もしも『アイ』ではなく『アクアとルビー』が殺されていたら… 作:あえch
「ここが…」
今ガチメンバーが見つめる視線の先には…
「苺プロ!」
ダンサーもYouTuberもモデルも…
知らない人は居ないであろう人間が所属している事務所。
全員が憧れの眼差しを向ける背後で…
「…」
本物の星を宿す紫色の髪が揺れる、そして…
「苺プロにいらっしゃーい!」
「!?」
少し大きな声で意表を突いた天才…その名は星野アイ。
皆は驚きながら後ろを振り向いて…
「ちょっ、星野さん…驚かさないでくださいよ…」
「ビビったぁ…」
驚かされた人が見せる普通の反応。一人を除いて…
「ちょっ!Memちょが気絶してる!」
隣に居たゆきが倒れるMemちょに駆け寄り、皆に知らせる。
体調でも悪いのかと思いきや…
「…生の星野アイ…私、人生に悔い無し…ガクッ」
ゆきの腕の中で死んだかのように倒れてしまう。
そんなMemちょを連れて先に事務所にお邪魔する今ガチの面々…
取り残されたのは星野アイと…
「…アイさん?そんなにバレるのが怖いんですか?」
「…なんのこと?」
天才と天才。喧嘩したまま別れた星野アイと黒川あかね…
「今回の撮影、私を潰す為の撮影ですよね?…YouTubeで私の評価を更に下げて自分の嘘を守る…私絶対言いませんから!だからっ!…」
星野アイは人差し指を必死に訴える唇に持って行って…
「あかねちゃん?…大丈夫、私を信じて?」
長い訴えに返した言葉はこれだけ…
これだけを言って苺プロの中へ…
「…潰れたりしませんから…あなたを助けるまで…」
二人の美しい女性が歩む道…足跡が、暖かい太陽で照らされて行く…
「登録者500万人以上だよ!?二週間に一回の雑談配信で月間スパチャ金額日本で一位!やばいよ!ついでに私、大ファンだよ!」
「…Memちょ落ち着いて…」
ソファから起き上がったと思ったら怒涛の早口…
私はそんな彼女の肩に触れて…
「じゃあ今度コラボでもする?」
「…え、、、コラボ…無理だよぉ!」
あははーと軽く笑いながら会話を弾ませて行く。
ファンって遠い存在だと思っていたからなんだか不思議な気分…
「…そろそろ本題入りませんか?」
あかねちゃんが少し怒ったように口を開く。
「そうだね〜、そろそろ始めよっか」
私はホワイトボードに足を運んで…
「今回みんなを呼んだのは今ガチの炎上について!」
「あかねのことについてですよね?私凄く心残りだったから…」
「そう!あかねちゃんの炎上を緩和しよぉ〜作戦!」
ホワイトボードに文字を羅列していく…
…緩和の緩が分からないと言ったらMemちゃんが丁寧に教えてくれた…
「鏑木さんに話は通してて名義や著作権も大丈夫!!!ここで聞いておきたいんだけどやりたくないよって人いる?」
私の言葉に返ってくるのは…
「やらせてください!」
「よぉーし!俺で良ければいくらでも協力しますよ!」
今ガチの皆は口を揃えて…
「あかねは大切な友達だから!」
この声にあかねちゃんは小さくありがとうと…
私はにっこりと笑って…
「友達…うん!良いね!」
やる気という熱気が籠った部屋…そんな部屋に入ってくるのは…
「よろしくな…」
「まずは一人目!五反田監督でーす!」
何を担当するのかというと…
「俺は編集と構成を担当する。まぁ端で作業するから気にすんな」
「お願いします!」
全員が監督に挨拶をして、次に向かおうとした時…一人だけ疑問を口にする…
「あのぉ〜、アイさん?」
「Memちゃんどうしたの?」
「えーっと、監督さんが編集と構成担当するんですよね?別に苺プロの編集者さんでも良いんじゃ…」
外部より内部の人の方が情報の伝達も早いし…という至極真っ当な意見。
もちろん理由はある…
「ふふふ…〇〇監修って大事じゃない?例えばコンビニのラーメンとかおにぎりとか」
