シド・カゲノーはミドガル王国王都へと入ろうとした時、日々鍛錬によって鍛えている能力の一つである魔力感知によって妙な動きを把握したので向かってみればなんと、盗賊たちにより、ミドガル王国の同盟国であるオリアナ王国の王女、ローズ・オリアナが攫われようとした場面に出くわした。
そうしてローズを助け、二国間の同盟関係に亀裂が生じるところであったのを防いだシドは……。
「我が娘を救っていただき、本当に感謝します。シド・カゲノー殿……貴方は我が国において一生の恩人だ」
「この恩、必ず返させていただきます」
ローズを公務で訪れていたオリアナ王国の大使館へと送り届け、事情を説明するとオリアナ王国の国王にしてローズの父親であるラファエロにローズの母親にして王妃であるレイナから深い感謝の籠った礼と言葉を贈られた。
「丁寧な礼をありがとうございます。ですが自分が間に合ったのは偶然でミドガル王国の魔剣士になるものとして当然の事をしただけですのであまり、気負わないでください。とにかく、間に合って良かったです」
シドは謙遜しながら、言う。
「おお、若いのになんと立派な……素晴らしいご子息をお持ちですな、カゲノー殿」
「は、はい。私にはもったいない程で……」
ラファエロがシドの父親であるオトン・カゲノーへと言えば、急にオリアナ王国にもてなされる事、オリアナ王国の王族と重鎮と関わっている事に戸惑い、緊張していた。
「シド君、とっても強かったです。将来はこの国、いや世界で最強の魔剣士になれそうですね」
「ふふ、そうよ。シドは私の自慢の弟なんだから」
「それは理由になってないよ、姉さん」
もてなされながらシドとクレアはローズと年が近い者同士で会話をしていた。因みにシドはローズに対して彼女の方が年上で王族なのだからと言いやすい呼び方で良いと言えば、君呼びになっていた。
「ねぇ、シド君……私も貴方みたいに美しい剣を振るう事が出来ますか?」
「挫けず、諦めずに努力をすれば必ず……魔剣士の道は行き先も果ての見えない大海を進むようなもの。進み続ける事が出来れば幾らでも上達しますよ」
「じゃあ、頑張ります」
「はい、頑張ってください」
ローズの言葉に応じると固い決意で頷いたので応援した。そうしてシドはオリアナ王国に招待されたり、カゲノー家領地にローズ側が訪れたりなどで交流をするようになっていったのだった……。
シドに対し感謝を示したのはオリアナ王国だけではない。
「シド・カゲノー……この度の事、本当に良くやってくれた。何かが違えばオリアナ王国との同盟に亀裂が入るところだっただろう……感謝する」
自国でみすみす同盟国の王女が盗賊にさらわれるという大失態を晒すのを阻止したシドに対し、その功績を称えて勲章が与えられることになり、勲章式にてクラウスがシドへと感謝を示す。
「光栄です」
そうしてシドは勲章を与えられると共にカゲノー家の地位は子爵に昇格したのである。
「シドさんは我が国においても英雄です。一大事になるところを阻止していただきありがとうございました」
「これは私達の所に来るのも早くなりそうね。ともかく、ありがとう」
「お役に立つ事が出来て光栄です」
アイリスとアレクシアからも感謝と賛辞を贈られる。そうしてこの事を切っ掛けにカゲノー家の名も上がっており……。
「私はクリスティーナ・ホープです。我が国、期待の英雄にお会いできて光栄です」
「ニコレッタ・マルケスです。同じくお会いできて光栄です」
「こちらこそです。クリスティーナ嬢、ニコレッタ嬢」
大きな宴会に招待されるようになっていき、それを通じて公爵の地位を有するホープ家の令嬢であり、薄赤髪の少女でシドと同年齢のクリスティーナや侯爵家の地位を有するマルケス家でクレアより一歳下の令嬢、ダークブラウンの長髪の少女であるニコレッタと交流をするようになったのだった……。
二
『魔力』は物質によって伝導のしやすさが違う。伝導率の高い金属、ミスリルですら全部は伝導せず、ロスが出てしまう。
しかもミスリルは当たり前だが、遥かに貴重かつ高価だ。子爵家であるカゲノー家では普通の方法では手に入れる事すらできない。
しかし……。
「うん、合格だ。これで全力で戦るようになったぞ」
シドはミスリルより魔力が伝導する物を見つけた。正確には生物だが……。
その生物とは液体で構成された魔法生物にして魔力を使って形を変えて動き回るスライムだ。
シドは捕らえて自分の魔力を流して形状も大きさも可変自在、魔力の伝導にもほとんどロスが生じないのを把握するとスライムに自分の魔力を餌とする事で調教した。
複数のスライムを融合させたスライムに触れつつ、一部を分離させると魔力を流して剣に変化できるのを確認。シドはこれ以上ない装備となるものを手に入れた事を喜んだのであった……。