それでも私は死にたくない   作:如月SQ

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ふと思い付いたので投稿


月明かりの下で

 静かな夜、月明かりに照らされながら空を見上げていた。

 

「……綺麗だ。

 またこの目で、満月を見られるとは思わなかったな」

 

 病状が悪化し、視力を喪ったその時に、全てを諦めていたといいうのに。

 あまねの顔も、子供達の成長も、この目で見ることはないのだと。

 春の晴々しい朝焼け、夏の虫の囀ずる夜長、秋の澄んだ夕暮れ、冬の厳かな朝、四季折々の花々、暖かな日、静かな月、そんな美しい景色を見ることはもうないのだと思っていた。

 

「……美しいね」

 

「ええ……見事な満月です」

 

 染々と呟いた言葉に、あまねが同意してくれる。

 視線を向ければニコリと微笑んでくれて、胸の奥が温かくなる思いだった。

 

 ……私は、産屋敷耀哉。

 鬼を討滅する組織、鬼殺隊の創設者産屋敷家の元当主……。

 そして……。

 

「最期に、君と見られて良かった」

 

 今、代々の悲願である鬼を滅ぼす為に燃やし続けた命が、尽きようとしている。

 呪いこそ解け、痣は消え、私を苛み続けた痛みもなくなり、目も見えるようになったけれど、消耗した寿命は戻らなかった。

 はらりと、あまねの瞳から滴が一筋流れ、けれど彼女は美しいまま微笑んでくれた。

 私は衝動のままにあまねを抱き寄せ、改めて夜空を見上げる。

 

 あまねの鼓動を感じながら、自分の鼓動が弱っていくのを感じて……けれどその温かさに心から安心を覚えて。

 私は微笑みを浮かべたまま、自分の最期を静かに受け入れていた。

 

 満天の星の中に浮かぶ、見事な満月が、私達を照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私は間も無く死ぬだろう』

 

 鬼舞辻無惨との決戦を終え、柱達を集めた場で、私はそう言い切った。

 柱達の反応は様々で、目を見開いたり、目を伏せたり……けれど何処か納得したような空気が流れていた。

 顔の痣がなくなった事で、逆に私の顔色が良く見えてしまうのだろう。

 良く慕ってくれていた実弥は、噛み締めた下唇から血を流してしまっていた。

 

 ……今までも、皆が私の身を案じていてくれた事はわかっている。

 けれど、こうして皆の顔を見ていると、よりその思いを強く感じるような気がした。

 

『元々、輝利哉に家督は渡していたが……最後にいくつか仕事をしてから、正式に当主の座を降りようと思う。

 鬼の始祖、鬼舞辻無惨は倒したけれど、鬼は未だに存在しているのだからね。

 ……鬼殺隊の戦いはまだ終わらない。どうかこれからも私達に力を貸して欲しい』

 

『はっ!お任せ下さい!』

 

 ……柱達の息のあった是の返答を嬉しく思う。

 

『……ありがとう。

 どうか……輝利哉を、私の息子をお願い致します』

 

 深々と頭を下げて、心からの感謝を示した。

 まだ幼い輝利哉を任せると、元々あまねとひなきとにちかを道連れに自爆するつもりだった身でどの口がと思うけれど、それが今の私に出来る精一杯の誠意だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私は先祖の悲願や憎しみに飲まれて、心まで盲目になっていたんだと思う。

 何も見えていなかった。鬼は殺すべきで、利用出来るならする程度の認識でしかなかった。

 鬼は生きていてはいけない生物だ……けれど……もう少しやりようがあったんじゃないかと……今はそう思うよ」

 

 私が命じた鬼達への所業は、普通の感性を持つ者なら顔をしかめてしまうようなものも、いくつもあった。

 幾人かの心優しい剣士達(子供達)にとって、心苦しい物だったと思う。

 ただ、それを命じた事に後悔はない。

 そうしなければ鬼との戦力の差を埋めることは出来なかっただろうから。

 そうして代々抗って来たのだから。

 

