育成好きのパルデア転移   作:四季 雅

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いきなりポケモン世界

 

 暗闇の底から浮かび上がってくるような感覚。

 徐々に意識もはっきりしてくる。

 

 風が頬を撫でる。土と草の匂いを運び、葉擦れのサワサワとした心地良い音を奏で、更には近くを流れる川のせせらぎの音も聞こえる。

 この感覚は、外か? はて、俺はなんで外にいるんだ?

 

「……ッ!?」

 

 意識が覚醒すると共にガバッと跳ね起きる。

 

 そうだ、俺はポケモンプレイ中に変な声が聞こえて、急に意識が遠くなったんだ。

 

 そんなことを考えていたその時。

 

「リルッ!?」

 

 真横から鳴き声が聴こえ、その声の主が少し遠ざかる気配が。

 なんだとそちらを向いてみると──。

 

「…………マリル?」

 

 俺が急に起き上がったからか、驚いた表情をした青い生物、そう、画面越しになら見たことのあるポケモンのマリルが実際にそこに居た。

 俺が目を向けたからだろう、更にビクついて逃げて行ってしまった。おくびょうな個体なのだろう。悪いことをした。

 おくびょうでも寝ている俺のことが気になって近くで見てた好奇心のある子なのか、それとも倒れてる俺を心配する優しい子なのか、どっちかかね?

 

 ……ってそうじゃない。

 

「……なんでマリル?」

 なんでマリルがここに居るんだ?

 

 ってちょっと待て!

 

「……声」

 声までおかしくなってる!

 

「……話し方」

 ぬあああ! 話し方までも!

 

 

 内心は激焦りなのに対し、俺の口から出力されるのは実に淡々とした激カワウィスパーボイスだ。

 主人公はこんな声がいいなー♪ と妄想しながらポケモンをプレイしていた時の理想その物が自らの口から流れてくるバグ。まるで意味が分からんぞ!

 

 いや、そうだ。そのポケモンだよ。

 ゲームの存在のはずのポケモンが現実に居たという事実。

 そして意識を失う前の謎の声。

 それらから考えると……嫌な予感がする。

 

 夢の可能性は除外。焦りから意識ははっきりしているし、これだけ思考が自由な明晰夢など俺は見たことがない。頬をつねるとかいう古典的方法は、そもそも夢の中でも痛みを感じる時は感じるのでとる必要がない。

 

 周囲を見渡してみると、どことなく見たことがあるような景色。どうやら俺は川の畔に生えた木の下で眠っていたらしい。

 近くの草むらではグルトンがフゴフゴと鼻を鳴らしており、川の中にはさっきも見たマリルにブイゼル、コイキング等の水生ポケモン達が楽しそうに泳ぐ姿が。川辺にはズピカも浮いている。

 正面の遠くには滝の流れる岩山が見える。

 

 ……この時点でもう俺がどうなったのかは確定したようなもんだが、自分の確認もせねばならん。

 

 身体を見下ろしてみると、少しだけ膨らみのある胸とスター団の改造制服。

 ほっそりした腕と小さな手にはパープルの指ぬきグローブ。

 細いけれども女の子らしい曲線を描いたおみ足*1は紺に星の入ったプリントタイツに包まれ、歩きやすそうなパープルのスニーカーを履いている。

 地面に寝ていたからか背中にあるはずのパープルのフリルリュックは傍に置かれ、頭のパープルぽんぽん帽は外れていた。

 

 ……うん、俺が最後にポケモンをプレイした時のままの、グレープアカデミー生らしく紫多めのコーデだった。

 

 もう役満だわと思いつつ、最後の確認だ。

 

 フラフラと立ち上がり、いつもよりだいぶ低い視線に違和感を感じながらすぐ傍の川へと移動。急勾配に気を付けつつ自分の顔を映すと、そこには予想通り、紫のつやつやパッツンロングストレートヘアーに眠そうな紫のジト目をした、俺がポケモンバイオレットで作成した通りのプリティフェイス主人公が居た。

 

 いくらバイオレット主人公だからって、改めて自分の姿になってみるとちょっと紫やり過ぎ感あるなコレ……可愛いとは思うけども……。

 

 

 さて、どうやら俺は自分が作成したポケモンの主人公の姿でポケモンの世界に来てしまったようだ。

 いやなんでやねん。意味分からん……。

 確かにね? ポケモンの世界に行きたいとは言いましたよ?

 でもいきなりTSさせられた上に言葉の出力変えられてポンとそこら辺に放り出してくれ、とは言ってないんですわ!

 

 あの時聴こえた声からして、邪神案件か……?

 あんなちょっと呟いただけで転生してるなら世の中のポケモンユーザーの大半が居なくなってるだろ……。

 あと俺じゃなくてあの友人の方がしてないのは明らかにおかしいじゃん……。ブツブツ……。

 

 

 そんなどうしようもないことを考えていると、もっと重要なことを思い出した。

 むしろ真っ先に確認するべきだったかもしれん。

 

 俺はこうしてゲーム通りの姿になった。なら、俺が育てたポケモン達は……?

 

 その考えに至った瞬間、バッと自然に腰元に手をやっていた。

 その動作を俺はしたことがないはずなのに、まるで慣れた手付きでだ。

 そして当たり前の動作の結果、当たり前のように手の中にはボールが収まっていた。

 手持ちの6匹を入れるボールホルダーは全て埋まっており、その端……フレンドボールを握っている。

 

 そうだ。ゲーム通りのはずなら、俺はこの中身を知っている。

 その強さと使い勝手、見た目、……何より、彼女とのストーリーや性格に惚れ込んで、ゲットしてからずっと手持ちから外したことのない彼女が。

 

 

 心臓が早鐘を打つ。

 

 

 俺の一番のお気に入りのポケモンとなった彼女が、中に居る。

 

 ゆっくりと、震える手で傍に放ると、ポン! と軽い音とフレンドボール特有のエフェクトと共に、中のポケモンが姿を現した。

 

「がお! ……ぽに?」

 

 通常は緑色メインの半纏のようなその身体は、今は赤と黄色で彩られている。

 

 出番だと思ったのか、気合いの入った声を上げたが、目の前に敵がいないのが分かると不思議そうな声に変わった。

 

 赤い仮面を外すとこちらに振り向き、その星型の瞳を向けてくる。

 

「……ぽにこ」

 オーガポン。

 

「ぽに! ぽにおー!」

 

 名前を呼んでおいでおいでと手招きすると、可愛らしい顔を綻ばせて俺へと駆け寄り、抱き着いてきた。

 

 やべぇ、めっちゃ可愛い。

 ゲームから現実になったからか感情表現も豊かになってるし、何より実際に触れ合えることの感動よ……。

 

「……ふふ」

 

 ……ハハハ。訳の分からない状況だが、こんな経験ができただけでも割りと満足かもしれない。

*1
もう自分の足だからこの表現は正しくはないのか?




喜んでくれたならこちらも嬉しいセウス。いやぁ、いい仕事したセウス。





 主人公がどこで目覚めたか分かる方はなかなかのパルデアフリーク。
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