君(キヴォトス)なんかゲームと(雰囲気)違くない? 作: 奥床式住居
嗚呼、なんでこうなっちゃったんだ。
ゲームならどんなに辛い道程だったとしても、必ずハッピーエンドに辿り着くじゃないか。
────────雨音が俺を責めてくる。
上から、下から、右から、左から、前から、後から、目から、耳から、口から、鼻から、表から、裏から、白から、黒から、俺から。
そして唯一無二のお前から。
頭の奥がガンガンと響く、黒板を引っ掻いた様な不快な音が聞こえる気がする。
雨と鉄の臭いで口の中で吐瀉物の味が滲み出す。
「ぅ、お″う″ぅえ!」
雨と鉄と吐瀉物と罪悪感と孤独の臭いで世界が覆われる。
世界が徐々に色を失っていき、モノクロテレビの様になっていく。
耳がもはや完全に音をシャットアウトし、雨音すら聞こえなくなりバクバクと激しく鼓動する心臓と過呼吸気味の自分の呼吸だけになる。
再び、目の前の彼女へと目を向ける。
綺麗だった藍色の髪は赤に染まり、群青色の瞳は仄暗く濁り何も写していない。頭上で煌々と輝いていた光輪は今はもうそこには元からそうだったかのように存在しない。
震えで手足に力が入らない為、体を泥で汚しながら近くへと這いずりよる。
飛び散った肉片と割れた頭蓋から零れ落ちる脳味噌。こんな姿になっていてもまだ、『まだ助けられる』なんて考えている自分に嫌悪感を抱く。
まだ目の前の事を現実だと認められないだなんて。
これは必ずハッピーエンドを迎える様な虚構なんかじゃない無慈悲で残酷な現実なんだと、なんでまだ理解出来ないんだ。
「ごめん。」
必死に声にならない様な二酸化炭素を吐き出して、ようやく絞り出した言葉すらも雨音に溶けて消えるような弱々しくか細い音だった。
「ごめん!ごめん!!ごめん!!!」
意識の無い人型のたんぱく質に何度も謝罪をしながら、ゆっくりと上に乗った鉄骨を退ける。
散らばった■■■をかき集めて足りない部分に押し当ててくっ付ける。
そして、そのまま彼女を抱き上げて当てもなく歩き始める。
雨が降っていて良かった、血が洗い流されて顔がよく見えるから。
曇天の曇り空で良かった、太陽の光が暗くて顔がよく見えないから。
もうどれだけ歩いたんだろう、足の疲れや腕の痺れなんて全部無視してとても長い間こうしていた気がする。
ふと、足を止めて周りを見ると俺達の拠点だった。
「ずいぶん遠くまで、歩いて来ちゃったなあ。」
「俺はもうヘトヘトだよ、お前もそう思うだろ?」
腕に抱きかかえているモノへ微笑みながらそう問いかける。実際、少したりとも笑えてなんていないが。
「……苦しいなあ。」
依然、雨が止む気配の無い空へと顔を上げて呟く。
神秘なんてもんがあるなら、今すぐにでも奇跡を起こして欲しい。
心の底からそう願う。
すると、土砂降りだった雨が嘘だったかの様に晴れ始めて空には大きな虹が架かる。
「っ!ぁ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″ぁ″ぁ″あ″あ″あ″!!!」
雲一つ無い快晴の下で、1人の少女と1つの少女だったモノが眩い光に包まれていた。