【悲報】一般無能転生者さん、帝国からの独立を謳うテロ組織の黒幕に仕立て上げられてしまう   作:IRA

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イースター蜂起

 

 

「会長、もうすぐベールランドです」

「…………懐かしいものだ。こんな農奴島だろうと、十三年振りの故郷となれば気分も上がる」

 

 スクリュープロペラの大型武装艦隊にて、一人の男がマガジンに弾丸を込めていた。彼の名はドミニク、ベスプィカ西海岸最大の都市であるニューゲートを拠点とするマイケル商会の長。

 

 十三年前のジャガイモ飢饉によってベールランドから国外へ逃げてきたベイリッシュ及びその他難民達を初期メンバーとするマイケル商会は、浅い歴史ながら今や名の売れた大手武器商人となっていた。

 

 

 少年時代の友人が時折話していた、未来の銃器。彼との会話を思い出し、アイデアを組み立て試行錯誤。結果、コルダイト無煙火薬とMP5によく似たサブマシンガン──マイケル銃がこの世界に爆誕したのである。

 

 開発当時、ケルテン帝国はマルビという東の国への侵略を行っていた。国力差は圧倒的で、敗戦必至の大蹂躙。しかし、広告の為に立ち上げられたマイケル商会傭兵部隊がマルビ側に参入し……情勢が大きく動いた。

 

 帝国軍の主力装備は、パーカッションロック式の銃であった。これは、装填数が銃身一つにつき一発のみ。装填にも時間がかかる。

 

 それに対し、マイケル銃は一度に30発を装填し発射レートは秒間13発。取り回しや携行性においても圧倒的に優れており、精度や射程もこの世界の既存の軍用ライフルには負けていない。

 

 120人のマイケル傭兵と、マルビ軍へ販売された廉価量産型マイケル銃500丁。武器のクオリティと資金力、人数を武器としていた帝国軍は、マイケル銃の登場によって侵略が滞った。

 

 マルビや周辺諸国はマイケル銃の虜になり、大量の資金を商会へ注ぎ込んだ。マイケル銃は作れば作るだけ売れ、帝国は撤退へと追いやられた。帝国の敗北である。この報せは、帝国植民地の貧民達の心を沸き上がらせた。

 

 今や、マイケル銃は世界の軍の標準装備。従来の銃に比べて高価ではあるものの、使わなければ採用国には勝てない。

 

 商会は、大成長を遂げたのだ。

 

 

 

 

 

 

「お会いできて光栄です、ベールランド防衛大隊長殿。マイケル商会長、ドミニクです」

「こちらこそ、お会いできて光栄です。どうぞ気軽に、トーマス中佐とお呼び下さい」

 

 ベールランド防衛大隊副長に港から案内されたドミニクは、大きな建物の前に到着した。そこには目を輝かせた一人の中年の男が待っており、自己紹介を交わすと強く握手する。

 

 ドミニクの来訪の目的は、ベールランド最大都市ガーリン中央区に新支店を構えることだ。事前に送っておいた手紙はガーリンから多いに歓迎され、土地も店舗も既に一等のモノを用意されている。

 

 因みに、マイケル商会の初期メンバーがベイリッシュ含む難民達が殆どであることは秘匿されている。現在、ドミニクの公的な生まれはベスプィカのニューゲート市郊外となっており、ベールランドとの繋がりは一切見えない。

 

「いやはや、立派な土地ではありませんか。賑やかで煌びやかな大通りの一層目立つ場所に、これだけのモノを。有り難い限りです」

「ハッハッハ、ベールランドは陸軍一族生まれ陸軍育ちの私に実質的な統治が任されておりますからな。マイケル銃には強い興味と関心が有ります。先のマルビにて帝国が敗北したとの報せが届いた時、実を言うと……その、下品なんですが、フフッ……あぁいえ、失礼。まぁとにかく、私は銃やテクノロジーが大好きなんですよ」

 

 ベールランドに議会が有ったのは半世紀以上前のこと。独立した王国が有ったのは何百年も前のこと。今ではグレートケルテン王から任命されたグレースランド貴族が治める土地であり、そのグレースランド貴族もベールランドには住んでいない。故に、実質的な統治者は常にベールランド防衛大隊長であった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マイケル商会ベールランド支店の開店パーティーは、大いに盛り上がった。ガーリンから多くの人々がパーティーか買い物に寄り、他のケルテン諸島地域からも関係者が挨拶にやって来た。農奴達にも話は渡り、一夜にしてマイケル商会はベールランドの華となった。

 

 所詮は武器商人。されど、これだけの規模と陸軍が治める土地。成功は当然と言えよう。勿論、武器だけを売る訳でも無い。

 

 元は天才青年ドミニクがある友人の話を元に私的に調理し、それを見た部下が売りに出させた料理が幾つか存在する。オウドンやトウフはダイエットに奔走する者へ、フリッターやクロケットを改造したテンプラやコロッケは野郎共から、デザートで言えばミズシンゲンモチなどが。これらの料理は、情報通な都会な富裕層を中心にジワジワと支持を得ている。

 

 子供がマイケル商会を知っていると言った場合、それなりの確率で本業を知らない。

 

 

 

「カハル」

「なんでしょうか」

「…………理想の成就とは、難しいものだな」

「故に、理想と呼ぶのですから」

 

 ドミニクは、夜風に当たり北東の海を見ながら腹心に声を掛ける。

 

「帝国のベールランドへの差別と軽視は、どうしようもない。善良な者も居る、しかし比率が傾きすぎている」

「穏便な手段は、やはり現実的ではない」

「そう……だな」

「震えていますよ」

「……分かっている。だが、僕は…………殺戮者になる。戦争で、真正面から、奴等の頭に全ての民族が対等であると刻み込んでやる」

「お供しますよ、地獄の果てへ行こうとも。共に、帝国を焼きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マイケル商会長御一行が新支店長や従業員達を残してベスプィカのニューゲート市本店へ帰還してから、三ヶ月が経った。マイケル商会の売れ行きはどこの店舗も快調。ただ、工場でトラブルが起きたらしく武器の入荷が滞っているようだ。

 

 さて、そんな今はイースター。極めて目出度い、素晴らしい日。帝国及び周辺諸国に広く浸透するマーシャハ教の開祖にして神の子でありながら処刑されてしまったナザレ・マーシャハが、復活した日。

 

 

 しかし、ベールランドには今……大きな混乱が起ころうとしていた。

 

 

「……あの武装船団、どこのどいつだ? 見たことの無い旗……マイケル商会にも少し似ているが、間違いなく違う」

『緊急事態発生! 緊急事態発生!』

「なっ、なんだ!?」

 

 ガーリン港で、人々が物々しい大型拡声魔道具の警報に鼓動を早める。

 

『マイケル商会長ドミニクより、要求が届いた! 要求は、ベールランドの統治権の譲渡及び帝国からの独立! また、マイケル商会にはドミニク含めジャガイモ飢饉によるベールランド系難民が多数在籍するとのこと!』

「な、なんだと……?」

「馬鹿言うんじゃねぇ! ベールランドは俺達のものだ! ベイリッシュのモノじゃねぇ!」

『こ、この要求を飲まない限り……ベールランド全土に攻撃を行い、制圧し続けるとのこと!』

「あれ? なら……あの武装船団って、もしかして……俺達と戦争しに来たマイケル商会の兵士達が乗ってきた船……ってコトか!?」

「に、逃げろぉーッ! ここは戦場になるぞ!」

「わァ……ぁ……」

 

 

 

 

 

 

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