「あぁ…確かにありますよね…あ、もしかして!?」
ここでピンと来るのは流石YouTuber…
「そうゆうこと!五反田監督監修!っていう言葉を付ける為に今回呼んでます!」
構成とかも上手いからね〜と説明する星野アイ。
本当は黒川あかねと星野アイの関係を知っていたり様々な理由があるのだけれど…
「よし!二人目紹介するよ〜」
この言葉と同時に入ってくるのは…
「やぁ!」
ムキムキの上半身にヒヨコマスク…
この人の名前は…
「ぴ、ぴえヨンさんだぁ!!!」
Memちょは更に大興奮…
彼の役割は…
「ぴえヨンさんにはコラボをお願いしてます!」
「一生懸命やらせてもらうよ!」
「テレビの星野アイ…YouTubeのぴえヨン…最高すぎるぅ…」
小声で興奮したMemちょの横でノブユキが…
「おのぉ、すみません…僕たち星野さんとコラボするんですよね?なのにわざわざ別の人ともコラボするんですか?」
これまた至極真っ当な疑問。
もちろん理由はある…
「吉〇家のポ〇モンコラボ知ってる?」
「あぁ、知ってますよ…それがどうしたんですか?」
「第一弾!第二弾まではすっごい勢いだったんだけど流石にやりすぎて落ちていったらしいんだよね…やっぱり大切なのは新鮮さ!そこでぴえヨンさんの所でコラボして宣伝もしてもらって私の所では一発勝負!みたいな感じかな?」
この言葉に納得したように頷く今ガチの面々…
私は最後に周りを見渡して…
「一応ピエよんさんと皆がコラボ、宣伝してもらって私の所では今ガチの名義を使って炎上に触れながら最後に監督に編集と構成見てもらう感じで考えてるんだけど質問ある?」
この言葉に、手を挙げたのはYouTuber…
「…コラボは凄く嬉しいんですけど…アイさんと同じ画面に居たら皆目立たなくなっちゃうんじゃ…結局コラボしても星野アイ可愛い!でコメント埋まっちゃうと…」
確かにと頷く面々…
この言葉に私はうっすらと笑って…
「大丈夫…だって…」
私は目に星を宿した天才を見つめて…
「…星野アイを助けるのは私…どんなことがあっても生き残る…」
全員の背筋を凍らせる程の存在感…
たった一言で納得させる理由になる…
「あかね…?無理してる?」
「ふふふ、ゆきには負けないからね?」
私は大きく拳を持ち上げて…
「よぉーし!あかねちゃんの何とか作戦成功させるぞぉ!」
「…作戦名もう忘れてるし…」
皆の苦笑いが作戦開始の合図…
「ねぇ、監督?伸びると思う?」
「…なんで俺に聞くんだよ」
皆が辛そうに筋トレするのを眺めながら監督と話し事。
「だって監督しか話す相手居ないし…それに…」
「…」
「私じゃ良く分からないからさー」
監督はため息を吐いて…
「俺も良く分からねぇよ。未来のことなんて…でもこれぐらいの試練を乗り越えられなきゃアイツらの敵を撃つなんて夢のまた夢だろうな…」
「…思い出しちゃうね…あの日のこと…」
「今度は守ってやれ、お前だけは最後まで信じ続けろ」
言葉を残して部屋を後にする監督…
信じ続ける…私が一番苦手なこと…
それでも信じてみよう、もう一度。私の身が滅びるその日まで…
「この花火楽しかったよな!」
「あの怪我はあかねだけのせいじゃないからね!」
「めっちゃ皆仲良いじゃん!筋トレも私見てたけど息ぴったりだったよ〜」
今ガチのNGシーンやあかねと皆が仲良くしてる所を見て私が話しかける…
単純だけどこれで良い。だって…
「…盛大に燃えちゃったけど私には演技あるから…」
「あかねちゃん図太いなぁ…よし!私も炎上話しちゃう!」
「ほら!Memちょも話して!」
「…普通炎上って自慢する物じゃないからね!?」
星野アイが二人居るようなもの…
日本…いや、世界で一番が二人居るような映像に世間は…
『星野アイ可愛い!』
最初こそこんなコメントが多かったけれど…
(大丈夫、私は信じる…)
