少女たちのラッシュデュエル・ストーリー   作:高科奈紗

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第4話「ロックンロールお嬢様(後編)」

 

 机の上に乱雑に並べられたカードたち。

 琴音はそれを1枚ずつ手に取り、希菜に見せては重ねて束にしていく。

 その作業を繰り返し続けている。

 

「……出来ましたわ! ワタクシのデッキ!」

「や、やっと完成した……」

 

 40枚のカードの束を掌の上に乗せて掲げる琴音。

 その横で疲弊した様子で肩を落とす希菜。

 

「デッキ製作のアドバイス、ありがとうございます冬川さん!」

「ああ、うん、いいっていいって。……それにしても、本当にそのデッキでいいのか?」

 

 希菜が琴音のデッキをジッと見つめる。

 

「何か問題でもあるの、キナちゃん?」

 

 窓辺で未来と駄弁っていた侑芽が、2人の座っている席に近づく。

 

「問題あるわけじゃないけど、お嬢のデッキって初心者向きじゃないからさ」

「へ〜……?」

「でも、ワタクシはこのカードたちと一緒にデュエルがしたいのですわ!」

 

 両手で握り拳を作り、目をキラキラと輝かせて背後から眩い光を放つ琴音。

 

「うんうん、お嬢の気持ちは分かる。ロマンって大事だもんな!」

「私はよく分かんないけど……コトネちゃんがどんなデッキを組んだのか気になるな〜」

「ならお嬢とユメでデュエルしたらいいさ! 初心者同士だし!」

「ユメ様とデュエル……!」

「私は構わないよ〜」

 

 琴音は目をより一層、キラキラと輝かせ……侑芽もニコッと微笑む。

 

「よーし、それじゃあ屋上に移動だ〜!」

「お〜!」

「おー! ですわ!」

 

 希菜が右手を大きくあげ、侑芽と琴音もそれに続くように右手をあげる。

 

「エルゼ、我らも行こうぞ」

「……エルゼって、わたし?」

「うむ」

「……………………」

 

 理香子はジト目で未来を見遣りつつ、本を閉じて机の上に置き……2人は視聴覚室から屋上へ向かう皆の後ろに着いて行った。

 

 *

 

「デュエルディスクの着け心地はどうだー、お嬢!」

「良好ですわ! 何から何まで……感謝してもしきれません!」

「在庫処分って言ってたし」

「それは忘れろぉ!!」

 

 屋上でデュエルディスクを構え、対峙する侑芽と琴音。

 そこから少し離れた場所で2人を眺める未来と希菜と理香子の3人。

 

「ルンぺルシュティルツヒェン、ラプンツェルのデッキはどの様な物なのだ?」

「……らぷんつぇる?」

「姫榊の事でしょ、多分」

「あー、なるほど……って順応早いな、リカコ!? ……まあ、見てのお楽しみってことで!」

 

 希菜がニヤリと笑って侑芽と琴音に視線を向ける。

 未来は首を傾げつつ、理香子は腕を組んで同様に2人へ目を向ける。

 

「よろしくお願いしますわ、ユメ様!」

「うん! こちらこそ!」

 

「「ラッシュデュエル!!」」

 

 侑芽 LP:4000 vs 琴音 LP:4000

 

 掛け声と共にホログラムフィールドが展開され、互いに4枚のカードをドローする。

 ターンランプが点灯しているのは、侑芽のディスク。

 

「私のターン、ドロー!」

 

 侑芽はデッキから1枚のカードを勢いよく引き抜き、それを手札に加える。

 

「ヴォルテクス・シューターとブライト・センチネルを召喚!」

 

 ヴォルテクス・シューター(星4/ATK 1400)

 ブライト・センチネル(星4/ATK 1500)

 

 侑芽が召喚したのは2体の銀河戦士。

 2体のモンスターが剣を構え、侑芽の前に立ち並ぶ。

 

「ヴォルテクス・シューターをリリースして、ヘヴン・ギャンゼルをアドバンス召喚!」

 

 ヘヴン・ギャンゼル(星6/ATK 2100)

 

 そしてその内の1体が姿を消し、新たに召喚されたのは……穢れを知らぬ気高き純白の霊竜。

 

「これがユメ様のモンスター……!」

「カードを2枚セット! ターンエンドだよ!」

「はっ……ワタクシのターン! ドローですわ!」

 

 目をキラキラと輝かせていたところ、侑芽の言葉でハッと意識を引き戻し……琴音はデッキからカードを力強く引き抜く。

 手札のカードをひと通り眺めた後……1枚のカードを手札から抜き出し、ディスクに差し込む。

 

