Fate/Dancing night   作:faker00

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ー4日目ーー2ー 常闇と鍛練と ライダー

「え…」

 

 頭を突き抜ける感覚。初めてのものだけどなんなのかはわかる。

 これは……マスターの危機!

 

 授業も終わりHRも終わり、夕焼けの中凛と士郎を待ち屋上に1人佇み街を眺めていると突然襲ってきた士郎の危機を告げる感覚。

 フェンスに手をかけ勢いのまま地上へとダイブ。地面に辿り着けば感覚の根っこである森まで都合ここから数百m、私なら一息で駆け抜けられる!

 

「士郎!」

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

「勘が良いのですね……ご褒美にあなたは優しく殺してあげます。」

 

「くっそ……」

 

 

 サーヴァントとタイマンか……はは、手加減してくれてるエリヤにボロクソやられてる俺が出来ることなど限られている……どころかほぼ0だろう。

 釘の突き刺さった右腕を見る。制服の色がわからなくなるほどの血の量からもわかるが機能不全もいいところだ。ほぼ動かない。             

 いや、それでもまだ良い方だ。なにせついさっきこの釘は俺の頭目掛けてとんでもないスピードで飛んできたのだから……!

 

 

「結界の起点が新しく、それも目立つように出来てると思ってきてみればこれか……となると罠か。くそ、こんなの遠坂に見られたらどやされるな。」

 

 自らの判断が迂闊だったと呪うしかない。授業後に今まで感じなかった匂いを感じてその起点である弓道場にいったら突然何かに引っ張られて森の中に引きずりこまれ目の前にサーヴァントがいた。今考えてみれば迂闊としか言いようがない。

 昨日もやったことだからと警戒が薄れていたがあの時はエリヤと遠坂の2人がいるから安全だったが今は1人なのだ。

 そんなことすら気づかなかった自分に腹が立つ。

 

 

「ええ、ですが本来釣る予定だったのは貴方ではない。貴方は勝手に巻き込まれた哀れな小魚です。」

 

「なんだと……?」

 

 

 表情1つ変えずに淡々と告げられるその言葉に思わず聞き返す。

 本来釣る予定だったのは俺じゃなかった……?となると選択肢は2つしかない。

 

「てめえ……エリヤと遠坂に手を出すつもりか……!」

 

「さあどうでしょう。ですが、それを貴方が知る必要はありません。」

 

「……!」

 

 

 目の前から紫の長い髪を揺らしていたサーヴァントの姿が消える。

 沸騰しかかっていた頭が一気に冷やされる。なんてスピード……!

 

 

 昨日ボコボコにされたエリヤの残像を思い出す。

 目で捉えるのは不可能、ならば空気の動き、殺気を感じろ!人は普段視覚に頼りすぎているが他の感覚も本来それと同等の情報量を仕入れることができる容量をもっているのだから……!

 

 

「つあっ!」

 

「……!」

 

 

 見えていた訳ではない。感覚に身を任せとっさに左半身を手足全体を使ってガードする。

 衝撃を全て相殺、なんてことは叶わないがなんとか新たに身体の一部分が機能不全を起こすこともなくごろごろと転がりながら受け身を取ることに成功する。

 

 

「……驚きました。まさか私の一撃を防ぐとは。」

 

「そりゃどうも……」

 

 なんとか身体を起こす、がそれだけで精一杯。

 膝なんてもんじゃない、ただの一撃でからだ身体全体ががくがくと笑ってしまっている!

 

「くっ……」

 

 

 正直な話、このサーヴァントが何者なのかはわからないがとんでもなく強い。

 言葉通り思いっきり手抜きをしてこれならば本気を出せば蹴り一つで俺の上半身を吹き飛ばすことなど造作もないだろう。

 

「へっ……サーヴァントって言ってもこんなもんか。これなら俺でも闘えるんじゃないか?」

 

「そうですね。身体が動くなら、ですが。」

 

 

 精一杯の強がりも残念ながらバレている。

 そりゃそうだよな……当たり前だ。今の俺は五才児が見ても「大丈夫?」と心配してくれるであろう体たらくなのだから。

 

 

「それではこれで最後です。迷わないように今度はもう少し念を入れましょう。」

 

「くっそ……!」

 

 

 詰んでいる。この状況を打開する手段など俺にはないってのに!

