少し時間は遡る。
ゲームではすぐの距離だったが、リアル世界になった結果、少し時間がかかった。邪神もリアル尺度で創ったとか言ってたしな。今となっては一日が70分ちょいで変わる訳じゃないはずだし、ゲーム内で数分だった場所へも数十分とか数時間とかかかるようになってるんだろう。
プラトタウンも、“タウンとは?”と言いたくなるような規模だったのがかなり広くなり、家々も増えている。そらそうだわな。
この分だと主人公とネモの家があるだけの自称タウンである辺境、コサジタウンも立派にタウンしているのだろう。飛んでる時に少し見えたテーブルシティを始め、他のシティなんかもどれだけデカくなったのか行くのが楽しみだ。
……ああでも、目的地に一瞬で着くファストトラベルはないのか。それは不便だなぁ。
空飛ぶタクシーはタクシーだというからには呼んでから来るまで待ってる時間もあるだろうし、そもそもうちの子達の方が絶対速い。呼ぶメリットがなくなっちまったなこれ……。まあ折角だし一回は乗ってみるけども。
さて、いざプラトタウンへ! と入ろうとしたところでふと思い出したことが。真下を見やるとそこには、スター団の改造制服に包まれた、我が──というには未だ慣れぬその身が。
「……あぶあぶ」
危ねぇええ! このままだと後々に面倒な誤解を生むところだった! セーフセーフ!
ゲーム開始直後の今の段階では、スター団は不法に場所を占拠したり道を塞いだりする、勧誘の厄介な不良集団という扱いだったはず。クソダサグラサンとヘルメットをしてないとはいえ、そんな連中と同じ格好の人間が町中に入ってくるのを良く思わない住人は多いだろう。
後でアオイにも“あれ? あの格好って……”とか思われたら困る。ただでさえ口下手なのに、何故その服を持っているのかの説明もできん。気付いて良かったぁ!
木陰にサッと隠れて着替えることにする。
どうするかな。普通の制服が無難なんだろうが、目的はアオイと話すことだ。その辺の生徒と同じでは、如何にこのプリティフェイスといえども埋没して話し掛けてもらえない可能性もある。かといってキタカミやブルベの服はこの辺では絶対見ないし、奇抜でモブと呼ぶにはインパクトがデカ過ぎるだろう。なら、これがベストかな。
ニューせいふく(あき)。
俺個人としても制服シリーズの中で一番好きなやつだったりする。上はしっかり柄入りの上着を着込みつつ、おみ足のアピールも忘れない。素晴らしい。
ちゃんと生徒でありながら他の生徒達とは違う特別感。この序盤でこれはいい感じじゃないか?
うん、これでいこう! 何か役割がありそうな特別なモブを醸し出せるはず! レッツお着替えタイム!
──こらこら
ちょっとした妨害があったりつつもしっかり着替え終えた。鏡で確認しても変なところは見当たらない。よし。
そうだ、折角だし帽子も替えとくか。適当に……んじゃこの紫の中折れハットで。今度こそよし。
「……れっつごー」
それじゃ行きますか!
まあ、とは言ったもののバトルジャンキーに見つかるのは困るからこのまま西口で待機するんですけどね。あのバト狂にポケモンを大量に育成している俺というエサを与える訳にはいかない。折角アオイという原石を見つけたんだから、しばらくはそれで満足しといて下さい。
待つことしばし。改めて荷物の確認をしていると、道の向こうから帽子に制服の美少女の姿が現れた。
おお、あれこそアオイ! 右側の三つ編みもみあげ。公式イラストそのままの姿だ! リアルとはいえ直ぐ分かるぞ!
……そういや今気付いたけど、アオイがこっちまで来る、プラトタウンを見て廻るって前提で行動してたが、早く先々進みたいって感じの性格だったら終わってたな……。いやまあ来たからいいんだけどさ……。
アオイはアイス売りやら他の人のポケモンやらに気を取られたりしながらもこちらの方へと歩いてくる。好奇心旺盛だなぁ。
お、俺の存在に気付いて近寄ってきた。よし、こっからがいい感じのモブとしての腕の見せ所さんだ!
「こんにちは!」
「……やっ」
はいこんにちは。
いや、やっ、て。ちゃんと挨拶してるつもりがコレかい。まあ気を取り直してと。
「……見ない顔。……転入生?」
見たことない生徒だね。転入生?