「ワタクシのライフを1000ポイント支払い……魔法カード、サイコな埋葬を発動します!」

 

 琴音:LP 4000→3000

 

「あのカードは……」

 

 理香子はピクッと肩を跳ねさせ、ボソッと呟くようにそう言った。

 

「自分のライフポイントを大きく減らして発動するカード……?」

「そうですわ、ユメ様! これがワタクシの……デッキです!」

 

 琴音はデッキに手を置き、大きく腕を振って2枚のカードを引き抜く。

 そして引き抜いたカードを全て墓地スロットに差し込む。

 墓地に送られたカードは、キャッチーボーディストとエレンジェル。

 

「デッキのカードを墓地に送った!?」

「サイコな埋葬は、デッキの上からカードを2枚墓地へ送るカードですわ!」

「ライフを減らして、デッキまで減らすなんて……変わった戦い方だね!」

「ふふっ、まだまだいきますわ! ロマンス・ピックを召喚!」

 

 ロマンス・ピック(星1/ATK 500)

 

 現れたのは、ヘルメットを被った小さな女の子。

 髪飾りや耳の部分など、所々にギターのピックを思わせる意匠が見受けられる。

 

「……冬川、初心者にサイキックデッキを作らせたの?」

「だってお嬢が使いたいって言うんだから仕方ないじゃんか〜!」

「ロマンス・ピックの効果を発動! 相手よりもライフポイントが少ない時、自分のライフを500ポイント支払い……」

 

 琴音:LP 3000→2500

 

「デッキの上からカードを3枚、墓地へ送りますわ!」

 

 琴音は再びデッキに手を置き、3枚のカードを引き抜いて……墓地スロットへ差し込む。

 墓地に送られたカードは、ドリームラマー、エレキッス、ハウリングバードの3枚。

 全て、ロマンス・ピックと同じサイキック族モンスターだ。

 

「またデッキとライフポイントを!?」

「それだけではありませんわ! ロマンス・ピックの効果でサイキック族モンスターが墓地へ送られた時、墓地のサイキック族モンスター1体を手札に加えることが出来ます!」

 

 琴音は墓地からドリームラマーのカードを手札に加える。

 

「自らの命とデッキを削る戦術。明らかに、初心者が扱うには難解なデッキと見受ける」

「その分、使いこなせれば強力。……使いこなせれば、だけれど」

「まあまあ、お嬢なら大丈夫でしょ、きっと!」

 

 琴音は手札に加えたドリームラマーのカードを凝視する。

 そしてそのカードを手に取り……

 

「いきましょう、ドリームラマー!」

 

 ドリームラマー(星2/ATK 500)

 

 ニヒルな笑みを浮かべた、ドラムスティックを持った少女が現れる。

 

「ロマンス・ピックをリリース! おいでませ、ベリーシスト!」

 

 ベリーシスト(星6/ATK 1600)

 

 ロマンス・ピックが消滅し、その代わりに現れたのは勝気な表情を浮かべるベーシスト。

 

「ベリーシストのモンスター効果、発動ですわ! このカード以外にサイキック族モンスターがいるとき、ワタクシのライフを500ポイント支払って……」

 

 琴音:LP 2500→2000

 

「墓地にいる、レベル2のサイキック族通常モンスターを特殊召喚します! 出番ですわ、キャッチーボーディスト!」

 

 キャッチーボーディスト(星2/ATK 700)

 

 新たに現れたのは、あどけない表情ながらしっかりとショルダーキーボードを手に持って構える小柄な少女。

 これで琴音のフィールドには3体のバンドモンスター……リズム隊が揃った。

 

「ベリーシスト、ドリームラマー、キャッチーボーディスト……姫榊のあのデッキ、ファンデッキね」

「エルゼ、ファンデッキとは?」

「勝敗よりも、好みや趣向に重きを置いたデッキのこと。差し詰め……Vi(ヴィ)FRND(フレンド)デッキってところか」

 

 Vi(ヴィ)FRND(フレンド)

 5人の少女からなる、有名なガールズバンド。

 琴音のフィールドに存在するモンスターは全て、そのバンドメンバーを元にしたモンスターたちだ。

 

「コトネちゃん、Vi(ヴィ)FRND(フレンド)のファンなんだ?」

「はいっ! ワタクシもいつか、彼女たちのように大舞台でライブをするのが夢なんです!」

「ラプンツェルがルールを把握していないのにカードを持っていたのは、もしかして……」

「ファングッズとして観賞用に集めてた、ってわけだな!」

 

 デュエルをしなくてもカードを集める人というのは一定数、存在する。

 琴音もその1人だったのだ。

 なお、Vi(ヴィ)FRND(フレンド)のカードはどれもノーマルカード故に入手しやすい代物となっている。

 

