強さを窮めたくて   作:自堕落無力

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九十四話

 

 ミドガル王国王都で二年に一度、開催される国内外による魔剣士の武闘大会が『ブシン祭』。

 

 決勝戦が行われ、ミドガル王国最強の剣士で第一王女のアイリス・ミドガルとこの世界において超越しているとも呼ばれている規格外にして、異才の魔剣士とも評されているシド・カゲノーが対決し合った。

 

 時間こそ短いが観客達においては無限とも感じられる程に長い剣閃による舞いを応酬し合っていた。

 

 そんな伝説になるとも評価できる程の激しき戦いを制したのはシド・カゲノーであり、新しいブシン祭優勝者を観客は歓迎し、賞賛の言葉を送ったのだが……。

 

「シド、お願い。戦って」

 

 特別席で観戦していた初代『ブシン祭』の優勝者で『武神』の名を有しているエルフの女剣豪であるベアトリクスがシドの元へとやって来た。

 

 

 

「戦いたくなったのか?」

 

「うん」

 

「アイリス、良いか?」

 

「ええ、二人がそれで良いなら……今回は我が国にとって一番の『ブシン祭』となりますね」

 

 ベアトリクスに苦笑しながら、シドがアイリスに問いかければアイリスは国としては嬉しい物だと頷く。

 

「俺としては喜んで戦わせてもらおう」

 

「うん、ありがとう」

 

 こうして急遽、今年のブシン祭優勝者であるシドと初代のブシン祭優勝者であるベアトリクスの戦いが行われる事になった。

 

 二人の戦いを間近で見たいとアイリスが審判を務める事となり、シドとベアトリクスは舞台の中央へと歩いていく。

 

 ベアトリクスは鞘から刀を抜いて構え、シドは徒手空拳の状態で自然体で構える。

 

「シド、剣を抜かない方が強い……」

 

「ああ、徒手空拳が俺の本領だ」

 

 ベアトリクスは長年、剣の道を進んできて培った勘により、シドの佇まいから徒手空拳による格闘術が本気の戦闘スタイルであると察した。

 

 

 

「本当に面白くて凄い」

 

「お褒めに預かり、光栄だ」

 

 ベアトリクスが微笑み、シドを賞賛するとシドも笑みを返して頭を下げる。

 

 そうして、対峙し合うと……。

 

「シド・カゲノー対ベアトリクス!! 試合開始!!」

 

 アイリスが試合開始の合図を出した。

 

「ふっ!!」

 

「しっ!!」

 

 瞬時に二人の姿が消えると共に幾多もの闘舞を踊る残像と剣舞を踊る残像が縦横無尽、変幻自在に絡み合っていき……。

 

 アイリスも観客達も永遠に続くかと錯覚する程に激しく、何度もシドとベアトリクスは打撃と剣撃を応酬し合う。

 

「はっ!!」

 

「うあっ!!」

 

 

 そうしてシドはアイリスに打撃を炸裂させ、ベアトリクスを地面に倒れさせた。

 

「参った」

 

「ああ、俺の勝ちだ」

 

「勝者、シド・カゲノー」

 

 ベアトリクスが負けを認めたのもあって、シドの勝利を観客たちは賞賛し、そうして魔剣士の中に格闘技を極めていく者が出てくるのは言うまでもないのであった……。

 

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