戦士の壺(パチモン)   作:棘棘生命

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巨人戦争の追憶

 メスメルの記憶に俺と褪せ人は入り込む。これは巨人戦争における記憶。マリカやゴッドフレイの軍勢が黄金樹の時代を掲げるために、それを燃やそうとする巨人たちと対立し、戦争を引き起こした。その結末は、トロルの裏切りにより巨人側が敗北。生き残ったただ一人である小さな巨人を、山領にある窯の永遠の火守りとし、戦いは終わった。

 褪せ人が、そういえばと呟き、一つのタリスマンを見せてくる。彼はそれを、全ての坩堝のタリスマンと呼称し、ラウフの古遺跡を探索している中で発見したという。

 唐突に見せられたそれに対して、俺は褪せ人に尋ねる。褪せ人は答えた。これはかつて、巨人の身体に生じたものらしいと。

 俺は驚いた。確かに黄金樹の時代の前、生命は混じり合っていた。巨人も坩堝に関わっていたのか。

 坩堝信仰について、角人の記憶を得てきた俺でも知ることの無かった情報だ。世代を経るごとにルーツの出どころの一つは形骸化し、ただ純粋な信仰のみが残ったのだろうか。ただ、俺が得た角人の記憶にはそれが無かっただけかもしれない。俺は褪せ人の小話に礼を言った。

 

 

「貴重な情報、感謝する!まだまだ知らぬことがあるのは、本当に嬉しいことだ。…して、貴殿。古の戦いへ挑む覚悟は出来たか?」

 

 

 褪せ人は、出来る限りの準備はしたつもりだと話す。影の地で得た追憶から、新しい武器も作ったそうだ。褪せ人は、ラダーン将軍の武器、星砕きの大剣に似た得物を素振りして、使い心地を確かめている。

 闘技場を模した準備の一室には、挑戦者の協力サインが一つも記されていない。これは、修練を重ねるメスメル兵や生き壺たちが、戦場にて生き残れていない証拠だろう。俺も以前挑戦し、長くは持たなかった。かつての戦争とは、こんなにも過酷だったか。この戦争を生き延びた者たちが強いのも、納得である。

 

 右端に一つだけ、光るものがある。記憶の主の似姿、まだ幼き頃のメスメルだ。齢は十四か十五歳程度に見える。サインの上に浮かぶ少年の表情は、きりりと険しく勇ましい、戦いに臨む者の顔をしていた。

 メスメルの似姿を呼ぶことで、攻略の糸口は見えるだろう。俺はサインに触れた。

 

 

 俺は褪せ人と共に、霧をくぐる。広がるのは、雪の降り積もる山領の白い景色。そして見えるのは、巨人と小さき戦士とが、互いに血を流し争う姿だった。

 見覚えのある人物が、すぐ近くで戦っている。先ほど召喚した似姿、少年メスメル。近くには女王マリカ。筋肉隆々であり、まだ顔に皺の無い、若き日のゴッドフレイ。ゴッドフレイについてはすぐに分かった。あんなにでかくて、寒い山中だというのに上半身が裸で、全身が巨人の血で塗れているからだ。まだ行儀のよい振りはしていないらしい。

 俺は興奮のままに言葉を紡いだ。

 

 

「褪せ人殿、見てくれ!あれこそ、最初の王ゴッドフレイ!数々の強者を打ち倒した、貴殿らの祖だ!」

 

 

 褪せ人は、一騎当千、破竹の勢いで巨人たちを殺していくゴッドフレイを見て、首をかしげる。ローデイルで戦ったゴッドフレイの霊体と、違いすぎる。貴公、それに自分たちの祖とはどういうことなのだ。

 俺は、口は無いのに壺の前面を両手で押さえた。俺は気持ちが高ぶってしまい、褪せ人にうっかり言葉を漏らしてしまったようだ。しかし、この状況に気分が上がらないのは、エルデンリングユーザーとして、戦士としておかしなことだろう。

 褪せ人がこちらを訝しげに見てくる。それと同時に、巨人たちが俺たちを視認したようだ。「火の巨人」とは比較にならないほど大きい彼らは、拳を振り上げ俺たちに襲い掛かる。

 弁明は後だ。俺は褪せ人に対して、声を張り上げる。

 

 

「褪せ人殿、避けろ!…説明は、村に戻ったらするよ。今は戦い、そしてこの記憶を共に制覇するとしよう!」

 

 

 褪せ人はこくりと頷き、会話は村でと短く言って、俺と背中を合わせた。巨人たちは、その巨体に見合わぬ素早さで、既に俺たちを囲んでいる。一人一人が、火の巨人以上の力を持っているのだ。油断は許されない。

 俺は新たに記憶の中で得た力、「大蛇狩り」の拳を、褪せ人はラダーンの大剣を以て、巨人たちに挑んだ。

 

 