「でも、それで勝てるのかな〜? コトネちゃんのライフポイントはもう半分を切っちゃったよ?」

「まだまだ、ワタクシのパフォーマンスはこれからですわ! 墓地のエレンジェルをデッキに戻し、ドリームラマーの効果を発動します!」

 

 琴音は墓地にあるエレンジェルを取り出し、デッキスロットに差し込む。

 そして右腕を大きく前に突き出すと……ドリームラマーの前に忽然とドラムセットが現れた。

 

「ユメ様の墓地にあるヴォルテクス・シューターをデッキに戻して、ワタクシは500ポイントのライフを回復しますわ!」

 

 琴音:LP 2000→2500

 

 ドリームラマーが目にも留まらぬ速さでビートを刻み、発せられた音波が侑芽のディスクに当たる。

 すると墓地スロットから1枚のカード……ヴォルテクス・シューターが排出される。

 侑芽はそのカードをデッキに差し込み、オートシャッフル機能が作動してデッキがシャッフルされる。

 

「ライフポイントをリカバリーする手段も用意してあるんだね……!」

「いきますわよ! キャッチーボーディストとドリームラマーをリリース、アドバンス召喚!」

 

 琴音はキャッチーボーディストとドリームラマーの2枚をディスクから取り出して墓地に送り、手札から1枚のカードを勢いよく叩きつける。

 

「マイフェイバリット、ギフトタリスト!!」

 

 ギフトタリスト(星7/ATK 2400)

 

 ギターを持った少女が現れ、琴音の前に立ち尽くす。

 Vi(ヴィ)FRND(フレンド)のリーダーをモチーフにしたカードだ。

 

「攻撃力2400!? ヘヴン・ギャンゼルより上……!」

「ワタクシのステージはこれからですわ! デッキの一番上のカードを墓地に送り、ギフトタリストの効果! このカード以外のサイキック族モンスター1体につき、攻撃力を400ポイントアップですわ!」

 

 ギフトタリスト(ATK 2400→2800)

 

「攻撃力……2800!」

「これが仲間と共に奏で、作り上げるステージ! カードを1枚セットして、バトルですわ! ギフトタリストで、ヘヴン・ギャンゼルに攻撃!」

 

 ギフトタリストの放つ演奏がヘヴン・ギャンゼルを襲う。

 雄叫びをあげて……力無く倒れながらヘヴン・ギャンゼルは消滅した。

 

「ぐぅ……!」

 

 侑芽:LP 4000→3300

 

「ベリーシストで、ブライト・センチネルに攻撃ですわ!」

「この瞬間、罠カードを発動! トランザム・ライトニング!」

 

 ベリーシストがブライト・センチネルに攻撃を放つ。

 爆発が立ち上り……ブライト・センチネルは消滅した。

 ……と思われたが、爆発が晴れ、そこにはブライト・センチネルが健在していた。

 

 侑芽:LP 3300→3200

 

「ブライト・センチネルが破壊されていない……!?」

「トランザム・ライトニングの効果だよ! このターン、私が指定したレベル4以下のギャラクシー族通常モンスターは戦闘では破壊されない! ……ダメージは受けちゃうけどねっ」

「なるほど、流石はユメ様……ターンエンドですわ!」

 

 ギフトタリスト(ATK 2800→2400)

 

「なんとか1体は残せた……私のターン、ドロー!」

 

 侑芽はデッキから5枚のカードを引き抜き、それを手札にする。

 

「お嬢、結構上手く回せてるじゃん!」

「ふふっ、冬川さんのアドバイスの賜物ですわ」

「……よし! ストレンジ・トラヴェラーを召喚!」

 

 ストレンジ・トラヴェラー(星4/ATK 1100)

 

 侑芽の前に宇宙服を身に纏ったような剣士が現れる。

 

「そして……光の刃が天の河を駆ける時、勇者来たりとその名を呼ぶ! トランザム・ライナック!!」

 

 トランザム・ライナック(星4/ATK 1600)

 

「盟友ユメのフェイバリット!」

「強そうなカードですわ……なら! 罠カード、ラララバインドを発動します!」

 

 琴音が1枚のカードをオープンする。

 墓地のハウリングバードとエレキッスのカードを取り出し、デッキに差し込む。

 するとラララバインドから音波が放たれ……トランザム・ライナックが跪き、地に伏せて姿を消す。

 

「トランザム・ライナックが!?」

「相手がモンスターを召喚した時、墓地のサイキック族モンスター2体をデッキに戻して……相手のモンスター1体を裏守備表示に変更します。これでトランザム・ライナックは封じ込めましたわ!」

