Fate/Dancing night   作:faker00

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プロローグ

「ああ!何だってこんな呼び出されるのが遅いのよ最近は!」

 

 覚めたばかりでぼけっとする頭を振り、淑女にあるまじき悪態をつきながら一つの気配をたどり森の中を駆ける。

 

「 (今回は随分と荒廃した世界に呼び出されたみたいね……ずーっと昔か、それとも何もか終わりかけの未来か……)」

 

 目的地にたどり着くまでにはまだ時間がある。

 自分がどこに呼び出されたのかくらい考える余裕はあるだろう。

 そう考えて一度大きく飛び上がり上から周囲をざっと見てみたが今やサーヴァントであり、人間のそれを遥かに上回る視覚、聴覚をもってしてもまともな文明の兆候は見られなかった。

 

 今まで幾度となく「彼」が呼び出される世界へ後追いする形で足を踏み込んできたがここまで何もない世界に呼び出されるのも珍しい。

 

「まあ私にあるのは記録だけで記憶なんてものはないんだけどねー。あーあ、英霊ってめんどくさっ」

 

 

 聞く人も誰もいない独り言は大きくなる。実際のところ呼び出された世界の思い出などない。

 と言うよりもそれが過去に経験した出来事なのか未来に経験する事柄なのかそもそも時間という概念がないから分からないというかなんというか……

 

「うん……これ考えると頭痛くなるからやめよう……時間、輪廻転生の枠から離れた存在になったのにまだ昔の常識で考えるから矛盾がでちゃう」

 

 多分この自問自答も何度も繰り返してきたし、今後も繰り返すのだろう。

私というのはそういう存在だ。

 

 

 確固たる記憶としてあるのは生前の、自分がまだ人間であった頃のものだけだ。

 その記憶があるからこそ私は英霊になったんだし、これからも戦っていける。

 

 もしもこの目的が達成されたらどうなるんだろう?私が世界と契約して呼び出されるのには条件がある。

 目的を果たすということはその条件が満たされることはなくなるということだけど……

 

 

「ってこれもダメなやつだ! もう! 人と話したりすることなんてないから私の脳みそも固まってんじゃないのこれ!? あうう……私も痴呆になりこのままお婆ちゃんになっていくのかしら……」

 

 よよよ、と泣いてみるがそれを見る人どころか生き物すらいない。

だからこそできるバカな一人芝居だけどちょっと寂しくなったのは内緒だ。

 

 

 

「……もうやめよう。私がやることはどんな場所でも1つだけだ。」

 

 パンっと両頬を軽く叩く。

 

 こんなどうしようもないことだけど十分に時間つぶしにはなったみたいだ。

 

「……大分近くなったね……北東にあと3kmってとこ? 動かなくなったのを考慮するとあの人はもう今回の目的についたって考える方が妥当かな? お願いだから私が着いたときには全部片がついててそのまま座へさようならー、なんてのは勘弁だよー!」

 

 

 近づいた。そんな気配を確かに感じると気合いを入れて更に加速する。

気づいたらなんだか集落っぽいものが見えないような気がしないでもない。

 あそこにいるのだとしたら後数分とかからない!

 

 

 イリヤスフィール・フォン・アインツベルンというひとりの人間から英霊へと意識を切り替える。

 ヘラヘラするのはここまでだ。

 

 

 自らを駒として世界を救うのが守護者(カウンターガーディアン)ならば、その守護者である彼を救うために駆けるのが私森羅の守護者(カウンターカウンターガーディアン)だ。

 

 

「待ってなさいよー今度こそ私は貴方を……」

 

 超えてみせるんだから。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

「もうあらかた終わってる……けどまだここにいる!」

 

 

 燃え盛る集落。

 泣き叫び、助けを求める人の声が聞こえる。

 この人達が世界を破滅させるだけの何かをしでかしてしまったから彼や私がここにいるんだろうけど本当に難儀なものだ。

 

