強さを窮めたくて   作:自堕落無力

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強さを窮める求道者、異世界へ
一話


 

 今年、カゲノー家の長男であるシドは6歳になり、今日よりカゲノー家の教育方針として魔剣士になるための訓練を始める事になった。

 

「シド、貴方の全力をお姉ちゃんに見せて」

 

 今年で8歳になっており、魔剣士としての訓練を受けながら子供の大会で優勝する程の実力者となっているカゲノー家の長女、クレアは父親であるオトンと対峙するシドに言う。

 

 クレアはシドが才気溢れ、将来は英雄になる事間違いなしな男である事を知っている。それは姉としての贔屓目などではない。

 

 何故なら、まだクレアが3歳で物心がようやくついた時、両親が目を離した隙に火にかけられた鍋に手を伸ばしてひっくり返した事がある。

 

 当然、クレアへと頭上から大量の熱湯が降り注ぎどうする事も出来なかった時、1歳のシドが襟首を掴んで後ろへと引いてくれた事で尻もちをつきながらも熱湯を回避する事が出来た。

 

 そして助けられたのは一度や二度では無い。窓から落ちそうになった時も野良犬に噛まれそうになった時も迷子になって泣いていた時もクレアを助けたのはシドであり、正に彼女にとってはヒーローでもあるのだ。

 

 更に彼女が魔剣士の訓練を始め、父親との稽古を眺めながら姿勢の崩れなど的確な指摘やシド自身、魔力制御に才能があってその伝授、そして魔力なしでのカゲノー家を始めミドガル王国所属の魔剣士たちの流派である王都ブシン流を使った組稽古の相手を務めてくれ、しかも自分よりはるかに強い。

 

 

 姉弟だけの秘密だと言いながら、シドはクレアが魔剣士として強くなるのに協力してくれこの結果、子供の大会で優勝さえ出来たのである。

 

 クレアにとってシドは一番大切な弟であり、男である。

 

 そうして……。

 

 

 

「分かった、本気を出すよお姉ちゃん」

 

「ふふ、遠慮なく来いシド」

 

 クレアの声に応えるシドに対し、オトンは微笑ましく思いながらかかってくるように促し……。

 

 

 

「すぅ……ふっ!!」

 

「っ!!」

 

 

 

 深呼吸をし、吐いたと同時、濃密にして神秘的なまでの魔力の輝きをシドが纏い、それは緻密に彼が手にする木剣へと伝導される。オトンは歴戦の魔剣士としての勘から瞬時に本気となりながらもシドの姿は掻き消え……。

 

 

「はあっ!!」

 

「うぐああっ!!」

 

 シドが振り下ろした雷轟を思わせる程の剣閃をオトンは防ごうとしたが、敵わずに彼の木剣を粉砕しながら地面へと倒れさせたのであった。

 

「これが僕の本気だよ、お姉ちゃん」

 

「凄い……本当に凄いじゃないシドっ。流石は私の自慢の弟だわ」

 

「んぅ、えへへありがとう。お姉ちゃん」

 

 クレアはシドへと駆け寄り、シドは木剣を地面に捨てるとクレアの抱擁に応じて抱き締め返しつつ、クレアの可愛がりを受ける。

 

 それは勿論、嫌われるよりは家族故に好かれた方が良いし、何より危なっかしく勝気なところはあるがそれでも美人で自分を積極的に可愛がってくれる姉のクレアは転生前の世界ではいなかったのもあってシドにとって大切な存在だ。

 

「お姉ちゃん、もっともっと頑張ってシドの姉として誇れるような強い魔剣士になるからね」

 

「僕だってお姉ちゃんの弟として誇れるような強い魔剣士になるよ」

 

「ふふ、大好きよシド」

 

「僕も大好きだよ、お姉ちゃん」

 

 クレアとシドは更に姉弟の仲を深めていくのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 異世界に転生し、シド・カゲノーとなった彼は転生前の世界では成しえなかった強さの探求を今度こそ成功させようと励んでいた。

 

 この世界にて重要な『魔力』の扱いの探求が主で魔力を圧縮化し、解放すれば倍近く勢いが増加。つまりは瞬間的に出力を上げる方法を見つけた。物体への魔力伝導はどうしてもロスがあるのでそれを無くすべく、緻密に伝導する方法も見つけた。

 

 更に大気中に漂う魔力の操作も追及しているし、細胞レベルで魔力による活性化をして戦闘向けに肉体を成長させる改造技術も身に付けたりなどだ。

 

 剣術においてもカゲノー家及びミドガル王国所属の魔剣士の流派である王都ブシン流の型を身に付けながら、それをひたすらに繰り返して極め続けているし剣術での一番の基礎である剣の振り下ろしも追及していた。

 

 

 

 転生前の世界で習得していた『空手』の技術も勿論、探求している。

 

 しかし、シドは訓練だけに明け暮れている訳では無く……。

 

「さあ、始めよう。勝つのは俺だがな」

 

『舐めるなぁぁぁっ!!』

 

 夜中にて密かにカゲノー男爵家の領地近くの森に忍び込んだ七人の魔剣士であり、警備が厳重な貴族や大商会ばかりを襲って国を跨いで一億ゼニ―の懸賞金を懸けられたスカーフェイス盗賊団の居場所を魔力による感知で突き止め、シドは両拳を構えて勝負を挑む。

 

 そして、極限にまで体内で圧縮した魔力を解放し、凄まじい勢いへと増大した魔力を緻密に制御して五体全てに巡らせる事で超絶的な身体強化を果たしつつ、超絶的な武威を手にした。

 

「はあっ!!」

 

 縦横無尽に動き回りながら絶的な武威を込めた拳撃と蹴撃による流麗な闘舞を披露し……

 

「言ったろ、俺の勝ちだ」

 

「あがっ!! へへ……とんでもないガキがいやがった……」

 

 盗賊団を次々に破砕して肉塊に変えながら、最後はスカーフェイス盗賊団の頭であるスカーフェイスの胸を拳撃で打ち抜き、死亡させた。

 

「お前たちこそ中々、歯応えあったぞ。感謝する、お前たちのお陰で俺は強くなれる」

 

 そうしてシドはこの戦闘による経験と勝利を強さのための勲章へと変えるのだった……そう、強くなることにおいては鍛錬だけでなく、実戦も必要でシドは夜中、領地近くを巡回する事で実戦相手を探していたりもする。

 

 治安維持にも繋がるので一石二鳥なのだった……。

 

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