『量産型ライダー』の流浪者はサブライダー達の世界を通り過がるようです 作:クォーターシェル
俺の意識が覚醒した時、俺は半透明の液体で満たされた透明なカプセルの様なタンクの中に居た。此処は……。俺はタンクの中から見える外を見渡してみる。其処は、科学の実験室の様な場所だった。俺はこの景色は初めて見るが、知識として此処は何処か分かっていた。
その時、部屋の中に白衣を着た男が入って来た。その男の顔も初めて見る顔だったが、俺の知識にはその男が何者かコンピューターにインプットされるように知っていた。
「Dr.シノノメ……」
それがその白衣の男の名前だった。Dr.シノノメは部屋内の機械を操作する。すると、タンクの中の俺が浮かんでいた液体が排水されていき、その後、カプセルが開き俺は床に降りた。そして、Dr.シノノメは俺に向かって言った。
「気分はどうだい?我が最高傑作よ」
俺はその質問に答える。
「悪くは無いですな」
それを聞いたDr.シノノメは微笑み、
「君には色々と知識を刷り込ませた筈だが、取りあえず部屋を移そう。それと今の君はほぼ裸だから用意した服も着てもらおうか」
Dr.シノノメは部屋の奥の扉を親指で指し、
「あの先の部屋に用意してある。先ずは服を着てきなさい」
そう言ってDr.シノノメは部屋から出て行った。俺は言われた通りに部屋を出てその部屋に行く事にした。俺が寝ていた部屋はどうやら実験室の様だったが、この部屋も実験室だった。部屋と言っても、幾つものカプセルが棚に置かれているだけだがな。
俺はカプセルの横を通り過ぎて奥の部屋へと入ると、其処にはカーテンで仕切られた場所があった。カーテンを開けるとカジュアルな男性用の服があった。簡素なシャツにズボン、そして革靴が置いてあり、その横の台にアクセサリー類もあった。
俺は先ず、服を着る事にした。服を脱いでパンツを履き、シャツを着てズボンを穿く。最後に上着を着てネクタイを締める。これで完成だ。俺は姿見で自分の格好を確認する。そこには黒髪の中肉中背の男が居た。悪くないな。俺はカーテンを開けて部屋から出た。俺が部屋を出ると、其処にはDr.シノノメが立っていた。
「待ちわびたよ。サイズは問題ないかな?」
俺は自分の体を見て、そして頷いた。
「大丈夫だな」
俺の答えに満足したのか、Dr.シノノメは頷き、そして言った。
「では、ついて来なさい」
俺は言われるがままに、Dr.シノノメの後を付いて行った。そして案内された場所は研究室の様な所だった。
「其処の椅子に座って話そうか。本来なら茶と茶菓子を出すべきだろうが、生憎と其処まで用意が無くてね。まあ、必要なら用意させるけど」
「いや、別に構わない」
俺はそう言って椅子に座り、Dr.シノノメは向かい側の椅子に座った。
「さて、何から話そうか……、そうだな先ず君の創造主である私の事は分かるな」
「ああ」
俺とDr.シノノメは俺に刷り込まれた知識の確認の為、俺に刻まれた知識の事を話す。Dr.シノノメは数多の平行世界を股に掛ける悪の組織『ハンドレッド』のメンバーであり、科学者だ。
「正確には元メンバーだよ。君が覚醒する少し前に辞表を叩きつけてやったからね」
とDr.シノノメは補足する。ハンドレッドはその技術力、特に異世界に存在する戦士『仮面ライダー』の力を持っていくつもの世界を侵略してきた。そんな相手に離反するとは目の前の男は中々の度胸があるな。Dr.シノノメは続けて言った。
「さて、次に君を創った理由だ。まあ、組織に前からも不満が無い訳では無かったが、一番の理由は」
「ハンドレッドが量産型ライダーの有用性を認めなかった事」
ハンドレッドは異世界から手に入れた仮面ライダーの技術を悪用しているが、殆どの場合仮面ライダーの力を扱えるのは幹部クラスの地位を持つ者で、所謂量産されたタイプの仮面ライダーには見向きもしなかった。量産型ライダーの虜になっていたDr.シノノメはそれらのライダーも採用すべきだと進言したが、相手にされなかったらしい。
「連中め、兵士は『カッシーンスーツ』で十分だと抜かしおって、お前は黙って更に強力な仮面ライダーの技術を再現しろね……」
その時を思い出したのか、Dr.シノノメは忌々しそうに顔を歪ませていた。
「だから私は組織を抜けることにした。其処から君を創り出すのには苦労したよ」
とDr.シノノメは一息つくと、今度は俺に向かって聞いてきた。
「私は君を創るにあたって、自分の理想を君に叩き込んだ。それは覚えているかな?」
俺は頷く。
「『量産型ライダー』という概念を擬人化した存在。量産型ライダーに変身した事のある人物の知識や技術や経験を全て持っている者」
