大壺の前に再び戻ってきた。俺と褪せ人、それぞれが得た追憶をどう活用しようか頭を捻らせながら、一旦村まで戻ろうとする。
すると褪せ人が、俺にゴッドフレイについて訊いてくる。褪せ人はこれまでの旅路で、ゴッドフレイの瞳が褪せ、狭間の地を追放されたことは知っていると言ってきた。しかしその後については、詳しく知らないと。褪せ人が拳を顎に乗せ思索しながら続ける。自分は、共に追放された戦士の生き残りが、褪せ人を集団となしたと考えていた。貴公は、最初の王が褪せ人の祖であると、何故確信できるのだ。
俺は少し黙り込む。ゴッドフレイの長征については、彼自身の追憶からしか読み取れなかったか。蛮地の王とゴッドフレイを結びつけるものは、隠されていたように感じる。
いつものようにはぐらかすのは難しい。俺の言い訳はどうも分かりやすいからだ。それに戦いを共に乗り越え友になった褪せ人を騙したくはない。俺は八割ほど真実を、二割をぼかし、観念して言った。
「…狭間の地に残る情報は、良く知っているのだ。…この、最初に得た力によってな。俺は、牢獄に光となってやってきた。遠い、貴殿らが観測できぬ場所から。」
褪せ人はそうだろうと頷いた。俺の粒子の出どころについて、彼は推測していたのだろう。黄金樹に近い性質や、大いなる意志から力を受け取ったことから読み解いていてもおかしくない。
俺は言葉を続けた。
「故に、盤上から物事を見ることができた。ゴッドフレイは、蛮地の王ホーラ・ルー。褪せ人は蛮地より広がった、だから彼こそが祖なのだ。」
褪せ人は、待てと掌を俺に向けた。そんなにもさらりと情報を渡さないでくれと、頭を押さえながら彼は言う。マリカの正体を知った時以来の衝撃だと、小さく呟いていた。
俺はふと周囲を見渡した。近くから視線を感じたのだ。
壺巫女が、いつの間にか俺の横に立っていた。じんわりと涙の浮かばせたその綺麗な顔に、俺はうろたえた。
「戦士の壺様…私たちにまず話してくださると、思っておりました。貴方様のご出自について。」
「…壺巫女殿も何となく、感づいていただろう?」
「はい、しかし貴方様から聞きたかったのです。その日を、家族は心待ちにしておりました。あちらで、お話ししましょう?メスメル様たちも、司祭様方も来ていらっしゃいますから。」
「すまなかった。」
ごまかし続けるのも限界が来たようだ。涙には敵わない。こうなったら、ほぼほぼ話してしまおう。情報の消化に唸る褪せ人を隣に、俺は壺巫女に手を引かれて村へ戻ることとなった。
俺は村の面々に説明する。遠い場所とは何か、持っている情報はどれほどか。俺は皆が納得できる程度の情報を出した。
大いなる意志は宇宙を基とする存在だ。俺が特殊な落とし子であるという情報が大きいため、細かい部分まで言及されることはなかった。俺がエルデンリングのゲームユーザーであるという情報は、墓場まで持っていく。俺自身、この世界と繋がった理由を、大いなる意志から受け取っていないし、この地で生きるものに投げつける情報ではないからだ。また生き壺をずっと愛していることは頻繁に伝え、理解できないものへの警戒の類を抱かせないよう努力した。
久しぶりに会ったヨラーンが、幼いユビムシを抱きながら、俺に言った。
「面妖な技の訳は知れた。私は貴様に対して、特に思うことはない。ユミル卿のために貴様がなれば、それで十分だ。」
張りつめた空気の中で、これほどありがたい言葉もない。俺は壺を下げると、ヨラーンは鼻を鳴らした後、ユビムシをあやし始めた。