 

 

「士郎!!」

 

「え……?」

 

 

 もう一度残像と化した黒い影が目の前に現れる。

 間に合わない……そう覚悟を決めた瞬間その蹴りは間に入った赤い影に遮られていた。

 

 

「ふう……間に合ったみたいだね。大丈夫って訳じゃなさそうだけど。」

 

「エリヤ!?」

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 全速力をもって校庭を駆ける。下校時間が早まり部活動も禁止なのが幸いし見ている人は誰もいない。

もっとも……例え人がいたところでそんなことを気にしている余裕は到底ないのだけど。

 

 

「いた!」

 

 運の良いことに主はまだ立っていた。

 が、もう限界すれすれだろう。風が吹けば倒れそうなくらいにその姿は弱々しい。

 

 

「届け……!」

 

 

 一際大きく跳ぶ。その跳躍力をもって士郎の目の前へと割り込む!!

 

 

「士郎!!」

 

 弾き出す。今正に士郎の上半身を狩ろうとしていた蹴りを此方も地面に立つと同時にその勢いを生かした回し蹴りで相殺する。

 

 それにしてもおもた……!イノシシじゃあるまいし!

 

 

 

「え……?」

 

 

 痺れる足に顔をしかめていると腑抜けたような声が後ろから聞こえてくる。それと同時に安心した。

 全く……世話が焼けるんだから。

 

 

「ふう……間に合ったみたいだね。大丈夫って訳じゃなさそうだけど。」

 

「エリヤ!?」

 

「はいストップ。聞きたいことは山ほどあるだろうしこっちもその通りなんだけどとりあえずこれを切り抜けた後、ね。」

 

 

 右腕が血まみれなのもお構いなく私を心配するかのように寄ってくる士郎を手で制する。

 ふむ……致命傷はない、か。これなら不完全なアヴァロンでも……!

 

 士郎の右腕に触れて魔力を注ぎ込む。本来の持ち主である本家セイバーことアルトリアならば触れる必要すらなく完璧な治癒能力を発揮させることができるが残念なことに私はそこまでできない。遠隔操作も可能だがこうやってじかに触れないと効果が減少してしまうのだ……とにかくそうして私の魔力に呼応して起動し始めたアヴァロンは士郎の身体を癒し始める。

 

 

「な……これは?」

 

「治癒魔術ってやつかなー。まずこれで士郎は大丈夫だから気にしなくていいよ。まずはそれよりも……」

 

 

 私が手をおくと同時にふさがり始めた傷口に驚く士郎を適当に誤魔化す。

 アヴァロンがどうとか言ったところで分からないだろうし言うつもりもない。

 それよりも問題はだ。

 

 

「……」

 

「なに、貴女?まともな英霊じゃないわね?」

 

 

 数m離れた位置で構えるサーヴァントを見る。

 女性のサーヴァント。紫の長い髪と長い手足、そして桜以上あろうかという胸。女としては理想的なスタイルだがその両目は眼帯によって見ることが出来ない。そして何より特徴的なのだが……とにかく黒い。

 

 英雄と言うのは本来煌びやかなものだ。様々な武勲により人々の記憶に残り、祭り上げられる存在。信仰を受ける者。

 そんな存在である英雄がこんなにどす黒いものであるはずがないのだ。

 

 

「ええ、ですがそれは貴女も似たような者ではなくて?」

 

「まさか、貴女は怨霊とかそっちの類でしょう?私はそんなんじゃないもの。」

 

 

 正規の英雄じゃないってのは確かだけど。

 何か見透かしたような言葉を紡ぐ相手に微かに苛立ちを覚える。

 

 

「それよりも……私のマスターに手を出したんだ。覚悟は出来てるわよね?」

 

「それは此方のセリフです。私の狙いはそもそもその少年よりも貴女方なのですから。」

 

「ちぇ……こいつもまた……」

 

 

 強いわね、という言葉を呑み込む。

 干将、莫那を投影すると同時に相手のプレッシャーも増す。

 全く気が抜けない。否、気を抜けばその瞬間に命はないだろうから気を抜いた、と言うことに気づくこともできないだろう。

 

 

「まるで毒蛇ね……」

 

「マスター共々勘が良いのですね。まあ……」

 

 

 スッと上体を沈ませ溜めを作ったかと思うと姿が消える。

 

 

「どちらもここで殺しますけどね。」

 

「はやっ!?……どりゃあ!」

 

 

 そこからコンマ数秒でそんな不吉な言葉と共に士郎を刺したのであろう鎖付きの釘が真上から降ってくる。

 そのスピードに驚いたがとっさの判断でそれを双剣を挟み受け止めそのまま背負い投げの要領で前方へ放り投げそのまま前転。ちょっとまずい……まずはこいつを士郎から遠ざけないと……!

