Fate/Dancing night   作:faker00

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ー3日目ーー3ー  広がり始める戦火 桜

「それで、カチンときて一発ぶん殴なぐったと。」

 

 

「うん……」

 

何時もならば士郎は夕食の準備に取りかかり、凛は部屋にこもり、今でゴロゴロしているのは私だけの時間……なのだが今日は別。神妙な顔つきで見下ろす士郎、その後ろで必死に笑いをこらえる凛、そして全力で土下座をする私。

 目の前で片手で額を抑える士郎を見ると今更ながら罪悪感が沸いてくる。

 

 

「……プッ!!」

 

 

 ただし士郎からは見えない位置に隠れて笑いをこらえている凛は別。

 

 

「それもビンタとかならともかく渾身の右ストレートを叩き込んだと。」

 

 

「そうです……あのニヤケ面が我慢できなくて……」

 

 

「……っ!無理!もう我慢できない!!あははは!!」

 

 

「~~!凛!笑ってるけどあんただって似たようなもんじゃない!」

 

 

「あら?私はレディーとして良識ある対応をしてましたわよ?どこかの誰かさんみたいに暴力に訴えるなんてそんな野蛮なこと……」

 

 

「ええーい!ストップだ2人とも!!藤ねえがいなかったら停学間違いなしだったんだからな!」

 

 

 これで今月俺の財布はトラの餌食だ。

 なんて聞いてるこっちが悲しくなるようなことを溜め息混じりに呟きながら士郎が私達の仲裁に入る。

 そんなことを言われてしまえば流石に黙るしかない。

 

 

「全くだ……今回ばかりは衛宮士郎に同意するしかあるまい。ほんとに何をしているんだ君は。」

 

 

「おいアーチャー、お前いつの間に降りてきたんだ。」

 

 

「主と他のサーヴァントが喧嘩を始めたのだぞ?不足の事態に備えるのはそこまで悪いことではないと思うが?」

 

 

「それは……」

 

 

「それに私はこの浅慮なサーヴァントにそれなりの怒りを覚えていてね。アインツベルンの名を使い敵をおびき寄せる、目的を考えれば一般生徒の目を引く行動は控えたほうが良い。だというのに1日も持たずにいらん注目を浴びよって」

 

 

 屋上から降りてきたど彼もどうやらご立腹の様子である。

 同族嫌悪とやらかそもそも全くと言っていいほど士郎とは反りがあっていなかったがそれにも増して言葉にトゲがある。というよりもトゲしかない。

 

 そしてその怒りは当たり前だが私にも向いている。 

 ーーアインツベルンと言えば白い髪とホムンクルスであるがゆえに常識外に整った容姿だ。偶然ここにはそれに合致するものがいる。なら餌になってもらうのがベストだろう。アインツベルンの名を聞けばマスターは間違いなく動く、なにせ御三家だ。そしてもしも学校にちょっかいを出しているのが本物のイリヤスフィールなら……言うまでもあるまい?

 

 別に学校に通い始めたのは私の趣味というわけではない。確かに興味がなかったと言えば嘘になるがまあ第一優先はあくまでも学校に蔓延る陣営を釣るための作戦だ、初っ端からそれを危うくするような行動をした私に対する目がきつくなるのはまあ……仕方ない。

 

 

 だがそれもこれも元を正せば桜と昼食をとっていた際に現れた気色悪いクネクネヘア……もとい、問桐慎二のせいなのである。

 全く面識がない相手にも無駄に馴れ馴れしい、うざったらしい尊大さ、自分がモテると思っているのかどうか知らないけどいちいち勘に障る仕草、なにもかも問題外だ。

 そしてなによりも妹の桜に対する態度、人の本性は身内に対してより強くでるというがもしも私が桜の立場なら我慢出来そうにない。

 

 

 

「まっ、最初のほうは何があったか知らないけどエリヤがビシッと拒絶してからのアイツの狼狽えようは面白かったけどね。私もにこやかにかわすだけじゃなくてあれくらいガツンとやればいいのかしら……」

 

 

 その時のことを思い出しているのか凛は腕組みしながらうんうん、と頷いている。

 それには概ね同意だ、同意なのだが……

 

