俺は、村で暮らす日々の傍ら、あることを行っていた。影の地に残る遺体たちの弔いに、壺の体と闘いにおける技術の鍛錬だ。
弔いについては、牢獄やギザ山、エニル・イリムに残る亡骸を中心に、もはや復活することが叶わなくなった体を村まで運んでいる。そして、生き壺たちが共同で、亡骸を己の体に入れることで供養している。
鍛錬については、金色の大壺が宿す坩堝の性質を活用し、追憶による特殊空間での戦闘を行っている。戦闘の経験に関しては、暴竜ベールのように命がけで戦ったものから、メスメル軍やセネサクスなどとの手合わせも含まれる。どちらの場合にしても、特殊空間の中では全力でこちらの命を取りに来るので、俺にとってはいい鍛錬だ。
この追憶に関しては、黄金の大壺に共有した時点で、他者の記憶の中にも入ることができる。メスメルやレラーナ、ガイウスは、巨人戦争やリエーニエ戦役という大規模な戦闘を経験している。フレイヤは破砕戦争、セネサクスに至っては竜同士の戦いだ。活用しない手はない。
メスメルは初め、大壺の近くに行くことを渋っていたが、皆を守れる力を高めたいと言って懇願したところ、記憶を共有してくれることとなった。
戦いは理不尽な死と悲しみを生む。それに記憶は個人のものだ。渋るのが当然で、故にメスメルたちの寛大な心は、とても温かかった。
メスメルは、また一つ我に貸しが増えたなと、口端を上げながら俺に言っていた。この借りは、何か美味い料理だったり、しっかり村の皆を守ることで返していこうと思う。
だが、これらは少しばかり問題を抱えている。前者は単純な人手不足、後者は戦闘についての追憶が過酷すぎるのだ。逐一光の柱によって飛んでいくのも考えたが、牢獄やギザ山の亡骸を回収するのは無い骨が折れる。メスメル兵のいくらかを、メスメルたちが援助に回してくれているが、終わる気配がない。
そして戦闘の記憶について、生き壺や兵士も鍛錬のために活用しているのだが、物量に押されて戦うまでに行かず、記憶の中ですぐ死亡してしまうことが多々ある。ラダーン将軍の復活まで待つため、鍛錬を重ねているフレイヤも、自身の記憶の中で死亡することがあるくらいだ。
俺も少しずつ生き残れる時間を増やしてはいるが、他の者が鍛錬の成果を分かりやすく感じられないのは困りごとである。
そんな中、嬉しい訪問客がやってきた。褪せ人だ。
彼は狭間の地の探索を一旦中断し、影の地を見て回ることにしたそうで、巫子の村に突然やってきたのだ。鉤指として召喚されるより前に、彼に再会できるとは思っていなかったため、俺は諸手を挙げて喜んだ。
褪せ人は言った。しばらく見ない内に、随分とこの地全体が様変わりしていると。村を訪ねる前に塔の街ベルラート付近に行ったそうだが、大量の角人が友好的に出迎えてくれたらしく、褪せ人は驚いていた。彼としては、狭間の地で会う人のほぼ全てが敵だったのだから、新鮮味のある体験だっただろう。「同志」であった角人や、以前話をした角人の老婆などとも再会したらしく、彼らも活気の戻った現状に満足していたと話してくれた。
「それは何よりだ…治療した甲斐があるというもの。折角だ、褪せ人殿。村の皆と話してみてはどうだろう。特に、神人ミケラやレダ殿が良い方に向かっているのだ。興味深い話も聞けると思うぞ。」
褪せ人は、摘んだ花を頭飾りにして、生き小壺と遊んでいるミケラの方を見る。そして、また戻ってくると言い残し村の皆の様子を見に行った。丁度休みを取るためにメスメルたちも来ていたので、村の中はいつも以上に人であふれている。褪せ人の会話も弾むだろうと、俺は村全体を見ながら待った。
褪せ人は、両手いっぱいに物を抱えて戻ってきた。トリーナの花に、ミケラの冠といった華美なもの。レダが持っていたタリスマン二つ、ダンが身に着けていた手布、フレイヤの黄金盾など、戦いに扱えそうなものの数々を。
その他武具なども手に抱えながら、貴公、こんなに貰ってしまったと俺に言う。褪せ人は兜で顔は見えないが、ほくほくした心持ちであるようだ。
褪せ人はその嬉しそうな様子のまま、俺が直面している問題について助力すると話した。何でも、村の皆から話を聞く中で、俺の悩みについて断片的に情報を受け取ったらしい。
「ありがたい!実は、だいぶ悩まされていたところだったのだ。弔いも、鍛錬についてもままならなかったものでな…。」
二つの大きな悩みは、たった一人によって解決された。流石褪せ人だ。
まずは大壺の元に行ってくると褪せ人は言い、大壺の前で座り込んだ。そして、しばらくすると、すうっとその場から姿を消す。特殊な空間、記憶の世界へと旅立ったのだろう。この、褪せ人の旅路における戦いを記録する作業は、休憩を挟んでもらいながら三日三晩続いた。
褪せ人が額の汗を拭うようなジェスチャーをして、こちらへ戻ってきた。戦いの記憶は全て共有し終えた旨を伝えられる。俺は褪せ人にねぎらいを込めて、その晩は村で丁重にもてなした。