信じ続ければ、嘘は本当になる…
『てか俺らが黒川あかねを叩くのは違くね?星野アイとコラボしてるってことは仲良いんだろうしさ…』
『確かに、しかもゆき自体も怒ってないし俺らがでしゃばるのはおかしいだろ…』
どんどん増えて行くコメント。
二日後には…
『星野アイの最新動画300万再生突破!』
ネットニュースになるほどの人気…
星野アイの言葉通り三日後には十分な程の影響力が現れた。
一週間後、苺プロの事務所は…
「よっしゃあ!アイさんのおかげであかねの炎上も緩和されたし俺らも人気になったんじゃないの!?」
「ぴえヨンにも感謝しなきゃね!」
「ぴえヨンは呼び捨てなんだね…」
皆が苺プロではしゃぐ中、星野アイは…
「あれ?アイさんは?」
「あかねも居ないよ?」
月が照らす小さなベランダで…
ガラガラ…
「アイさん、此処に居たんですね…」
「ん?あかねちゃんから会いに来てくれるなんて珍しいね…」
夜風に髪が揺れて、顔を照らす月明かり…
「アイさん!すみませんでした…」
「ど、どうしたの!?」
唐突に謝罪する高校生…
「私、自分勝手で…アイさんがここまでしてくれてるのに疑って…」
あかねちゃんは申し訳なさそうに俯いてしまう…
私はゆっくり笑って、夜空を見つめて…
「昔、大好きな子からアイは一番星だって言われたの…そしてその子の妹は一番星より綺麗だねって言ってくれた…」
「…」
私は拳をぎゅっと握りしめて無理矢理笑って…
「ベランダから見る星がその子達を思い出させてくれる…あかねちゃんの言う通り、、、私は弱い人間…だから言えない…だから隠す、だけどさ…」
「アイさん…」
笑っている筈なのに…隠そうとしたのに…瞳から溢れ出てしまう大粒の雫…
「…言える時が来たら私の口から言わせて欲しい…」
一滴だけ溢れ出た雫を隠して、また笑顔を作った天才は…
「しかも私の力じゃないからね!出す時間とかはMemちゃんが決めてくれたし構成は監督が直してくれたし!…私が皆に勝ってるのは一つだけ…」
「…?」
「あかねちゃん、ずーっと好きだからね…」
「え!?」
「違うよ!子供…じゃなかった、後輩としてね!」
この日はベランダで彼女と話した。
真っ直ぐで良い子で、孤独から救ってくれた恩人…
…だからこそ言ってみよう。次の試練を…
打ち明けてみよう。私の弱点を…
あかねちゃんと出会ったのは二日後のカフェで…
「アイさん!お待たせしました!」
「待ってないよ!ほら、隣座って良いからね?」
息切れした彼女を隣に座らせて…
「…そういえば今日はどうしたんですか?」
「うぅーん、もう一人来るから来たら話すね〜」
お店の扉を開けて入ってきたのは赤い髪が特徴的な…
「星野…アイ…」
「有馬かな!?」
急いで腰を持ち上げたあかねちゃんは有馬かなに近付いて行って…
「かなちゃん!なんでここに…えっ…」
しかし、有馬かなはあかねとは対面せず年上の天才アイドルの目の前に…
「やっと会えた…この人殺し…」
「…」
「な、何言ってるの!?アイさんが人殺しなんて…」
あかねの言葉を無視して言葉を並べて行く復讐に燃える赤い少女…
「私が2.5次元の舞台に鞘姫役として星野アイを推薦したのよ…あんたに勝てる唯一の所…」
「…かなちゃん…だっけ?顔怖いよ?笑って〜」
ヘラヘラと喋る私に怒ったのか…かなちゃんは私の胸ぐらを掴んで…
「アクアの敵は私が取る…絶対暴く…」
「…アクアの…敵…」
有馬かなの暴走に大混乱の人が一人…
「え、、、ちょ、ちょっと待って!鞘姫役は私だよ!?」
「…あんたは違う役よ…」
「あ!私ツルギ役?」
「ツルギ役は私よ…」
「え、、、じゃあ…」
この決断が世界を大きく狂わせる…
「あんたはね…」
「…」
「刀鬼役よ…」
「え…えぇぇぇぇぇぇ!?」
カフェに響くのは有馬かなの怒鳴り声ではなく、黒川あかねの驚いた声…