君(キヴォトス)なんかゲームと(雰囲気)違くない?   作: 奥床式住居

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思った以上に反響があって驚きました。いや、本当に。
こんな拙い文しか書けませんが、是非これから先もお付き合い頂けたら嬉しいです。


vol1.対策委員会と運び屋編
#1 キヴォトスに来たみたいだぜ、テンション上がるなぁ~


─────見知らぬ天井だ。

 

 1回言って見たかったんだよ、これ。

 

 

 …………いや本当にどこだよ!?俺の家の天井こんなにボロボロじゃねえし、ちゃんとベッドで寝た筈なのに体痛えし!

 

 取り敢えず起き上がって部屋の中を見渡して見るけどまっっっっったく見覚えの無い部屋だった。

 置いてある家具も見たこと無いし、部屋の造りも既視感ゼロ。ガチでここどこ???

 

 訳分かんないし探索するか。

 

 そう思って床に手をつき、立ち上がろうとすると手の下に何か硬くて小さい物がある感覚がする。

 

 得体の知れないものが手の下にある事に驚いて、勢い良く飛び跳ねながら立ち上がる。

 

ゴンッ!

 

「っ~~~!!!」

 

 後頭部を家具で勢い良く叩く、まぢいたい……

 

 先程まで手を置いていた所を見ると、睡眠薬の瓶とその中身の錠剤が散らばっていた。

 

「へ?」

 

 見知らぬ場所で倒れていた自分、中身が散らばった睡眠薬……

 あっ、ふ~ん(察し)

 

 散らばった睡眠薬が置いてある部屋、気づいたら床で倒れていた自分、全くもって見覚えの無いボロ屋……

 誘拐の線が1番高いが、それにしては生活感のありすぎる部屋だ。第一、俺の家は高い身代金を払える程金持ちじゃない。

 今考えても分からない事は考えるだけ無駄。そう切り捨てて部屋の中の探索を始める。

 

 まずは、机の上の物からかな。

 

 そうして机の上を見ると、いきなりビンゴ!スマホと財布が置いてある。

 現状把握の為だ、金は抜かない。でも身分証明書位は見たいからちょっと確認させていただこう。

 

鶴喰(つるはみ)トオル……?この子がこの財布とスマホの持ち主か。」

 

 中から出てきた学生証には、薄紫色の髪にビー玉の様な赤色の目をした美少女の写真が貼ってあった。

 

 ……そしてその頭上にはヘイロー。

 

「え?ブルアカみたいな写真?」

 

 言わずとも知れている、透き通るような世界観()で送る学園RPGのブルーアーカイブの象徴の様な物の内の1つであるヘイローが彼女の頭の上には浮かんでいた。その形は馬車の車輪の様なシンプルなもので、紅色に輝いている。

 分からずに放置していたピースとピースが繋がり始め、非現実的な妄想が頭に浮かんでしまう。

 部屋中を走り回り、鏡を探す。洗面所へと辿り着き、備え付けの鏡越しに自身の今の姿を確かめる。

 

「まじ……?今の俺、キヴォトス人って事か……。」

 

 自分が喋るのと同時に鏡の中の女の子も口を動かす。

 薄紫色の髪と赤い瞳、後ろで軽く1つに結んだ髪に作中では全く見たこと無いどこかの学校の制服。そして飄々と浮かんでいるヘイロー。

 

 元から男の中では声が高い方だったし、寝起きは暫くの間更に声が高くなってほぼ女の子みたいな声が日常的に出てたから声では気付かなかった。

 

「これが本当に俺?夢か、いや夢だ。」

 

 頬をつねるが、ただ痛いだけ。これは現実なんだと段々と理解し始める。

 

「ブルアカ本編も一応百鬼夜行編まで進めてるし、偶に二次創作も読んでた。これだけの知識があればこの世界(キヴォトス)でも生きられる……はず。」

 

 そう割り切って再び探索へと戻っていった。

 

◆◆◆◆◆

 

 探索の結果、この子……トオルは特大の爆弾を抱えてる事が分かった。という事だけ伝えておこう。

 

 やっぱりぶっちゃけると、今の(鶴喰トオル)はロイヤルブラッドだった。

 もうちょっと詳しく言うと、アツコの親戚。

 これ以上はよく分からなかったし、今がブルアカ本編においてどの時間軸なのかも把握出来て無いからもしかしたらエデン条約編は終わっているかも知れない。

 そんな一抹の不安要素を抱えながらも外へ探索に向かうことにした。

 

 

 

 

 

─────外は、ブラックマーケットでした。

 

 最初からハードモード過ぎないか?なんでよりにもよってこんな危ないところに住んでるんだよ。無所属なのは知ってたけど、そんなにお金無かったの?

