プロ野球選手 モンティナ·フォン·シュトロハイム   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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1967年冬 ドラフト会議 契約更新

 1967年ドラフト会議···ドラフト会議が始まって3回目のドラフト会議であり、リーグ最下位かつオールスターゲームで勝っていた京都タクシーズは1巡目での指名権を持っていた。

 

 前年度は高校生偏重ドラフトであり、勝負の3年に向けた2年目のドラフトということで編成会議でスカウトや首脳陣が事前に方針を決めていた。

 

「投手で核となる選手と打てる野手だ。シュトロハイムも助っ人外国人だ。あれだけ打った選手だ。残留交渉が失敗すれば放出もあり得るからな」

 

 首脳陣や球団関係者は皆シュトロハイムの残留交渉に動いており、契約更新前に事前の聞き取り調査をする徹底振りである。

 

 彼との契約次第でドラフトの契約金にも影響が出ると判断され、契約金が低ければ上位指名でも入団拒否の可能性もあった。

 

 結局、素材型を安く仕入れて育てるしか無いと判断し、高卒選手を中心としたドラフトが展開されていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 ドラフトの様子をシュトロハイムの部屋で一緒に見ていたのは親友となっていた宮永悟であった。

 

 宮永はこの年最初はロングリリーフであったが先発に配置転換され、チームの勝ち頭となる8勝を記録し、シュトロハイムから秋季キャンプに教わった魔球と呼ばれるSFF···スプリットと呼ばれるボールの習得に挑み、それなりの形になっていた。

 

 ただ宮永はフォークが抜けて痛打されることがあったため、落ちる球はスプリット一本に絞り、スプリット、カーブ、チェンジアップ、ツーシームに変化球は絞った。

 

 秋季キャンプでの実践練習では貧打のうちの打線とはいえ15人連続で無安打に抑え込み、着実に頭角を現し、来シーズンからは先発として固定すると吉田監督から言われていた。

 

 そんな宮永とラムネを飲みながらドラフト会議の様子をテレビで眺める。

 

『投手を取りましたね』

 

「どんな投手かわかるか?」

 

『甲子園でベスト4の高校のエースでしたっけ? 144キロの直球にカミソリの様に曲がるスライダーが武器の投手だったと思います』

 

「まぁうちは先発不足だから長いイニングを投げてくれる投手はありがたいな」

 

『いや、私の見立てでは中継ぎ···抑えの投手に向いていると思いますが···』

 

「まじかよ···スタミナに不安が?」

 

『見ないとわかりませんが、高校3年間で酷使された肩···いや肘にガタがきていると言う話を聞いたことがあります。それをわかっていての獲得だと思いますが···』

 

「···まじかよ」

 

 その後はテレビ中継が終わり、ラジオにて後続の選手が紹介されていく。

 

 名前を聞いていると下位指名で地元の高校生の名前も聞こえた。

 

『よし、宮永行きましょう』

 

「ん? どこに」

 

『決まってます。今呼ばれた選手の所にです』

 

 そう言って宮永を寮から連れ出し、寮長には夜の街に行きたいと伝えて、寮を出た。

 

 この頃は酒もタバコも風俗関係も年齢が緩々だった時代である。

 

 普通に寮を抜け出したシュトロハイムと宮永は親会社がタクシー会社なので町内のタクシー利用券を持っており、それを使って選手が通う高校に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 高校ではその選手とチームメイト達が指名された事を喜びつつも下位指名だった為契約金が低く、大学か社会人に進んだ方が良いのではないかと話がされていた。

 

 そこに事務員のおじさんが野球部の部室に走り込んでくる。

 

「どうしました?」

 

「しゅ、シュトロハイムが···大星君がドラフト指名されたからと挨拶に来た!」

 

「プロアマ規定があるのにか! バレたら罰金ものだぞ!」

 

「ど、どうしますか!」

 

「とりあえず来ているんだろ? 呼ぶしかないだろ」

 

 と部室に通された。

 

『始めまして大星選手! シュトロハイムです!』

 

「ほ、本物のシュトロハイム選手だ」

 

「思ったより大きくないな」

 

 と球児達が話す中、監督が

 