 ……なんて、いくつもの言い訳染みた言葉が浮かんでくるのが、既に私自身が、それらを間違っていたと思っている証左なんだろうね。

 鬼達が私達人間に対してしてきた処遇、私達一族の受けた短命の呪い、その恨みに目が曇り、理解をすることを拒んだ……。

 剣士達(子供達)を地獄に送り続け、鬼達を滅ぼす為になんでもする覚悟でなんでもした。

 予感のままに、禰豆子という利用価値のある特異な鬼の存在を認め、珠世というはぐれの鬼も使い潰すつもりで協力を仰いだ……。

 心の何処かで、どうせ鬼だと蔑み、露骨な贔屓をする事によって実弥や小芭内の警戒心を煽っていた。

 

 ……けれど、二人とも、驚く程に気高かった。

 禰豆子は結局人を食べる事なく、太陽を克服し、鬼を人に戻す薬を開発する助けとなった。

 これで鬼舞辻無惨を誘き寄せる事が出来ると、心から歓喜したものだ。

 

 そして珠世……彼女と少しだけ言葉を交わして、私はその時初めて……自分のしてきた事に、これからする事に、疑問を持った。

 

『私の事を好きに使い潰して構いません、無惨様を止められるのならば、お好きにお使いください。

 私の出来る事全てをお教えします、無惨様のしてしまうだろう反応を含めて。

 最も上手くいくだろう策を練っていただければ、その通りに実行しましょう。

 なんでも致します。あの人を止められるのならば』

 

 真っ直ぐな声だった。

 偽り一つない、力強い声だった。

 どんな人物が、どんな表情で言っていたのか……。

 それが見られなかったのは、目が見えなくなって最も残念に思った瞬間……いや、無惨の顔が見られなかった事も同率かな……。

 

 兎に角その後から、私の想像する『鬼の首魁鬼舞辻無惨』と『実際の鬼舞辻無惨』……その乖離を感じていた。

 だからと言って、今更止まる訳にもいかない。

 私達産屋敷が、呪いを受けて短命なのままなのは事実なのだから。

 後に産まれる子供の為に、これからの世の為に、この命を燃やし尽くすと……そう決めていたんだ。

 

『最後まで生きると良い、産屋敷耀哉。

 家族と共に、その命が尽きるまで』

 

 無惨に言外にそのように言われた気がした。

 

 私は一周回って、愉快な気分だった。

 罠と知りながら会いに来て、罠をわざわざその身で受けて、罠に嵌めた相手を助け、全ての策を受け止めた、無惨の首魁としての在り方が、あまりにも愉快だった。

 去っていく無惨と、もう二度と会えず言葉を交わす事もないだろう事が、残念でならなかった。

 

『……無惨さんは俺が斬りました。

 縁壱さんから受け継いだ型で……きっと苦しみもなく逝けたと、そう思います。

 俺!黒曜を絶対立派に育て上げます!絶対幸せにします!

 それが……無惨さんの最期の願いだから』

 

 決着をつけた炭治郎は、覚悟の決まった顔で、ボタボタと涙を流しながら宣言していた。

 きっと、その願いは果たされるのだろうと、そう確信が出来た。

 真っ直ぐな剣士に育った姿を見て、私の勘は正しかったと思うと同時に、自分の浅ましさを直視させられたが……もうそれらの汚点は、このまま墓場まで持っていかせて貰おう。

 曇りきった私の心根を知るのは最早あまねだけ。

 だから、立派なお館様として……この命を終えるとしよう。

 

『……南無、曇っていたのは私も同じ。

 鬼は救いようがないと、そう決めつけていました……。

 そんな態度が獪岳に伝わり、彼は私に会うことなく逝ってしまった……。

 ……ですが、さよは、私に会いに来てくれたのです。

 私も間も無くですが……その最期の時まで出来る事をしていきたい……そう思うのです』

 

