ミツゴシ銀行が流通させている紙幣とは正確には紙幣じゃなく、銀行預金の預かり証である。銀行に預けた金貨との引換券にすぎないがミツゴシ銀行はその預かり証に決済機能を付与し流通させた。
預かり証でそのまま取引が出来るようにした。故にミドガル王国王都では一万ゼニーの預かり証と引き換えに一万ゼニーの商品を購入できる。その預かり証は誰でもミツゴシ銀行で一万ゼニーに換金できる。
紙幣制度に縁の無かった世界に紙幣制度は流通していった。
紙幣という紙切れに貨幣と同じ価値があると皆が信じるようになったのだ。
しかして実は価値に変化は生まれている。
ミツゴシ銀行に一万ゼニーが預けられたとする。ミツゴシ銀行は一万ゼニーの紙幣を預金者に渡し、預金者は一万ゼニー紙幣を使って日常の買い物をするわけだ。だが、銀行に預けた一万ゼニーと市場に回る一万ゼニー紙幣、最初一万ゼニーだった貨幣が倍の二万ゼニーに増えているのである。
預金の預かり証に貨幣と同じだけの価値があると民衆に信じ込ませた事で一枚の金貨を何倍にも水増しする事が出来るようになったのだ。
銀行に預けられた一万ゼニーがそのまま、金庫の中で眠っている訳もない。ミツゴシ銀行は金庫にある一万ゼニーの預金を担保し、更に一万ゼニーの貨幣を発行して貸し出していったのである、
銀行の預金を引き出そうとする者は少ない。便利で軽く大量に持ち運べる紙幣で買い物ができるなら、重たい金貨を持ち歩く必要は無いからである。
更に王都の好景気を狙って紙幣のそれが行われたので新たに事業を始めるため、借り入れを望む者は後を絶たず、ミツゴシ銀行の紙幣は急速に普及したのだ。
金庫にある一万ゼニーが何倍にも膨れ上がり、王都に流通し空前の好景気を生み、ミツゴシ銀行は莫大な利子を得るようになった。いわゆる『信用創造』である。
無論、こうしたやり方は『大商会連合』も気づいているだろう。だからこそ、わざと偽造しやすい紙幣を製造したのである。
わざと偽札を流通させる事で『信用崩壊』を起こさせる。
それをミツゴシ銀行に飛び火させることでミツゴシの紙幣の価値も無くすのだ。
だが、シド達は自分達が紙幣制度を導入すればこうした事をしてくるのは想定済みであった。なのでとうに対策済みである。
大量の貨幣をちゃんと秘密の場所に保管しているのだから。そして、この信用崩壊を逆手に取る。大商会連合は『教団』の資産を隠しているが、その資産を安全な場所に移してから流通する前にシド達は大商会連合の紙幣の偽札を大量に作ってそれを流通させて信用崩壊を起こさせるのだ。
そして、タイミングは完璧に狙える。何故なら、そもそも大商会連合の中に『シャドウ・ガーディアン』の諜報員や繋がっている商人もいくらかいるからであった……。