夜が明けると、褪せ人は祝福にてワープをしていった。そして戻ってくると、遺体の詰められた壺を並べ、また牢獄へと向かっていく。俺は褪せ人に無理をし過ぎないよう伝えたが、褪せ人は問題ないとだけ言い残してどんどん運んできてくれる。ワープの利便性を使った運搬は、百人力以上だ。ありがたいことこの上ない。
その都度、謝礼としてルーンを大量に手渡すことは忘れない。牢獄の壺は、生き壺たちが大壺まで運んでいき、遺体を一人一人丁寧に弔っていく。
その次は飛竜の亡骸だ。褪せ人は鍛え上げられた両手を使って、そのずっしりとした飛竜の体躯を持ち上げた状態で、村までやってくる。メスメル兵やガイウス、セネサクスといった力のある者たちに協力してもらい、大壺の中にどんどん捧げていく。竜の心臓は残り、大壺の上に浮いてくるため、それを褪せ人へと手渡した。
夜は何度も明けた。褪せ人は疲れ知らずで、回収するスピードもどんどんと上がっていった。竜餐の祭壇近くの巨大な竜は、もはや地形と化しているため、そのままにせざるを得なかった。だがその竜を除き、ギザ山に残る竜を、ついに弔うことができた。
彼らの意志の結晶というべきか、さざれ石の取れた竜の心臓の他に、俺と同じくらいの大きさをした卵が、大壺の表面に浮かんできた。俺は竜の心臓と、その卵を慎重に抱え、地面へと下ろす。
じっと見守っていると、卵の殻にひびが入り、ぴいという鳴き声と共に小さな飛竜が飛び出してきた。飛竜は最初に見た褪せ人に対して、よたよたと近づいていき、その足元にくっつく。
彼を親だと思っているのだろう。もしくは、飛竜たちを弔うことに最も貢献した彼に恩義を感じているのか。褪せ人が飛竜を抱き上げる。小さな火炎ブレスを天に向かって放ち、飛竜は喜ぶ。
「褪せ人殿、本当に助かった。エニル・イリムやその他の場所については、じっくり弔っていくとするよ。その幼い飛竜と…こちらの壺を、褪せ人殿に受け取ってもらいたい。この壺は特別製だ、きっと気に入ると思うぞ。」
巫子と生き壺が持ってきた壺を、俺は指し示す。褪せ人が作業をしてくれている間に、何か渡せるものはないか考えた結果できたものだ。褪せ人がこれ以上に強さを求めるならば、絶対に役立つ。
褪せ人はもらえるならばと巨大な壺をしまい込み、飛竜を肩に乗せた。
大部分の弔いが終わって一息ついた後、褪せ人はここに来た第二の目的について話し始めた。大壺に記憶を共有できることは以前村を見たときに知っていたらしく、ここで鍛錬を積んでおきたいと考えて来たとのことだ。その過程で、まだ戦ったことのないレラーナたちと手合わせをしておきたいという思いと、俺にもいままで戦った強者と戦ってみてほしいと考えていたのだとか。
俺は褪せ人の願いに了承した。あれだけ協力してくれたのだ。褪せ人に少しでも借りは返したい。
俺は、まずガイウスに声をかけた。村から少し離れた原っぱでの勝負に、ガイウスは快諾してくれる。
強者同士の戦いは、見るだけでとても高揚する。鍛錬の意欲をくすぐられ、うずうずしている生き壺たちと共に、俺は彼らの手合わせを観戦した。
サブイベント 弔い
牢獄とギザ山から、壺と飛竜の亡骸をそれぞれ、巫子の村に運搬するイベント。
壺は六つ、飛竜の亡骸は一体、持った状態で移動できる。この際武器装備欄が埋まっていく。
(壺一つでスロット一つ、飛竜の亡骸一体で六つ埋まる)
報酬は、壺一つにつき「影の地のルーン【7】」二十個。飛竜の亡骸一体につき、「金色の心臓」一個。
イベント完遂時、「巫子村の詰め壺」と「幼き飛竜」を取得できる。
「牢獄の詰め壺」…
罪人と呼称された人々と、少数の巫子が隙間なく詰められた壺
憎悪と絶望のみが強く残る、角人の神事における産物
武器として装備され、攻撃が封じられる
戦士の壺(パチモン)に渡すと、その貢献への感謝が送られる
「巫子村の詰め壺」(武器)…
巫子の村で作製された、巨大な壺
中身はぎっちりと、加工された特殊な土で埋まっている
決して壊れぬ、友誼の証
専用戦技「弔いの盃」
壺を頭上に掲げ、もう動くことのない亡骸を弔う戦技
一定時間、敵を倒した時の取得ルーンが増える※
※取得ルーン1.5倍。「鳥脚の黄金漬け」「黄金の角貨」などのアイテム系や、「金のスカラベ」と併用可能。
(牢獄の詰め壺と見た目は同じ)
「飛竜の亡骸」…
ギザ山に残る、飛竜の亡骸
暴竜に追従し討たれた、戦いの名残
武器として装備され、歩きと攻撃が封じられる
古竜セネサクス、あるいは戦士の壺(パチモン)に渡すと
その貢献への感謝が送られる
「幼き飛竜」(腕装備)…
飛竜の亡骸から再誕した、小さな飛竜
死しても尚戦いを望む、飛竜の意志を継いでいる
無垢であり、それ故に親を慕う
ロックオンをした敵に竜炎を放ち、戦いを支援する