 行冥はそう言って微笑んでいた。

 岩屋敷で、孤児達を育てる活動を始めるらしい。

 私は行冥が亡くなっても、資金援助は惜しまないと約束をした。

 きっと彼も、私のように温かな布団で家族に囲まれてその生涯を終えるのだろう。

 その最期が安らかなものであれば良いと、そう願った。

 

『鬼を狩るのは若い奴等に任せますが、裏方としてならいくらでもやるぜ。派手にお任せください』

 

『この足じゃもう戦えません……ですが、やれる事はある。

 倒した鬼達が悪鬼じゃなかったか等はどうでも良いです。

 今回の決戦で倒した鬼達が悪じゃなかったのならば、今存在している鬼達は悪だと断言しても良いでしょう。

 鬼達を真の意味で滅ぼすその時まで、俺はこの身を捧げます』

 

『経過を見ないとなんとも言えませんが、恐らく私も戦えないと思います。

 ですから、これからは蝶屋敷で、医者として本腰を入れて皆さんの補助をしていきたいですね。

 ……仇は討てませんでしたが、せめて最後まで、鬼殺隊の為に協力させてください』

 

『……片腕では、力を出せません。

 胡蝶を……支えたいと思います』

 

 柱達の半数以上が、一線を退いていった。

 精神的にも肉体的にもひどく傷付いているというのに、それでも鬼殺隊の為に動いてくれるのだという……。

 感謝しかなかった。

 

『私!悲鳴嶼さんと宇髄さんに伊黒さんやしのぶちゃん、冨岡さんの分まで頑張ります!

 ……煉獄さんに恥ずかしくない、そんな剣士として』

 

『片腕なくなったくらいなら大丈夫です。

 冨岡さんはやめるみたいだけど、僕は続けます。

 僕は無限の無一郎ですから』

 

『お館様!これまでのお館様の鬼殺への尽力!お見事でございました!

 自身を囮にした件等進言致したい事がいくつかございますが……今はただご自愛ください。

 これからの事は、我らに全てお任せください!生き残った鬼達は、必ずや俺達が滅ぼしてみせます!』

 

 鬼殺を続けると約束してくれた柱達の言葉は、とても心強かった。

 他にも鬼殺隊全体として、決戦前に比べて数は半分以下になってしまったが、彼等がいれば大丈夫だと思えた。

 私は……そんな自慢の剣士達(子供達)を持てて、幸せ者だ。

 柱達との最後の対談を終えて、そうしみじみと感じた。

 

『もう俺は戦えます!必ずやお役に立ちましょう!

 最後まで……心を燃やして!燃やし尽くして!責務を果たす!』

 

 けれど、杏寿郎を送り出した事……それが正しい事だったのか、もうすぐ最期を迎えるとなった時になってもまだ、結論が出ない。

 子供達を死地に送った後は、いつもこうだ。

 延々と、答えの出ない問いに悩んでしまう。

 

「……いや、そうか、あっちで謝るとしようか」

 

 あの世なんてものがあるなら、ね。

 いや、私のような者は地獄行きかもしれないね?

 それなら杏寿郎には謝れないかもしれない……それは困ったな。

 せめて、一目だけでも見て―――。

 

「っ……!」

 

「……おっ……と」

 

 ……一瞬意識がとんでいたか、倒れる所だった。

 

「すまないね、輝利哉」

 

「……いえ」

 

 私を支えてくれた輝利哉に微笑んで礼を告げながら……私は時が近付いている事を感じていた。

 

「そろそろ、寝るとしよう……皆、布団の周りに集まってくれるかな?」

 

 空を見上げるのを止めてそう声をかければ、少し離れたところで様子を見ていた娘達がとてとてと駆け寄ってきた。

 最愛の子供達を引き連れて、私はゆっくりと布団の上に横になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひなき」

 

「はい」

 

「にちか」

 

「はい」

 

「輝利哉」

 

「……はい」

 

「くいな」

 

「はい」

 

「かなた」

 

「はい」

 

「……あまね」

 

「……はい、あなた」

 

 子供達の声が、あまねの声が、子供達の顔が、姿が良く見える。

 

