強さを窮めたくて   作:自堕落無力

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二十一話

 

 辺境伯として広大な領土を有し、更に『獣人の国』の外交官として獣人の部族と密接な関係にあるシド・カゲノーは当然、内政もしっかりとやっているし巡回など領土内の住民たちとの交流も欠かしていない。

 

 更にユキメ達や子爵として領土を治めていたオルバ、獣人とも協力しながら自分の領土、更にはミドガル王国と獣人の国も含めて発展していくように行動していく。

 

「ううーむ、父さんやることが無いなぁ」

 

「だったら、やること聞いて仕事しろやぁっ、このハゲぇぇっ!!」

 

「ぎゃぶっ!?」

 

 シドが全部、自分で領主としての仕事をするし頼れる側近もいる事もあって、シドの父親であるオトンはやることが無いと屋敷でくつろいでばかりである。

 

 そんな夫の自堕落気味な様子に彼の妻でシドの母親であるオカンはキレて殴り飛ばした。

 

 ミドガル王国において王だけでなく、アイリスとアレクシアとも親しく、もっと言えばオリアナ王国、獣人の国とも深い関係であり、そうした人脈に地位、魔剣士としての実力も絶大なものであり、領主としての手腕も凄まじいものであるシドは当然……。

 

「どうか、よろしくお願いします」

 

「ああ、任せろ」

 

 他のミドガル王国の貴族からも注目されていて、お近づきになり良い関係を結ぼうとする者が現れ、そうした者達をシドは快く受け入れた。

 

 しかして、貴族の世界というのは皆、仲良くし合うようなそんな甘いものではない。

 

 

 

 

「本当に目障りだな、あのガキは」

 

「消えてもらいましょう」

 

「出る杭を打つのが道理ですからな」

 

「心は痛むが……」

 

 若くして武勇に知、人脈のどれもが優れているシドを厄介な存在だと認識した貴族の数人が密会を交わしながら、シドを暗殺する計画を話し合っていた。

 

 そう、貴族の世界は己が権威を守るためや更なる権威を良くするがため、時に血で血を争うような事態へと発展するのだ。

 

 しかし、次の瞬間……彼らが密会していた部屋の扉が切断されて床へと落ちる。

 

「これはこれは皆さん……こんばんは。しかし、残念だ。こっちとしては仲良くやっていきたかったのに俺を殺そうという算段を立てるなんて」

 

 シド・カゲノーが扉の無くなった部屋へと足を踏み入れながら、自分を殺そうと算段を立てた貴族へ声をかけた。

 

「ば、馬鹿な……どうして……」

 

「お前らの動きや考えなんて筒抜けなんだよ。俺を舐め過ぎだ」

 

 シドはスライムを利用した変装での潜入、ユキメ達自分の仲間の力も借りての諜報など情報収集や自分の敵となる可能性のある者に対しての調査を欠かしていないのだ。

 

「だが、せめて魔剣士として誇りある死はくれてやろう。先手は譲ってやる」

 

『舐めるなぁぁぁぁっ!!』

 

 剣を自然体で構えつつ、貴族たちへ言葉をかけるシド。それに剣を抜き、魔力を噴出しながら貴族たちはシドへと挑んでいく。

 

 貴族たちによる剣閃が軌跡を空間に刻みながら、シドを蹂躙しようと迫り……。

 

 

 

「ふっ!!」

 

 己に迫る剣閃をシドは自身の剣による剣閃を縦横無尽、変幻自在な軌跡を空間へと刻みながら舞い踊らせる。

 

『っ!!』

 

 シドの剣閃は貴族たちの剣閃を呑み込み、剣すら切断しながら貴族たちをも切り裂き、あるいは貫いていく。

 

『(美しい)』

 

 貴族たちはその剣閃の美しさに魔剣士として目を惹かれながら、生を終えていくのだった。

 

 

 

 

「本当、敵ってのはどこでもいるよな」

 

 シドは求道者として鍛錬するのもそうだが、実戦も積み重ねていた。

 

 なにせ彼の敵というのは自分の地位を命ごと奪おうとする貴族、領土を荒らそうとする盗賊などの犯罪者、ディアボロス教団など多くいて、相手に事欠かなかった。

 

「まあ、俺にとってはありがたい事だがな」

 

 シドの場合、肉体改造をしているのもあって一時間も眠れば十分なショートスリーパーであるし、絶大かつ超高密度な魔力を巡らせる事による超自然回復と尋常ならざるスタミナをもっている。

 

 なので夜中、スライムを翼、噴出口に変化させる事で超高速飛行が可能というのもあって自分の敵を始末しにいったりもしているのだ。

 

 

 

 

「後、もう一つ行くか……」

 

 そうして、シドは時間的に最後とディアボロス教団の活動拠点へと向かう。

 

 とはいってもその活動拠点にいるのは末端であるが……。

 

 

 

 

 

「分かっていたが、弱いな」

 

 そんな事を呟きながらスライムによって黒獅子の鎧騎士のオーバーボディとなっているシドは戦舞を披露しながら、ディアボロス教団の構成員たちを破壊していく。

 

 それぞれに対して、戦闘行動を行う瞬間だけ魔力を全身に巡らせる事で脳の機能も身体強度に身体能力も絶大に強化した状態で手足を振るう事で破壊の打撃を炸裂させるのだ。

 

 一人倒せば魔力強化を解き、また戦闘行動に入る時に強化をする繰り返し。必要最低限にして効率的な強化により、肉体への負担を極限に抑えているのだ。

 

 あっという間に全滅させると……。

 

 

 

「では、やってみます」

 

「頑張れ」

 

 シドの敵となる者に対しての監視、調査、敵の誘導や逃亡者の排除、後始末などシドの戦闘を支援する事をユキメ達、『シャドウ・ガーディアン』は目的としていた。

 

 当然、〈悪魔憑き〉としての症状が出てしまった者の治療もそれに含まれている。今回はイプシロンことエレナが治療技術を学ぶべく、シドに同行していた。

 

 悪魔憑きとして牢屋に収監されていた者へとイプシロンは近づき……そうして、自分の魔力によって干渉し、荒れ狂っている魔力を整え始める。

 

 

 

「っ、こ、これは!?」

 

 老いさらばえた老婆のような姿になっていた〈悪魔憑き〉は長い白髪を後ろに結い、右目を閉じていながらも凛々しい美貌、褐色肌でスタイルも抜群な妙齢のダークエルフの女性になった。

 

「驚くのも無理はない。説明してやろう……良いか」

 

 そうして、シドはそのダークエルフに説明してやり……。

 

「この命、貴方に捧げましょう……シド様」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

 ダークエルフは『シャドウ・ガーディアン』に加入する事を決めた。

 

 絶望的な状態から助けられた事ももちろんあるが、なにより『剣の国』と呼ばれているベガルタ帝国の元高位軍人としての観察能力でシドの〈悪魔憑き〉を救い、『ディアボロス教団』を滅ぼすという壮絶なる意思の強さと熱量、あまりに実力が違い過ぎるがゆえに感じ取れない絶大なる実力の高さからシドを主として尽くす事を決めたのだ。

 

 そうして、この日ダークエルフの女性ことラムダが『シャドウ・ガーディアン』に加わったのであった……。

 

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