強さを窮めたくて   作:自堕落無力

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八十六話

 

 ミドガル王国王都内で開催されている国内外の魔剣士達が集まり、戦う武闘大会の『ブシン祭』は今日より、いよいよ『本戦』が行われる。

 

 そして、『本戦』は国内の者もそうだが、国外よりブシン祭を見に来る観光客なども含めた者が多く集まる事で、より注目を受けていた。

 

 何故ならミドガル王国だけでなく大陸の様々な国にまでその武名を広げている凄まじい魔剣士であるシド・カゲノーが出場するからである。

 

「シド・カゲノー選手、時間です」

 

「はい……さて、行くか」

 

 学園枠での出場であるシド・カゲノーは指定された時間より少し早く闘技場へと行き、選手控室にて瞑想しつつ、体内中に魔力を巡らせていく事で戦闘準備をしていた。

 

 そうして係員からノックと共に声がかけられたので瞑想を止め、立ち上がって壁に立てかけていた鞘に納めた剣を手に取り、腰に帯剣すると控え室から出て試合場へと向かう。

 

 

 

「あんたがシド・カゲノーか……ああ、次元が違うってのが分かりやがるぜ」

 

「どうも(クイントンさんだ)」

 

 試合場に現れたシドに声をかけたのは対戦相手であり、禿頭に大柄な体格で筋骨逞しい体、右目に眼帯をしたクイントンであった。

 

 得物は大剣である。

 

 そんな彼はシドを見て息を呑みつつ、言葉をかけたがシドはクイントンと会うのは初めてではない。

 

 修行の時に幾度も小国内などで開催された武闘大会にスライムによる変装も含めて参加しているので何度か、シドはクイントンと戦っていたりするのである。

 

 

 

 クイントンからの言葉に応じつつ、内心、久しぶりだなと思っているシド。

 

 ともかく、大剣を構えるクイントンと同じようにシドは鞘から剣を抜いて構える。

 

「クイントン対シド・カゲノー」

 

  二人が構えた事でそれまで賑やかだった観客たちの声も雰囲気も静まり、そうして審判が選手の名を呼ぶ。

 

 

 

「試合開始!!」

 

 試合開始を告げると……。

 

「うおおおっ!!」

 

 クイントンは激しく魔力を噴出しながら、凄まじい速度でシドへと突撃し、勢いのままに振り上げた大剣を振り下ろし、強烈なる剣閃をシドへと放った。

 

「よっと」

 

「ちいっ!!」

 

 シドはクイントンの剣閃に対し剣を振りつつ、そうして剣が触れ合った刹那の瞬間に剣の向きを変える事でクイントンの剣閃を明後日の方向へ流す。

 

 クイントンは力をいなされ、体勢を乱されてしまうもすぐに態勢を戻してシドへと横一線の剣閃を放つ。

 

 

 

 当然、これも受け流すとクイントンは更に剣を振るう。

 

 

 

「では、こちらの番です」

 

 シドはその剣の一撃すらも捌くとクイントンへと告げる。彼は実力差がある相手に対しては三手だけ譲る事にしているのだ。そして、クイントンはその三手を終えてしまった。

 

 よって……。

 

「うぐあああっ!!」

 

 あまりにも流麗で素早いために三手である筈なのに一手としか見えない剣閃の舞によってクイントンは体勢を崩されながら、剣撃を受けてしまい試合場に倒れてしまう。

 

 

 

「勝負あり。勝者、シド・カゲノー!!」

 

「ありがとうございました」

 

 審判とそして称賛の声を上げる観客のそれを聞きながら、シドは剣を鞘に納めつつ倒れているクイントンに頭を下げるのであった……。

 

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