強さを窮めたくて   作:自堕落無力

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十四話

 

 ミドガル王国の城の広い中庭――その中で残像を置き去りにしようかという程に速く、そして空も地も関係なく自由自在に縦横無尽に動き回りながら、鋭く流麗であり、変幻自在な舞いを応酬する幾多もの者たちがいた。

 

 しかしてその舞は戦舞だ。

 

 舞い手はカゲノー家の長女であるクレア・カゲノーにミドガル王国の王女姉妹であるアイリス・ミドガル、アレクシア・ミドガルとオリアナ王国の王女であるローズ・オリアナ。

 

 彼女たちはシドが旅に出ていた一年間、シドに相応しいものであれるように共に修行する事でその実力は超絶的に増していた。

 

 そして、舞い手は彼女達だけでなく、『獣人の国』からシドの世話をするために付いてきたユキメにリリムとサラである。

 

 こちらもシドが獣人の国を治めている間、シドと鍛錬しているのでその実力は高い。

 

 ユキメは妖狐族であり、実は戦闘能力はある。しかも今は二本だが尾の数が増える度にその実力が飛躍的に増すという種族としての特性を有していた。彼女は自分の母親を殺した月丹に自分自身で決着をつけるという目的があり、そのためにシドに鍛えられていたのだ。

 

 また、クレア達にリリムまでは木剣を手にしていて、サラだけ『やりやすい』からと徒手空拳であった。

 

 そして、彼女たちの舞と応酬しているのは無論、シドである。

 

 彼女たちが舞と共に繰り出す攻撃を自分の舞にてまるで擦り抜けるかのように回避し、あるいは剣捌きや体捌きにて弾き逸らしていく。

 

 並大抵の者なら即座に蹂躙されるだろう武威に全て適応し、対応していくのである。

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……はは、まさか、一撃も当たらないなんてね」

 

「私達も大分、強くなったんですけど……シドさんはそれ以上に強くなっていますね」

 

「流石よね」

 

「シド君は本当に凄いです」

 

「シド様には勝てる気がしませんね」

 

「流石は私達、獣人の王になった人だと改めて思います」

 

「ボスは最強なのですー」

 

「皆だって強くなっている。だからこそ負けられないと必死になるんだ」

 

 朝から夕刻まで思う存分、鍛錬した現在、シド以外の全員が疲労困憊で疲れ果てているのに対し、シドは疲れ果てた様子もないままに皆の言葉に応じる。

 

 

 

 その後……。

 

 

 

「ちょ、こ、これはおかしいだろ……あ、や、止めろ……うああああ」

 

「ふふふ、こっちの方では負けないんだから」

 

「シドさん、可愛いです」

 

「私達から離れられないようにしてあげるんだから」

 

「汗と汚れも疲れも落としてあげます」

 

「シド様は本当にモテていますね」

 

「私だって……」

 

「サラも皆もボスが大好きなのです」

 

 大浴場にてシドは女性陣に囲まれながら魔力によるマッサージをされながら頭から足の先まで全てを洗われ、身も心も溶かされて悶絶させられていく。

 

「うく、ふぅ……ちょ、ほ、本当に……止め、あうあぁぁ」

 

『(可愛い……好き、大好き……)』

 

 シドが自分たちの手で喘ぎ、悶えていくその様子に彼を愛する女性陣達は内心で満足しながら、更に悶えさせようと励んでいく。止める者など誰もいないのであった。

 

「くぁぁ……」

 

 戦いで幾ら強くても男を愛する女が本気で行う色事に敵いようなどある筈も無い。

 

 というか無理やり抵抗すれば事態は悪化するのは目に見えているし、クレア達には負い目があるので甘んじて受け、骨抜きになるしかないシドであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 カゲノー領付近にある近くの廃村――シドは治安維持のために自分と獣人の部下も使って領地周辺の巡回をしているが、獣人達より廃村にそれなりの規模の盗賊団が住み着いたとの報告があったので深夜にて一緒に寝台で寝ているクレアに魔力で深い眠りへと誘ってから体に融合させているスライムを出しつつ、190程の獅子の兜と全身鎧というオーバーボディとして纏う。

 

 このオーバーボディを用いるようになったのは凄まじい速さで動いた時の風圧を防いだり、高い防御力など利点は色々とあるが……実のところ、オーバーボディーを維持するための魔力制御という修行や戦いを楽しむための対戦相手に対する自分の枷という目的が大きい。

 

 ともかく、背中付近をさらに変形させて翼の形に擬態させると魔力放出と共に周囲の魔力も制御しての飛行で廃村近くまで向かい、翼の擬態を止めて背中に戻す。

 