 

「士郎離れて!」

 

「……!分かった!」

 

 

 その意図に気付いてくれたのか士郎が校庭に向けて後退する。

 

 ……良かった。少しは訓練をつけてあげた甲斐があったみたいだ。

 

 今までの士郎ならまず退かない。それを許すことのできない人間だから。

 けれど1つだけ必死の思いで覚えてもらったのだ。サーヴァントとの実力差……そして私のことを少しでも想ってくれているのなら戦場でだけは私の指示を信じて最優先にして動くことを!

 

 

「うしっ、それじゃあこっからは遠慮なしだね。」

 

 

 それにしても士郎らしくないくらいあっさりと引き下がってくれたものだ。

 ……まあ直前に殺されかかってたのが大きいんだろうけど。まず何はともあれこれで士郎を守りながら闘うという難しい事をこなす必要はなくなった。

 

「華奢な体躯の割に力業もお得意とは驚きました。」

 

「ま、鍛えてるから。」

 

 

 遠心力で茂みへと吹き飛んだ相手がその体を起こす。残念ながらなにも効いてやしない。まああの程度じゃダメージもなにもないよねそりゃ。

 

 

「……」

 

「……」

 

 

 お互いに睨み合う。動けないのか動かないのか、少なくとも私は前者だ。あくまで勘だけどここで接近戦をするのはどうもうまくないような気がするのだ。

 それに……迂闊に動いたら絡めとられそうだしあんましこっちからは動きたくないなあ……取り敢えず武器はあれだけってことはないだろう。宝具っぽくはないしなによりもう該当するクラスがない。

 

 

「情報すっくないなあ……まあライダーなんだろうけど。」

 

「……?よく初見でわかりましたね。そういうあなたはアーチャーかセイバーかどちらかと見ますが。」

 

「いろいろあってね。まっそんなところよ!」

 

 

 クラスを看破されても全く動じないライダーに牽制も込めて干将を投げつけるが案の定あっさり弾かれる。

 回避動作で隙が出来ないかと淡い期待も兼ねたものだったけれど残念ながら望み薄のようである。

 

 ……明らかに見えてる、って反応だしあの眼帯はやっぱりただの飾りじゃないとみた。

 

 

「何のための目隠しかはしらないけど盲目ってわけじゃなさそうね。」

 

「これがそんなに気になりますか?」

 

「そりゃね。そんな目立つもの、何かありますよーと言わんばかりじゃない。」

 

 私の言葉にライダーはクスリ、と妖艶な笑みを零す。

 その仕草に何故か悪寒がはしった。こいつは多分あの眼帯を外したらとんでもない美人だと思う。それもぞっとするような。けど、それはどうしようもない負の部分というか裏がある類のやつだ。

 

 

「そうですね……あまり好みではないのですが折角ですし見せてあげましょうか。大丈夫、貴女も仮にも三騎士と呼ばれるクラスのサーヴァント。どの程度の対魔力があるのかは知りませんが……何がどうなったのか理解するくらいの時間はあるでしょう。」

 

「……!?」

 

 

 ライダーが眼帯に手をかける。

 それと同時にどす黒い魔力の渦がじわりと溢れ出す。

 

 なんてこと……あれは拘束具の類だったってこと!?

 

 話に聞いたことがある。自らの力でのコントロールが及ばない所で勝手に暴れる呪いのようなものが存在する、と。

 それによるリスクは様々だけど一番多いのは魔力の枯渇。

 もしもそれを恐れての拘束なら解放時の威力は宝具にも匹敵しかねない!

 

「やばっ!」

 

 

 全力で飛び退く。

 もしも魔眼ならば発動にはそうそう時間はかからない。タイムラグを信じて懐に飛び込むのもありだけどやらかしたらそこで終わりと言うことを考えるとそんなリスクは犯せない。

 となると何とかして視野外まで逃げないと……!