 救うはずの守護者なのにその実やることと言ったら後始末だなんて。

 世界の危機が「起こるかもしれない」っという段階で出ることを許されたのなら彼も満足して世界を救うという大義名分のために誇りをかけて戦っただろうし、それと同時に私もここにはいなかったと思う。

 

 けれど実際は違う。

 世界とやらは守護者を「起こった後のみ」しかその世界に呼び出さない。

 それも「あいつらいると色々めんどいから口封じよろしく」っと言わんばかりの任務を与えてほっぽりだして救うという名目で殺させるのだ。

 

 だからこそ彼は疲れきり、私はいるんだと思う。

 

 

 

 

「あうう……助け……て……」

 

「……」

 

 

 

 意識が残っている人がまだいたのか。

 若い女性だろうか、全身血まみれでボロボロになりながら私の方へと這ってくる。

 これはまず助からない。それだけの致命傷を負っている。

 守護者の標的になってしまった人は全員死ぬ。それが人を超越した存在に狙われた哀れな人達の変えられない運命。

 

 

 

「……はい、これ飲みな。少しは気分よくなるよ」

 

 呼び出されたときに目の前にあった川で組んだ水を入れた即興の容器を差し出す。

 人間死ぬ間際に無性に水が飲みたくなるなるらしい。「死に水をとる」っという言葉もあるくらいだから相当なのだろう。

 私はそんなこと思う間もなく死んじゃったけど。

 

 

 

「あ……ありがとう……」

 

 怪我で見る影もないが何もなければとても可愛い顔だったんだと思う。

 そう思わせる柔らかい笑みを浮かべて彼女はその容器から水を飲んだ。

 その後にどうなるか私はよく知っている。

 だけどそれを言うわけにはいかない、今だけは仮初めの幸福でも味合わせて上げたいから。

 

 

 

「……本当にありがとう……あと、気を付け、て……あいつは……あく……」

 

 

 最後に私への感謝と警告を告げようとした彼女は途中で事切れた。

 

「やっぱりあんまり気分が良いものじゃないな……」

 

 私はそれを特に動揺することもなく看取った。

 だってこうなることは大体分かっていたんだから、こういう時に水を与えると安心からかなんなのかは分からないけどその人はまず間違いなくそこで死亡する。

 

 ある意味私が死の引き金を引いたようなものだけど後悔はしていない。

 どちらにしろすぐに死んでしまうのだから最後の望みくらいは叶えてあげるべきだ。

 

 

 そっと開いていた目を閉じてあげる。

 最後に少しだけ輝いたようにも見えるけど、そこまでは掛け値なしの絶望だけがその瞳を支配していた。せっかくの綺麗な顔だ、そんな目を晒させることを嫌がってもバチは当たらないだろう。

 

「あくま……か」

 

 そうして彼女が告げようとした人のことを考える。

 仕方ないことだけどやっぱりそう見えてしまうんだ。

 

 本当は悪魔なんかじゃない、むしろそれとは正反対……なんというか神様に止められてもおせっかいをしてしまう天使のような人なのに。

 

 今の境遇を思うと皮肉な事に私のモチベーションが湧いてくるのだ。

 今度こそ終わらせよう。この悪夢も何もかも。

 

 

 

「いやあぁぁぁ!!」

 

「……! 生きてる人!」

 

 

 本当に気になったのは生きている人がいるのならば「追っている人」もいる、ということだけど。

 

 間違いなくそこにいる。  

 叫びを頼りに私は走りはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

「……いた!」

 

 果たしてそこに彼はいた。

 赤い外套、浅黒い肌、羨ましいほど高い背、これだけの特徴が揃っていて別人だなんて言われたらあまりのショックで卒倒するかもしれない。

 その彼は建物の陰で怯える子供を追い詰めていた。

 両の手に握られているのは何回見たかわからない中華の刀。

 

 

「はーい! そこまでー!!」

 

「ムウッ!!」

 

 

