獣人の部族全ての象徴となっていた大英雄シヴァが倒れた事で獣人の国に戦乱の世が訪れた。しかして戦乱の世は獣人の国に突如、現れた『戦獅子』なるものによって争う部族は制圧されて従う事となり、庇護を求める部族も当然、戦獅子に従う事になる。
そうして急速的な勢いで部族たちは戦獅子によって統合されていく。
「くそ、一体全体どうなっている。折角、獣人の国を支配しやすいようにシヴァを……」
その流れを快く思わない者達がいた。その者達は全員、人間であり大人数であり、獣人の国のとある場所に潜みながら『戦獅子』と彼に従う獣人の部族たちをどうにかしようと計画していたが……。
「こんばんは……お前たちだよな、この獣人の国で暗躍している『教団』とやらは?」
ユキメから月丹が彼女へと襲い掛かる前に力を得られるという錠剤を手にしていた事と『教団』の庇護がどうだと言っていたと聞いたシドは獣人の国で暗躍している組織がいると仮定し、自分の感知能力とスライムを変形させてアンテナとして感知範囲を広げる合わせ技をもって痕跡を探し、そうして如何にもな拠点を発見した。
そうして、襲撃を仕掛け最奥部まで辿り着く。
「き、貴様が戦獅子か……のこのこ出向いてくれるとはな、やれっ!!」
リーダーだろう男は傍に控えさせていた複数の部下に排除を命じ、部下はそれに従い四方からそれぞれ男を取り囲み、時間差をもって戦獅子を仕留めにかかるが……。
「ふっ!!」
シドが凄絶なる輝きを纏う剣閃を舞い踊らせれば、瞬く間に攻撃を仕掛けてきた者達は肉塊へと解体される。
「……獣人たちを制圧しているのは伊達ではないか……これ程とはな」
リーダーだろう男は戦獅子であるシドの剣舞から窺い知れた技量より実力を読み取り、唖然とする。
「だが、私も退くわけにはいかん」
そうして懐から赤い錠剤の入った瓶を取り出し、蓋を開けて乱暴に口の中へと幾つもの錠剤を放った。
「ぐ……ぅ……があああああっ!!」
男の肉体が肥大化し、異形とも思しき姿に変化すると共に魔力も倍以上に増大した。
「ドーピングか」
「ふふ、卑怯と思うか?」
「いや、勝つためにどんな手段でも使うのは普通の事だ。それにリスクを取ってでもっていう覚悟も尊敬に値する」
「それはどうも。しかもこの状況でも動じないとはな……言っておくが、私などこの世界に蔓延る闇そのものである『ディアボロス教団』にとっては木っ端の存在でしかないぞ」
異形となった男はシドに対し、何を思ったか自分が従っている組織の存在を明かした。
「そうか……それはなんとも戦い甲斐があるな。教えてくれて感謝する」
「気にするな……では、いくぞっ!!」
膨大な魔力を荒れ狂わせながら男は死なばもろともの突撃を仕掛け……。
「しっ!!」
「ぐがああっ!!」
シドは突撃を仕掛けてきた男との機先を制し、カウンターの刺突を放って胸を突き刺しながら自分の魔力を伝導させて荒れ狂っている男の魔力に干渉し、流れを無理やり堰き止める。
これにより、流れを急に止められた男の魔力は出所を失った事で爆発。
結果、男の肉体は弾けて四散し大量の鮮血に骨や臓器などを後ろへと広範囲に飛び散らせたのであった。
「ディアボロス教団か……どれだけ強大だろうと勝つのは俺だ」
シドはディアボロス教団と戦い、勝利する事を誓ったのであった……。