ、呼吸も使えぬ様子の男。
その男の存在には気付いていた。
銃とやらを持っていることも、それを私に向けていることも。
それでも、何も出来ぬと決めつけていた。
銃は人間にとっては脅威的な武器となるが、鬼には大した効果を見込めぬ。
私達にとっては、玩具に等しい物だと。
だが、瞳を黒く染め、犬歯を喰い縛るその姿に、一瞬気を取られた。
まるで鬼のような姿に、遅れて気付いた。
鬼喰い……かつて隊士の中に僅かに存在していた特異体質。
鬼を喰らい、短時間その身を鬼と化して鬼と戦う風変わりな人間。
だが、それでも問題はない、全て纏めて切り捨てれば良い。
そう思い、刀を振りかぶった時。
鬼喰いの男の瞳から、涙が溢れた。
その余りに唐突な行動に、一瞬思考に空白が生まれた。
バンッ!
そこに撃ち込まれた、鬼喰いの男の放った銃弾。
私の体には当たったものの、案の定、大した傷にはならない。
そう、大した傷には、ならなかった。
「……血鬼術!」
シュルルルルルッ!
「なっ……にっ……!?」
当たった部分、弾丸から伸びた木が私の体を覆い始めた。
これは……酒呑の
マズイ……!この木には鬼の力を抑制する力が……!
「であぁああああ!」
ドスッ!
更にはほぼ戦闘不能にした筈の霞の柱が、赫く染まった刀で私の体を貫いていた。
腹から血を流しながらも、尽きぬ闘志で。
更に私の体の動きが鈍る。
「よくやった、玄弥!時透!」
だが、まだ、甘い!
拾肆ノ型・兇変 天満繊月
「チイィィッ!」
隙と見て動きだそうとする風と岩の柱の動きを、渦状に放つ無数の刃で切り捨てる。
流石に無傷だなんだと言っていられる状態ではない……!
風と岩の柱はその身を僅かに切られたのみで、即座にかわされてしまう。
流石だと感心する間も無く、私は状態の悪さに歯噛みした。
そして……未だに活発に動く木を殴り砕いたその瞬間、凄まじい殺気が私を貫いた。
視界の端、我妻が居合いの構えをしているのが見えた。
我妻は、速い。
今私の状況は万全に程遠い。
だがあの距離であれば、ある程度奴の神速にも慣れた今であれば、刀だけで捌く事も可能の筈だ。
今の私の状態を隙と見て迂闊に飛び込むのならば、逆に切り捨てる。
その思いで、我妻へと意識を向けた。
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漆ノ型・火雷神
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ザンッ……
……一瞬、何が起きたのか理解出来なかった。
自分の体を床から見上げている光景を見て、遅れて私が頚を切られた事に気付いた。
まったく、見えなかった。
全ての力を出し切ったのだろう、我妻は少し離れた所で刀すら放り出して倒れ込んでいた。
……なんという技だ。
我妻はまだ伸び代のある、未熟な剣士だと思っていた。
だが、そんな剣士から……私が反応すら出来ない技が放たれるとは思っていなかった。
「……素晴らしい……技だった……な……。
余程私が斬った男は……大切な存在だったと……見える……」
敵討ちの為に、自分の力を振り絞ったのだろうと、そう思っていた。
「……はぁ……!?獪岳なんて、一度も大切だと思ったことねぇよ!」
「……なに?」
故に、そんな予想外な言葉が返ってきて、思わず聞き返してしまった。
倒れたまま、顔だけで此方を見た我妻は、その顔を歪めた。
「あいついっつも俺の事見下してくるし、すぐに暴言吐いてくるし!桃投げつけてくるわ、滅茶苦茶罵ってくるわ、カスだなんだといっつも苛められてたんだ!
あんな奴、大っ嫌いだ!」
その言葉に嘘はないように感じた。
我妻は、獪岳という剣士を心底嫌っていたのだろう。
「……ならば、何故……?」
そこまでの力が出せたのだ……?
我妻は、苛立ちで歪めていた顔をふっと緩め、ただ悲しげに俯いた。
「……それでも、尊敬してたんだ。俺と違って、真面目でひたむきに努力してて……爺ちゃんの願い通り、いつか肩を並べる日を夢見てたんだ……。
獪岳も俺の事嫌っていたし、俺も嫌いだった……だけど……大事な、家族だったんだ」
すっ、と顔をあげた我妻の顔は、何処か憑き物が落ちたような顔をしていた。
「だから、獪岳の仇は絶対に取るって決めてた。
獪岳に並ぶ為に俺が、俺自身が編み出した型で……」
「……そうか……家族の為……か……」
……本当に素晴らしい技だった。
あの技は、たとえ万全でも対応出来たか、怪しかったかもしれぬ。
どちらにせよ……私は負けた。
鍛え続けた技が、力が競り負けた。
ああ……素直に負けを認めよう……私は……負けた。
「……え?」
霞の柱の呆けた声がする。
当然か、頚のない私の体が動き、その首根っこを掴んだのだから。
ぶんっ
「わあっ!?」
「時透!」
「うぐぅ!?」
適当に投げた霞の柱……時透は、岩の柱に受け止められていた。
その拍子に腹が更に裂けたのだろう、苦痛に顔を歪めていた。
「な……あ……!?嘘だろ……!?俺、頚を確かに……!」
「ああ……剣士として私は負けた。ぐうの音も出ぬ敗北だ」
どちゅ
即座に繋がった頚の調子を確かめながら、既に元の色に戻った時透の日輪刀を引き抜いた。
……ふむ、問題なさそうだな。
カランカラン
「だが、無惨様がまだ戦っておられる……私が先に死ぬ訳にはいかぬ」
「糞目玉野郎がァ……!頚斬られても死なねェだと……!?ふざけやがって……!」
額に青筋を浮かべた風の柱だが、冷や汗も同時に浮かべていた。
いや、この場の誰もが、驚愕し、冷や汗を浮かべているように見えた。
「すまないな、素晴らしき至高の剣士達よ。ここからは、ただ鬼として……お相手しよう」
シャキンッ
シャキンッ
シャキンッ
私の体の各所から、目玉の浮かんだ刃が飛び出した。
本当の意味で、形振り構わず……戦わせて貰おう。
「……冗談キツイぜ」
「行くぞ。鬼殺隊よ。全ての鬼の中で
拾ノ型・穿面斬 蘿月
誰かの呟きを掻き消すように、その場を月の刃が埋め尽くした。
誤字報告ありがとうございます。
修正しました。