「目が見えなくなった時に比べて……みんな、大きくなったね」

 

「当然です、まだまだこの子達は成長期ですから」

 

「ふふ……そうだね。その成長がもう見られないのは……少しだけ残念かな」

 

 ふぅ、と少し大きく息を吐けば、子供達が小さく息を飲んだのがわかる。

 ゆっくりと息を吸えば、安堵の息が漏れる。

 ……大丈夫、まだもう少し時間はある。

 それに、私自身もまだ……この温もりを味わっていたいからね。

 

「私の代で呪いを終わらせる事が出来て、本当に良かった。

 お前達はもう自由だ……好きに生きなさい」

 

「ぐす……はい」

 

 かなたは涙ぐみながら、小さく頷いた。

 くいなも悲しげに顔を歪ませて、その涙を拭っていた。

 

「ただ、輝利哉には変わらず……鬼殺隊の当主として重荷を背負わせてしまう事を……許してほしい」

 

「任せてください」

 

「私達も輝利哉を支えます」

 

「輝利哉だけじゃ心配だもの」

 

 輝利哉は力強く頷いてくれた。

 それに、ひなきとにちかも、鬼殺隊の為に尽力してくれると言う……。

 有難い……しっかり者の二人なら、輝利哉をしっかりと支えてくれる事だろう。

 

「……あまね、君にも……苦労をかけた。

 長くて短い間だったけれど……共にいてくれて……ありがとう。

 心から愛している……よ」

 

「っ……はいっ……!私も……愛しています……!」

 

 途端に、あまねの瞳から涙が溢れた。

 それでもあまねは顔を歪める事なく、私を真っ直ぐ見つめて、綺麗な笑顔を向け続けてくれた……。

 

 ああ……本当に、温かい……。

 私の最愛の、最高の家族達……。

 私が死んだ後も、お前達の幸せを、心から願っているよ……。

 

 瞳をゆっくりと閉じれば、子供達の悲鳴のような叫びが一瞬響く。

 

「っ……!」

 

「……大、丈夫……まだ、まだ死なないよ……」

 

 眠い、けれど……まだもう少しだけ。

 もう、ちょっと……だけ。

 

 ふと、薄く目を開けた時、輝利哉の腰に帯びた刀が目に入った。

 そう言えば……刀を振りだしたと、そう言っていたね。

 

「輝利哉……最後に、君が刀を振るう姿が……見てみたいな」

 

 呪いのせいもあって、私には剣士達(子供達)のように剣を振るう事は出来なかった。

 けれど、呪いから解放された輝利哉にはどうやら、剣を振るう才があったのだという。

 

「え……ん……はい!わかりました!見ていてください!」

 

 輝利哉は少しだけ戸惑いを見せたけれど、私の手を一度強く握りしめ、立ち上がった。

 そして名残惜しげに私を一瞥し、駆け足で先程までいた庭へと向かっていった。

 

 ……輝利哉の呼吸は、自然と身に付けていた呼吸は、どの呼吸とも違っていたらしい。

 けれど無一郎、行冥、実弥、玄弥、善逸、そして炭治郎は、その呼吸音に覚えがあると、言っていた。

 

ホオオオオオ

 

 離れていても聞こえる、力強い呼吸音に、思わず笑みが浮かぶ。

 

 それは……上弦の壱が、そして何よりも……私達の祖先、鬼舞辻無惨が使っていた呼吸だった。

 

月の呼吸 壱ノ型 闇月 宵の宮

 

 流麗な動作で放たれた抜刀術、淀みのない動きに、改めて輝利哉が呪いから解放された事が感じられた。

 皆の記憶を頼りに他の型を再現している途中らしく、それ以降の型は練習中らしい。

 それでも未完成ながら、出来得る限りの型を見せる輝利哉が、いじらしくて、誇らしい……。

 

「……美しい……まるで、舞を踊っているようだ……」

 

 それに、何よりも美しかった。

 月明かりに照らされながら、月下で次々と型を続ける輝利哉の姿が、とても……。

 