 

 

 

「エリヤ!!さっさと伏せなさい!!」

 

 

 だというのに、後ろから聞こえてきたそんな声に私は後退を止めて地面に伏せていた。

 

 

「な……!」

 

 

 ついさっきまで私のいた空間を大量の光弾がマシンガンよろしく間髪いれずに飛んでいく。

 ガンド。北欧から伝わる呪いの一種であり強力なものは「フィンの一撃」と呼ばれるのだが……ここまで強烈なそれ連発する魔術師は私は1人しかしらない。

 

 

「ダメよ凛!いくら貴女のガンドでも英霊相手じゃ!」

 

 後ろにいるであろう凛に向けて叫ぶ。

 ガンドの着弾ポイントになっているライダーのいるはずの場所は衝撃によって巻き起こる白煙によって全く見ることが出来ない。

 それでもその向こうにいる相手がこの攻撃によってKOされている、なんて都合のいい映像は私の中には浮かんでこなかった。

 

 確かに凛のガンドは人間離れしている。

 だがそれはあくまで人としての常識の中での話であり人ではない存在の前においては凡庸かつ平凡なものに過ぎないのだ。

 下手をすればこの爆煙がブラインドになって彼女にとって致命的な隙を作りかねないっていうのに!

 

 

「……もうっ!」

 

 

 聞こえているのかいないのか、私の叫びにも弾丸の雨嵐はやむ気配はない。

 もう視界は一面の水色水色水色赤水色……

 

 

「んん?」

 

 

 今何か一発変なものが混じったような……と目をこすった瞬間

 

 

「砕けろ!!!」

 

 

 凛の声と共に一際大きな爆発が森を包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ケホッケホッ……一個宝石を混ぜてたのね。」

 

「ええ、私も自分のガンドに自信がないって訳じゃないけど流石に分が悪いもの。」

 

 

 むせながら後退すると額に汗を滲ませた凛が手で顔を拭っていた。

 いくら優秀といってもあれだけの数の魔術を連発すると言うことは多大な負担がかかる。並みの魔術師ならば魔力切れでグロッキーになっているに違いない。

 

 

 

「けどこれなら少しくらいは効いたんじゃない?それなりに手応えはあったつもりなんだけど……」

 

「あー……うん、助けてくれたことには感謝してるんだけど……」

 

 

 その期待は叶いそうにないわ。

 と告げる前に視界を覆っていた白煙が消え始めその中からゆらりとライダーが姿を現した……多少汚れてこそいるもののほぼ無傷で。

 

 

「なるほど……流石は長きに渡ってこの地を収めている管理人の後継者ですね。最後の一撃はガードしなければ傷を負っていたことでしょう。」

 

「お世辞は結構よ。無傷の癖によく言うわ。」

 

 

 眼帯をつけなおしたライダーはまたクスリと微笑んで凛に賞賛の言葉を送るが凛はそれを一蹴する。

 そうして不機嫌そうな表情でライダーを睨みつけた。

 

 

「で、どうするつもり?そろそろ私のサーヴァントも到着するわ。そうなったら2対1……私も援護程度なら出来るから3対1か、貴女がどんな英霊かは知らないけど流石に不利なんじゃない?」

 

「どうやらそのようですね。ふむ……実力だけでなく頭も良いときましたか。私のマスターが嫉妬するのも頷けます。」 

 

「貴女のマスター?ちょっとそれって……!?」

 

「おっと、無駄話はここまでです。取り敢えず今回は退くとしましょう。」

 

 

 考え込むように腕を組んでいたライダーだったけど凛の言葉に納得したのか何か含みのある言葉を言い残すとライダーは制止を無視して身を翻し森の中へと去っていった。

 

 

「追ってエリヤ!……って言いたいところだけど無駄よね。ここから町まではサーヴァントの脚力を持ってすれば数分とかからない。」

 

「そうね、流石にまだこんな時間で人目のつくところに出られたらどうしようもないもの。それになにより大丈夫だろうけど士郎が心配だし。」

 

 

 凛と2人顔を見合わせて溜め息をつく。

 兎に角突然の出来事だったけれど無事に終わっただけましなのかもしれない。

 

 私は疲労からか座り込んでしまっている士郎に肩を貸すべく駆け寄った。

 

 そして数分後、遅れてやってきた彼が不機嫌になった凛に八つ当たりを食らったのは言うまでもない。

 

 




どうもです!

毎度の事ながら戦闘パートに四苦八苦している作者です……

ようやっとライダーさん出せた……まあちょろちょろっと原作準拠じゃないところもありますが。

久し振りにアチャ子(君のハートにゲイボルクのやつ)読んで一気に創作意欲が上昇しております。やっぱり可愛いアチャ子書きたいしそろそろデートパートを……さすがにまだ早い。
けど短編に分けてでも日常全開アチャ子書きたいなあ……なんて思ってしまいますほんと。いいですかね?笑

いよいよubw2期も始まりますしこちらも気合い入れていくのでよろしくお願いしますm(__)m


それではまた!
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