Fate/Dancing night   作:faker00

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ー2日目ーー2ー 穏やかな日  方針

 世の中にはどうも頭が上がらない相手という者が存在する。それが単純な腕力や権力によるものなど理由は人それぞれだ。だけど1つだけ確実に言えることがある。それは……

 

 

「それじゃあこれより衛宮士郎、遠坂さんと謎の女の子連れ込み事件の事情聴取を始めます。陪審員の桜ちゃん。徹底的な尋問を。」 

 

 

「はい先生!徹底的にやらせていただきます!」

 

 

「藤姉……桜……お願いだからまずは話を」

 

 

「「士郎(先輩)は黙ってて!」」

 

 

「……はい」

 

 

 そんな相手に弱みを握られると蛇に睨まれた蛙も余裕ぶっこけるくらいに何も出来なくなってしまうのだ。

 

 

「(ズズッ……)このお茶おいしい。」

 

 

 とりあえずこれでも飲んでください、と出されたお茶を啜るとほのかな甘さが口の中で広がっていく。

 

 さてさてこれは自業自得とまでは言えないけどどう説明する気なのかな?

 

 私と凛は傍観者の体を守ったまま、あくまで、被害者、という括りでソファーに座り被告人として正座の姿勢から僅かなブレすら見せない士郎と、上がり込むやいなや烈火のごとくの怒りを見せたなにやら全身で虎を体現した女性と、その虎とは対照的に数秒の間まるで処理落ちを起こしたパソコンのように固まった後それ以上に冷たい何かを体中から発散させて士郎を萎縮させているこれまた若い女性の3人の間で起こる修羅場を見つめる。

 

 

「じゃあとりあえず、どういうことよこれは。」

 

 

「えーと……なにが?」

 

 

「この期に及んでとぼけないでください!なんで遠坂先輩が朝っぱらからここに……それとあの女の子は誰ですか!不潔です!」

 

 

「なっ…!落ちつけ桜!そういう関係じゃないから!断じて!」

 

 

ーーなんでここまで女関係になると判断が悪いのか

 

 内心呆れながら余計にややこしくなりそうな現場から目を離すことはしない。だってとんでもないことになりそうだから。

 

 頭に血が上って変な想像をしたのか、バンッ!と机を叩いて立ち上がると顔を真っ赤にして詰め寄る桜、と呼ばれた女性から士郎が必死の表情をしながら後ずさる。

 こういうときはとりあえずはっきりしておかないと女の子の妄想はブラックホールなのだ。どこまでも際限なく思考を飲み込みまた更にどぎつい想像がどこからともなく沸いてくる。本当にわかっていない。

 

 

「……はあ。実はな、そこに座ってるエリヤは実は頼って外国からわざわざ訪ねて来たんだ。だからやましい関係なんてことはありえないんだ。納得してくれたか、2人とも?」

 

 

「嘘よ!切嗣さんにそんな外国の知り合いいるわけ……あるかも。そう言えば切嗣さん、しょっちゅう外国に旅行に行ってたもんね~……」

 

 

 どうやらその言い訳が聞いたのか先程まで暴れまくっていた虎柄ーータイガはむむむ、と考え込むと一気にトーンダウンする。

 これは切嗣に感謝だ……ってあれ、それにしてもなんでタイガ、って分かったのか。生前はかなり深い間柄だったのかもしれない。

 

 

 

「だけどなんであんなに小さい娘が1人でくるのよ?士郎よりも年下にしか見えないわよあの娘。」

 

 

「親御さんに不幸があったらしくてな……親戚をたらい回しにされて、最終手段で辿り着いたのが家みたいなんだ。」

 

 

「いくらなんでもそれは無碍に出来ないわね……」

 

 

「だろ?それで着いたのが昨日の夜でさ、本当はもっとちゃんと紹介しようと思ってたんだけど」

 

 