皆驚きを口にしていたが、俺が頻繁に光の柱を使っているのを見ているためか、どよめきは小さかった。ミケラは、外なる神に対して不信感を強く抱いているためか、俺に対してアリクイのごとき威嚇をしてきた。しかしトリーナに頭を叩かれ、頭頂を押さえてうずくまる。本気ではなかったのにと、ミケラがぼそりと呟くのが聞こえた。彼もだんだんと情動が育まれ、この村を気に入ってくれているようだ。
座っていたメスメルが口を開く。
「…貴公が、同胞に執着する理由も分かった。怪しさは強かったが…許そう。今まで以上に、同胞を生むことを。」
「メスメル公、なんとありがたいお言葉…!」
「今回のことは、記憶を不躾に覗いた罰だと思え。…それで、貴公らは我のどの記憶に入ったのだ?」
メスメルの許しに集団の緊張が緩む。俺は巨人戦争の記憶へ入ったことを告げた。そして褪せ人が今考えているのが、マリカの王ゴッドフレイのことだとも話す。
メスメルは遠くを見て、言葉をこぼす。その呼称に、俺は違和感を覚えた。
「母の王になった戦士…圧倒的な力であった。息災だろうか…。」
「ゴッドフレイは、貴殿の父ではないということなのか…?」
「そうだ。我は、母より分かたれた。褪せ人の近くにいる、我の妹もそうだ。」
メスメルから衝撃的な事実が出てくる。その情報には、いつも姿を隠しているメリナも片方の眼を大きく開け、出てくるほどだった。
彼は言った。自身に父はいないと。マレニアから生まれ出たミリセントとその姉妹のように、彼はマリカの分け身であったのだ。
メリナは饒舌に彼と話し始める。使命は思い出しても記憶の全ては戻らなかった彼女は、知りたいことが山ほどあるのだろう。メスメルは小さく笑いながら、質問へ解を返す。
褪せ人は、メスメルとメリナの会話を聞き、更に頭を悩ませ始めた。
彼ら兄妹の話が終わった。しばらくして、メリナが褪せ人に囁きかけるように言う。
「…ごめんなさい。少し、取り乱した。」
褪せ人は問題ないと首を振った。寧ろどんどん話してくれと、さわやかな調子で言う。情報の波に呑まれた彼は、どうやら吹っ切れたようだ。
メリナが首を下げ、粒子状になって隠れる。
俺はそれを確認してから、次の記憶に入ることをメスメルに話す。もう一つの戦争の記憶、リエーニエ戦役に。
「鍛錬に行くか…。あのラダゴンは、強かった。相対したレラーナやガイウス、レラーナの姉君もな。貴公らに倒せるか見ものだ。」
メスメルが挑戦的な笑みを浮かべる。彼の隣にいたレラーナが、メスメルに手を重ねて言う。姉君の元夫は、私から見ても強かった。しかしメスメルも負けないくらい強くて苦戦したと。後半の言葉の調子はとても甘く、愛する者を自慢したいという思いがにじみ出ていた。
マリカとラダゴンが同じ人物だとは、伝えていない。これは本人の口から話してもらうべきだろう。褪せ人も話さないでおくと言った。
ラダゴンとカーリア騎士の強さについて、あまりに楽しみだ。リエーニエ戦役では心を失う前のレナラが前線に出たという。記憶の中とは言え、想像の付かない強さを誇る彼女らと戦えるのは心が躍る。
俺は、村の家族たちにしっかり話を付けていく。隠し事はなるべくせず、皆と向き合うと。最後に壺巫女と話した。
「戦士の壺様、これからは沢山お話ししてください。どんな些細なことでも、私たちは嬉しいですから。」
「承知した。今から向かう修練の話も、戻ってきたら話そう。退屈しないでくれよ?」
「楽しみに待っております。…鍛錬、頑張ってくださいませ。」
壺巫女を含めて皆に誓いを立てたことで、彼女は機嫌を良くしていた。この地で得た情報と、彼女らに利益になることを必ず共有しよう。約束はしっかりと守る。
