Fate/Dancing night   作:faker00

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ー3日目ーー4ー  広がり始める戦火 家庭事情

 間桐……聖杯戦争においてアインツベルン、遠坂と並び始まりの御三家と呼ばれ伝統のある魔術家系。

 属性は水。

 吸収や戒め・強制の魔術を得意とし、聖杯戦争を開始するに当たってサーヴァントを律する令呪を作り上げた。

 元はヨーロッパの出で家系名も違うものであった。聖杯戦争の為に来日すると共に冬木に根を張り名も日本に合わせ現在の間桐となる。

 しかしこの判断が間桐の家を狂わせることになる。

 彼らに日本の土は合わず、魔術の才たる魔術回路は世代を重ねるごとに減少の一途を辿り今代の間桐慎二においては遂に0、魔術師としての間桐の血は途絶え、その探求の道は終わりを告げることになる……はずだったのだがそう簡単に終わらせる訳にはいかないということで今まで渋り続けていた養子を取ることになった。

 

 

 

「それが桜、エリヤも知ってると思うけど魔術師の秘伝は一子相伝、基本的には長男、もしくは長女が受け継ぐって感じかな。それじゃあ残った子はどうなるんだーってことになるんだけど、魔術に関わりのない一般人として育てられる、もしくは養子に出されるの。それで、遠坂は私が受けついじゃったから桜が養子に出されたの。」

 

 

「……一般人として暮らす道はなかったの?」

 

 

「それは死んだ父さんに聞かないと分からないわ。とにかく、今ある事実はそういうこと。だからあなたは桜に私を重ねる魔力を見たのよ。属性は元のものから間桐のものに調整されてるだろうけど元は同じ所にルーツがあるんだから……」

 

 

 最後にそれだけいうと凛は、これで話は終わりよ。と背を向けて立ち去っていった。

 その顔が見えなくなる直前に端正な彼女の顔が苦渋に歪んでいたように見えたのは私の気のせいではないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの慎二が魔術師の家系で桜も魔術師かあ……」

 

 

 昨夜のやり取りを思い出すとあまり眠れない。最もサーヴァントは睡眠の必要などないから問題はないのだが寝るのが気持ち良いのはいつだって変わりはしない。

 だというのに何となく目が覚めてしまいベッドから身体を起こし窓から外を見る。

 記憶が摩耗して忘れたのか、そもそもその時は知る機会がなかったのか、どちらかはわからないが凛の話は充分に衝撃的なものだった。

 

 

「……もう2時じゃない。」

 

 

 どこまでも暗いはずの冬の夜空は清々しいほどの黒を貫いている。

 部屋に備えつけられた時計を見ると時刻は既に日が変わりそれなりの時間が経ったことを示していた。

 

 

「あれ?」

 

 

 窓から流れ込んでくる微弱な違和感に一気に覚醒する。

 サーヴァント、にしては弱い。それに特有の禍々しさもない。凛は朝が弱いからこんな時間に起き出したりはしないだろうし……

 

 

「行ってみますか。」

 

 

 だいたい想像はついたが一度見てみるのもありだろう。

 乱れた掛け布団を直し1つ伸び、流石にパジャマで外にでるのは寒い、そしてなにより恥ずかしいのでクローゼットから上着を取り出し羽織ると薄暗い廊下へと踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目当ての人物……士郎は蔵にいた。あまり汚いところは好きじゃないのだけど……まあ集中しているみたいだし気を散らさないように外から見物していよう。

 

 

「……くっ!」

 

 苦悶の声と同時にパキッという音がなり石が真っ二つに砕け散るのが見える。

 もちろん、士郎にそんな握力があるわけがない。

 強化の魔術……しかし身体を強化し石を砕きにかかったということではない。もしもそれならば成功なのだが……本当にセンスがないとしか言いようがない。そもそもスタート地点が狂っているのが原因であるのだけど。

 

 

……手助けしますかね。

 

 

 

 

「おーい、士郎ー」

 

 

「……くっそ」

 

 

 

 うわ、全然気づかないや……これだけの集中力持った鍛練を何ヶ月、いや何年も継続して続けてるのに結果がでないってことに疑問を抱くことすらないというのがある意味、エミヤシロウという人間の本質であるかもしれない。

