【悲報】一般無能転生者さん、帝国からの独立を謳うテロ組織の黒幕に仕立て上げられてしまう   作:IRA

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君とまた会える日々を

 

 

 ジャガイモの疫病発覚により、ベールランドが暗く覆われてから三ヶ月が経った。備蓄のジャガイモは底を尽き、耐え切れず病で腐ったジャガイモを食べた者達が床に臥せていった。

 

 グレースランドから与えられた援助は僅か。一週間前、結束した善良な一部の民間人から八百万人のベールランド人口の前には極々少量の食料が送られて来た程度。

 

 重病に汚染されたジャガイモまで食べる者が現れたのだ。勿論、種芋も既に食べてしまっている。ベールランドの農地は全てグレースランド人地主の土地だが、住居等は別。しかし、その土地もベイリッシュ達は貧困に負けて売り払ってしまった。

 

 こんな状態に一度陥ってしまえば、例え疫病が収束しても復興は極めて困難。今や、ベイリッシュ達に残されたものは何も無い。ほぼ全てが、法的にグレースランドの所有物となったのだ。明日を生き抜く、希望すらも。

 

 

 

「おい、貴様がドミニクだな。コレを受け取れ」

「こ、コレは……?」

「…………感謝、してやれよ。じゃあな、幸運なベイリッシュ」

 

 ベイリッシュの貧困少年ドミニクが住む家に、一人の兵士がやって来た。彼はドミニクに鞄を押し付けると、すぐに背を向け去っていった。

 

 ドミニクは恐る恐る鞄を開ける。すると、中にはとんでもないモノが入っていた。

 

「グレースランドへの渡航チケットに、ベスプィカへの渡航チケット? 一家四人全員分……しかも、携帯食料に服、ナイフとピストルにお金も有る」

 

 ベイリッシュは無教養だ。しかし、ドミニクにはとある友人が居た。彼は昔から少しだけ大人びていて、積極的に数少ない老人や書物から学んでいった。故に彼は文字を読む事が出来るし、簡単な事なら書ける。そんな彼の横にいつも居たドミニクもまた、少しなら文字を読むことが出来た。

 

「……まさか、マイケル? 急に消えたと思ったら、これを僕達に? あ、奥に手紙も入ってる」

 

 

 

 


 

 

 

我が友へ

 

 

 久し振りだな、俺だ。なんとか金を稼ぐことに成功したから、幾つかは必要な物品に変えながら送ることにした。あぁそうそう、別に盗みや殺しをしている訳じゃないぞ。そこは安心してくれ。

 

 お前は、家族と一緒にベスプィカへ逃げてくれ。これを書いている今、俺はグレースランドに向かう船に居る。詳しくは割愛するが、俺の選んだ金の稼ぎ方の都合上これからはグレースランドの労働者として生きることになる。身分や経歴も偽造することになった。

 

 一応言っておくが、グレースランドはあくまでもベスプィカへの中継地点だ。俺と離れたくないからって、グレースランドに留まるんじゃないぜ? ベイリッシュがグレースランド市民になることは出来ないからな。

 

 そんじゃ、今後どこかで会えることを祈っているよ。

 

 

貴方の親愛なる友より

 

 

 


 

 

 

「……ふざけるなよ、あの馬鹿。絶対無茶しただろ。いつもそうだ。我慢して我慢して、自分のことを軽んじている」

 

 ドミニクは手紙を置き、目頭を押さえる。

 

 

「…………顔ぐらい、見せて行けよ。友達だろ。なんで、一人で頑張って勝手に遠くへ行っちゃうんだ」

「ドミニク、どうしたの?」

 

 ドミニクの母が、軽い水汲みから帰ってくる。彼女は涙を流す息子を心配し、声をかける。

 

「ふぅ……母さん、すごく大事な話が有るんだ。ジャックは何処に居るかわかる? 皆で話がしたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 潮風がドミニクの灰色の髪を靡かせる。綺麗な服と赤い魔眼の美少年顔も相まって、中々様になっている。木の手すりの上に腕を組み、船上にて思いを馳せる。

 

「もう、グレースランドか。嫌な土地だけど、マイケルが居ると思えばマシかな。どうせ、会えやしないんだろうけど」

 

(マイケルは今は、何をしているんだろう。どんな仕事をしているんだろう。そもそも、ベールランドの貧しい少年があの短期間でこれだけの大金を稼ぐことなんて出来るのか? きっと、凄く大変なことをしているのだろう。心配だ)

 

 船が港に停泊した。船長が到着を叫び、下船を促す。ドミニクは客室へ戻り、荷物を持って家族と共に忌まわしきグレースランドに足を踏み入れた。

 

 