 タイガと名前が浮かんだ彼女との生前の思い出を必死に検索しているうちにドンドン私の設定が追加されていく。

 外国から今は亡き家主を頼ってやってきた孤児とはかなり同情を誘う設定だ。それに加え切嗣がいない以上裏の取りようがない。疑いきれないグレーゾーンをうまくついている。

 

 ちなみにタイガの思い出は残念ながら検索エラー、見つからなかった。

 

 

「うーんと、エリヤちゃん、だっけ?ここは昔住んでたお家とは全然違うだろうし、士郎もあんなんだからエリヤちゃんがいて楽しいかはわからないよ?それでもいーい?」

 

 

 ちょっと考えた後ーー決めた、となにか宣言するように呟くとタイガは私の座っているソファーまでやってくると目線を合わせるようにこう問い掛けてくる。

 思いっきり子供扱いされているのは気に食わないがタイガの目は本気で心配してくれている人のそれだ。

 

 

「ええ、私は好きよ?この家、それに士郎お兄ちゃん(・・・・・)も良い人だから大丈夫。」

 

 

「そっかそっか、うん。じゃあこれから家で困った事とか何かあったらお姉ちゃんにもちゃんと言うのよ?さっきも言ったけど、士郎は女の子のことは本当に分からないんだから。」

 

 

 その答えに満足したのかタイガはうんうんと頷きそう私に言った。

 これは……許可が降りたってことで良いのかな?

 

 

「ふ、藤村先生!」

 

 

 同じように受け取ったのか桜がちょっと待ってくださいと焦ったようにパタパタと駆け寄ってくる。

 

 

「その……エリヤさんの滞在を認めるんですか?」

 

 

「うん、ごめんねえ桜ちゃん。けど切嗣さんを頼ってきてくれた子を適当に扱うなんて出来ないし……それになによりなんだかあの子放っておけないのよ。」

 

 

「それは……そうですけど……」

 

 

「大丈夫、あの娘は士郎を奪ったりしないから。どっちかというと甘える妹みたいだし。」

 

 

「先生!私はそんなこと!」

 

 

「ごめんごめん。けどそれなら問題ないでしょ?」

 

 

「はい……」

 

 抵抗する桜だがタイガが年長者らしく先手を取り続け言い含める。

 話がつき引き下がると桜が恐る恐ると言った感じに私に近づいてくると手を差し出してきた。

 

 

「あの……これからよろしくお願いしますね、エリヤさん。」

 

 

 これまた警戒されてしまったものだ。どう対応したらいいのか分からないと言う感じがありありと伝わってくる。

 

 

「うん。よろしくね、桜。」

 

 

 まあ時間はかかるだろうけど徐々に打ち解けていければ良いだろう。私にも桜の気持ちは分かるのだから……

 私は桜の手を握り返した。

 

 

「よし!それじゃあこれで一件落着だな!朝御飯作るから手伝ってくれ。」

 

 

 士郎がこれは好機と見たのか足どりも軽く台所へと歩いていく。

 そろそろお腹も減ったしな……士郎のご飯ならいくらでも食べられそうだ。

 

 

「じゃあなんにする?朝だけど目が覚めたから結構しっかりしたのを……あ…」

 

 

 けどそれを食べるのはずいぶん後になりそうだ。残念だけど。

 

 

「ちょっと待とうか青少年。」

 

 

「ええ、まだ話は終わってませんよ。先輩?」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー 

 

 

 

「ここが私の部屋か」

 

 

 ベッドに腰を降ろすとポスンッという音とともに柔らかく沈んでいく。この感覚も相当久しぶりだ。まともに寝る場所が確保されているなんてめったにない。

 

 

 結局凛は士郎の怪我を利用し、交通事故に遭ったところをたまたま通りがかり助けたのだが士郎がその怪我をタイガと桜に見せて心配させるのを躊躇って隠したんだと理由を付けてなんとか事なきを得た。

 

