バッタ。
目の前にバッタがいる。
恐らく昆虫網バッタ目バッタ科のショウリョウバッタ。コメツキバッタやハタオリバッタと呼ばれることもあるらしい。
格好いい、草の上に乗っているのがとても画になる。
しかし、私は虫が苦手というわけではないから問題ないが、人によっては無理だろうフォルムをしている。
よく見てみればかなり怖い顔をしているな、お前。
ベンチに寝転がりながら眺めていると、ピーッ、と洗濯が完了した音が聞こえた。
私はコインランドリーの中へと入った。
洗濯物を籠に詰め込みコインランドリーを出ると、バッタは変わらずそこにいた。
「よっ」
手を上げ挨拶をすると、バッタは草むらへと跳んでいった。異文化コミュニケーションは難しいのだな、と私は赤面した。
バッタと暫しの交流を終え、私は帰路についた。太陽は、もうすぐで折り返し地点といった様子だ。
田んぼ道をブラブラと歩く。この時期の田んぼは、田園風景といった感じの様相を呈している。緑いっぱいの絶景だ。
ギラギラと太陽が照りつける。
Lサイズの白Tシャツに短パンといった、かなりの薄着であるにも関わらず、汗は滝のように流れていた。
Tシャツは汗でずぶ濡れで、このまま空調の効いた部屋に入ると、凍えて風邪をひいてしまう。これはブラをしないで正解だったかもしれない。今ほど貧乳をありがたいと思ったことはないし、今後絶対ありえない。
なぜノーブラなのかというと単純な話で、今日着る用のも一緒に洗濯してしまったからである。しかしノーパンではない。
しかし、このままでは服が透けてしまう。かといって生乾きの服を着るのもあまり気分が良くない。
数秒悩んで、気にしないことにした。誰も気付きやしないだろう。
誰も気付かなかった。そもそも人がいないというのもあるが、それでもこの時間帯はアパートの住民がいるので、誰か気付くかとハラハラしたが、皆一様に急に忙しくなったりしていた。大人に夏休みは存在しない、と知った夏だった。
ちなみに隣人の佐々木さん(女性)はなぜか私の胸元を凝視していた。
四畳半の畳部屋で、扇風機の前でだらけながらふと気付く。あれは忙しい振りをしていただけなのでは、と。服が透けているのを気付いてない振りをしていただけなのではと。いやはや、大人というのは気遣いの達人なのだな、と寝転びながら思考する、夏の昼下がりのことだった。
ふと、洗濯物を干していないことに気付いた私は、慌てて洗濯かごをひっくり返して、タオルやら服やらを物干し竿に干し始めた。