三十六話
ミドガル王国においては15歳になった貴族には学園に通う義務が存在する。
爵位の大小は勿論、関係無い。必ず貴族は魔剣士学園の生徒として通うか、あるいは兼用である学術学園の方に通うかを選ばなければならないのだ。
通う期間は3年間である。
「まさか、また学生生活をする事になるとはな」
転生者であるシドはまた、3年間の学生生活をしなければならない事に苦笑した。
転生前の学生生活との違いはまず、幾つかある戦闘者としての教育を受ける事くらいだ。転生前ではあくまで趣味や部活動の範囲であったのだから……。
「今回はもっと充実した生活も送れるがな」
そう、今の彼にはミドガル王国の王女であるアイリスにアレクシア、オリアナ王国の王女であるローズという婚約者がいる。
更には翌年には学園を卒業する事になるクレアや自分に尽くしてくれているユキメ達、『シャドウ・ガーディアン』の女性陣と愛している者たちがたくさんいるのだ。
そして、何より滅ぼすべき敵である『ディアボロス教団』もいるのだから、彼にとってはとても充実している転生生活であり、素晴らしい異世界であった。
「それじゃあ、父さん。俺がいない間の経営はよろしく。必要な事は書いてあるし、引継ぎやらいざという時の連絡手段も用意してあるから」
自分の領地を出てミドガル王国の王都へと出発する日である今日、シドは母親とともに見送りに来ている父親に対してそう言った。
「おお、父さんはお前の頑張りを無駄にしないよう頑張るよ……もう、隠居染みた生活は終わりかぁ」
「なに、情けないこと言ってんだこらぁぁっ!!」
「ぐべぇっ、痛いよ母さんっ!!」
「やかましいわ、この禿ぇぇぇっ!!」
「ぎゃべええ、もっと痛いよー」
「このやり取りもしばらく見れないのは寂しいな」
情けない本音を溜息と共に吐きだしたオトンをオカンはしばき、更にマウントを取って殴り出した。そうしたいつもの如きやり取りを見たシドは苦笑しながら、呟いた。
ともかく、そうしてミドガル王国王都へと出発し……。
「シドー、待っていたわよ。これから楽しみね」
「いらっしゃい、貴方」
「学園生活頑張りましょうね、いっぱい支えるから」
「勿論、私もです。シド君」
「ああ、皆よろしく」
クレアは勿論、アイリスにアレクシア、ローズに出迎えられつつ一人一人の抱擁と口づけに応じるシド。
まずは学生寮にて用意されている自分の部屋への荷運びを始める。
因みにシドが用いる学生寮は学園の一番近い場所にある豪華な物であり、爵位の高い者や優勝な能力を評価されている特待生にのみ使用を許されている寮であった。
ともかく、こうしてシドの2度目の学生生活は始まるのであった……。