もしも『アイ』ではなく『アクアとルビー』が殺されていたら…   作:あえch

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恩返しは時を超えて、天才が目指したのは

 

 

 

 

 

 

 

メルト君の演技、最高にカッコ良かったなぁ…

 

かなちゃんは凄く受けが上手くて…

あかねちゃんは私なんかの為に全力で運命に抗ってくれて…

 

私も、誰かの役に立ちたい…

鞘姫は刀を握って、観客の様子と舞台の状況を把握して…

 

ブレイドは始まり…

それなら、鞘姫は…

 

「戦えば血が流れる…しかし、戦わねば守れない物もあるのでしょう…」

 

舞台を、役者を最高潮に導く引き立て役B…

天才が挑戦するのは…適応型を活かした最高の脇役…

 

「合戦です…」

 

さぁ、演技で語り合おう…

皆が愛情を尽くす、綺麗な双子座の思い出話を…

 

 

 

 

 

 

 

ここは、舞台劇の中でも特に難しい部分…

GOAさんは隣に座るアビコ先生を見つめて…

 

(…先生は星野さんに期待している…)

 

アビコ先生は星野さんのファンだ…もちろん、星野さんは凄いけれど…

 

(ここは、鞘姫の葛藤と威厳を動きだけで見せなければいけない場面…)

 

星野アイは天才。しかし、そう呼ばれる所以は役者としてではない…

舞台を知ってるからこそ分かる、あまりにも厳しい…

そして、最悪なのは…アビコ先生が原作者としてだけでなく、ファンとしても失望すること…

 

そうなってしまったら…僕のせいだ…

 

彼の額に滲む嫌な汗…

GOAさんの絶望、まずはここから救おうか…

鞘姫の言葉が、光が舞台に降り注ぐ…

 

希望は伝染していく…

綺麗な流れ星のように揺れる髪…鞘姫から漏れ出る光…

 

 

 

 

 

声を大きくして、体全体を使った動き…

星野アイは『強め』に演技をした、それは何故だろう…

 

「なるほどな…」

 

演技の練習を一番近くで見ていた五反田監督…

彼なら些細な変化にも気付けるだろう…

 

「舞台を仕切り直したな、キザミの為に…」

 

強めに演技をすることがキザミの為…

その理由は…

 

「強めに演技することで観客の脳を鞘姫に置き換える…そして、キザミへの第一印象を薄めた…」

 

現に、鞘姫の光を受けたお客さんは…

 

『鞘姫の役者誰!?』

 

『鞘姫カッコいいんだけど…ファンになっちゃう…』

 

キザミのことなんて誰も呟いてない…

 

「そして、ここから先は『敗北者』としてキザミは匁と戦うことになる…」

 

そうなれば、キザミ役…鳴嶋メルトの才能は輝く。

星野アイの適応型…舞台を良くするために、それだけを考えて…

 

「…でも、まだまだこれからだろ?」

 

五反田監督は届くはずのない言葉を天才に向ける…

そうだ、彼女の思いはこんなものじゃない…

まだまだ小手調べ…待ち構える大きな絶望…赤い髪が特徴的な少女の復讐に向き合って、救わなければ…

それまでは、立ち止まることは許されない…

 

 

 

 

止むことのない足音。

この足音は二つの徒党による決戦へと繋がって行く…

 

「行くぞぉぉ!」

 

「うぉぉぉぉぉ!」

 

この掛け声と共に走り出すブレイド率いる新宿クラスタ…

 

「匁!決着付けるぞ!」

 

(…アイさんが作ったチャンス、絶対無駄にしねぇ…)

 

敵である鞘姫…彼女のおかげで再度目に光を灯すキザミ…

 

「…雑魚は任せる、俺は敵の大将を殺る」

 

「はっ!お前強いだろ!殺り合おうぜ!」

 

キツく晒しを巻く刀鬼…

胸に渦巻く闘志は、最強と名高いブレイドにも引けを取らない…

間違いなく最強で最高の戦い…

しかし、彼らの戦いはまだ始まらない…

 

「どうしよう…無我夢中で走ってたらこんな所まで来ちゃった…」

 

ここから始まる戦いは…勘違いとすれ違い…そして、大きな共通点がある太陽と一番星の勝負…

 

「出てきなさい!鬼の姫!」

 

壮大な音と共に姿を現す…ラスボスとして、復讐の対象として…全く引けを取らぬ傑物…

 

「混血っ!?」

 

鞘姫の耳飾りが光って、ツルギの瞳が揺れる…

 

「あなたも、混血は純血に劣ると思っているのですね…」

 

「…」

 

少女は知っている。

自分がどうしようもなく非力なこと…

姫川大輝が居なければ勝負にすらならなかった…

台本が変わらなければ、天才の眼中にすら入れなかった…

そして、見てしまった…彼女の集大成。

キザミを救い、舞台を整えながら役者として主張する『適応型』の完成系…否、『役者』としての完成系…

 

「…一生懸命やっても、ほんとに私は何も出来ない…」

 

幼少期の頃から、救いを求めて手を伸ばした…

大好きな男の子が居て、永遠の初恋と共に手を伸ばした…

 

「…あんたの敵、取りたかった…」

 