「召喚されたモンスターは次のターンにならないと、表示形式を変更できないからな!」

「更に! 墓地からレベル2のサイキック族モンスターを特殊召喚できます! 戻ってきて、ドリームラマー!」

 

 ドリームラマー(星2/DEF 0)

 

「やってくれるね。でも私だって! セットしていた魔法カード、メテオ・チャージを発動!」

 

 侑芽もセットしていたカードをオープンする。

 すると隕石が降り注ぎ……ギフトタリストが防御の姿勢をとる。

 

 ギフトタリスト(ATK 2400→DEF 0)

 

「ギフトタリストが守備表示に!」

「更にこのターン、ブライト・センチネルの攻撃は貫通する!」

 

 貫通。

 本来なら守備表示モンスターを攻撃して破壊しても、相手のライフポイントにダメージは与えられない。

 だが貫通効果を付与されたモンスターが守備モンスターに攻撃して、戦闘に勝利した場合……超過した分のダメージを相手に与えられる。

 

Vi(ヴィ)FRND(フレンド)のカードは全て、守備力が0……遊見、いいカードを伏せてたわね」

「そしてストレンジ・トラヴェラーの効果を発動! デッキの一番上のカードを墓地に送って、ベリーシストの攻撃力を500ポイント下げる!」

 

 ベリーシスト(ATK 1600→1100)

 

「ベリーシストの攻撃力が、ストレンジ・トラヴェラーと並んだ!」

「カードを2枚セットして、バトル! ストレンジ・トラヴェラーで、ベリーシストを攻撃!」

 

 ストレンジ・トラヴェラーがベリーシストに目掛けて斬りかかる。

 ベリーシストはベースから放った音波で反撃するが……勢いは止まらず、ストレンジ・トラヴェラーの剣とベリーシストのベースがぶつかり合う。

 そして2体のモンスターは同時に消滅していった。

 

「攻撃力が同じモンスター同士で戦闘を行なったら、両方とも破壊される!」

「続けてブライト・センチネルで、ギフトタリストに攻撃!」

 

 防御態勢をとっているギフトタリストに、ブライト・センチネルが容赦なく襲いかかる。

 ギフトタリストは抵抗する間も無く……あっという間に斬り伏せられ、爆散した。

 

「あぁぁっ……! ギフトタリスト……!」

 

 琴音:LP 2500→1000

 

「ドリームラマーを残しちゃったなー……仕方ない、ターンエンド!」

「ワタクシのターン、ドローですわ!」

 

 琴音は腕を大きく振り、5枚のカードをデッキから引き抜く。

 あと1撃でも攻撃を食らえば負けかねない……琴音は、今まで感じたことのない《窮地》という感覚を味わっていた。

 

(一進一退の攻防、勝つか負けるか瀬戸際の戦い……これが、ラッシュデュエル!)

 

 臆するどころか、琴音は燃えていた。

 そして……デュエルを、この瞬間を……最高に楽しんでいた。

 

「ロマンス・ピックを召喚!」

 

 ロマンス・ピック(星1/ATK 500)

 

「お嬢のヤツ、まだデッキとライフポイントを削る気か!?」

「最後の最後まで、命を燃やし続ける……それがワタクシの生き様ですわ! 自らのライフを500ポイント支払って……ロマンス・ピックの効果を発動!」

 

 琴音:LP 1000→500

 

 琴音がデッキの上から3枚のカードを引き抜き、それを確認して……墓地に送る。

 墓地に送られたカードはアマ・リリス、ピース・ホールダー、プログレス・ポッターの3枚。

 

「サイキック族モンスターが墓地に送られたので、墓地のベリーシストを手札に加えますわ!」

「だが、ラプンツェルの命は風前の灯火……」

「ベリーシストを召喚しても、効果を発動できるライフは残ってないわ」

「……………………」

 

 琴音は手札にある、1枚のカードを見つめる。

 

(このカードに全てが掛かっていますわ……どうかみんな、ワタクシに力を!)

 

 琴音は意を決して、1枚のカードを魔法・罠スロットに差し込む。

 

「魔法カード、貪欲な壺を発動! 墓地のモンスター5体……ロマンス・ピックを2枚、アマ・リリス、ギフトタリスト、ピース・ホールダーをデッキに戻してシャッフルしますわ!」

「……ラプンツェルの墓地に2枚目のロマンス・ピックなぞ存在したか?」

「ギフトタリストの効果を発動した時に墓地に送られてたわ」

「成る程」

 

 オートシャッフル機能が停止し、琴音はデッキに指を添える。

 そして祈るように目を瞑り……ゆっくりと2枚のカードを引き抜く。

 

(……来ました!)

