シド・カゲノーは近々ミドガル王国内の領土で開催される大規模の魔剣士による武闘大会に参加する。
『ブシン祭』には劣るがそれでも実力者が勢揃いするため、大会に向けての鍛錬にも熱を入れていた。
それが故に身も心も鍛え抜こうと環境の厳しい地で鍛錬するがため、猛毒にして視界が効きにくい濃霧が漂う『深淵の森』に足を踏み入れた。
すると彼の超絶的なる魔力探知が強大な存在が潜んでいる事を掴んだので挑発してみれば、何と巨大な龍がその姿を現したのだ。
相手が今まで出会った者たちとは隔絶した実力を有する事を感じながら、シドは龍へと戦いを挑む。
「はああああっ!!」
「おおおッ!!」
そうして、瞬く間の間に何十、何百、何千……瞬く間の間に濃霧が漂う『深淵の森』内のあらゆるものが破壊されていく。
『深淵の森』の全域を縦横無尽に動き回りながら、シドが武威を振るい、霧の龍が暴威を振るう事による激突と応酬。その余波でだ。
「ははははっ、良いぞぉっ!!」
「そちらこそ、良くぞ人の身でここまで……お主なら、あるいは」
シド・カゲノーの今の姿はオーバーボディではなく、本来の身長にスライムを黒獅子の騎士鎧として武装したもの。つまりは本気の戦闘武装であり、今、使っているのは徒手空拳という、やはり本気の戦闘スタイルである。
そうして一瞬ではなく、凝縮した魔力を爆発させて解放し制御しながら全身に巡らせる事で身体能力も脳の処理速度、感覚を超絶的な域へ強化していた。
霧の龍へと積極的に迫りながら鋭く流麗な舞いの勢いに織り交ぜた拳撃や蹴撃を放つ。その一つ一つに巡らせている魔力を打撃を放つ部位に凝集して込め、そして炸裂の瞬間に開放する。
「うぐぅおおっ!!」
シドが繰り出すだけは炸裂部位から全身へと重く響く性質を有しているため、その威力は絶大。
「くっ!!」
「ぬうんっ!!」
霧の龍が繰り出す爪や尻尾の強靭なる一撃に対してシドは打撃を繰り出して捌く。
魔力伝導に優れている事とシドの魔力の制御技術もあって彼の纏うスライムの武装が威力を完全に防ぐ堅さであると同時に液状であるため、衝撃を受け流しているから出来ている。
そして、或いはその身をずらす事で巧妙に回避すらもした。
そうして、現実の時間としては短いがシドと霧の龍の感覚では何万をも超える激突と応酬を繰り広げ……。
「ふっ……これを凌いでみよ」
「本気を出すか……」
霧の龍が体勢を後ろへと引きながら、口を開けば魔力の光が集まっていく。
シドは本気の一撃が来る事を確信し、自分もまた魔力を凝縮しながら練り上げると共に拳を構え……。
「おおおっ!!」
霧の龍が口内より魔力の閃光を放った。
「はああああああああっ!!」
迫りくるそれにシドは全力を込めた右の拳撃と共に閃光を放つ。
そうして、二つの閃光はぶつかり合い……。
「ぐぅああああああっ!!」
霧の龍の一撃が押し負けながら、閃光と衝撃波が霧の龍を呑み込む。
「ぐぅ、お、おおぉぉぉ……」
「流石にタフだな」
ぼろぼろの身だが生きている霧の龍に対し、シドは告げる。
「ふっ……龍にありきたりな死は許されん。いつか、私を殺してくれ……その契約を果たすならお前とお前の関係者に良い物をやろう」
「良いだろう」
霧の龍はそう言い、こうして『深淵の森』を抜けた先にある今は『幻の都』と呼ばれ伝説のものとされた『古都 アレクサンドリア』をシドに与えた。
「良い場所じゃないか」
アレクサンドリアは古い時代にあったにしては訓練所や研究や開発室など様々な部署があり、カカオやコーヒーノキの広大な農園まであった。
この世界に転生する前、父親の趣味の影響でコーヒーに関してはかなり詳しいシドは喜びながら、此処を『シャドウ・ガーディアン』の本拠地にする事を決めたのであった……。