夜空の下、ベガルタ帝国のマドリーにベガルタ帝国において一番重要な立場の存在が兵士と共に複数の者が待ち構えているところへ歩く。
「……」
短く刈り上げた金髪、その一部が変色していて左目付近の一部が異形のようになっていて両瞳が赤、筋骨逞しいその身を鎧で包んだ大男、『闘剣嵐武』の二つ名を有するベガルタ七武剣の一人、セルゲイ・ゴーマンだった。
「報告は受けていたが、まさか卿が本当に生きていたとはな、それにアンネローゼ卿も一緒とは」
「卿を殺すまでは死んでも死にきれるものではないのでね」
「まさか、貴方こそが悪だったとは……私の剣は貴方のようなものを斬るためにある」
セルゲイの前にいたのは始末し損ねたカレンとカレンの死を真面目に捜査し続けたため、始末しようとしたが身を隠したので探していたアンネローゼの二人。
「ふん、そのために俺を誘い出すとは……私を殺せるつもりか?」
そう、セルゲイの元に密書がどういった方法によるものか届き、それにカレン・フォン・ヘルツォークの名とアンネローゼ・フシアナスの名が書かれていて虐殺を証明する証拠の存在まで書き連ねてあった。
真偽を確かめる必要があるし、ヘルツォーク男爵家を謀殺した事が世間に知られると自分のベガルタ七武剣の名は地に堕ちるし、ディアボロス教団にも見限られてしまう。
故にどのみち、此処に来るしか無かったのだ。
「つもりじゃないぞ、セルゲイ・ゴーマン。卿にはここで死んでいただく」
『うぎゃあっ!?』
その声と共に闇夜の中から複数の者が現れ、セルゲイが連れてきた兵士を屠っていく。
兵士を屠ったのは『シャドウ・ガーディアン』の幹部的存在としての恰好であるスライムボディースーツを纏い、スライムによる仮面を被ったシューニャ(ユキメ)、アルファ(レイ)、ベータ(フミカ)、ガンマ(アイム)、デルタ(サラ)、イプシロン(エレナ)、ゼータ(リリム)、イータ(マイ)だ。
「ぬっ、何者だ貴様らっ!?」
「我等はシャドウ・ガーディアン。影に潜み、動く悪を影に潜み、屠る守護者なり」
スライムによる黒い獅子の仮面と全身鎧を纏ったシドが姿を見せ、セルゲイへ告げた。
「冥途の土産代わりに名乗ろう、我こそ首領のシャドウだ」
「ふっ、そうか貴様らこそ最近、教団に対抗しているという……ならば、貴様らも始末するまでっ!!」
そうして兵士を全滅させられたセルゲイは懐から小型の機械――リモコンを取り出し、スイッチを押した。
『ギャアオオオッ!!』
少しすると十を超えるマラクの群れが何処からともなく現れた。
「ほう、このあたりにいたマラクは全滅させたが、どこかで養殖していたのか」
「それも貴様だったのか、ますます備えていて良かったな。安心しろ、貴様は我が剣で殺してやるぞ、シャドウッ!!」
シドの問いに応じながら、大剣を抜いたセルゲイが襲い掛かるとシドは右掌からすらいむによる剣を出現させると瞬間、闇夜の中で二人が縦横無尽に動き回り、凄まじい剣閃乱舞の応酬を繰り広げる。
「流石はベガルタ七武剣にして『ナイツ・オブ・ラウンズ』の第十席、少しはやるようだな」
「そんな事まで……まさか、貴様のような者がいようとはな……(ば、馬鹿な……これ程の……)」
幾度の剣撃の応酬の中でセルゲイは大剣を使う戦闘スタイルに反して正確さと分析に優れたそれにより、シドの実力が自分を遥かに上回っているのを理解した。
「こんな程度か」
「ごうっ!? ふ、ふははは、奥の手を使う羽目になろうとはなぁっ!!」
凄まじい剣撃の応酬の中、シドの壮絶な剣閃がセルゲイの剣閃を擦り抜けるようにして彼の身体を深々と切り裂いた。セルゲイはよろめきながらも笑い出し……。
「うおおおおっ!!」
スイッチによって、マラクの一体を呼び寄せるとその肉を喰らい始める。そうして魔力が高まると共にその身は竜人ともいうべきものに変化した。
「怪物の力には怪物の力を使うまでっ!!」
「そういう事なら、我も使うとしよう。お前達、教団が好きな魔人の力をな……ふっ!!」
そうして、シドは日々、スライムを通してではなく肉体に直接取り込み、馴染ませていき、完全制御するのに至った『ディアボロス細胞』の力を完全開放する。
仮面に隠されているが、シドの髪は白く染まり、目の周りは黒く、そして瞳は赤く染まった。
「ぁ、ぁぁぁぁ……」
静謐だが絶対的な死を予感させるシドの超絶的な魔力の圧にセルゲイは恐怖した。
「さあ、来るが良い」
「っ、ぐおおおおおっ!!」
シドの誘いにセルゲイは恐怖しながらも突撃し……。
空間にすら、切断の軌跡を刻む超絶なる一閃がセルゲイに炸裂し、直後にセルゲイを消滅させた。
「帰るぞ」
『はっ、我らが主様』
それに興味を持たず、シドはマラクを殲滅したユキメ達の元へと向かうのであった……。