「エリヤさん……エリヤさん!」
頭がぼーっとしている。
誰か知っている人の声が聞こえたよーなしてないよーな
「んー、あと5分……」
「朝ご飯が……あ、遠坂先輩」
「どうしたのよ桜?」
ぽかぽかしてるなかに鋭い北風が吹いた気がする。
うー……やめてよ……せっかく気持ちいいのに……
「はあ……いい桜?こういうやつにはね……えい」
「いやあああ!!!」
「と、遠坂先輩……!」
不完全だった意識が一気に覚醒する……主に下半身が一気に冷やされたせいで。
なにが起きたのか分からずに自分の姿を見れば色々となくなっている。まず、布団 それはいい。寝ていた私が悪いのだから。けれど一緒にパジャマのズボンまでずり落ろされ足に纏っているのがパンツだけとはいったいどういうことなのか。
「ち、ちょっと何するのよ馬鹿凛!?」
「起きないのが悪い、もう7時過ぎよ……それにね。あんまり騒いでると士郎にその格好見られちゃうわよ?」
「なっ……それはだめー!!」
ーーーーー
「おーいしー!うん、遠坂さんが来てから士郎と桜ちゃんの腕も上がってるな~ ライバルと共に強くなる。すばらしいことです!」
「いえいえ、衛宮君と間桐さんにはまだまだ及びません。こちらこそ勉強させてもらっています。」
「しろー、私もおかわりー」
「はいよ……桜、そこのおひつとってくれ。」
「はい、どうぞ先輩」
5人揃っての朝ご飯はまだ数えるほどだというのになんだかまるで何年も続けているかのように自然で馴染んでいて……なにより楽しい。
朝ちょっとばかりアクシデントがあったとは言え何時もと変わらぬ朝の時間。
時刻は7時15分を過ぎていた。
「ほらエリヤ……お前本当に美味しそうに食うよな。料理人冥利につきる」
「食事を楽しむのはレディーの嗜みよ……それに士郎のご飯美味しいし」
炊きたてのご飯が盛られたお茶碗が士郎から手渡される。
今日のおかずのメインはサワラの塩焼きだけどお米が進む進む。
「なーにがレディーよ。がっついちゃって……そもそもあんなはしたない格好のレディーなんて認められないわー、私」
「凛!? それは言わない約束でしょ!」
「ん? なんだ? はしたないって」
「士郎は黙ってて!!」
それしてもこのあかいあくまときたら……ご飯の時くらい落ち着けというものだ。
残念ながらそんな思いを込めて睨みつけたところで暖簾に腕押し、糠に釘なのだけど
「もう……先輩ったら」
「あはは、無理無理桜ちゃん。士郎にそういうデリカシーを求めるのは。それよりも……美味しく食事を楽しむのかレディーの嗜みなら私も……」
「藤ねえは別だ。どちらかというと野生の珍獣に当てはまる」
タイガもタイガでいつも通りだ。
ただちょっと今日は士郎の風当たりが強いのが気になるけど……まあ大したことないよね
「私を虎というな~!!」
「のわあ!? 言ってないだろこの馬鹿教師!」
楽しい時間が過ぎていく。
ーーーーー
昼休みを告げるチャイムが鳴り響く。
徐々にだけど学校生活というものに慣れてきた気がする……率直にいってすごく楽しい。びっくりするくらいに。
初日なんかは好奇の目というか疲れるものが大半だったけれど今は純粋に友達として接してくれているものがほとんどだ。
「あの……エリヤ、今日一緒に昼食わない?」
「エリヤー! こっちで一緒に食おうぜ!」
男の子からの誘いは絶えないけれど。
残念ながら私には心に決めた人がいるから~ とは騒動になるのが目に見えているので言わないが心の中ではそう手を振って、言葉では丁寧に謝罪し教室を後にする。
けど最初に誘ってきた子……中井くんだったかな? 今も遠巻きにグループで誘って来る奴らばっかりの中で1人で正々堂々と向かってきたのは彼が初めてだ。