 

「ああいうタイプには絶対その方が良いわよ……凛、そうは言っても貴女後から乗ってきてさりげなく罵倒しまくってたわよね?あれのどこがにこやかなの?桜もドン引きだったけど。」

 

 

 ……しれっと優等生の体裁を保ちつつ好き勝手やるのは反則だと思う。私の印象は既にむちゃくちゃだという のに。

 

 

「頼むからもう問題起こすのはやめてくれ……慎二には俺からもよけいなことすんなって言っておくから。」

 

 

「…あの娘は問題ないわよ。色々とあるから。」

 

 

「ふーん……あ、そうだ。桜と言えば1つ聞きたいことがあるんだった。」

 

 

 士郎の嘆きも無視して凛はサラッとそう言いきる。

 しかしその言葉に一瞬力みが入ったのを見逃すほど私はバカではない。

 

 ーービンゴか……

 

 となると、これを放置する選択肢はない。

 

 

 

「なに?なんかあるの?」

 

 

「ええ、ちょっと秘密のガールズトークってとこかな。とりあえず2人で話さない?士郎、アーチャーあんたらは来ちゃだめよ。」

 

 

 なによなによと困惑する凛の手を引き居間を出る。

 私の予想が当たっていればこれは士郎に聞かせていい話題ではない。

 

 

「えっちょっ……」

 

 

「やめておけ衛宮士郎。女というものはなかなかに御し難い。蛇が出るか虎がでるかわかったものではない。」

 

 

 何を思ったか彼が空気を読み士郎を制する。ほんとに私の話もこれくらい聞いてくれれば良いのに……そんな事を思いながら凛を伴い居間を出る。

 

 「……」

 

 その瞬間彼と目があったのだがその目は恐ろしいほどに無、を貫いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、何よ。」

 

 

「いやいや、そんな深刻な話じゃないんだけどさ……」

 

 

 いくら温暖な気候と言っても夜は寒い。中庭に出ると凛はさむさむと小言を言いながらもついてくる。

 

 

 

「……やっぱりだ。」

 

 

「……?」

 

 

 月を通すと人を見易い。無論、外見ではなく内面の話だが。

 月明かりを背に立つ凛をじっと見る。簡単な感知だ。

 ーー操られたりなにかの手段で行動を強要されている人間は必ずその内面が揺らぐ、魔術師ならばその回路の流れが。正義の味方であるならば、声なき叫びにも呼応しなければいけない。

 そんなことを言っていた誰かさんのついでに覚えたものだがこんなところで役に立つとは奇遇なものだ。

 

 

「じゃあ単刀直入に。桜、あの子魔術師ね。それもあなたとかなり近い……親戚ってところかしら。だけど決定的に噛み合わないところもあるのが不思議なところだけど。」

 

 

 気になることは他にもある、がそこは今は置いておく。まずは事実確認の方が先だ。

 

 凛はそれを聞くと腕を組みピクッと眉を動かす。

 あからさまに警戒を示す態度だったが数秒ほど沈黙するとふっと脱力し、仕方ないか、と向き直った。

 

 

「貴女が言うなら確信があるってことよね……なんで分かったのよ。私、そんなボロを出したつもりないしあの子もするとは思えないけど。」

 

 

 不服そうな空気を全開にしながらも凛が口にしたのは肯定。

 確かに凛はボロを出したりはしていないし桜も……どうやっているのかは知らないけれど普通にしてる分には全く分からない。 

 けど女の子、というよりは人間特有の感情は時にそんな仮面を容易く引き剥がす。

 

 

「桜、士郎のこと好きだからね。今日話してるときにちょっと触れちゃいけないところに触れたみたいで……その時見えちゃったのよ。魔力の流れ。それがどうも凛に近いものを感じたから。」

 

 

「あー……士郎絡みね。納得。」

 

 

 凛はやれやれと頷く。

 

 

「そういうことよ。それに凛も桜の話になるとちょっとだけ会話のテンポが遅くなることがあるから、まだまだ詰めが甘いわよ。」

 

 

