六十話
今年も夏の時期は訪れ、特に何の異常も起きずに聖地リンドブルムでは『女神の試練』は開催日を数日後に控えていた。
山を切り抜いたかのような地形に壮麗な聖教会が建っており、その下には城を基調とした街並みが広がっているのだ。
街の中心を通るメインストリートにはそのまま聖教会へと辿り着くための長い階段があり、その往来は観光客で溢れている。
観光客は魔人の左腕が封印された聖地の巡礼であったり、聖教会に祈りを捧げに来た信者たちであったり、特に多いのはリンドブルムは温泉の名地のため、その温泉をへと入浴し、楽しみに来る者達である。
そんな訳で確かに『女神の試練』の開催日は観光客の数は増すが、普通の日でもリンドブルムへの観光客は多いのである。
しかして、『女神の試練』が開催されるリンドブルムの聖教会に良くない噂が流れていた。
大司教であるドレイクが信者たちなどから集められている寄付金に手を付けたり、賄賂を受け取ったりなど私欲に溺れていると……。
「ドレイクを大司教の座から落とし、殺しにかかるな」
「ですか……」
「ああ、元々ある程度のところで切り落とす為か、元々、こういう時のために用意していたスケープゴートだったんだろう……あるいはドレイクが図に乗ってきたというのもあるんだろうが」
聖教会内において異端審問を務める『テンプラー』の元へとシドは訪れ、テンプラーのトップであるウィクトーリアと彼女の部屋で会話をする。
ウィクトーリアは『シャドウ・ガーディアン』においては『聖教会』へと潜り込みつつ、異端審問として『聖教会』内の裏に潜んで暗躍している『ディアボロス教団』の同行を探りつつ、力を削ぐという重要な役割を担っている。
今回の噂はディアボロス教団がドレイクを排除し、彼の大司教の座をもっと教団に近い者が手にして動くためのものであるとシドは推測している。
力を削がれつつある事でもっと聖教会を動けるようにするためであるし、あるいは他の幹部たちなどに対し、優位的な立場を得ようという勢力争いというのもあるのだろう。
「結局のところ、権力は独占しようとすると碌な事にならないという事だな。これは反面教師にするべき事だ」
「ふふ、流石はシド様……慢心も油断もしないその在り方、素敵です」
「ありがとう、ウィクトーリア……さて、リンドブルム内では頼むぞ」
「勿論です」
リンドブルムでの作戦を話し合いながら、ウィクトーリアへと口づけし、そうして深く男女としての交流をし、心身の繋がりを強くしていったのだった……。