 廃村は深夜だというのに灯りがついている。どうやら商隊の襲撃に成功し、荷台を奪った事を祝っているようだ。

 

 シドは右掌からスライムの一部を切り離し、剣に擬態させてそれを持ちつつ、歩き出し……。

 

 

 

「随分と楽しそうだ、俺も祭りに参加させてくれ」

 

そして、盗賊団に対して告げると共に剣を振るう。

 

 

「なんだ、てめっ――」

 

 シドが剣を振るうと共に魔力によって飛ばされた斬撃が一人の首を刎ね飛ばす。

 

「さあ、もっと盛り上がっていこう」

 

『ふざけるなぁぁぁぁっ!!』

 

 シドの言葉に盗賊団はすぐさま襲撃を仕掛けたが……。

 

「しっ!!」

 

『うぎゃああああああっ!!』

 

 シドが魔力による斬撃放出を織り交ぜての超絶にして絶技の域に達した剣閃乱舞を披露し、盗賊団は碌に対応も出来ずに全員が斬滅された。

 

「さてと……」

 

 盗賊団を瞬く間に全滅させたシドは盗賊団が奪った荷台を探る。因みにこの荷物は全て控えさせている獣人達に回収させて私財とする。

 

 ともかく、シドは荷台を物色していると……。

 

 

 

「〈悪魔憑き〉か……」

 

 腐りながらも弱弱しく、蠢いている肉塊を見つけた。

 

 それは〈悪魔憑き〉――始めは普通の人間として生まれるが、ある日を境に腐り出し、やがて死に至るが教会はこの〈悪魔憑き〉を買い取り、浄化している。

 

 というか、基本的にこの世界での教会はどの王国にも匹敵する権力に権威があるので〈悪魔憑き〉に報告する義務があったりするので隠し通そうとすれば、例外なく裁かれる程に……これを悪用して他の貴族を追い落とそうとするなど色んな問題も起きていたりもした。

 

 しかして、シドは『獣人の国』にて『ディアボロス教団』と対峙して以来、何か裏があると察してはいた。

 

 

 

 それは……。

 

「今、治してやるからな」

 

 オーバーボディを解除しながら、スライムの一部を伸ばして肉塊に付着させると魔力を流し、肉塊の内部で荒れ狂っている魔力を制御し、馴染ませるようにして肉体の再生を始める。

 

 シドは獣人の国にてサラを始め、リリムと黒い痣が広がり始めた者や肉体が腐り始めた者の治療を複数回もやっている。

 

 基本、これらは〈悪魔憑き〉の症状であり共通して魔力が暴走した影響で肉体を破壊していくというもの。それを抑えてさえやれば治せるし、その後は飛躍的に実力が増すようになる。

 

 目の前の者のように酷い状態の治療はやった事は無いが、出来る限りの事をすれば……。

 

 

「エルフだったか……っといけない」

 

 肉塊は長い金髪にエルフとしての尖った耳、青い目を始めとして容姿端麗で年齢はシドと同じくらいだろう少女の姿に再生した。

 

 全裸だったのですぐさま、自分の体に融合させているスライムの一部を切り離し身体を覆う衣服に擬態させてエルフの少女に纏わせた。

 

 

 

「っ!? 私の体……嘘……」

 

 エルフの少女は肉塊になっても意識はあったのか、再生した自分の現状に動揺し混乱していた。

 

「上手くいって良かった。もうこれで〈悪魔憑き〉の症状は無くなったぞ」

 

「あ、貴方は……」

 

「俺はシド・カゲノーだ」

 

 そうしてエルフの少女と話せば、彼女にはもう行く当てもなく、それに自分の体を直してくれたシドに恩を返したいと希望した。

 

 肉塊になった程ならそれもそうだろうとシドは納得し、とりあえず保護する事を決めた。

 

 そして、彼女は自分がいた場所ではもう死んだも同然なので名前を付けて欲しいと言われ……。

 

「レイ……君の名前は今日からレイだ」

 

 ゼロから人生を始めるという事と金髪を始め、色白の肌がきらきらした印象を与えるので光と女性に付ける名前としてシドは光を意味する二つの要因からレイと名付けた。

 

「分かったわ、私はレイ……よろしく、シド」

 

「こちらこそ……(さて、上手く建前を考えないとな)」

 

 獣人たちはともかくとして、クレアたちにレイの事を説明し、納得してもらうだけの理由をレイと握手を交わしながら、思考を始めるシドであった……。

 

 

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