 

 後ろまで来てみたけど気づく気配も全くなく士郎は悔しげにさっき自分が割ってしまった石を睨みつけるようにじっと見ている。

 これはこれで才能だと思うけどここまで近くにいて気付いてもらえないというのはちょーっと気に食わないかも。

 

 

「士郎!!」

 

 

「おわっ!?なんだエリヤか……急に驚かせるなよ。」

 

 

「急にじゃない。さっきからいたわよ。」

 

 

「あー……ごめん、俺時々周りが見えなくなる…っ!」

 

 

「ん?なーによ顔真っ赤にしちゃって。凛みたいな美人が近くにいるってのに免疫つかないって相当重傷ね。」

 

 

「と、遠坂は関係ないだろ!!」

 

 

 土蔵は狭いと言っても人2人がくっつかなければ座れないほどというわけではないが敢えて密着するように隣に腰を降ろす。

 申しわけなさそうに弁解していた士郎だがそれに気付くと一瞬キョトンとした後相変わらずのことながら面白い反応を見せてくれた。

 真っ赤になった顔を隠すように背けるが残念ながらなんの意味もなく丸分かりだ……士郎をからかうのも面白いがそろそろ本題に入ろう。あまり無駄な時間は使いたくない。

 

 

 

「魔術の鍛練?随分と失敗の山を重ねてるみたいだけど。」

 

 

「一応な。強化の魔術なんだけど恥ずかしながら成功率は1割くらいだ。」

 

 

「1割!?」

 

 

 床に散らばった石の残骸を横目に語る士郎に改めて驚愕した。

 いくら何でも低すぎる。私の知っている士郎はもう少しましだったはずだ。もっともこちらの士郎とは違って既に凛のテコ入れが入っていた可能性は充分にあるが。

 

 

「ああ……どれだけ鍛練を重ねても率が伸びる気配が一向にない。けど他に出来る魔術は俺にはないし、親父が教えてくれた鍛練の仕方はこれしかないからな。」

 

 

「衛宮切嗣……」

 

 

「エリヤに親父のこと話したことあったか?まあいいや。今の成功率の話でもう分かってるかもしれないけど俺は純粋な魔術師じゃない。魔術師だった親父に無理を言って教えてもらっただけの一般人なんだよ。」

 

 

 士郎から出た親父という言葉に思わず反応してしまいとっさに口元を抑えるが結果的にそんな心配は不要だったか士郎はそのまま続けた。

 

 

「10年前、俺は親父に命を救われた。それ以前の記憶はない。何もかもが燃えてて何もかもが真っ暗な世界。俺が覚えてるのは心底幸せそうに、何か救ったはずなのに救われたような顔して涙流してる切嗣の顔だけさ。元は他の名前だったんだろうけどそれも今となってはわからない。その時から衛宮士郎なんだ。」

 

 

 恐らく士郎が語っているのは前回の聖杯戦争の終結時のことなのだろう。

 士郎が全てを失い、そして”エミヤシロウ”として全てを得た日、それと同時に私も全てを失い、全てを憎む元凶となった日……

 

 

「おい……?大丈夫か?」

 

 

「へっ!?あ、ああ大丈夫大丈夫。続けて?」

 

 

 知らぬ間に独りの世界に入り込んでしまったのか目の前に突然士郎の顔が現れる。

 英霊になってからというもの暇潰しはこれくらいしかなかったとは言え自分でもびっくりするほどの空想癖は治さないといけないのかもしれない……

 

 

「そうか?……それから頼み込んで親父に魔術を教えてもらうことにしたんだけど親父は俺に教えるのも渋々って感じでさ、それに加えて俺自身もセンスないわで全然上手くいかなくって……」

 

 士郎は気恥ずかしそうに頭をクシャリとかく。

 だいたいわかってはいたことだけど衛宮切嗣という人物は指導には向いていなかったのか、それとも本当にする気がなかったのか。

 もしもやる気があってその結果が今の士郎だというなら天国にいるであろう切嗣にいつか文句の一つでも言ってやらねばなるまい。

 

 