「豊かな場所だ、ベールランドとはあまりにも違う」

 

 ベスプィカ行きの船に乗るのは翌朝。その為、今日はグレースランドに滞在することになる。宿は既にマイケルが予約済みであり、そこに泊まる。宿の場所は、手紙の裏に書かれた地図で分かっている。

 

(これだけ活気と余裕に満ち溢れているのに、どうして同じ国の隣の島にロクに手を差し伸べててくれないんだよ……。その笑顔を、何故ベールランドに向けない。なんで、小麦も家畜も魚も今まで通りに全部奪ってくんだよ)

 

 ドミニクの怒りと嫌悪は、増していくばかりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 今まで食べたことが無い程に豪華だったのに欠片も味がしなかった宿の夕食を終えたドミニクは、夜の街を一人で歩いていた。

 

 ドミニクは11歳の美少年だ。本来なら、夜のグレースランドを一人で歩くのはリスキー。ただ、不吉の象徴である赤色の魔眼と腰に提げたピストルのお陰か面倒事に絡まれることはなかった。

 

「マイケル……君に、会いたいよ」

「うぇっ?」

「え?」

 

 細く可憐な、聞き馴染みの有る少年の声。僅か、ほんの僅かな一単語にも満たない発声。だが、ドミニクはそれを聞き漏らさなかった。

 

「マイ、ケル……? マイケル! マイケルじゃないか! どうしたんだ、その格好は!?」

「えっ……いや、あのぉ………その、何て言うか、こう……あのっ、ね? ほら、ちょっと……こう、いやさ? うん、だから、まぁ……その、なんだ……ね?」

 

 マイケル、マイケルだ。間違いない、マイケルが居た。だが、様子がおかしい。マイケルが、女性の服を着ている。マイケルは心身共に男だ、間違いなく。一緒に裸で水浴びをしたことだって数え切れない程に有る。

 

 腋と背中を大きく開き、ヘソも出した黒のワンピース。スカート部分は極端に短く、脚を動かすだけで尻が露出する程。首には、ハート型の金細工が施された革のリード付き首輪が嵌められている。

 

 そんなマイケルは高そうな服を来た中年の男の隣を、服の上から分かるくらい肥大化した乳首に指を沿わされながら歩いていた。

 

 

 

「知り合いかい? ミッシェル」

「ふ、ふふふっ……その、故郷の友人……でして」

「あぁ、彼がドミニクか。君、良い友人を持ったね」

「あぁんっ♡ ヘンリー様、今は弄らないでぇっ♡」

「そんな……」

 

 

 三ヶ月振りに会った友の姿は、まるで娼婦だった。

 

 ベイリッシュは無教養で頭を使うことにも慣れていない。だが、ドミニクは生まれつき思考力が高くマイケルの影響も大きく受けながら育ってきた。

 

 

 だからこそ、すぐに分かってしまった。納得してしまった。否応なしに。

 

 

 マイケルは、己と尊厳を捨てた。友の為に。

 

 

 女装少年男娼ミッシェルとして、見知らぬ男達との性行為に心を壊しながらも友の渡航費用を迅速に捻出したのだと。

 

「……いやしかしドミニク君、君も随分と綺麗な顔をしている。その厄災の目も、また一興。どうだい、此方に来ないかい? 一家全員に、温かいベッドとパンと肉を与えよう。大切な友人とも一緒だ」

「もう! ヘンリー様ったら……他の子なんかより、私のことだけを見て下さいまし!」

「おや、悪いね。ではドミニク君、去りなさい。私は今、嫉妬深い子猫へのご機嫌取りで忙しいんだ」

 

 言葉が出なかった。渡航の為に変わり果てた友の姿に。しかしドミニクは、不思議なことに勃起していた。そして、触れてもいないのに精通をしてしまったのだ。驚く程濃い精液が狭い尿道を押し広げ、パンツを白く濁らせる。

 

「お゛ぉっ♡ 指っ、太すぎっ♡ イ゛ク゛っ、クソ雑魚アナルこじ開けられてイきましゅっ♡」

「そうだ、ドミニク君。もしも来たくなったら、イッセア子爵家を訪ねなさい。ここから北に有る、大きな屋敷だ。歓迎しよう。では、さらば」

 

 

 ドミニクは絶望した。己の弱さに。

 

 ドミニクは呪った。グレースランドの強欲さを。

 

 ドミニクは誓った。友の尊厳を必ずや取り戻すと。

 

 

 

「僕は、ベスプィカでビッグになる。ベスプィカで力と金をかき集めて、ベールランドを帝国から独立させてやる……! マイケルも取り戻す! 次の世代に、この苦しみを与えない! 絶対にだ!」

 

 

 

 

 

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