 思いっきりジャンプすると彼が持っているのと「同じ」刀を手に投影して子供との間に割り込む。

 

 いやあ、相変わらず不機嫌そうな顔。

 

 振り返ってみた彼はどっからどうみても嫌悪感と敵意剥き出しの顔なのに、私は何故か安心してしまった。

 

 

 

 

 

「……また貴様か……」

 

「まあね。あなたのいるところに私あり! ってところかな」

 

 おちゃらけてVサインを作ってみるがまあ、どんどんと表情は険しくなっていく。

 それは仕方ないんだけどさ、少しくらいは吹き出したりでもしてくれるといいなーなんて期待も持つわけで。

 

 

「お前は一体何者だ? 常に私の邪魔をする。そもそも私の邪魔ができる時点で人間ないことは明白だが……」

 

「うーん……守護者ってところかな」

 

 

 そういうと彼は、ハッと忌々しげに呟くとそれ以上無駄口を叩くと殺すと言わんばかりに睨みつけてくる。

 

 

「守護者だと? あり得ん、ならば私の邪魔をするはずが無かろう。まあ良い。今度こそ貴様ごと消し去るまで!」

 

 

 両手にグッと力を込めたのが伝わる。

 あと数秒もすれば何回繰り返したかわからない彼との血みどろの死闘(勝ったことはない)が始まるのだ。

 集中しなければ私の首は一瞬にして吹き飛びさっきの彼女のように誰かに目を閉じてもらうことすらできず放置されるのだ。

 そんなのは願い下げである。

 

「お姉ちゃん……」

 

「ん? ……っ!」

 

 裾をギュッと握られる感触を感じて振り返る。

 そう言えば子供がいるんだった。

 乗り掛かった船だし出来るなら助けてあげよう…そんなことを思ってみた子供の顔は…

 

 

「か、可愛い!!!」

 

「……!?」

 

 私の大好物だった。

 

「きゃあ! 貴女なに!? なんでそんなに可愛いの!! 目はパッチリしてるし身体はちっちゃいし、髪は綺麗だしもう最高よーー!!」

 

 

 困惑している少女を抱き上げてグルングルンと振り回す。

 

 だめ!可愛いすぎる!もうお姉さんのお人形さんにしちゃいたい!!

 

 

 

 

「あ……あの……」

 

「うん?」

 

 

 遠慮がちな声に我に戻る。

 

 ああ、声まで可愛いなんてこの娘どこまで私をキュンキュンさせれば気が済むの!?

 

 

「あの人……凄い怖い顔してるよ……?」

 

「……あ」

 

 そこから現実に一瞬で引きずり戻された。

 見るのは嫌だけど残念ながらそんな選択肢は存在しない。

 

 さて、自業自得だ。何もかも覚悟して振り向くとしよう。

 

 

「……もういいか?」

 

「……アハッ」

 

 

 

 人間こんな怖い顔が出来るんだと初めて知った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「投影魔術……! 相変わらず似すぎていて吐き気がするわ!」

 

「それはどうも!」

 

 

 剣が弾かれ何本目か分からない剣の投影を行う。

 彼の剣も同じように弾いてはいるが精々私の剣が二本折れる間にようやく一本折れる、という具合だ。

 そもそも私の投影は借り物だ、その上に更にスペックまで微妙となればこうなるが必然、そう、今まで何度もこの展開を経験してきた。

 

 

 

「だけどね……負けられないの!」

 

「チッ!」

 

 渾身の力で下からかちあげて剣と同時に腕ごと持ち上げる。

 そうして無謀な上体に剣を振り下ろす!!