 

 琴音は左手の拳を握りしめ、笑みを浮かべる。

 

「いいカードが引けたみたいだね!」

「はいっ! 魔法カード、レッド・ポーションを発動しますわ! この効果でワタクシのライフを500ポイント回復します!」

 

 琴音:LP 500→1000

 

「なんとか持ちこたえた!」

 

「ロマンス・ピックをリリースして、ベリーシストをアドバンス召喚!」

 

 ベリーシスト(星6/ATK 1600)

 

「ライフを500ポイント支払い、ベリーシストの効果を発動! 墓地のキャッチーボーディストを特殊召喚しますわ!」

 

 琴音:LP 1000→500

 キャッチーボーディスト(星2/ATK 700)

 

 再び琴音のフィールドにリズム隊が勢揃いした。

 まさしく、琴音のカードへの愛情が……この状況を作り上げたのだ。

 

「ドリームラマーの効果! ロマンス・ピックをデッキに戻し……ユメ様の墓地にあるストレンジ・トラヴェラーをデッキに戻します! そしてワタクシのフィールドにキャッチーボーディストがいることでライフを500ポイント回復ですわ!」

 

 琴音:LP 500→1000

 

「うっ……」

 

 侑芽は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながら、ストレンジ・トラヴェラーを墓地からデッキに戻す。

 

「地味にキツいでしょうね、遊見は」

「エルゼ、何故に?」

「ギャラクシーデッキは、墓地のカードをデッキに戻して発動する効果が多いから。ドリームラマーの効果が案外、刺さるのよ」

「……成る程」

 

 未来の脳裏に1枚のカードが過ぎる。

 ギャラクティカ・フォース……墓地にモンスターを3体要求する代わり、強力な効果を持っているカード。

 デュエルはフィールドやライフポイントのやり取りだけではない、墓地のカードもまた……戦略の1つ。

 

「さあ、いきますわよ……最高のステージの始まりですわ!」

 

 琴音は天高く、1枚のカードを掲げる。

 太陽のような眩い光を放ち、そのカードをディスクに叩きつけるように置く。

 

「ベリーシストとドリームラマーをリリース! 

 刻め、魂のリズム! 怒りのビートで打ち砕け! 砕光のエスパレイド!!」

 

 砕光のエスパレイド(星7/ATK 2500)

 

 光の柱の中から現れたのは、蒼色のエレキギターを携えた女性。

 

「キャッチーボーディストをフィールドに残した……?」

「ラプンツェルのプレイングミスか?」

 

 ベリーシストの攻撃力は1600、対しキャッチーボーディストの攻撃力は700。

 ベリーシストではなく、キャッチーボーディストをリリースするのが定石……と、侑芽と未来は考えた。

 

「このカードを発動する為ですわ! 魔法カード、スターダムライト!」

 

 琴音がスターダムライトを発動すると同時に、キャッチーボーディストにスポットライトが降り注ぐ。

 その光の元に、キャッチーボーディストが吸い込まれて行き……キャッチーボーディストを飲み込んだ光の中から1体のモンスターが降り立つ。

 

「ワタクシのフィールドにいる通常モンスターを墓地に送り、手札からこのカードを特殊召喚します!」

 

 琴音は再び天高く、1枚のカードを掲げる。

 

「いくよライブ、とことんダイブ! 我慢が限界、オーバードライブ! 

 彩光のプリマギターナ、満を持して初登場ですわ!!」

 

 彩光のプリマギターナ(星7/ATK 2200)

 

 スターダムライトの中から現れたのは、純白のギターを携えた可憐な女性。

 プリマギターナ、エスパレイド……2人のギタリストが、琴音のフィールドという名のステージで最高の音楽を奏でる。

 

「そして、スターダムライトの効果でレベル2のモンスターを墓地に送ったことでワタクシのライフは1000ポイント回復!」

 

 琴音:LP 1000→2000

 

「これがコトネちゃんの狙いだったんだ!」

「そういうことですわ! さあ、プリマギターナ! その命を燃やして最高のギグを披露しましょう! 