「そうだ、少し矛盾しているが私は数多の量産型ライダーの器たり得る“個人”を創る事にした。本当は君の様な存在を1万人程用意したかったが、残念ながら私には時間も金も無かった。しかし、1万人分の器は用意できなかったが君一人を創る事には成功した。まあ、その代償として私は組織から追われる身になってしまったがね」
Dr.シノノメは自嘲気味に笑う。
「だが、私は後悔してはいないよ。こうして君を創造する事が出来たんだからね」
とDr.シノノメは俺に言った。
「さて、私の身の上話はこのぐらいにしてそろそろ本題に入ろうじゃないか」
「本題?」
「そうだ。君は先ほどの通り、量産型ライダーの器だ。量産型ライダーに定義された存在に変身できる。更に君の体内には超小型化した『オーロラカーテンシステム』が搭載されている事も知っているだろう」
オーロラカーテンシステム、それは銀色の幕の様な物を出現させ、自分の場所と別の場所や異世界(パラレルワールド)と繋げ、別世界の住人を連れてきたり遠距離を瞬時に移動できる。その様な装置が俺の身体に組み込まれているのだ。俺は
「それで?」
と続きを促す。
「何、世界を救えだの滅ぼせだのと願うつもりはない。君には数多の世界を回ってもらい、生きて欲しい。君が生き続ける限り私の憧れたもの、私の『仮面ライダー』の夢が生き続ける。ハンドレッドの連中の鼻を明かせるというものだ」
「なるほどな。生き続けろか……シンプルだが、中々難しいな」
「ならばこう言い換えよう。私の夢を実現させる為に協力してもらいたい」
Dr.シノノメは身を乗り出してそう言った。俺は少し考え、そして答える。
「分かった。協力するよ」
「ありがとう、我が最高傑作よ」
とDr.シノノメは俺に手を差し出したので、俺もその手を握り返す。こうして俺とDr.シノノメの協力関係が成立した。その後、Dr.シノノメは俺に向かって言う。
「そうだった、君の名前をまだ伝えていなかった。ギリギリまで考えていて、刷り込むことが出来なかったからな」
そういえば、俺の名前はまだだったな。どんな名前なのだろう。
「君の名前は、『灰咲(かいざき)・メン・ラフストーン』だ」
その名前って……。
「鳳桜・カグヤ・クォーツを意識しているのか?」
「当たりだよ」
鳳桜・カグヤ・クォーツはハンドレッドの宿敵で、『仮面ライダーレジェンド』に変身する男だ。俺は知る限りだとなんでも『ゴージャス』な男でありハンドレッドは彼に散々煮え湯を飲まされているらしい。
「何で彼なんだ?」
「まあ、所謂ゲン担ぎという奴さ。彼を意識した名前を付ければ、ハンドレッドを打倒する力になるだろうと思ってね」
「そうか。他に意味はあるのか?」
「そうだね。君はまだ白でも黒でもない灰色の存在だから灰咲。ライダーメン(乗り手達)からメン。ラフストーンはクォーツ、水晶に対して原石という意味だ」
それなりには俺の名前に意味が込められているらしい。そんな話をしている時だ、突如この施設に警報音が鳴り響く。
「なんだ?」
「どうやら、ハンドレッドの追手が来たようだ……」
とDr.シノノメは席から立ちあがる。俺は
「どうする?戦うか?逃げるか?」
と問う。Dr.シノノメは
「そうだね、逃亡を優先した方がいいだろう。君も最高傑作とは言え、目覚めたばかり。最低限の性能を試すのはまた後でもいいだろう」
「分かった」
と俺は言い、Dr.シノノメも「行こうか」と言うので部屋を出ようとするが……。
「むっ!」
突如として何者かによって出入り口の扉がこじ開けられる。そしてハンドレッドの尖兵、カッシーン達が部屋内に入ってくる。
「Dr.シノノメ!」
「貴様をハンドレッドに反逆した咎により抹殺する!」
とカッシーン達は装備の三又槍を構える。Dr.シノノメはため息をつき、
「メン君。此処でやり合うのは得策ではない。早速オーロラカーテンシステムの出番という訳だ」
と俺にオーロラカーテンを使う事を促す。俺はその指示に従い、オーロラカーテンを出現させる。すると俺達は別の世界へと飛ばされた。次に目を開けた時、そこは山岳地帯の中腹だった。
「ふむ、当然だが正常に作動しているようだ」
とDr.シノノメが呟く。どうやら此処は一つの世界らしい。すると、俺達の近くに同じようなオーロラカーテンが出現し、先ほどのカッシーン達が現れた。どうやら追って来たようだ。
「逃さんぞ!」
とカッシーン達が俺達に襲い掛かってくるが、俺達はその場から飛び退き攻撃をかわす。そして俺は右手を前に突き出す。すると、俺の右手には鋭い刃のついたベルト『スラッシュアバドライザー』が出現する。これを召喚した理由はある機能を使う為だ。その機能とは……、変身だ!俺はスラッシュアバドライザーを腰に装着し、クラウティングホッパープログライズキーを起動する。
ヒット! オーソライズ!
