もしも『アイ』ではなく『アクアとルビー』が殺されていたら…   作:あえch

27 / 28
神の導き 忘れ去られた男

 

 

 

 

 

 

…本当に、恐ろしい…

 

「…せんせっ…」

 

雨宮五郎の死体…とてつもない悲劇…

人を狂わせる未来に、黒川あかねは絶句した…

 

「…あかねちゃん…アイドルって、楽しいね…」

 

「…」

 

嘘は…とびきりの愛…

夜空で踊り狂う…壊れた人形…

 

 

 

 

 

 

 

 

雨宮五郎が死んだ…

死体発見者は、黒川あかねと星野アイ…

待っていたのは…警察官からの言葉と質問…

 

「少し質問させていただきます、よろしいですか?」

 

「…はい、大丈夫です…」

 

遺体を見つけることが出来た理由は主に二つ。

一つ目は…

 

「黒川さん、遺体を見つけた経緯は…」

 

「はい、林を散歩してて…偶然です」

 

本当は違う…

 

『夜逃げは有り得ない』

『雨宮五郎は星野アイの出産に立ち会わず、失踪した』

 

この条件を照らし合わせた…

病院から雨宮五郎宅の道を奔走し、見つけた…

偶然の産物などではなく…掴み取った必然。

 

今度の質問は、黒川あかねから…

 

「…雨宮五郎さんの遺体は…他殺体なんですか?」

 

「恐らく、そうでしょうね…詳しいことは鑑識に回さないと分かりませんが…」

 

何故、この質問は黒川あかねの口から放たれたのだろう…

雨宮五郎について、積もる質問があるのは一番星の筈…

そう、積もる質問…出来るのならしていたのだろう…

 

(…アイさんは、こんな時でも休めない…)

 

黒川あかねの隣には、空席が一つ…

天才は…ここには居ない…

 

「黒川あかねさん、ご協力ありがとうございました」

 

「はい、また何かあれば…」

 

黒川あかねは、夜道を歩く…

たった一人で…一歩ずつ…

 

「…アイさんに、会わなきゃ…」

 

天才の居場所…

歩きから、少しずつ大股になって…無意識のまま走り出す…

 

「…アイさんが、壊れる前に…」

 

扉を開けた黒川あかね…

視界に広がるのは、傑物の…天才のダンス…

 

「あかねちゃん!私のダンス見ててね!」

 

誰も、心配などしない…

星野アイなら出来て当然…

『期待』を貯めて、貯め続けて…その先にある物…

 

 

 

 

 

 

 

「あかねちゃん!私、結構ダンス上手かったでしょ〜」

 

「結構どころじゃないですよ!…素人目ですけど、めちゃくちゃ上手でした…」

 

アイさんが警察官から質問を受けなかった理由、それは…

 

「あかねちゃん、ごめんね。スケジュール的にMV撮影押してて…行けなかった…」

 

「アイさん忙しいですからね…全然大丈夫です!時間ある時に聞いてきたこと話します!」

 

『ありがとね!』と言葉を放ち、笑顔を見せるアイドル…

いつもと変わらぬ笑顔…いや、笑顔だけじゃない。ダンスも、歌も…全てがいつもと変わらぬ『究極』…

 

(アイさんは…元から壊れていたのかもしれない…)

 

死体を見つける前に、雨宮五郎が死んでいると心構えが出来た…そう捉えることも出来るだろう。

しかし、黒川あかねの考えは違った…

 

(自分の我が子が死んで…壊れて…感情なんて、とっくの昔に…)

 

元から壊れていた…普通であれば最悪…

しかし、黒川あかねは安堵した…

 

「…あかねちゃん…私は、壊れないよ…復讐は、終わらせない…」

 

「…分かってます…」

 

この程度で、アイさんの…星野アイの断罪が終わるならば…

強いアイドルを信じる戦友…彼女は約束したのだ。共に地獄へ堕ちると…

 

黒川あかねの考えは間違っていない…

雨宮五郎の死は、天才を闇に堕とすまでには至らない…

 

もしも、金髪の少女のように…この程度で闇に堕ちると考えていたのならば…神は侮っている…

 

『星野アイ』という壊れかけの偶像を…

 

 

 

 

「MV撮影お疲れ様!」

 

「疲れた〜」

 

アネモネさんの声と共に、MV撮影が終わる…

アイさんは両手を広げて…言葉を放つ。

 

「よぉーし、みんなぁ!遊びに行こう!」

 

頑張った者にはご褒美を…

しかし、天才は使い切ってしまった…

 

「アホか!…お前が初日に抜け出したせいでスケジュール押しまくってんだよ!早く帰るぞ!」

 

「…え、嘘だぁ!」

 

遊びたい、遊ぶんだ!と駄々をこねる星野アイ…

そして、その姿のまま…車へと押し込まれる…

 