観客に届かぬ程小さな声、言う必要のない私情…

双剣を握りしめて、鞘姫を見つめて…

最後を覚悟した赤い瞳に映るのは…

 

「…私は、かなちゃんと戦わないよ?…」

 

鞘を抜かずに佇む女性…

黒川あかねとは違う鞘姫の演技…

大きく咲く笑顔は…何を意味し、どのような未来を描くだろう…

 

 

 

 

 

 

 

お葬式で、泣いている子が居た…

私は、瞳に暗い星を作るだけで泣けなかった…

 

『お昼寝して待っててね』…この言葉を残して、『復讐』という暗い泉に入ることしか出来なかった…

 

「アクア…また一緒に演技しなさいよ…」

 

金髪で、カッコいい男の子が大人だったら…

様々な人と交わり、双子の星と共に苦難を乗り越え…恋をして、天才を利用していたら…

きっと、彼の死に多くの人が悲しんだのだろう…

 

 

しかし、双子の星によるお葬式で…流れ星のように飛び交った言葉は…

 

『星野アイが無事で良かった』

 

アクアとルビーがこの世に居なくなって…足枷が居なくなったと言う人も居た…

私の掌は、爪が食い込んで血が出てた…

 

あぁ、この世に二人の居場所は無いんだ…

私は作ることが出来なかった…

 

…そう思ってた。でも、アクアとルビーは凄かった…

存在を隠していたにも関わらず、ミヤコさんは大粒の涙を流し…五反田監督は喫煙所で鼻を啜ってた…

 

…そしてね?喉が枯れるまで叫び、咳き込みながら泣いている子が居た…

綺麗な赤い髪が揺れて、アクアの居場所を象徴してくれた子…

その子の名前は…

 

『有馬かな』

 

私は…母として『恩返し』をしなきゃいけない…

 

彼女に対する『恩返し』…それは、お菓子を持っていくことじゃない…ありがとうって何度も言うことじゃない…

私が、私の思う恩返しは…

 

 

 

 

 

 

 

「よし、良いぞ…練習の成果出てるな…」

 

観客席から分析する五反田監督…

彼が天才と練った計画は…

 

「ここからの舞台の展開は、鞘姫とツルギの一騎打ち…そこからキザミと匁、ブレイドと刀鬼が合流して全体の戦いへと移行していく…」

 

一騎打ちは星野アイの演技…自分を目立たせる、他人を喰べる演技…

そして、少しずつ『適応型』を活かして引き、舞台に上がってくるブレイドや刀鬼の影に隠れてやり過ごす…

 

しかし、監督の意図…練習は裏切られることになる…

驚きのあまり開いた口から放たれる言葉は…

 

「まだ一騎打ちだ…それなのに、アイツ…」

 

…もしかしたら、彼女はこの未来を知っていたのかもしれない…

 

「ツルギの演技…もう受け始めやがった…」

 

天才にとっての恩返しは…

「子役時代の借りは返したわよ!」

こんな言葉を笑いながら…身勝手な演技で天に捧げることが出来る舞台作りをすること…

 

「かなちゃん?暴れてよ…」

 

かなちゃんが教えてくれた『適応型』で…私が引き立て役になるから…

言葉は要らない。だって、役者なら…

 

動きだけで語り合うことが出来る…

 

「…アクアと、また戦いたい…」

 

今日甘の時は身勝手な演技でドラマを壊してしまった…

今回は、周りの天才に喰われた…星野アイに勝てない、そう絶望してしまった…

だけど、天才が引き立て役になって作ってくれた舞台なら…私は…私でも!

 

覚悟を決めて、双剣を握る腕を大きく広げる…

そんな時だった、元天才子役の耳に入ってきた言葉…

 

『鞘姫の演技また見たいね!』

 

…敵は、あまりにも大きかった…

 

『鞘姫あんまり目立ってないね…』

 

最前列に座る観客の声によって揺れる赤い髪…

お客さんに喜んでもらって、舞台を良くする答えは明白だった…

 

「私なら、あんたの大きい光も受けれる…」

 

器用な演技をする女の子の結論…

それは、知名度もあって大きな光を放つ天才を120%活かすこと…

天才による恩返しは、まるで糸が切れるように終わりを迎える…

 

「あぁ、そっか…そうだよね…」

 

あの時、二人の我が子の居場所を作れなかった…その光景が脳裏に蘇る…

 

「…私は、満足に恩も返せないんだ…」

 

お客さんは希望に満ちたよ…

鞘姫が暴れて、ツルギが上手く受けて…細かいミスもカバーして…

きっと、これで…これが良いんだ…

 

「…」

 

ぶつかり合おうとした別の鞘姫、彼女とは違う方法を選んだ天才…

苦手な『受け』で、救おうと決意した天才…しかし、結果は似た物に…

このまま、終わってしまうのだろうか…

 

 

「アイ、まだ終わってない…」

 

私を呼び捨てにするのは…

 

「アイが作った希望の火種…俺が守ってやる…」

 

刀鬼の服装をした何か…

 

「…あかね…ちゃん…?」

 

こんな子知らない筈なのに…何処か懐かしくて、愛おしくて…

 

 

 

 

アドリブと嘘が混在する舞台…複雑に絡まる舞台は終幕へ…

 

 

 

 

 

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