 ーー問題は面白がった凛が助け船を出すタイミングをギリギリまで引っ張った事だ。

 

 ギリギリまで桜とタイガの尋問に晒された士郎はグロッキー状態でちょっと休むと部屋に戻ってしまい私は桜にここを案内された。

 とうの凛はと言うと必死に笑うのを堪えていた印象しかない。全くどこの世界でも変わらないものは変わらないらしい。

 

 

「よいしょっと。」

 

 

 今日は時間が空きそうだしまずは現状の整理といこう。

 日時は2004年の2月2日、私が参戦したのと同じなのは間違いない。そして昨日のバーサーカーをみる限り本来のセイバーであるアーサー王……アルトリア・ペンドラゴンの位置に何らかのイレギュラーで私が放り込まれたということなのだろう。

 どちらも触媒は士郎の中に埋められたアヴァロンなのは間違いないだろうし、選択肢として有り得る未来として私が召還されたと考えるのが妥当なところか……

 

 

「それにしても厳しくなりそうね。」

 

 出てくるのは溜め息。アーサー王は元々の実力、知名度その他諸々がずば抜けていたからこそ士郎という未熟なマスターに引かれてもそれなりに闘えたのだ。色々と規格外。バーサーカーもそうなのだけれどセイバーもフルスペックで召還されていればどれだけの破壊力を持っていたことか考えるのも恐ろしいレベルーーそれでも英雄のシンボルたる宝具、約束された勝利の剣(エクスカリバー)の威力は最強、ラングにしてAを上回りなおあまりあるなんて化け物級のものだったけれど。ーーの正に英雄然とした英雄なのだ。

 

それに比べると私はかなり引けをとる。実際のところ格なんてものはどうでも良いのだけどそもそも火力不足にもほどがある。基本的に私が使えるのは彼の技術の微廉価版だ。その彼ですらこの聖杯戦争においては大したアドバンテージは……ない。彼、セイバー、凛、バーサーカー、そして僅かながらタイガ以外の記憶が抜け落ちてしまっているから断言は出来ないけれどそのはずだ。

 肝心の宝具は宝具でカウンター型ときている。考えれば考えるほど悩ましくなってくる。

 

 

「……んっ」

 

 

 更に加えるとマスターである士郎も元々この時点ではミジンコのようなものだがもっとひどい。 

 なにせアヴァロンによる超回復が使えないのだ。私が魔力を常に供給出来るように上手く繋いだところで本家には遠く及ばない。それなりの傷なら問題なく治せるだろうが本当にある程度だ。無茶をやらかすのは目に見えている士郎を護りきるのに充分かと言われればそんなことはない。

 ーーよくよく考えてみればみるほどとことんいい要素がないではないか。

 

 

「ええい!だめだめ!ネガティブになるのは悪い癖だ!」

 

 

そんなことばかり考えでもどうしようもない。さっきと矛盾しているが良いことも絶対にあるはず。ここから何をするか、出来るか、ということに目を転じるべきだ。

 幸い凛と共闘出来るという願ってもいない状況になったのだ。……彼の方が乗り気でないのは確かだがそこは凛がなんとかしてくれるはず……と信じている。いや、そうでないとどうやってもやっていけない。

 まず7組しかいないこの闘いで他の陣営と組める、この利点は果てしなく大きい。

 ベストはこの協力体制を維持したまま出来る限り相手を減らして、最後に私と彼の一騎打ちにする事だ。そこまで行ければチャンスはあるはず。その頃には士郎も少しくらいは彼の片鱗を見せる程度までいくことは出来るだろう。そうなれればいくら相手が凛でもそう簡単には負けはしないはずだ。

 もちろん彼と同じ道は歩ませない。それは絶対最低限やらなければいけないこと。

 

 それに加えて私には他のサーヴァントとは一線を画すだけの貯蔵魔力がある。かつて全身令呪として聖杯のバックアップ無しでバーサーカーを現世に留めた時の名残でもあるのだろうか。私の投影の特性上そうそうガス欠を起こすことはないだろうしこれもプラス材料。

