この世界において『無法都市』という巨大な都市が存在する。
スラム街の規模が都市に拡大しているが故にこの都市においては『法』は機能せず、そういった概念も存在しない。
代わりにあるのは『弱肉強食』という概念。そう、力さえあればなんでも得る事が出来るし、奪っても許される。逆に弱ければ全てを奪われ、命すらも失う事にもなるのだ。
故にここには曰く付きの犯罪者やならず者が多く集まってくる。それなのに都市として成り立っているのは纏め上げる勢力が存在するからである。
その勢力はこの都市にて象徴の如く、摩天楼を建設しており、一つは紅の塔を拠点としている『吸血鬼』の勢力であり、リーダーは吸血鬼の女王に仕えている貴族、クリムゾン。
もう一つは『黒の塔』を拠点としていて、ならず者の部下たちをやはり、力で纏め上げている褐色肌で長身であり筋骨逞しい巨漢であり、荒々しい雰囲気を隠しもしない『暴君』と呼ばれし者、ジャガーノートだ。
「一度、大きく無法都市の勢力を塗り替えるか」
無法都市をシドは無視していない。力がまかり通るこの都市には戦力となる者が多く眠っているからだ。
それを上手く纏め上げ、使う事が出来れば『ディアボロス教団』との戦いにおいて大きな戦力になるし元は犯罪者なら、汚い仕事をさせてから躊躇いなく切り捨てられるし、囮にも使えると利用しがいもある。
よって、ゆっくりとシドは無法都市にてなるべくパワーバランスを大きく崩さないように気を付けつつ、勢力を築く。
そして、十五歳というミドガル王国の魔剣士学園に通う事になる日が近づいてきた事で大きくパワーバランスを変える事にした。
「黒は俺達にこそ相応しい、そう思わないか?」
『まさしく』
そう、『黒の塔』を制圧しジャガーノートらを従えるようにするのだ。
決めるとシドの行動は早く……。
「ジャガノート、お前を捩じ伏せに来た」
「へっ、ふざけた事を言いやがるじゃねえかガキがぁっ!!」
スライムによる黒獅子の戦士の姿となって『黒の塔』へと乗り込み、ジャガーノートの部下たちを死なない程度に倒していきながら進み、ジャガーノートの元に辿り着くと堂々と宣言する。
ジャガーノートは激昂のままに魔力を激しく昂ぶらせると巨大な鉈の如き鉄塊を持ってシドへと突撃する。
「死にやがれぇっ!!」
「この程度じゃ無理だ」
ジャガーノートの狂暴な暴威の如き斬撃を手を軽く振るうだけシドはいなした。
「くそがあっ!!」
ジャガーノートは更に斬撃を繰り出し、技術知らずに空いた手で拳撃や蹴り等暴力という暴力をシドに放っていく。
「中々の力だな……」
「なっ!? このっ!!」
ジャガーノートの攻撃をシドは僅かな動作でいなし、あるいは回避する。まったく攻撃が当たらない事にジャガーノートは驚愕しつつも全力の斬撃を繰り出し……。
「ふっ!!」
「う、そだろ……」
シドは僅かに手を動かすだけでジャガーノートの鉄塊を折る。
「これが俺とお前の力の差だ」
「がはあっ!?」
シドは告げると同時に拳撃を放ち、ジャガーノートを大きく吹っ飛ばして転がらせたのであった。
「さて、この無法都市の掟通りに俺に従ってもらおう。安心しろ、ちゃんとお前たちを楽しませてやる。納得いかないなら挑んできても構わん」
「……ふん、まあ今は従っておいてやるよ」
こうして、シドは無法都市にて『黒の塔』の勢力を取り込んで見せたのであった……。