 エキサイト・オン・ステージ!!」

 

 プリマギターナがギターを激しく掻き鳴らす。

 炎のように熱く燃え滾り、稲妻のように全身を貫き、心を打ち震わせる……情熱的な演奏がフィールドを包み込む。

 

 琴音:LP 2000→1000

 彩光のプリマギター(ATK 2200→2800)

 砕光のエスパレイド(ATK 2500→3100)

 

「コトネちゃんのライフポイントが減って、モンスターたちの攻撃力が上がった!」

「ワタクシのライフを1000ポイント燃やし、相手フィールドに存在するモンスター1体につき、ワタクシのモンスターの攻撃力を300ポイントアップさせる効果をプリマギターナは持っていますの!」

「ユメのフィールドにはブライト・センチネルと、裏守備のトランザム・ライナックの2体がいる! だから600ポイントアップだな!」

「そして、砕光のエスパレイドの効果も発動ですわ! 

 クライシス・ロック・リベンジ!!」

 

 琴音が左手の握り拳を勢いよく前に突き出し、それと同時にエスパレイドがエレキギターを斧のように大きく振る。

 その衝撃波で、侑芽のフィールドにいるブライト・センチネルとトランザム・ライナックが吹き飛ばされ……消滅した。

 

「ブライト・センチネル! トランザム・ライナック!」

「ワタクシのライフが1000ポイント以下の時、砕光のエスパレイドは相手のモンスターを2体まで破壊する効果を持ってますの!」

 

 エスパレイドの効果により、侑芽のモンスターは全滅。

 侑芽のライフポイントは残り3200。

 プリマギターナとエスパレイドの攻撃を受ければ……0になる。

 

「はじめてでここまでやるなんて、やるなお嬢!」

「……ふんっ」

「ユメ……」

 

 満足気に囃し立てる希菜、不満気に顔を背ける理香子、そして窮地に追い込まれた侑芽を不安そうに見つめる未来。

 

「カードを1枚セットして、バトルですわ! 彩光のプリマギターナで、ユメ様にダイレクトアタック! 

 旋律のリフレインショック!!」

 

 プリマギターナがエレキギターから攻撃を放つ。

 その攻撃は……ユメに直撃し、大きく後ろに吹き飛ばされた。

 

「うぅっ……!」

 

 侑芽:LP3200→400

 

「ワタクシの勝ちです! 砕光のエスパレイドで……ダイレクトアタック! 

 戦慄のドレッドルフラン!!」

 

 ドラゴンの頭部を象ったエレキギターのヘッド部分から、侑芽に目掛けてビームが放たれる。

 そのビームが、プリマギターナの攻撃で倒れ、立ち上がっている途中の侑芽の目の前にまで迫り……

 

「ユメッ!!」

「罠カード、発動! デッド・オア・ライナック!!」

 

 直前、体勢を元に戻した侑芽は罠カードを発動させた。

 

「私のライフを800ポイント回復させるよ!」

 

 侑芽:LP 400→1200

 

「……ですが、砕光のエスパレイドの攻撃は止まりません!」

「デッド・オア・ライナックのもう1つの効果! デッキからカードを1枚ドローして……そのカードが攻撃力1600以上のギャラクシー族通常モンスターなら、砕光のエスパレイドの攻撃は無効になる!」

 

 エスパレイドの放ったビームが止まる。

 侑芽の、一か八かの大勝負。

 当たれば生き残り、外れたら負け。

 まさに……デッド・オア・アライブ。

 

「攻撃力1600以上の通常モンスターがあと何枚、デッキに残ってるかなんて覚えてない。だけど……引いてみせる!」

 

 在りし日の光景が蘇る。

 大好きだった……姉との記憶。

 

 *

 

「私、トランザム・ライナックが一番好き!」

「へ〜、ユメはこのカードが好きなんだ」

「うんっ! だってカッコいいんだもん!」

「うふふっ、そっか。確かにカッコいいもんね」

「お姉ちゃんはトランザム・ライナック、好き?」

「私も好きだよ。でも、一番ではないかな」

「そうなの〜? 何が一番好きなの?」

「私が一番、好きなカードは……ね」

 

 *

 

「……ドロー!」

 

 侑芽の全身全霊の思いが込められた、一筋の光が……エスパレイドの攻撃をかき消した。

 

「砕光のエスパレイドの攻撃が、消えた……!?」

「私が引いたカードは……ギャラクティカ・オブリビオン! 攻撃力2500の通常モンスターだよ!」

「おぉー! いい引きだ、ユメ!」

「ユメ……よかった……」

「……ふーん」

「ターンエンド、ですわ。この攻撃まで凌がれるとは……やはりユメ様は凄い方です」

「コトネちゃんこそ、はじめてなのにこんなに戦えるなんて凄いよ!」

「ふふっ……でも、負けませんわ!」

「私だって! ……私のターン、ドロー!」

 

 侑芽はデッキから3枚のカードを引き抜き、手札に加える。

 そして即座に1枚のカードを魔法・罠スロットに差し込む。

 

