基本、弱肉強食であり力こそ全てな獣人たちの世界――とはいえ、人間の世界において貴族が敬われるように格式というものもある。
そして獣人族においてその名を出せば獣人の王すら敬意を表する程、格式が高い部族と言えば金豹族だ。
戦乱の世が訪れている獣人の国において多くの部族を従えるそんな金豹族が同じく、多くの部族を従えているシドに対し、会合を求めてきた。
シドが従える部族と金豹族が従える部族の勢力図で言えば丁度、二分していると言っても良く、争い合えば洒落にならない犠牲を生む事になる。
この会合の結果次第で獣人の国がまた、動く事になるのは確実だった。
そうして……。
「お初にお目にかかります。金豹族の長……俺はこの獣人の国の国境付近の山を越えたところにある街を領地としている男爵家カゲノー家の長男、シド・カゲノーです。会合を設けていただき感謝します」
シドは会合の場所へと向かい、金色の毛並みを有する豹の獣人が金豹族たちに対し自己紹介と礼儀を尽くした。
「獣人を従える人間がいると聞けばな……それにしても」
「……」
次の瞬間、長が腰に佩いた剣に手をかけながら魔力を溢れさせ、それに対抗しシドは静かに手を動かし魔力も巡らせていく。
「くく、まさか娘と同じくらいの年齢ながらこれ程に強いとはな……すまなかった、どれほどの実力か確かめたかったのだ」
「いえ、異種族の者が獣人を従えているのなら色々と気になる事は当然の事でしょう」
「理解のほど、感謝する」
そうして、会合の場へと移動し対面しながらシドと長は座り合い……。
「では、シド殿……どうしてこの獣人の国に来て我ら獣人たちに介入しているのだ?」
「俺の領地に戦乱が原因で野盗化した獣人たちが出現し、暴れているのが気にかかりましてね……領地を治める者としてこれ以上、獣人たちが領土を荒さないようにするため十言うのが第一の理由です」
「いくつか理由があると……では次の理由は?」
「戦乱を納めるのに協力しながら、獣人たちと良い関係を築けるようにする事です。今はこうして色々と獣人達を率いらせてもらってますが、あくまで俺は代理。信用がおける者にいずれ、任せるつもりです」
「成程……だが、まだ理由があるようだな」
「魔剣士として強くなるための修業も兼ねています。結局今までの理由は建前ですね。見抜かれるとは恐れ入ります」
「ふふ、フハハハハっ。いやいや中々に面白い少年だ。では、この際、獣人たちにおける大英雄シヴァのような象徴になっていただく事にしよう。介入した以上、それくらいの責任は持っていただく」
「分かりました」
こうしてシドは金豹族の長に認められ、格式が高い金豹族が認めた事により他の部族たちもシドに従う事となり、こうしてシドの名の元に獣人の国は戦乱の世を終える事となった。
そして……。
「娘のリリムです」
「……あ、あの……私はリリムです」
金豹族の長の娘でシドと同年齢くらいの少女でありながら、気品がどこか漂っているリリムがシドの威風を感じ取り、軽く怯えながらもなんとか自己紹介する。
「俺はシド・カゲノーだ。そう、怯えないでくれ……」
「ぁ……ぅ……」
シドはリリムを安心させようと優しく頭を撫でながら、魔力を静かに流し心身をリラックスさせていく。リリムはシドから与えられる温かさや魔力の感じにシドが悪い者では無いと認識した。
「は、はい。よ、よろしくお願いしますシド様」
「こちらこそだリリム……だが、年は同じくらいだから敬語で話さなくても良いよ」
そうして、シドとリリムはお互い手を差し出し握手を交わしたのであった……。