「シュトロハイム選手、プロアマ規約がある以上、高校と関わるのは不味いのでは···」

 

『不味いかもしれませんがまぁバレたら罰金として年俸から少し引いてもらい、その分を大星君の契約金にすれば良いと提案します!』

 

 とそんな事を言い出した。

 

『今チームは貧打で苦しんでます。大星君が使えるか見たくて足を運んでしまいました!』

 

 とシュトロハイムが言う。

 

「シュトロハイム選手、俺はプロで活躍できますか? ···いや、野球で食っていけますか?」

 

『ならバットを持って素振りを見せてください。それで見極めたいと思います』

 

 そう言って木製のバットを持たせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドラフト6位指名の大星慎吾選手、身長185センチとこの時代にしては大柄であるが線が細く肉付きが悪い。

 

 バットを数回振らせたが、中々良いスイングをしている。

 

 その後に肩や足を揉むと筋力は足りてないがバランスの良い肉付きをしているのがわかった。

 

「どうですか?」

 

『今のままじゃわからないけど···』

 

「···」

 

『監督さん、大星君をオフの俺が主催する自主トレーニングに参加させてはくれませんか? プロで必ず活躍できる選手にしますので』

 

 と私は言い切った。

 

 大星君の目の色が変わる。

 

 迷いが無くなったようだった。

 

 

 

 

 後々大星はこう語る。

 

「シュトロハイムさんのお陰でプロで長く活躍できた。指導者としてプロで今でも活躍できるのは規約を違反しても俺を自主トレーニングに参加させて頂いたおかげです。もう時効だから言いますけどね」

 

 とコラムで語っている。

 

 大星は強肩ながら守備範囲は狭かったので守備範囲の広いシュトロハイムと来年に入ってくるとあるセンターの選手の間であるレフトを定位置として活躍することとなるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 契約更新の時にシュトロハイムは球団から1000万円の年俸を提示された。

 

 球団社長だけでなく親会社である京都タクシーの社長も契約更新に同席し、誠意を見せてくる。

 

『年俸は半分で良い。ただ5年総額2500万円の契約を結んでほしい』

 

 あまりにも破格の条件である。

 

『そして5年間一定以上の成績を残せた場合、選手兼任コーチを確約して欲しい』

 

 と交渉をした。

 

 ただ球団側は単年だけの覚醒の可能性があるからと2年契約にして欲しいと言われ、2年総額1000万円の契約が纏まった。

 

『あとはファンを盛り上げるために色々やるべきです! 球場にせっかく足を運んでくれるのだから安く美味く、腹が満たせる弁当を売りたいです! 活躍している選手が絶賛と言えばお客さんも食べたいと思えるでしょうし、幾つか考えてみました!』

 

 と球団社長と親会社の社長の前でプレゼンを行い、契約が安く纏まった事で気を良くした社長達はやってみる価値はあると前向きに検討してくれるようになった。

 

 結局年俸は約11倍の500万で交渉が成立した。

 

 ちなみにであるが東京ナインズの大玉選手の入団時の契約金が1800万円である。

 

 他球団であればシュトロハイムの年俸は3000万円いや、5000万円でも手を挙げる球団があるだろう。

 

 その10分の1の価格でありそれが2年契約である。

 

 シュトロハイムの交渉で難航した時のために1500万円までは備蓄していた為1000万円分予算を浮かすことができた。

 

 シュトロハイムとの契約更新が最初に行われた事で入団を渋っていたドラフト入団選手の交渉にお金を使うことができ、7名の指名中5人が入団してくれることになるのだった。

 

 そしてテスト生から5名が合格し、新たに10名が京都タクシーズに加入することとなる。

 

 

 

 

 

 

 シュトロハイムは増えた金で兵庫の山を買ったり、過疎地の空き地を格安で購入したりと理由のわからないお金を使った。

 

 シュトロハイム的には近い未来に当時の首相が日本改造論を語っていたし、実際に高速道路や鉄道の駅になっていた近くを投機ブーム前に買った感じだ。

 

 倍近くの値段になれば良いなぁと考えていたが、シュトロハイムの年俸の何十倍も稼ぐ事になるとは思わなかった。

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