 

 

「取った!! ってあれ……?」

 

 

 動かない。まるで世界が止まっているかのように。

 おかしいな…あの人は基本投影と強化以外の魔術は使えないはずなのに空間制御なんて出来るはずないんだけどなあ…

 

 はてな?と中途半端な体制で宙ぶらりんになりながら心の中で首を傾げる、がどうやら私の懸念したのは正解ではないみたいだ。

 その証拠に彼も驚いた表情をして固まっている。

 

 

「あらら~貴方も予想外ってことか……となるとこれはどういうことかな?」

 

 幸い口だけは動くようだ。 

 言っても皮肉を言うのが限界だけど。

 

 

「知らん。だが私としては感謝すべきか、今のは危なかった」

 

「でしょ? 逆に私は千載一遇の大チャンスを逃したわけだ」

 

 冷静になるとこれは痛すぎる。一本入れるところまでたどり着くのに一体どれだけの時間がかかったと思っているのか。

 

 そんな苛立ちを心の中で世界に対する罵倒として吐き出しているとそれに応えるかのように、今まで経験してきたことのないような感覚が私を包んだ。

 

 

「あ、れ……?」

 

 

 世界が歪む。私の知っている魔術にこんなものはないしそもそも魔術、いや。それどころか魔法でさえもここまで劇的な感覚は覚えないと思う。

 

 直感、これが世界の力というのは何となく分かった。

 

 

「あーあ、惜しかったのに……こんなとこで退場か……また、1からやり直しってのは寂しいなあ」

 

 恐らく私はまた飛ばされるのだろう。

 彼が苦しみ、また自分が見たくもない地獄を自ら作り出すどこかに。

 そうして私もまた繰り返すのだ。

 

 

 ま、しょうがないか。

 チャンスはいくらでもある。

 

 そう思い意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「あれ?」

 

 目を覚ます。何だか今回は目覚めたばかりにも関わらず意識がはっきりしている。

 

「え~とここは一体どこでしょうか……まず生物はたくさんいそうな気配するけど…え…?」

 

 いつもと違う感覚の中習慣になっているのか自然と自分がどこにいるのかチェックをはじめる。

 そうして気づいた違和感。私は……ここを知っている?

 

 建物の中、土蔵って言うのだろうか?磨耗し焼き切れかかっている生前の記憶をフル稼働するとある一つの場所がヒットした。

 

 まさか……そんなことって!

 

 

「……!あっ……!」

 

 

 外へ飛び出す。

 すると懐かしさのあまり涙が出そうになってしまった。

 

「私……ここを知ってる……」

 

 日本特有の建築様式、庭の広い武家屋敷が目の前に広がっている。

 ここは……私の人生で一番楽しかった場所に他ならない。

 

「衛宮邸……お兄ちゃんもここにいる?」

 

 

 パッと閃く。そうだ、これは夢か何かなんだろうけどとてもリアルだ。それなら醒める前に生前の彼に会っておくべきだ。

 また今後私が頑張れるように。

 

 ウキウキしながら歩き出す。

 何もかもが懐かしい。この家も庭も全部だ。

 

 そうして歩いていると……

 

「うっそ……」

 

 

 とんでもない違和感を感じ再び戦闘体制に入る。

 よりにもよってこういうことか。 まさか自分がこの立場になるなんて思いもしなかった。

 

 室内に飛び込む。

 すると目に入ってきたのは

 

 

「おいおい、勘弁してくれよ。7人目のサーヴァントかよ!」

 

 

 見た覚えがある赤槍を持つ青い男と

 

 

「ケホッケホッ……誰だ?」

 

 

 丸めた新聞紙なんて思わず笑ってしまいそうな貧弱な装備の懐かしい人だった。

 

 

 

「えーと……説明が難しいんだけど……貴方は私のマスターで、私は貴方を守ります。と言うわけでとりあえずここはお任せを」

 

 

 もう混乱してまともな言葉使いすら出来ていないけど最低限は伝わったかな?

 

 とにかく私はいつぶりか分からない敵意のない彼の横に立ったのだ。

 

 

 

 

 

 




どうもです!

この題材はなかなか珍しいんじゃないかと思い書いてみました。

恐らく不定期更新ですが感想などくれると嬉しいです。

それではまた!
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