「魔法カード、アドバンス・インパクト! 手札のコスモ・タイタンを墓地に送って……このカードと同じレベルの相手モンスター1体を、アドバンス召喚のリリースに使用できる!」

 

 コスモ・タイタンのレベルは7。

 そしてプリマギターナとエスパレイドのレベルも7。

 

「私は砕光のエスパレイドを選択するよ! そしてギャラクティカ・ジャメイヴュを召喚!」

 

 ギャラクティカ・ジャメイヴュ(星2/ATK 0)

 

 侑芽が呼び出したのは小さな竜。

 そして墓地のメテオ・チャージとアドバンス・インパクトを、墓地から取り出す。

 

「この2枚の魔法カードをデッキに戻して、ギャラクティカ・ジャメイヴュの効果を発動! デッキからカードを1枚ドローするよ!」

 

 2枚のカードをデッキに戻し、オートシャッフル機能が作動。

 シャッフルが終わると、すぐにデッキに手を置き……1枚のカードを引き抜く。

 

「……………………」

 

 その様子を、静かに……しかし、しっかりと琴音は目で捉える。

 エスパレイドがこれからリリースされるというのに、その表情からは焦りは微塵も感じられない。

 

「ギャラクティカ・ジャメイヴュと、コトネちゃんの砕光のエスパレイドをリリース! アドバンス召喚!」

 

 琴音はエスパレイドをディスクから取り除き、墓地スロットに差し込む。

 侑芽はギャラクティカ・ジャメイヴュをディスクから取り外して墓地スロットに差し込み、1枚のカードを掲げる。

 

「記憶の舟が忘却の宇宙(そら)を廻る時、天に渦巻く星々が……胸にその名を呼び覚ます! 飛来せよ、ギャラクティカ・オブリビオン!!」

 

 ギャラクティカ・オブリビオン(星7/ATK 2500)

 

 宇宙船の様な物体が彼方より飛来し、そこから手足や頭、尻尾が生えるように変形して……大型の龍へと姿を変えた。

 侑芽の、姉との大切なカード。

 思い出が詰まった、掛け替えのない1枚。

 しかし……

 

「この瞬間、罠カードを発動しますわ!」

「えっ?」

「ピース&ロックンロール!」

 

 琴音がセットしていたカードをオープンする。

 するとプリマギターナがギターを搔き鳴らし、召喚されたギャラクティカ・オブリビオンはあっけなく消滅した。

 

「ワタクシのフィールドに、彩光のプリマギターナか砕光のエスパレイドが存在する時に召喚されたモンスター1体を破壊し、このターン中にワタクシが受ける全てのダメージを無効にしますわ!」

「ひ、酷いよコトネちゃん! せっかくの私のモンスターを!」

「デッド・オア・ライナックで強力そうなモンスターをドローしてましたし、それに対策を取るのは当然ですわ」

「うぅ、う〜……しくしく……」

 

 両手で顔を覆って項垂れる侑芽。

 その様子を見て、あたふたと狼狽える琴音。

 

「えっ、あ……もっ、申し訳ありません、ユメ様!」

「……なーんちゃって!」

「へっ?」

「罠カード、トランザム・アライブ! 破壊されたギャラクティカ・オブリビオンを復活させるよ! 蘇れ、ギャラクティカ・オブリビオン!!」

 

 ギャラクティカ・オブリビオン(星7/ATK 2500)

 

「わっ……だ、騙しましたわね、ユメ様!?」

「えへへ〜、ごめんね?」

「むぅ〜!」

 

 琴音が頬をぷくーっと膨らませる。

 侑芽はクスクスと笑いながら、残りの手札2枚全てを魔法・罠スロットに裏向きで差し込む。

 

「カードを2枚セットして、バトル! ギャラクティカ・オブリビオンで、彩光のプリマギターナに攻撃! 

 ウォー・トゥ・ゼン! オウサム・トゥルー・グッナイト!!」

 

 ギャラクティカ・オブリビオンの全身から解き放たれる稲妻が、プリマギターナを襲う。

 プリマギターナの放つ音波とぶつかり合い……結果、ギャラクティカ・オブリビオンの攻撃が押し勝ち、プリマギターナは稲妻を浴びて消滅した。

 

「っ……ですが、ピース&ロックンロールの効果でワタクシはダメージを受けませんわ!」

「これでターンエンド。さあ、そろそろ決着をつけよう!」

「望むところですわ! ワタクシのターン、ドロー!」

 

 琴音が5枚のカードを勢いよく引き抜き、それを手札にする。

 その手札の中の1枚を見て……琴音の口元が緩む。

 