「はぁ…遊びたかったのに…」

 

ここで、黒川あかねは不思議に思う…

来た時はバスだったのに帰りは車…

そんな疑問を切り裂くように手招きされた…

 

「早く!あかねちゃん乗って!」

 

「…え!私ですか!?」

 

半ば強引に…

星野アイに引っ張られた黒川あかね…

車には…運転手と、アイさんと私の3人だけ…

 

「…アイ、無理してるでしょ?」

 

「!?」

 

運転手から放たれた言葉…

黒川あかねは、酷く狼狽える。

…しかし、星野アイの反応は…

 

「え、バレた?…流石ミヤコさんだなぁ…」

 

「…アイさん!認めちゃっていいんですか!?」

 

運転手の正体は斎藤ミヤコ…

彼女だけは気付いていたのだ、天才が無理をしていることに…

 

「…もしかして、あなた説明してないの?」

 

「…はは、忘れてた…」

 

呆然とする黒川あかねに、星野アイは説明する…

ミヤコが双子の悲劇を知っていること、壊れそうな時に助けてもらったこと…

星野アイが信頼している、斎藤ミヤコという存在のことを…

 

「今回の引退も、ミヤコさんが色々な人に話通してくれたんだ〜、ほんとに最高!」

 

「そういうことだから、気にせず話してちょうだい」

 

「そ、そうだったんですね…」

 

事情が分かったところで情報交換…

警察の人から聞いた、大切なこと…

 

「…雨宮五郎さんは、他殺体でした…」

 

「…やっぱり、そうだよね…もう、私だけの物語じゃない…」

 

「…」

 

星野アイは、歯を食いしばった…

斎藤ミヤコと黒川あかね…信頼してる人にしか見せない表情…

 

「…アイさん、少し疑問に思ったことがあって…」

 

黒川あかねの疑問…

ここで明らかになる、死体を見つけることの出来た二つ目の理由…

 

「アイさんが、復讐を焦ってるように見えて…」

 

「うぅーん、確かに焦ってるかも。大輝くんに早く真実を教えてあげたくて…」

 

「…姫川さん?」

 

唐突に出てきたのは…天才役者の名前。

何故、彼のためなのか…

 

「大輝くんがさ、実の父親を探してて…全部終わったら教えてあげたいなぁって思って…」

 

この瞬間、黒川あかねの脳裏に過ぎる『違和感』…

しかし、あまりにも遅すぎた…

 

「…お父さんが違う…姫川さんは、どうやって気付いたんですかね…」

 

アイさんの言葉は、短かった…

…だけど、そんな短い言葉で…記憶は鮮明に蘇る…

 

「白髪の幼女に言われたんだって」

 

「…白髪の、幼女…」

 

違和感はあった…

病院から出待ちのようなタイミングで話しかけられ、雨宮五郎の家を捜索した…

死体も…私たちが見つけるのは都合が良すぎる…

 

「戻らないと…」

 

「あかねちゃん?」

 

星野アイは、MEMちょの言葉に飛び付いた…

『宮崎』に行ける…この言葉に…

故に天才は…MV撮影という制限の中でしか動けない…

 

「早く戻ってください!宮崎に!早く!」

 

「あかねちゃん!?落ち着いて?」

 

二つ目の理由、それは導かれていたから…

怒りに震える…神様に…

 

 

 

 

 

 

 

 

「…星野アイは、本当に中途半端だね…」

 

天才を貶す、白髪の幼女…

比べるのは…今は亡き恩人…

 

「星野アクアなら、こんな失敗はしなかっただろうね…

星野ルビーなら、この出来事を機に覚醒していただろうね…」

 

全ては、復讐のために…

神は…同情などしない…

 

「星野アイ…君の才能は、私が使ってあげるよ…」

 

友人の炎上、2.5次元、恩人の死体…

天才の断罪は、この程度では終わらない…

 

「さぁ、始めようか…『星野アイ』への復讐を…」

 

限られた時間で天才を死体に導いた、その意図とは…

神の復讐に、全ての人間が絶句することになるだろう…

 

そして、動き出す…意図に踊らされる一人の男…

 

 

 

「ニュースです、宮崎県で死体が見つかりました。被害者は雨宮五郎…容疑者は今も逃走しており…」

 

「…やべぇ…見つかっちまった…」

 

世間から忘れ去られた男…

息を潜めていた、殺人者…

 

「また、隠さねぇと…『あの時』みたいに…」

 

男の脳内を支配するのは、天才を絶望に叩き落とした光景…

双子を殺した…血が纏わりつく絶望…

 

「俺は、悪くねぇんだ…全部『アイ』のせいだ…」

 

最悪のファン、彼の名前は…

 

 

 

『菅野良介』

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。