 嵐を纏った俺の拳は、巨人の固い皮膚を穿つ。不死の大蛇を狩った力の模倣は、上手くいっているようだ。血を流し、赤髪を振り乱す巨人。

 褪せ人は、ミケラとラダーンとの戦いにおいて得た力、光の柱を撃ち出す剣技で、巨人を押さえ込んでいた。やはり神人と最強の将軍の併せ技はすさまじい。俺一人では難しかった戦も、褪せ人と一緒であれば勝ち目が見える。

 だが場に集まってきたのは、六体の巨人。囲まれた状態ではどうしても分が悪く、正面から戦っていればじり貧だ。攻撃が妨害される頻度が高くなり、どうしたものかと内心焦り始める。

 

 俺たちを囲む巨人の一人が、その圧倒的な跳躍力で向かってきたゴッドフレイにより首を千切り取られる。また、褪せ人が相手取っていた巨人の背に、無数の槍が刺さり、腹部に突き出る。メスメルが率いる、見た事のない意匠の戦士たちの得物が、巨人を倒したのだ。

 一人また一人と、目をぎらつかせ、どこか戦いを愉しむゴッドフレイが巨人たちを倒していく。その骸の山の上で、彼は雄たけびを上げた。言葉を紡がず、ただ力を示す。純粋なる戦士の在り方が目の前にあった。

 記憶の中のゴッドフレイは、俺たちをじっと見つめるとただ一つ頷き、また他の戦いに向かう。彼は戦争において、野生に心を置きながらも、友軍のことは忘れなかったのだろう。ただただ、俺は憧憬の内にあった。

 

 俺と褪せ人は、協力しながら巨人を各個撃破していった。巨人一人に対して、二人以上で必ず戦うように心がける。相手は強大な個だ。ゴッドフレイのような例外はいるとしても、俺たちは巨人に比べて小さく、生き残るには陣形こそが大事である。

 丁度、俺たち二人で巨人一人を上回る力を持てているため、山領を順調に進んでいく。

 友軍についても、俺は個の強さを感じていた。巨人を裏切ったトロルは、ゲーム上で相対したときより動きが機敏であり、力に満ちている。ゴッドフレイに仕える坩堝の騎士らしき者たちも、剣技というには粗いが、ゴッドフレイのような猛々しさがある戦法で、巨人たちと互角の立ち回りを見せている。

 そして何といっても、メスメルと女王マリカの軍勢が強い。マリカの祈りによって仲間は立ち上がり、メスメルが先陣を切ることで戦士たちは鼓舞される。

 

 黄金樹の時代を作る者に、巨人。どちらの勢力にも大きな被害を出しながら、ついに山領の頂へとたどり着く。メスメルの記憶はここが終点のようだ。

 火の窯近くに、一際身長の高い巨人が座り込んでいる。その巨人は、女王マリカとゴッドフレイの軍勢を視認するとその山のような腰を上げる。地が震え、構えていた俺の体勢が崩される。おおおと根源的恐怖を引き出すような声で低く唸り、こちらに向かって走ってきた。

 

 大樹のごとく太い四肢は圧倒的なリーチを誇り、ただ腕を薙がれるだけで、黄金樹の軍勢は吹き飛ばされる。巨人の蹴りは騎士の盾を貫き、鎧を砕き、ただミンチ状になった戦士が転がる。この時点で俺は、巨人の攻撃を受けてはならないことをしかと理解した。

 俺が騎士を治療するが、減る人員の方が圧倒的に多く、戦線は瞬く間に混乱に陥る。ゴッドフレイが跳び、メスメルたちが無数の槍を投げる。それぞれの得物は巨人の表皮を抉りはするが、決定打にならず巨人の猛攻は続く。

 褪せ人は武器を持ち換え、巨人砕きとギーザの車輪をそれぞれの手に持って攻撃を仕掛け始めた。守りは意味を為さないことを早々に理解したようだ。俺も巨大な敵に猛威を振るう嵐の力に、今まで手に入れてきた金、紅の粒子を組み合わせ、果敢に攻める。

 

 数をどんどん減らしていく黄金樹の軍勢。彼らは、巨人の体を末端から崩していく方向へ舵を切った。四肢の先を穿ち、指先からくるぶし、ふくらはぎと体勢を崩すために火力を集中させていく。ゴッドフレイが、マリカの祈りにより更に増した力を活用して、巨人の目を貫いた。聴覚を破壊するほどに大きな声で巨人は叫び、瞳を手で庇う。

 ふらついたタイミングを軍勢は逃さない。片方の足に攻撃を行い、ついに巨人を転倒させた。巨人の弱点に集まっていき、傷口を更に深くする。

 

 薙ぎ払いによって仲間が潰れても、彼らは攻め続ける。新しい時代のために、自身の命が尽きたとしても礎になると。軍勢を鼓舞する雄たけびを個々に上げ、巨人の体力を減らしていく。

 巨人の腹がぱかりと開き、そこから巨大な眼が現れる。悪神の瞳だ。ぐぐと体を起こし、炎の嵐を巨人は巻き起こす。それによって数多くの戦士が炭化する。後ろに控えていた戦士たちが、巨人に向かっていった。