「……無惨の、使っていた型、か」

 

 それは、ちょっとした思いつき。

 無惨の事だ、彼はきっと、何も残す事はなかった。

 どうせ、黒曜を託せたから満足だとでも思って逝ったのだろう。

 死ぬのが怖いと嘯きながら、繋げていく事の美しさを知りつつ、自分を組み込む事が出来なかった、優しく憐れで、悲しき鬼の首魁、鬼の始祖、私達の先祖……鬼舞辻無惨。

 彼の使っていた型ならば……丁度良いかもしれない。

 

「……その型を……産屋敷家で伝えていく……」

 

 それは、良い案だと思えた。

 月の呼吸……日の当たれぬ鬼達を見守っていた、無惨に相応しい名だ。

 それを子孫である私達が伝統として伝えて舞い続けていく……良いじゃないか。

 無惨の名を残す事は出来ないし、自己満足でしかないかもしれないが、それでも少しでも彼が生きた事を……生き抜いた事を残したいと思った。

 けれど、呼吸はあくまでも戦いの為の技……教え伝えていく物として、その名は相応しくないだろう。

 ならば……そうだな……。

 

「……月明カリノ舞……うん、良いじゃないか……。

 これより、月の呼吸は……月明カリノ舞として……産屋敷家の伝統として舞い続ける事としよう……それを……私の最後の……我が儘にしてくれ……」

 

 すぅ、と視界が暗くなる。

 体に力が入らなくなって、鼓動が弱まっていくのを感じた。

 

「―――!」

 

 子供達や、あまねの声もよく聞こえない。

 私の手を、温かな感触が包み込む……あまねや子供達が握ってくれているのだろう。

 けれど……それを握り返す力は、なかった。

 

 ああ、もう、限界なのか……。

 ボヤけ始めた視界の先、輝利哉が月下で振るう姿を眺めていた。

 温もりに包まれて、産屋敷の未来に思いを馳せて……輝利哉の立派な姿を目に焼き付けた。

 

 ……こんな最期を迎えられるとは思わなかった。

 産まれてずっと、苛まれ続けた痛みも苦しみもなく、温かな布団で、家族に囲まれて生を終える……。

 なんて贅沢な最期だろうか?

 なんて……心から満足出来る死に方だろうか……?

 

 鬼殺隊の未来も、産屋敷の未来も、不安はない。

 私の自慢の剣士達(子供達)が、私の最愛の子供達がいるのだから。

 

「ありがとう……みんな……。

 みんなのしあわせを……ねがっている……よ……」

 

 こんな最期を迎えられたのも、君が助けてくれたお陰だよ、無惨……。

 敵対してる筈の僕を助けてしまった、心底お人好しな君の……。

 

 ありがとう、僕の……最後の友達。

 来世、なんて物があるのなら……。

 君と……親友になれると良いな……。

 

 最後にニコリと笑みを浮かべた後、私の視界は全て黒く塗り潰されていく。

 

「―――――!」

 

 みんなの声が遠くなっていって……体の感覚も消えていく……。

 そしてそのまま、私の意識は……温かな闇に埋もれるように、飲み込まれていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「なんて、夢を見たんだよね、無惨。どう思う?」

「……夢は夢だろう。話を反らすな、また余計な事を仕掛けたな?
 私は総理大臣の椅子になど、微塵も興味無いと言っただろう。余計な事をするな。
 今の一議員としての立場も不相応だと感じているというのに……貴様を始め、何故貴様らは隙あらば私を祭りあげようとするのだ……」

「ははは、それだけ皆君になら任せられると思ってると言う事だろう?そろそろ観念したらどうだい?」

「冗談じゃない、私はただ平穏に過ごしたいだけなのだ……何故わざわざ自分から苦難の道に飛び込まねばならんのだ……」

「そうかそうか、残念だなぁ、ははははは」

「……耀哉貴様、まったく諦めていないな?」

「えー?次はどんな手を企てようかな、なんて思ってもいないよ。ふふふふ……」

「…………はぁぁぁ……」







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