強さを窮めたくて   作:自堕落無力

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百六話

 

 シドとクレアは授業が終わると一度、寮にある自分の部屋に戻って身支度を整えるとスーツやドレスに着替えて共に外へと出た。

 

 今日、シドとクレアの姉弟は家族水入らずの時間を過ごす。ミツゴシ商会グループの高級レストランでシドのブシン祭優勝を祝う祝勝会をするのだ。

 

「ようこそ、お客様」

 

 高級レストランの中に入ると店長に店員たちが一礼した。因みに店長も店員も『シャドウ・ガーディアン』の者たちなのでシドは内心、苦笑せざるを得なかった。

 

 そうして、個室で超VIPルームに案内され、二人は席へと座る。その後、料理を待っていると豪華絢爛な料理が次々と運んできた。

 

「うん、美味しい」

 

「流石はミツゴシ商会よね」

 

 料理の味に満足しながら学校の事や教室での事、あるいは小さかった頃の思い出話をして食事の時間を楽しむ。

 

「シド、秋休みは予定を開けときなさい。始祖の吸血鬼『血の女王』討伐にいくわよ」

 

「相変わらず、急だね」

 

 シドも知ってはいたが『赤い月』が来ようとしている影響で無法都市にある『紅の塔』より、『血の女王』の配下である吸血鬼たちが外に出て国や町や村、至る所で人々に被害を及ぼしているのだ。

 

 これを重く見た周辺国は魔剣士ギルドに『血の女王』討伐を依頼したのだ。

 

 一流の魔剣士が集められた討伐チームを結成して吸血鬼に挑むのである。

 

「(まあ、『赤い月』が来て血の女王が目覚めたら手出しが出来なくなるがな)」

 

 シドは吸血鬼についても調査しているので少なくとも『赤い月』の影響が出たら吸血鬼はシド以外にとってはとんでもなく厄介なものになると推測しているし、そう予感していた。

 

 だからこそ、自分で対処するべきだと思っていたがその前にクレアが動いてしまったようである。

 

「まあ、喜んでいくよ。カゲノー姉弟は最強だって大陸中に知らしめてやろうじゃないか」

 

「ふふ、そうね」

 

 クレアの事を放っておけないので無法都市で行われる血の女王討伐の依頼への参加を決めた。

 

 そうして食事も済んだのでレストランの者達にお礼と称賛の言葉を送るとレストランを出て夜の王都を歩く。

 

 無論、寮に帰るのだ、しかして……。

 

「シド」

 

「血の匂いだ」

 

風によって血の匂いが運ばれてきた。それを静かに辿れば匂いの元は暗い路地裏である。

 

『ウアア……』

 

 血のように赤い瞳、だらしなく開いた口には鋭い牙のある人間が理性など無い雰囲気を見せつつ、振り返る。

 

 足元では化け物のような人間が食い散らかした死体があった。

 

「グールだな」

 

 化け物のような人間の正体は吸血鬼に噛まれて変異したグールだと理解している。

 

 そして、シドは直ぐにグールへと接近し……。

 

「はっ!!」

 

 右掌でグールに触れ、悪魔憑きの治療のように魔力を送る事で干渉し……。

 

「お、俺は何を……」

 

「大丈夫、保護する」

 

 グールは人間の青年に戻り、シドは優しく声をかけてその場から歩かせ始める。

 

「グールも戻せるのね。流石だわ」

 

「まあ、鍛えているからね。ともかく今はこの人を保護できる場所に送り届けよう」

 

「その優しさが変わらない事を誇りに思うわ」

 

 クレアはシドの技術を褒めながらグールから戻った青年を保護しようとしている事に笑みを浮かべたのであった

 

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