真っ直ぐな子は嫌いじゃないしご飯を一緒に食べるくらいはいいかも知れない。なにより必死に緊張を抑えている様子が可愛かったし。
「ラッタッター♪」
鼻歌とスキップ混じりに階段を駆け上がる。
士郎のお弁当が食べられるお昼は基本的に機嫌がいい。今日は尚更だ。
「おっまたせー! 士郎! 凛!」
「おう、お疲れエリヤ……どした? ご機嫌だな?」
「フッフッフー、それはねー」
「どうせ男子にモテたとかそんなんでしょ? 分かりやすい」
「な、なんで分かるのよ!?」
「忘れた? 私も結構モテモテなのよ? だいたいわかるわ」
扉を開けると即鼻っ柱をへし折られる。
何がアイドルだ。本性知ったら大部分が離れていくぞ。
「なにか言った?」
「何でもないです」
こちらをみてにっこりと笑う凛に白旗を上げる。
笑ってるようで、その目は狩人のそれなのだから仕方ない。
ここで1抵抗すれば10返ってきて打ちのめされるのは目に見えているしむざむざ心をへし折られに行く理由はどこにもない。
「おーい遠坂……ほんとどうしたんだお前? なんか今日機嫌悪くないか? 朝はそうでもなかったのに」
おそるおそると言った風に士郎が風の吹かない壁際に座ったまま手を挙げる。
よくよく見てみればこの士郎、随分と顔色が悪い。恐らく違和感を感じてはいたのだろうが2人きりで下手に刺激すると自分にまで飛び火すると思い、針のむしろに座るような気分で私が来るまで待っていた、とかそんなところだろうか。
「別にー」
腕を組んだままフェンスに寄りかかり応対する凛はプイッと顔を逸らす。
機嫌……悪いよね絶対?
「ねえちょっと士郎? あんた何したのよ一体……! がっつり機嫌悪いじゃないの!」
「俺に聞くなよ……! 俺が来たときにはもうあんなんでどうしようもなかったんだよ……理由も聞ける空気じゃないしさ」
「まあ……気持ちは分かるけど」
見るからに機嫌悪いですオーラを全開に校庭を下に見下ろす凛の視界に入らないように移動、そしてその耳に余計なものが入らないように士郎と顔を寄せあい現状を確認する。
士郎のにぶちんぶりが災いしたというなら話は早かったんだけど、どうもそう簡単な話でもないらしい。
「うーん、朝は普通だったしクラスでなんかあったのかしら」
「けど遠坂だぞ? 少なくとも学校じゃ品行方正で通ってるし、高嶺の花ってやつだ。皆純粋に尊敬というか畏怖の感情を持って接してるしあいつの機嫌を損ねるようなことする奴なんて思いつかないぞ、俺」
むむむっと首を傾げる士郎の言葉はまあ正論だ。
はっきり言って私には理解できない……大事なことだからもう一度繰り返す、本当に理解できないのだけど遠坂凛の学校での人気はもはや宗教や何かに匹敵する類のものである。
そこに生徒だ教師だの壁なんてものは存在しない。
男子生徒は届かぬものと分かりながらも颯爽とあるく彼女に振り返り、女子生徒は一人の女としての理想形として彼女に憧れる。教師も教師で同様だ。私から見るとはっきり言ってどうかしてるぜ! と言いたくなるがとりあえずそれは置いておく。
とにかく遠坂凛(猫被り)はとんでもなく、彼女の機嫌を損ねるような勇気ある人物はそういないのだ。
「だからってこれは普通じゃないし……このままじゃこっちにもとばっちり来るわよ」
「残念だな、もうとばっちりなら嫌ってほど食らってるよ。俺はな」
「あ--うん」
またもや顔から血の気の引いた士郎の肩を叩く。それと同時に心臓の鼓動が早くなる。
遅れたと言っても僅か5分程度、その間に士郎はこんな燃えかすみたいになってしまったのだ。私が無事でいられる保障など何処にもない。
「どうにかして突破口を作らないと……私、こんなところでボロボロになるのは嫌よ」
絶対にごめんだ。