 

 

「となると……」

 

 

 やることは2つだ。まずは早いタイミングで他のサーヴァントを見つけ出し凛達と一緒に消して少しでも競争相手を減らす。バーサーカーがそう簡単に敗れるとは思えないが用心に越した事はない。

 これが第一優先。士郎を連れ出すと足手まといで厄介になってしまうから今日の夜にでも1人で探索に行こう。

 感知するくらいは私1人でも問題ない。

 

 そしてそれと平行してやること、それが士郎の強化だ。今の時点ではへっぽこも良いところだし、潜在能力も欠片も感じないがあるのだ。衛宮士郎オンリーワンの才能が。なんとかして早くそれを引き出したい。ただそれは慎重に、あくままでゆっくりとだ。あまりにも私が士郎の内面を知りすぎていると感じられるとそれはいずれ不信感へと変わってしまうだろう。それに凛になにか感づかれるのも厄介だ。彼女ならば真相にこそたどり着かないとしてもかなり良い線までいかれる可能性はある。そうなっては面倒だからここは細心の注意をはらってことに取りかからないと……

 

 

「時間は……。10時前かあ」

 

 寝返りを打ち壁に付けられた時計を見るとまだ朝の時間であることを知らされる。結構長々と考えていた気がするけど意外とそんなことはなかったみたいだ。

 とは言っても何もやることがないのはなんだかつまらない、まずは士郎にちょっとちょっかいをかけるというか成長させるための揺さぶりでもかけにいこう。

 ベッドから立ち上がり一度伸びをしてから鏡を見てしばらく押しつけられていたせいかへんてこな方にはねている髪を直す。

 

 これからはそういう用品類も桜かタイガに借りるなりなんなりしておいておこう。

 手櫛では全く意味をなさない髪を抑えつけながらそう思った。

 

 

「エリヤ、入っていいか?」

 

 

「え?士郎…?別にいいけど。」

 

 

 それじゃあおじゃまするな、とドアを開けて会いに行こうとしていた士郎が自分の方からやってくる。

 

 

「あ……取り込み中だったか?」

 

 

「そんなことないわよ。ただちょっと髪がね。」

 

 

 因みに私は髪の毛と格闘の真っ最中だったので鏡の前にへばりついている。

 

 

「そうか。」

 

 

「で、用件はなに?遊びに来たって訳じゃないんでしょ?」

 

 

「もちろん、はいこれ。」

 

 

「……?なによこれ。」

 

 

「服、遠坂が持ってきてくれた。なんかエリヤの格好ボロボロだし必要だろうってさ。」

 

 

 確かにボロボロなのはそうなのだけど余計なお世話よ。

 なんて憎まれ口を返しながら士郎から手渡された紙袋の中身を見る。

 

 中身は……何というか、赤い。とにかく鮮烈な赤だった。いろいろ探ってみた結果結局赤だけだ。

 

 

「気に入りそうか?」

 

 

「え!?う、うん。」

 

 

 にしても人の好意を踏みにじるような行動は好きではない。それに赤一色なのは問題かもしれないが触った感じみんなそれなりの品、それも私にサイズがあっている。凛としても真剣に選んでくれたのだろうし実際満足だ。

 

 

「それは良かった。……それと今度は俺の用事なんだが……」

 

 

「……?」

 

 

「出来たら、ほんとにエリヤが良かったらで良いんだけどこれから俺のことを鍛えてくれないか?」

 

 

 そう言った士郎の目は昔みた彼のように強い意志が籠もっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 





どうもです!

ステイナイトリメイク面白すぎてテンション上がってる作者です。アチャ子の私服は凛とペアルックイメージでいこう。

それでは評価、感想、お気に入り登録お待ちしております。

特に感想と評価は作者のモチベーションをあげます。

それではまた!
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