 いや、お金があったらあんなボロ屋に住んでないか。

 

 道を歩きながら考え事をしていると、バンッ!と肩の辺りに何かがぶつかる感触がある。

 

「アぁ!?どこ見て歩いてんだよ、嬢ちゃん!」

 

 この小物感溢れる物言い。

 

「せっかくアタシら気分良かったのにさあ、あんたの所為で最悪の気分になっちゃったじゃん。」

 

 この時代遅れのスケバンファッション。

 

「そうだ!そうだ!」

 

 間違いない。

 

「スケバンA,B,Cだァ!!!」

 

「「「は?」」」

 

 ブルアカ世界のモブ代表と言っても差し支えない彼女達は任務とかイベントとかで大体雑魚敵役として出てくるキャラ達。つまり、バケモノ揃いのネームドよりも弱い一般人寄りの生徒ということ。

 今の俺の力量がどれくらいのものなのかを確かめるために、この子達には犠牲になって貰おうか!

 

「何言ってんのかは分からねぇけど、スッゲえ馬鹿にされた事は分かった!お前ハッ倒してやるよ!」

 

「かかってこい!スケバンA!」

 

「その呼び方止めろぉ!!!」

 

 そう言って、顔を真っ赤にしたスケバンAがミニガンを連射してくる。

 

 普通の人間なら即死級の攻撃だろう。しかし、今のこの体はキヴォトス人のもの、弾丸程度じゃ致命傷を負わせられn

 

「いったぁぁあああ!!!!!!!!!!!」

 

 なんだよこれ、死にはしないけど滅茶苦茶痛てえ。確かに、弾は皮膚を貫通してないし青痣以上の怪我は負ってないけど十分ダメージは通っている。

 なにが「痛ッ!」だよ、バチクソに痛てえ!

 

 巫山戯てる場合じゃ無い、今すぐに反撃しないと。

 

 そう思い自分も銃を取り出そうとするが、何処にも銃が見当たらない。

 

 そうだった、何も持たずに家を出てきたんだった。

 

 この状況、逃げないと本当に死ぬ……

 

「すいませんでしたあぁぁ!」

 

「逃がすかぁ!」

 

「待てコラァ!」

 

「そうだ!そうだ!」

 

 痛みで体が竦んで動き難いし、この体はキヴォトス人にしては弱すぎるし、スケバン達は普通に強いし。

 まだここをゲームだと思っていた過去の俺を助走を付けてぶん殴りたい。

 

 必死に走っているが、スケバン達を本当に少しずつ離していっている程度の速度しかでず、未だに奴らの射程圏内。このままではブラックマーケットで野垂れ死ぬ事になってしまう。

 命の危機を感じながら無我夢中で走った。

 

◆◆◆◆◆

 

 その後はそれはもう大変だった。背中や脚、腕など全身に反弁無く青痣が出来ていて走っている最中に意識が飛びかけた。

 この経験から分かった事は、俺の今の体のスペックはキヴォトス人の中でも下な事とブラックマーケットを散策するときはちゃんと銃器を携帯しておかなければならない事の2つ。

 この2つは必ず肝に銘じておこう。

 

 そして、もう1つ重要な事がある。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()という事。

 

 元は様々なテナントが入っていたであろうオフィスビルの廃墟が立ち並んでおり、人の気配を全くもって感じない。

 再び「どこだここ」状態である。

 

 取り敢えずちょうど目の前にあるボロボロの廃墟のなかでも比較的綺麗な建物に入ってみる事にしよう。

 

 1階が丸々ガレージとなっていたため、薄暗い階段を登り2階の扉から中へと入る。

 

「しつれいしまーす……」

 

 少し不気味さを感じる場所の為、無意識に少し声が小さくなる。

 しかし、意外にも室内は埃臭い事を除けば小綺麗でここを使っていた(もしくは『いる』)人物がちゃんと整理整頓が出来るマメなタイプだと分かる。

 

 室内には、物がまとめられたデスクと客と話をする為の物であろう応接スペース、そして奧の方には給湯室や仮眠室などがバランスよく小さい部屋に纏められていた。

 