私に少しでも非があるのなら甘んじて受けいれよう。しかし今回は私の過失は0だ。世の中は理不尽で溢れかえっているのは分かっているがそれとこれは別なのだ。
「だけどどうする? 下手に追及したら爆発必至だぞ--今だって有毒ガス撒き散らしてるようなもんなのに」
既に開き直っているのかいつになく士郎も饒舌だ。
こんなバッサリと凛を斬り捨てる彼を見るのは初めてだ。今朝の自分自身がその姿を見たならば血相を変えて止めただろう。
「そりゃあまあ……真っ向勝負?」
「疑問符を付けるな疑問符を。却下だ。エリヤ、窮鼠猫をかむってことわざ知ってるか?」
「一応……それがどうしたっていうのよ」
真剣な表情で士郎がずいっと身を乗り出してくる。
正直に言ってしまうと近い。主に顔が。私としては好都合なので文句は言わないがもしも他の女子に同じ事をするようなことがあれば、その時は然るべき措置をとらなければいけないだろう。
私がそんな現状とは全く関係ないことを考えているとはつゆ知らず士郎は言葉を続ける。
「あれは今の俺達に非常によく当てはまる。勿論こっちは鼠だ」
「そりゃあ……そうよね」
一瞬脳裏に猫耳魔法少女姿の凛が見えた気がするけど気のせいだろう。
あんな格好するくらいなら凛は悶え死にすると思うし。
「そしてエリヤが真っ向勝負なんて言ったがそれはもう八方ふさがりになっている以上仕方ないというやけくその手段だろ? それは圧倒的な相手に対し、普段なら逃げるという選択肢をとる鼠がそれができなくなったためにとる反抗と一緒なんだ」
「うんうん」
はっきり言ってよくわからないけどここで止めるのも野暮というやつだろう。
親バカならぬサーヴァントバカだが、不必要に真剣なマスターも素敵! なのだ。
「それが僅かでも成功するのは猫がびびって隙ができるからだ。だが問題の遠坂はどうだ? 俺達の反抗程度で隙が出来るほど楽な相手じゃないだろ?」
「なるほど……納得したわ。無理ね。そんなんでチャンスが生まれるようならあんなあくまな性格になるわけないもの」
ストレートに行くなど愚の骨頂であるようだ。
士郎の読みの深さに感服する。そんなことをすれば、待っているのは自爆したのと同じ結果だろう。
先に知れてよかったと自信を持って言える。
「じゃあ……どうするの?」
「それを今から考える。昼休みは後20分、その間この空気を「誰があくまですって」--!?!?!!」
「へっ--っ!!!?」
士郎ばかり見ていたのが最大の失策だった。
突如聞こえた冷徹な声、驚愕に染まる目の前の士郎、後ろから押される感覚、そして臨界を遙かに超えて近づく顔
気が付けばお互いの距離は0距離……と言うよりもくっついていた。
「----」
「----」
フリーズ、どちらも現実を受け入れられない。
一体なにが起こったというのか、私には分からなかった。
「-ーあら? もしかして本気でそういう関係になってたのかしら」
そして数秒固まったのち、意外そうな声でそう言った彼女の言葉で全てが動きはじめた。
「ちょっ……いやぁぁ!!!!」
「ま--ご--!!」
本能的に出た右アッパー、白目を向いて吹き飛ぶ士郎を見て正気に戻った。
やってしまった、と。
お久しぶりです。そしてごめんなさい。
完全にネタやらモチベーションが尽きてました。
あまりにも原則沿いの物語でいいのか?変えるとしてどこを変える?とか考えてるうちにズルズルと……
とりあえずアイデアがわき次第のんびり書きます。1作書いてれば芋蔓式にモチベーションが上がる作者なのでもう1作fate不定期物を書いてモチベーションブースト狙おうかなとも。
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