魔剣士学園にて二学期はが始まり、そうして『秋休み』が始まった。
しかして平和にそれを迎えられるかというとそれは否だ。何故ならはるか昔に吸血鬼に大いなる力を与えた『赤い月』が訪れようとしているからである。
その証拠に日々、月が赤くなっているのだ。更に『無法都市』にある『紅の塔』にて活動している吸血鬼の始祖である『血の女王』が眷属、クリムゾンたち吸血鬼達が更にその活動を激しいものにしていた。
今まではそれなりに静かに動いていたのにだ。
この事から周辺国は魔剣士ギルドに『血の女王』達吸血鬼の討伐を命じたのである。そして、この依頼を姉弟二人でこなしたいとクレアが受けた事で一緒に無法都市に行く事になった。
まあ、シドは無法都市においては『黒の塔』の主であるジャガノート一派を傘下においているので後で接触して『紅の塔』への攻撃に協力させる。
更に『シャドウ・ガーディアン』のリリムにフミカとエレナと諜報や潜入、戦闘をどれもそつなくこなせる三人に紅の塔で吸血鬼達が持っている書物など使えそうな物の入手と自分の支援などを頼んでいた。
こうして、シドとクレアは巨大スラムが『無法都市』に向かった。
「うん? あのアホ共……」
無法都市に入ろうとする中でシドの優れた聴覚と気配察知能力はとある二人の存在を捉えた。
「この都市には娼婦もいるんだってよ」
「えへへ……ようやく、僕達も卒業を……」
「くふふ」
「あはは」
その存在とはヒョロとジャガであった。なんと『ブシン祭』においてシドの試合に賭ける事で一財産を稼いだ二人はその財産を使って娼婦を買うようだ。
「(考え無しにも程がある)」
確かに『無法都市』には娼館もある。シドが『黒の塔』にそうした物を経営させていた。
この都市でしか住めない上に戦闘能力を持たない女性を守るためにだ。普通の娼館であるなら、無法都市のならず者、荒くれ者は娼婦に手を上げるだろう。だが、そうした者に『黒の塔』はしっかりと制裁を与えているのでそうしたトラブルは無くなった。
そう、娼館はあるので娼婦を買って、欲望を満たす事は出来るがそれでも娼婦にだって客を選ぶ権利はある。学生貴族であり、しかもどう見たって頼りない雰囲気のヒョロとジャガは相手にされない。
そして、なにより『無法都市』は弱肉強食の理で出来ている。全てが自己責任。つまり、用心しなければ普通に襲われるし、あるいはスラれるし奴隷にだってされるし、最悪、臓器を取られたり、殺されたりだってするのだ。
「どうしたの、シド?」
「なんでもないよ、姉さん(精々、痛い目に遭ってしまえ)」
振り向くクレアに答えながら、ヒョロとジャガには孤の無法都市による洗礼を味わってもらう事にした。最悪の場合については守ってやるが……。
「そう。じゃあ行きましょ」
「ああ」
そうして、シドとクレアは無法都市内に入ったのであった……。