 色々な物が置いてあるデスクを一旦後回しにしてそれ以外の場所を順に回っていくが、小さい部屋の更に奧の方に1階のガレージに続く階段がある事以外は特段何も無かった。

 

「最後はデスクの上か……」

 

 デスクの上には何やら訳の分からない書類類が綺麗に一カ所に纏められており、天板の真ん中にはバイクのキーと思わしき物と1枚のメモ用紙がテープで貼ってあった。

 

「メモ用紙?予定とかを書いて貼ってるのか?」

 

 粘着力の弱くなったテープを剥がして、メモの内容に目を通す。

 

『このメモを見つけた奴に、この《運び屋》と1階のガレージにある《バイク》を託す。自分のやりたいことを貫き通せる奴である事を祈る。』

 

「う、う~ん……見なかった事にするかあ?でもなあ……こういう物語の始まり的な展開にちょっと憧れてたしなあ。」

 

 体感時間で1分程悩む(受ける理由を作り出す)

 

「そ、そう!キヴォトスに転生?憑依?してきて目標も無いし、生活費とかも稼がなきゃだし?あと!力や体が弱い分逃げたりする時に追いつかれないような移動用の『足』があったほうがいいしな!うんうん!」

 

 誰も居ない空間に向かって早口で理由をまくし立てる。誰が聞いている訳でも無いのに、こんな事を言ってしまうのは前からの癖だ。

 

「はぁ~、誰に弁解してるんだ?俺は。」

 

 バイクのキーには花のストラップが付いており、キーリングに人差し指を通して回しながらガレージへの階段を降りる。

 

「バ・イ・ク~♪バ・イ・ク~♪」

 

 ガレージへ辿り着くと、丁度ガレージの中央に布を被った何か……いや、バイクがあった。

 勢い良く布を捲ると、白と黄色のツートンカラーで塗装されたスーパースポーツのバイクが姿を表した。

 

 鍵の差し込み口を探して、カチャッと鍵を差し込む。

 

 バイク特有の格好いいエンジンの音が鳴り、数種類のボタンが付いている操作盤の上にヘイローが浮かぶ。

 

「…………ヘイロー?」

 

 ライトが独りでにカチカチと数回点滅し、ハンドルが勝手に回りスピードメーターの形をしたヘイローがそれに同期して針を動かす。

 

「えっ、ちょっ、な、なななななななななんで?」

 

 一頻り勝手に動いたバイクのどこかに付いたスピーカーから男とも女とも取れない中性的な合成音声で誰かが話始める。

 

『いや~、やっぱり久方ぶりのシャバの空気は最高……いや、埃臭いですね。ミズハ、貴女とあろうひ、と、が……?』

 

「ど、どうも。」

 

『えっ?えぇ~~???誰ですか!?貴女!ミズハは?ミズハはどこに?』

 

「ミズハ……なる人は知らないけど、俺の名前は」

 

 なんて名乗れば良いんだ?前世の名前?今世の名前?せっかくキヴォトスに転生したんだ、ならこれからは今世の名前を名乗っていこう。

 

「トオル、鶴喰トオルだよ。」

 

『わ、私の名前は《スクラップ》です?』

 

 このキヴォトスで右も左も分からない俺が初めて出会った相手は、喋るバイクでした。

 

◆◆◆◆◆

~1年半後~

 

「なあ、スクラップ……」

 

『なんです?トオル。』

 

「お前さあ、自己紹介する時に『古今東西バイクは喋る物です!』って言ってるじゃん?何回聞いても喋るバイクとか俺は知らねえんだけど。」

 

『そんな馬鹿な!しっかりと私のデータベースには喋るバイクは古今東西存在すると記録されています!』

 

「そっかあ……」

 

 仕事が終わり、拠点であるブラックマーケットの廃オフィスビル群へと帰る途中にD.U.シラトリ区の第3業務地区を通っていた。

 ふと、店頭に置いてあるテレビを見ると

 

『連邦捜査部シャーレに先生が……』

 

 など、全てのチャンネルでシャーレについて触れている。

 

「遂に来たか……これから忙しくなる……よし!スクラップ、ラーメン食い行くか!」

 

『食べるのはトオルだけでしょう!いつも言っていますが、私にも嗅覚センサーが……』

 

 スクラップの話を聞き流しながら、これから起こる数々の事件について思案する。

 さて、ここからが本番(本編)だ。

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