まあ俺はそっちをめっちゃ知ってるんだけどな。そんなことを一切
「はい! 今日から転入することになったアオイっていいます! よろしくお願いします!」
こちらの無口ぶりは気にせず、元気溌剌にニカッと笑い自己紹介してくれるアオイ。笑顔が眩しいぜ……。
「……ノルン。よろしく。……なら、先輩からプレゼント」
俺はノルンっていうんだ。こちらこそよろしく。はいこれ。転入生なら色々と入り用だろうし、先輩からのプレゼントってことで。
序盤では嬉しいだろうモンスターボールとキズぐすりを10個ずつあげようね……。
おじさんのきんのたまだよ! ってやりたかったけどまだ序盤も序盤だしやめておくことにする。でもその内やってやろ。
「わぁ、いいんですか? ありがとうございます!」
「……問題ない。……がんばって」
腐るほどあるからこれくらい何の問題もないさ。んじゃ、頑張ってね。
ここで片手をふりふり。
よし完璧! 無口系だけど冷たい訳じゃない良い先輩感が出せたはず!
いやぁ、ここで無事にアオイとの繋がりを得られて良かった。これで今後近くに居ても不自然じゃないな!
とか心の中でガッツポーズを決めていると、アオイから予想もしない言葉が掛けられた。
「……あの、良かったら勝負しませんか?」
「……えっ」
えっ。
ワッザファッ?
「変わってますけど学園の制服に、変わったボールで埋まったその腰のボールホルダー。一味違う凄い先輩トレーナーとみました! そんな先輩とぜひ勝負してみたくて!」
「……あっ」
あっ。
しまった! そこまでは考えが回ってなかった! 生徒ならポケモン持ってて当然だしなんならホルダー普通に見えてるわコレ!
活発なアオイの性格なら、俺に勝負を挑んでくる可能性があることを失念していた。
どどど、どうするよ!?
「……わたしたち、とても強い。……やめたほうがいい」
俺のポケモン達はとんでもなく強いからやめといた方がいいんじゃないかなーって……。
「強いなら尚更勝負したいです!」
ふぇぇ……押しが強いよぉ……。そんなに目をキラキラさせて迫ってこないで! なんか
その時、俺の脳に電流走る──!
「……なら、せめて6匹揃える」
じゃあ、せめてポケモン6匹揃えてからにしよう。
俺の目は、空きのあるアオイのボールホルダーを捉えていた。これを理由にするしかない……!
埋まってても不思議じゃないが、これから学校だし一応は急いで来たのかね?
「……しっかり準備してから。おけ?」
あと俺にも準備時間を下さい。頼む。
「そうですね……強いならこちらも相応の準備が必要か……。分かりました! じゃあ揃えてきますから待ってて下さいね~!」
アオイは手をブンブン振って走って行った。
……ふぅ。一時しのいだ……。
あばばばばばえらいこっちゃで~! どうするよ!?
この手持ちでアオイをフルボッコにするのは憚られるし、戻ってくる迄に俺もいい感じなのをその辺で揃えとかないと!
と、とりあえずは……。
「……
「リュ~!」
着替えた木の裏へ移動して手持ちを交換し、現実的に速そうな
……すばやさ種族値80? 知らん! 空を飛べて図鑑説明的にも速そうでかつ安定して運んでくれそうっつったらカイリューだろ! 急ぎのぶっつけでドラパルトに乗れるか? 俺は怖いから嫌だね!
あっ、
「……急ぎで移動したい。お願い」
至急移動したくてさ。頼める?
「リュリュ〜!」
頼られて嬉しいのか、ニッコニコな
「……まずはあっち」
まずは向こうの方から行ってみよう。
「リュッ」
頷いた
「リュッ!」
──俺は風になった。
ここから物語が始まっていく。出会いとは良い物でセウスねぇ……(ボリボリ)
それにしっかりポケモンの強さも再現できてる様で何よりでセウス(ボリッボリッ)
ノルン
育てたポケモン達にはみんなニックネームを付けている。
ただ単に名前からや鳴き声から、フィーリングでなど全てはその時の気分次第。
ニックネームの由来は某カバ霊獣から。
急ぎって言われたのでスタートにしんそくを使った。地面にはクレーターができた。