「多分親父の出来ること1割も出来ない内に親父は死んじまって……唯一まともというかまだ見込みがありそうって言われた強化の鍛錬だけ続けてるってわけだ。」

 

 

「……そのやり方は本当にあなたのお父さんが教えたの?」

 

 

「えっ、ああそうだけど……」 

 

 私の中で切嗣の株が一気に下落した、いや、崩落した。 

 一言で言うならば頭がどうかしている。

 衛宮士郎の魔術はスタートから破綻している。魔術回路というものは造るものではなく表すもの、更に言えば一度発現してしまえばその回路はずっと使える。

 だというのに、士郎は魔術を行使する度に1からその回路を作っている。それも酷く歪な、一歩間違えれば死にかねないようなやり方で。

 今まで生前も含めて私はそれを士郎が師がいなかったために迷走した結果辿り着いた苦肉の策だと思っていたし、私の知る凛も同じような見解だったはずだ。

 だけど士郎の語る通りならばそのやり方は士郎に対して「正しいもの」として教え込まれたものでその教えは士郎そのものを壊そうという意図があるとしか思えない……

 

 

「むう……」

 

 

「なんだよエリヤ、言っとくけど親父は悪くないからな?なんだかんだ言って俺の適性とか探すの手伝ってくれたし、教えるときは身体が弱いのも無視して真剣にやってくれた。悪いのは上手く出来ない俺なんだ。」

 

 

「いや、そういう問題じゃ……」

 

 

 真剣にやったうえでの結果がこれだというからこっちは困ってるの!

 と、怒鳴り散らしたくなるがそんなことは意味ないだろうし、純粋に切嗣のことを尊敬しているのであろう士郎との間に溝が出来るのは目に見えているのでやめておく。

 それにしてもこれは一度よく考えないといけなさそうだ。

 

 

「はあ……まあいいわ。それじゃあ本題何だけど、士郎。あなたが使えるのは本当に強化、だけ?投影も使えるんじゃないの?」

 

 

「確かに使えないこともないけど……強化以上にだめだめだから使えるなんて言えないぞありゃ。それこそ言ったら遠坂に怒られるぞ、魔術をなめるなー!とかなんとか。」

 

 

「あのね……士郎がへっぽこだなんて今更なんだから未熟なものがいくらあろうと凛も気にしないわよ、どっちかというと黙ってる方が後々逆鱗に触れると思うけど?」

 

 

「まあ……それは確かに。」

 

 

「そういうわけだからちゃんと凛には話しときなさいね……あとその鍛錬はもうやめなさい。もっとましなやり方を教えてもらえると思うから。それじゃあね。」

 

 

「あ、ああ……ちょっとまてエリヤ、なんで俺が投影使えるってこと……!」

 

 

 後ろで士郎が何か言っているけど振り返ることなく足早に部屋に戻る。

 本当はもうちょっと手を加える予定だったけれど考えたいことが多すぎる。それにさっき言ったことを士郎がちゃんと伝えたなら後は凛がどうにかしてくれるはずだ。変に怪しまれないようにするためにはこれぐらいでちょうどいいのかもしれない。

 

 

 

「あーもう……」

 

 

 ボフッという音とともにベットが沈む。

 それに身を委ねながら思考も深く沈んでいく。

 

 衛宮切嗣という人物のことがますますわからなくなった。

 エミヤシロウを作り出すその理念の元となった人、それならばその人となりは公明正大、もしくは真っ直ぐでなければならないはずだ。そうでなければあんな存在は生まれようがない。

 だが色々なところから垣間見える切嗣の姿はそんなものとはかけ離れている。アハト爺のは恨みとともに煽りたいがための妄言と切り捨てるとしても、言峰や士郎の言葉は無視できない。

 

 

「一体なんなのよ、私のお父さんって……」

 

  

 知らず知らずの内に夜が明けていく。

 

 

 

 

 

 




どうもお久しぶりです。就活に怯えるfaker00です。

ちょっと時間が空いてしまった……実は年明けには7割方書き終わっていたのですがそこからが上手くいかずここまでかかってしまいました。申し訳ない。

切嗣の絡ませ方が難しい……それではまた。

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