俺と褪せ人は、リエーニエ戦役の記憶へと飛ぶ。今回はまたメスメルの記憶だ。褪せ人は頭の中で情報を整理し終え、戦いに集中できるよう切り替えられていた。流石、強き戦士だ。
準備の一室には、メスメルの似姿がある。その似姿は服装こそ違うが、現在のメスメルと変わらない見た目まで成長していた。褪せ人は躊躇いなくそのサインに触れると、肩を回し気合いを入れてから霧をくぐっていく。俺も彼に続いた。
湖のリエーニエ、その過去を模した地へ足を踏み入れる。メスメルは軍勢を率いておらず単身、槍を持って敵に向かって走っていく。黄金樹の勢力で個の強さを持つ者は、まとまらずに戦いに臨んでいるようだ。
メスメルが、黄金樹の軍勢やトロルの戦士と、一時合流しながら戦っていく。あるところで、長めに行動を共にした戦士がいた。褪せ人が言うに、その戦士はテオドリックスという名であるようだ。俺も褪せ人もその名を知っていた。竜餐の儀式によって土竜へと変貌した、巨人戦争の英雄の一人だ。リエーニエ戦役にも顔を出していたのかと、俺は新たな知見を得る。
敵勢力を倒しながら湖を突っ切る中で、メスメルと俺たちは銀の鎧に身を纏った戦士と鉢合わせる。若き日のガイウスだ。彼は現在の豪快な性格とは違い、ただひたすらに素早い槍捌きで、俺たちを攻撃してくる。
俺は先ほど得た巨人戦争の追憶を使って、巨人の火を扱えるようにし、ガイウスへ巨大な火球を投げつける。滅びの火は、記憶の中のガイウスに有効打を与えられているようだ。褪せ人は「グラングの岩」や、新たに手に入れたと彼自身が自慢してきた「引力弾」など、搦め手を使って素早く動くガイウスに攻撃を当てている。
メスメルとガイウスの鍔迫り合いは何度も起き、実力は拮抗しているようだった。俺たちが戦いに加わったことで、強さの均衡は崩れ、やがてガイウスがその場を離れることで一旦戦いの決着がつく。
進んでいくと、また別の黄金樹の軍勢がメスメルと合流した。そして、記憶の終点に達したとき、そこにはカーリアの騎士たちがいた。黄金樹の軍勢が、どんどん蹴散らされていく。
カーリアの騎士は二十名に満たない集団だったという情報があるが、この場にいるのは五名だ。トロルの騎士一人に、褪せ人と同じくらいの背である騎士が四人。褪せ人に見てもらうが、知る名前はいないとのことだ。ゲーム上で出会うことのできなかった騎士たちなのだろう。俺は喜びで壺を震わせながら拳を構え、彼らに肉薄した。
トロルのカーリア騎士は、同じく黄金樹勢力に加わったトロルの戦士たち相手に、魔術を以て打ち倒していた。数の有利があり、それでいて魔力防護をしているというのに、カーリア騎士の動きに敵わず、押されている。
カーリア騎士の一人が、見た事のない魔術を放った。月を宙に浮かばせ、俺たちにぶつけてきたのだ。レナラやレラーナ、ラニが用いる月の魔術。それを騎士も使えるとは。魔力防護を剝がされた黄金樹勢力は、更に押されていく。
魔術に関しては俺の体の丈夫さがあまり役に立たない。力任せは止め、一発一発カーリア騎士たちの攻撃の合間を縫って拳を突き出す。複数の騎士が展開する輝剣に、褪せ人はじわじわと体力を削られているようで、聖杯瓶の消費が早い。
中々決め手に乏しい戦いをしていると、救いの手は差し伸べられた。赤髪をたなびかせ、一人の戦士が乱入してきたのだ。英雄ラダゴンの救援だ。
ラダゴンは、スクリーン上で見たように壊れてはおらず、少し暗めの白い肌を露出させている。細身でありながら、体には筋肉が詰まっている。その右手に持ったメイスは黄金に光り、五人のカーリア騎士を相手取る。ラダゴン一人が来ただけで、こちらが優勢となった。