「変身!」
俺が叫びプログライズキーをベルトに装填すると、俺の体が光に包まれる。そしてその光は直ぐに消える。
シンクネットライズ! クラウディングホッパー!
"An attack method using various group tactics."
俺は仮面ライダーアバドンと呼ばれる仮面ライダーに変身していた。仮面ライダーアバドンは知識によると、テロ組織が使用していた仮面ライダーらしい。毒を以て毒を制すと言うが、悪の組織に対して悪の組織の力を使うというのは皮肉なものだ。俺はスラッシュアバドライザーの剣を分離させ、構える。カッシーン部隊の隊長は、
「ふん、Dr.シノノメめ……貴様の傾倒していた仮面ライダーは何れも集団で無ければ力を発揮できない雑魚と聞く。ここで終わりだ!」
と言って槍を俺に突き出して来た。俺はその攻撃を剣で弾く。いつの間にか離れた場所に退避していたDr.シノノメは、
「メン君!仮面ライダーの力を見せてやるのだ!」
と応援してくる。俺は
「言われなくても!」
と言って再び突っ込んでくる隊長カッシーンの攻撃を今度は剣で防ぐ。そして押し返し、カウンターで蹴りを繰り出す。その蹴りはクリーンヒットし、カッシーンを吹き飛ばした。後退した隊長カッシーンは、
「やれ!」
引き連れていた。3体のカッシーン達に攻撃指示を飛ばす。3体のカッシーンはそれぞれが槍で俺を串刺しにしようとする。俺はそれを跳躍してかわし、空中でプログライズキーを起動させスラッシュアバドライザーを操作した。
「クラウディングエナジーフォール!!」
スラッシュアバドライザーから強力な斬撃が飛び、カッシーン達に命中した。斬撃をくらったカッシーン達はそのまま爆散した。その様子を見た隊長カッシーンは
「なっ!?」
と動揺する。その隙を逃さず、俺は隊長に近づき切りかかっていく。
「くっ!」
と隊長カッシーンは応戦しようとするが、俺は剣で槍を捌き懐に潜り込み蹴り飛ばす。そしてスラッシュアバドライザーをベルトに装着してトリガーを起動する。
「クラウディングエナジー!!」
俺はエネルギーを纏った跳び蹴り、つまるところ『ライダーキック』を放った。そのキックは隊長カッシーンに命中し、
「ぐぁぁぁぁああ!!」
と絶叫を上げて爆散した。俺は着地して変身を解除した。するとDr.シノノメが近づいてきたので俺は声をかける。
「終わったぞ」
俺がそう言うと、Dr.シノノメも答える。
「ご苦労様」
俺達は再びオーロラカーテンを使い、休めそうな場所に移動してこれからの事を話すことにした。俺はDr.シノノメにこれからどうするか問うと。
「私は生き延びた事だし、また何処かに身を隠すつもりだよ。まあ、メン君の調子は良いようだし、万が一ハンドレッドの連中に殺されてもメン君の方が生きていればいいさ」
と軽く言った。
「それは流石に困るんじゃないか?」
と俺が言うと、
「まあ、偶にメンテナンスの為に君に会いに来るよ。君自身が自力でメンテナンスできる知識も与えているけど、メン君の体はまだ未知数だからね」
とDr.シノノメは言った。暫くしてから俺とDr.シノノメは別れて行動する事にした。一応Dr.側は俺の位置が分かるようにはしているらしい。Dr.シノノメは
「じゃあ、これで私達は当分、もしかしたら今生の別れだ。君が活躍する事を祈っているよ」
と言い、起動させたオーロラカーテンシステムで別の世界へと去っていった。俺も、
「ああ、じゃあな」
と言い残してオーロラカーテンシステムを使いこの世界を去った。
この先に何が待っているのか楽しみだ……。
駄文閲覧ありがとうございました。ご感想お待ちしております。