獣人たちを纏めていた大英雄シヴァがこの世を去った事で元々、『弱肉強食』の理が絶対である獣人の国にて次なる大英雄となり、様々な部族を支配する王になろうと戦乱が巻き起こった。
しかし、戦乱は数か月で治まる事になる。獣人の部族の中でも格式の高い『金豹族』に認められたのが決め手となり、まったくもって異例の事であるが人間であるシドが獣人たちの次なる王となったからだ。
無論、幾つかの争いもあったが、全てシドは獣人たちにとっての一番の常識である『弱肉強食』の理に乗っ取って捩じ伏せている。
よって獣人たちはシドの事を王として認めたのだ。最もシドは獣人の国を安定させれば、自分の領地へと戻るのだが……。
とはいえ、完全に獣人たちと交流を断つわけではなく、むしろ積極的に自分の領地との交流をさせていきつつ、将来的にはミドガル王国と獣人の国が良い国交を出来るようにする考えだ。
「うん、良い感じだ。やっぱり適材適所が一番だな」
「まだまだ若いのに的確な役割分担できるシドさんも凄いですよ……このまま、私達の王でいてくれたら良いのに」
「ありがとう、ユキメ。嬉しい言葉だが、俺にはまだまだやらなくちゃいけない事があるからな」
王となったシドは獣人の部族たちの中で戦闘力は低いが、それぞれ農業や物の生産。商売などの仕事が出来る者を選び抜き、そうして獣人の国ではあまり行われない農業に物の生産を開始させ、そうして人間の国に対しての商売と貿易が出来るように取り掛からせた。
シドは順調に作業が進んでいる事に満足すると、彼のサポートをしているユキメが溜め息を吐きながら言った事に対して喜びつつ、シドは謝った。
そうしてシドはシドで王として獣人たちの作業についての案や作業の結果のまとめ、作業についての改善点、結果などを纏めた書類を見ては必要な事を書いたり、確認のサインを書いたりなどの書類仕事に励んでいると……。
「ボスー、狩り行こ、狩り」
部屋の扉が開かれるとサラがシドの背中へと飛び乗ってしがみ付きつつ、狩りへと誘う。
「サラちゃん、今はシド様は仕事中だから……」
「それに今、手が離せないところだからな。悪いな、サラ」
「うー、やだやだ。サラはボスと狩りがしたいのです!!」
ユキメとシドは苦笑しながら、サラへと言ったのだが彼女は納得せず、更にしがみ付いて見せる。
「見つけたっ、この馬鹿犬っ!! シド様とユキメさんの邪魔をするなっ!!」
「サラは犬じゃないし、馬鹿じゃないのです。そっちこそ邪魔するな雌猫っ!!」
するとリリムが現れ、怒りながらサラを引き剥がそうとする。
サラは感情的に動くタイプでリリムは理知的に動くタイプであるが故か仲は悪く、喧嘩ばかりであった。
「ふん、やっぱり馬鹿だね。猫と豹の違いも判らないんだ」
「ううっまた馬鹿に、このっ」
「おっと、喧嘩するなよサラ、リリム。とりあえず、サラ一旦、降りろ」
「はいなのです」
シドの指示にサラは一旦、シドから降りると……。
「ほらほら、狩りは明日行ってやるから今日はこれで許せ」
「ひゃああ、あふ、ひゃうう……」
シドはサラの頭を撫でたり、顔を弄ったり、首元や身体を擽ったりなどしてサラと戯れ、サラはシドに構って貰っている事に気を良くし、与えられる感触を受け入れ、蕩けていた。
「もう、シド様。馬鹿犬に甘すぎですよ」
「そんな事は無いぞ、ほらリリムも」
「ひゃっ、あふぅ……」
不満げに言うリリムにシドは彼女に対してもサラのようなスキンシップをした。すると彼女は喉を鳴らしたりして、シドによって与えられる感触を受け入れ、蕩けていく。
「折角ですから、私も……」
「あいよ」
そうして、シドはサラにリリムとユキメの三人と戯れるのであった……。
二
獣人の国の王となったシドが行っているのはいわゆる、内政的なものばかりでなく……。
「さあ、来い」
「っ、うおおおおっ!!」
「しっ!!」
広い森林の地にて木剣を構えながら自分を取り囲んでいるサラの父親にリリムの父親と彼らが率いる者達にそれ以外にも戦闘に優れた獣人の部族たちへと向かってくるよう言えば、獣人たちは武器を持ち、あるいは己の手足を武器にシドへと襲い掛かり……。
「ふっ!!」
『ぐあああっ!!』
壮絶にして超絶、苛烈にして流麗の戦舞――凄まじい剣と打撃の技を披露する事で獣人達の攻撃を捌き、回避しつつそれと同時に反撃し、打ち倒していく。
「それで終わりか?」
『まだまだぁぁっ!!』
そうして、シドと獣人の戦士たちは強さを求めて朝から夕刻まで手合わせを繰り広げるのであった……。