カーリア騎士が一人また一人と離脱していき、後もう少しで勝利を掴めるところまで来た。トロルのカーリア騎士が足を引きその場から退却しようとした、そのとき。リエーニエに聳え立つ、大きな建造物。レアルカリア魔術学院から、彗星のごとき魔力の奔流が放たれ、湖を穿った。それにより、黄金樹の戦士の幾ばくかが倒れる。広範囲かつ、凄まじい威力の魔術だ。
軍勢の中の一人が声を震わせて呟いた。これが、カーリアの女王、学院の長レナラの力か。
小さく見えるその人影は、別の場所に向かって奔流を放つ。ラダゴンがそれを見て、また戦いが起こっているところへと走り去った。
俺たちの体が透けていく。第一次リエーニエ戦役の記憶はここまでのようだ。レナラの底知れない強さを感じながらも、次の戦いで彼女と戦えることを期待して、俺は完全にその場から消えた。
―――ボス情報―――
ボス:しろがねの戦士ガイウス、カーリアの騎士たち
「メスメルの記憶:第一次リエーニエ戦役」で戦える。道中のボスとして若き日のガイウスが、ステージ最後のボスとしてカーリアの騎士たちが相手となる。
しろがねの戦士ガイウスは、重力の技を使わないが、その分動きが苛烈になっている。ダウンも取りづらい。
協力NPC…トロルの戦士テオドリックス(道中のみ)、黄金律の戦士たち(道中・最後のボス戦)、赤髪のラダゴン(最後のボス戦)
ボス:黄金律の戦士たち、赤髪のラダゴン
「レラーナの記憶:第一次リエーニエ戦役」で戦える。道中のボスとして黄金律の戦士たちが、ステージ最後のボスとして赤髪のラダゴンが相手となる。
協力してくれる学院の長レナラは、遠距離からの援護を行う。
(「メスメルの記憶:第一次リエーニエ戦役」とは別のロケーション)
協力NPC…カーリアの騎士たち、学院の長レナラ(最後のボス戦のみ)
――――――――――――――――
―――アイテム情報―――
「第一次リエーニエ戦役の追憶:炎(月)」
金色の大壺に刻まれた
メスメル(レラーナ)の、第一次リエーニエ戦役の追憶
使用することで、かつての戦いにおける
力を得ることができる
黄金と月の戦い、両者引かず
呪われた赤髪は、英雄となった
(炎の場合、戦灰「黄金の魔力防護」、戦灰「ラダゴンの殴打」のどちらかを選択し入手)
(月の場合、戦灰「カーリアの剣技」、戦灰「カーリアの月」のどちらかを選択し入手)
戦灰「黄金の魔力防護」
武器に戦技と属性を付与できる戦灰
付与戦技は以下、付与属性は「神聖」
かつての黄金樹の英雄たちが用いた祈り
その戦におけるあり方
周囲の味方を含め、魔力カット率を大きく高める
戦灰「ラダゴンの殴打」
武器に戦技と属性を付与できる戦灰
付与戦技は以下、付与属性は「神聖」
赤髪の、後に英雄となったラダゴンの戦技
力強く跳躍し、武器に黄金の光を纏わせ
思い切りそれを地面に叩きつける
追加入力で、もう一度地面を叩く
戦灰「カーリアの剣技」
武器に戦技と属性を付与できる戦灰
付与戦技は以下、付与属性は「魔力」
カーリアの騎士たちの戦技
怯みを無効とし、隙の無い連撃を放つ
追加入力で、魔力の輝剣を素早く三つ展開する
戦灰「カーリアの月」
武器に戦技と属性を付与できる戦灰
付与戦技は以下、付与属性は「魔力」
王家となされたカーリアの象徴、月の魔術
その戦におけるあり方
宙に月を呼び、敵に向かわせる
その月は、触れる魔術のすべてを消滅させ
当たった者の、魔力カット率を大幅に下げる
追加入力で、再び月を呼ぶ
学院を魅了した、美しい月の似姿
それは輝石の騎士たちの双眸にも、しかと焼き付いている