シドが魔力によるフィルターで効果を無効にしているが完全に赤い月が浮かぶ闇夜を縦横無尽に飛び回りながら、幾多もの攻撃を応酬している者達がいた。
一人は体内に隠しているスライムを解放し、黒獅子の仮面と鎧を纏っているシドである。それと対峙しているのはエリザベートとその分身たちだ。
エリザベートの分身体は無数の血の触手に爪、鎌によって攻撃していくのをシドは四肢を用いて舞を踊りながら捌き、その中で微細の体捌きを持ってエリザベートの攻撃を回避していく。
そうして……。
「ふっ!!」
シドはエリザベートの分身体の二体に対し接近していき、拳撃と蹴撃を炸裂させる事でその絶大な威力で原子レベルで破砕させる事で消滅させたのであった。
「……お名前を聞かせていただけるかしら、紳士様?」
「シド・カゲノーだ」
そうして、血の鎌を持って向かってくるエリザベートに対し……。
「はああっ!!」
魔力による大閃光の爆発を発生させた。
その閃光は赤き月を浄化し、更にエリザベートの状態をも完全に治療して暴走していた精神も沈静化させたのである。
「魔力をこうも自在に操るなんて凄いわ、シド様……赤き月も浄化してしまったし」
鎧も完全に制御した事で今は消しており、赤いドレス姿のエリザベートはシドに対してそう言った。
「鍛錬しているからな。安住の地なら用意してやってもいい。とりあえず、話は通してあるから、この穴を抜けた先にある国へ行ってくれ」
シドはエリザベートの前で空間に穴を空けてみせる。
「え……」
「貴女達の事は調べていたからな、元から助けるつもりだった。貴女の部下であるメアリーも後を追わせるから、待っていてくれ」
元々が人に対して友好的な存在であるエリザベートを受け入れる方法をシドは考えていた。本来はエリザベートの心臓をクリムゾンから入手してそれでシドの魔力によって復活させるつもりであったのだ。
「分かりました。お世話になります」
「ああ」
エリザベートは頭を下げて感謝を示すとシドが用意した『シャドウ・ガーディアン』の本拠地である『霧の国 アレクサンドリア』に向かったのだった。
「このご恩は絶対に忘れません、シド・カゲノー様」
「ご丁寧にどうも」
その後、クレア達の元に戻ってエリザベートを倒した事を告げながら密かに魔力を用いた念話でエリザベートの事をメアリーに伝え、ある程度の場所でメアリーを送り出すと言ってクレア達と一旦、別れてエリザベートのように空間に穴を空け、『古都 アレクサンドリア』へと送り出した。
その際、メアリーはシドに深く頭を下げて礼を言った。
ともかくこうして、『血の女王』討伐の一件は終わったのであった……。