「なによ、結局私にも原因あるんじゃない。」

 

 

「それだけならせいぜいなんか言葉をど忘れしたのかな程度の違和感なのよ。そんなに頻度も多くないし。そういう前提じゃなきゃそうそう気付けないわ。」

 

 

 ほんとにポーカーフェイスがうまいってのは得だ。と心の中で呟く。

 感情が即表にでるタイプの私からしたら本当に羨ましいかぎりだ。

 

 

「ま、なんで学校やここで全く見ず知らずの他人のふりをしてるのかは聞かないでおく。お互いここまで徹底してるってことは何かしら訳があるんだろうし。なんか変なことだったりしで私まで気まずくなったらたまったもんじゃないから。」

 

 

「そっ、それは助かるわ。」

 

 

 珍しく安堵、と言うのだろうか。それに近い反応を凛は見せる。

 反応しだいでは突っ込む気でいたがそうしなかった判断は賢明だったみたいだ。

 

 

「だけど……」

 

 

 はっきりさせなきゃいけないことがある。

 

 

 

「凛。桜がマスターってことはないの?あの娘の心は鉄壁……士郎絡みだと脆く崩れるときがあるとはいえそれ以外は全く見えない。中で何を考えてたとしてもそれに気付くのは至難の業よ。」

 

 

 これが士郎には聞かせられない本題だ。もしもこの話を知れば士郎は否定するだろう。そしてショックをうける。

 疑う私にもそうだし、桜が魔術師であるという事実にも。

 只でさえ彼の世界は今大きく動いている。これ以上の負担に耐えられる保証はどこにもない。

 

 

「ないわ。」

 

 

 だけど凛は私の心中を察したかのように簡潔に、なおかつしっかりと断定した。

 

 

「けど今日1日学校を回ったけど魔術師、なんて特異な存在は私と凛、そして士郎だけよ。なら桜が候補になるのは不思議じゃない。」

 

 

 それでもあえて追いすがる。

 実際学校全体を回っても収穫はなかった。凛に限って身内のなんとやらはないと思うがそれでも根拠がなければ到底納得できない。いや、してはいけない。

 

 

「……話さなきゃダメ、か。エリヤ。マトウって家を知ってるかしら。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 蟲、この空間を現すのにはこの一文字が適切かつ唯一だろうか。

 この世の物とは思えないおぞましい光景。薄暗いその中に彼女は1人佇んでいた。それを認めた老人は音もなく近づく。

 

 

「……桜か?珍しいこともあるものだ。お主が自らここへ足を運ぶことなど二度とないと踏んでおったのだが……」

 

 

「お爺様……」

 

 

 後ろから聞こえるしがわれ声に少女、桜は振り向く。

 その目にいつも学校や衛宮邸で見せている輝きはなく、只虚ろに影を落とすだけ。

 

 

「どうした、まさか姉の心配をしていたと言うわけでもあるまい。案せずとも今回は遠坂の勝ちよ。あまりにも舞台が貧弱すぎる。如何にあの小娘が未熟といっても素質と勝負勘を上回る猛者は現れまい。」

 

 

 遠坂、という言葉に桜の肩ビクッと動くがそれだけだった。

 確かに興味がないと言えば嘘になるが今の彼女の頭を占めるのはそれではない。

 

 

 

「アインツベルン……」

 

 

「アインツベルン?あれは外れだ。器としては申し分ないが戦闘には向かん。10年前の失態を引きずりアハトはまたもや悪手を打った。」

 

 

 言葉に狼狽えたのは老人のほうだった。

 なぜこやつの口から自発的にその言葉が発せられる?

 

 

「先輩……」

 

 

 しかしそんな疑問は桜の次に桜から発せられた切なげな言葉によって打ち消される。何か知らないがこれは転がせば面白いことになる、と。

 

 

「どうした桜。儂で良ければ話を聞こうではないか。なあに、可愛い孫娘の相談よ。もしや力になれるかもしれん。」

 

 

 悪魔の囁きが少女へ降り注ぐ。

 

 





どうもです!

ここからストーリーはどんどんと……
アイデアは湧くのでうまくまとめながらですね。

それではまた!

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