 

 そこからの戦いは更に苛烈になっていった。人員の消耗が更に激しくなり、ゴッドフレイやマリカ、メスメル、力ある者たちは皆満身創痍であった。

 生粋の戦士であるゴッドフレイは息を荒げながらも、喜びを露にして、倒れても振り落とされても自身の肉体を武器に弱点を抉っていく。メスメルも新たな時代への希望を、まだ中性的な声で軍に宣言しながら、戦い抜く。

 俺と褪せ人は、それぞれの大技を打ち込み続け、悪神の瞳を中心に狙っていく。戦いの中で、危機管理の直感が研ぎ澄まされていくのを感じる。巨人の攻撃の隙を最大限に活かし続け、蛇綱による頭部への致命も入れながら。

 巨人の体を流れる血が抜け、力を無くしていき、巨人は再びの転倒によって地盤を破壊する。地に膝をつきながらも巨人は抗戦を続けたが、やがてぐったりと体を火の窯に預け動かなくなる。

 黄金樹の軍勢が勝ちどきを上げる。ついに戦いは終わったのだ。

 

 

 俺と褪せ人の体が透けていく。記憶の世界から離脱する前兆だ。俺は褪せ人と拳を合わせ、戦いの勝利を静かに祝う。

 消えるまで、俺は共に戦った記憶の中の軍勢を見ていた。黄金樹の時代の始まりに、ただ喜ぶ彼らの姿を。俺は、俺たちが作る新たな時代と彼らを重ね合わせた。これから彼らは、波瀾万丈の歴史を生きることになる。

 俺たちは、彼らのように哀しみを生まず。よりよい未来になるようにしてみせる。

 戦いの名残を感じながらも、俺は誓った。

 




古戦の記憶…

 古強者たちが記憶している戦争を追体験できる。最終地点にあるボスを倒すと、膨大なルーンと追憶を入手できる。
 また雑兵戦では、順次フィールドに敵が追加されウェーブごとに敵が強くなっていく。こちらは限定アイテムがないが、セネサクスの記憶であれば竜の心臓や古竜岩二種が、ガイウスの記憶であれば雫の幼生や墓すずらんの大輪二種が、それぞれ入手できる。

―――記憶一覧―――

古竜セネサクスの記憶(竜同士の戦い・雑兵戦)
メスメルの記憶(巨人戦争、第一次リエーニエ戦役、第二次リエーニエ戦役)
レラーナの記憶(第一次リエーニエ戦役、第二次リエーニエ戦役)
ガイウスの記憶(リエーニエ戦役・雑兵戦)
赤獅子の記憶(破砕戦争)


ボス:巨人たちの長
「メスメルの記憶:巨人戦争」で戦える。
エルデンリング本編における「火の巨人」を三回りも四回りも大きくしたようなボス。
HPが高く、並大抵の攻撃は通らない。大きいので、一発一発が即死級。出血や冷気など、状態異常の蓄積は遅いが、何十回も攻撃を当てれば可能。
倒すと膨大なルーンと「巨人戦争の追憶」が報酬としてもらえる。

協力NPC…少年メスメル、若き日のゴッドフレイ、巫子マリカ、その他黄金樹軍勢、トロル数十体。


「メスメルの記憶:巨人戦争」の敵モブ
巨人
「火の巨人」より二回りほど大きい敵。体力はボス級に多い。動きが早いため、走り抜けることは不可能。協力NPCと共に、一体一体倒すことが推奨される。討伐時の取得ルーンは、ボス「火の巨人」を倒したとき以上に貰える。


――――――――――――――――

「巨人戦争の追憶」

金色の大壺に刻まれた
メスメルの、巨人戦争の追憶

使用することで、かつての戦いにおける
力を得ることができる

巨人たちの山領で、火は敗れた
黄金樹の時代、その導きの始まり
(戦灰「ゴッドフレイの跳躍」、戦灰「メスメルの槍雨」、戦灰「巨人の火」のいずれかを選択し入手)


戦灰「ゴッドフレイの跳躍」

武器に戦技と属性を付与できる戦灰
付与戦技は以下、付与属性は「重厚」

マリカの王、ゴッドフレイの戦技
大きく跳躍し、敵の頭部をねじ切る
タメ使用で強化され、威力と跳躍できる距離が伸びる
(どのタイプの敵であっても張り付くことができ、効果を発揮する)


戦灰「メスメルの槍雨」

武器に戦技と属性を付与できる戦灰
付与戦技は以下、付与属性は「炎術」

少年メスメルの戦技
細く鋭い槍の雨で、敵を貫く
追加入力で、より多くの槍を降らせる


戦灰「巨人の火」

武器に戦技と属性を付与できる戦灰
付与戦技は以下、付与属性は「炎」

かつての巨人たちが使った火
巨大な火球を浮かばせ、敵へそれを着弾させる
タメ使用で強化され、更に巨大かつ威力の高い火球を飛ばす
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