強さを窮めたくて   作:自堕落無力

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八十七話

 

 シド・カゲノーは『学生枠』としてミドガル王国王都にて開催されている国内外の魔剣士達による武闘大会が『ブシン祭』の本戦一回戦から参加した。

 

 そうして、数年前より修行のために姿をスライムで変えながら、挑戦している色んな国や都市などで行われている武闘大会で何度かやり合ったクイントンと辺り、シドは自らのこだわりで決めているルールに則った。

 

 それは自分より弱い相手には三手譲り、その後、同じく三手で倒すという物である。自分と戦う相手に対する敬意の一種であった。

 

 

 試合自体は当然ながらシドが勝利し、そうして舞台から廊下へと歩く。

 

 これより、試合が終わってから行くようにとスタッフを通じて言われたミドガル王からの伝言である特別席へと向かうのだ。

 

 その特別席は色んな大貴族、王族など限られた者しか入れない豪華な席である。そこで得られるサービスなどはとにかく凄いのである。

 

 そんな特別席へと向かっているシドであるが……。

 

 

 

「エルフの匂いがする」

 

 灰色のローブを着ていて容姿は分からないが、足捌きなどで女性と分かるその者とすれ違ったかと思えば、声をかけられた。

 

 その声はやはり女性特有のハスキーな声である。

 

 

 

「エルフの知り合いがいるか?」

 

 ローブの隙間から濃い青色の瞳がシドを見据える。

 

 

 

「友達が何人かいる……俺はシド・カゲノー、貴女は?」

 

「これは失礼……私はベアトリクス」

 

 ローブを取るとレイによく似た風貌を晒し、エルフの女性であるベアトリクスはシドに自己紹介した。

 

 そして、ベアトリクスの名前はこの世界において有名だ。なにせ……。

 

 

 

「へぇ、初代『ブシン祭』優勝者であり、『武神』と呼ばれる伝説のエルフに会えるとは……光栄だ」

 

「どうも」

 

 シドがベアトリクスへと声をかけるとベアトリクスは軽く頭を下げつつ、そして次の瞬間、腰に帯剣している刀の如き、剣を自然な動作で抜き……。

 

 

 

「随分な挨拶だ」

 

「やっぱり、私より強い」

 

 シドはベアトリクスの一閃に対し、超絶の技量によってベアトリクスの剣を奪い取りながら、彼女の顔に刃を突き付けていた。

 

 

 

「強くなり続けるために鍛錬しているからな……返すよ」

 

「ありがとう」

 

 シドが言葉をかけた瞬間にはベアトリクスの顔に突き付けられた物は剣のグリップであった。

 

それをベアトリクスは握ると鞘へと納める。

 

 

 

「シド、私は私に良く似たエルフを探しているんだ。妹の忘れ形見でな……心当たりあるか?」

 

「うーん、どうかな……名前はなんていうんだ?」

 

「遠き清流のキキョウだ」

 

「(それがレイの本名か)うーん、心当たりがあるような気がする。だが違っていたら、申し訳ないし確認して連絡するよ。ただ、ベアトリクスはどうあれ、俺に借りを作る事になる。それは良いな?」

 

「勿論。キキョウが見つかるなら、なんでもする」

 

「あまり、女性がそういう事を言うのは良くないぞ……ブシン祭が終わる頃に連絡するから、此処にでも泊まると良い。これを見せれば泊めてくれる」

 

「ありがとう、シド。よろしく頼む」

 

「どういたしまして」

 

 シドは懐からメモを出すとペンで色々書いていき、そうしてホテルの名前とホテルの支配人に対してベアトリクスをもてなすよう書いた自分の頼みごとを表記したメモをベアトリクスに渡し、彼女はそのメモを受け取り、シドに頭を下げる。

 

 こうして、シドとベアトリクスはそれぞれの向かう場所へと歩き去っていくのであった……。

 

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