「魔法カード、オシキック・リリイベを発動しますわ! この効果で、墓地の砕光のエスパレイドを特殊召喚!」

 

 砕光のエスパレイド(星7/ATK 2500)

 

 再びエスパレイドが姿を現わす。

 エスパレイドの効果を先のターン、身を以て味わった侑芽は……冷や汗を垂らす。

 

「攻撃力は同じとはいえ、こちらには効果がありますわ!」

「そうはさせないよ! 罠カード、マジカルテット・ショックを発動!」

 

 侑芽は1枚のカードを表に返し、墓地にあるコスモ・タイタン、ブライト・センチネル、ヘヴン・ギャンゼル、トランザム・ライナックの4枚を取り出す。

 

「この4枚の通常モンスターをデッキに戻して、特殊召喚された攻撃力1500以上のモンスターを破壊する! 砕光のエスパレイドは破壊させてもらうよ!」

 

 マジカルテット・ショックから魔方陣が浮かび上がり、そこから放たれた光線を浴びて……エスパレイドを消滅した。

 

「くぅ……ですが、まだ手は残されていますわ! ワタクシのライフを500ポイント支払い……魔法カード、メジャー・オーディションを発動!」

 

 琴音:LP 1000→500

 

「まだワタクシたちの夢への道は終わってませんわ! ベリーシスト、ドリームラマー、キャッチーボーディスト!」

 

 ベリーシスト(星6/ATK 1600)

 ドリームラマー(星2/ATK 500)

 キャッチーボーディスト(星2/ATK 700)

 

 三度、琴音のフィールドを彩るVi(ヴィ)FRND(フレンド)のリズム隊。

 琴音の、夢や音楽への思いは……執念とも呼べるレベルだと、侑芽は感じ取った。

 

「彩光のプリマギターナをデッキに戻して、ドリームラマーの効果を発動しますわ! ユメ様の墓地にあるギャラクティカ・ジャメイヴュをデッキに戻して……ワタクシは500ポイントのライフを回復します!」

 

 琴音:LP 500→1000

 

「ドリームラマーとキャッチーボーディストをリリース! 再びおいでませ、ギフトタリスト!!」

 

 ギフトタリスト(星7/ATK 2400)

 

 本日、2度目の登場となったギフトタリスト。

 

「貪欲な壺で戻したカードを引いたのか!」

「ベリーシストの効果を発動ですわ! ライフを500ポイント支払い……墓地のキャッチーボーディストを特殊召喚!」

 

 琴音:LP 1000→500

 キャッチーボーディスト(星2/ATK 700)

 

「そしてキャッチーボーディストをリリース! お待たせしましたわね、ロミックンローラー!!」

 

 ロミックンローラー(星6/ATK 1700)

 

 ディスクから放たれた光の柱から飛び出し、スタイリッシュに着地したのは……マイクロフォンを片手に持った男勝りな少女。

 今ここに……Vi(ヴィ)FRND(フレンド)のベース、ドラム、キーボード、ボーカル、ギターの5人全員が……揃い踏みとなった。

 

「さあ、ショータイムですわ! デッキの一番上のカードを墓地に送って、ギフトタリストの効果を発動!」

 

 ギフトタリスト(ATK 2400→3200)

 

 最初のステージとは違い、今はボーカルもいる。

 ギフトタリストのパフォーマンスは、十全に発揮された。

 

「そして、ロミックンローラーの効果! ワタクシのライフが2000ポイント以下の時……相手モンスターの攻撃力を500ポイントダウンさせますわ!」

 

 ギャラクティカ・オブリビオン(ATK 2500→2000)

 

 ロミックンローラーの高まるビートを乗せた歌声が響き渡り、ギャラクティカ・オブリビオンの体が大きく蹌踉めく。

 

(ギフトタリストの攻撃力は3200までアップ、ギャラクティカ・オブリビオンの攻撃力は2000までダウン、そしてユメ様のライフは1200ポイント……ギフトタリストの攻撃が通れば、ワタクシの勝ち。ですが……)

 

 琴音は、侑芽のフィールドにセットされた1枚のカードを見遣る。

 そして、最後の1枚の手札に目を向ける。

 

(サイキック・ダイバージェンス……相手の魔法・罠カードを1枚だけ無力化できるカードですが、発動するにはライフポイントが足りませんわ。もし、ユメ様のセットしているカードが罠カードだったら……)

「……………………」

 

 琴音は顔を上げ、侑芽と視線がぶつかる。

 互いの視線がぶつかり合ったまま、数秒の時が経ち……

 

「……バトル! ギフトタリストで、ギャラクティカ・オブリビオンに攻撃ですわ!」

 

 ギフトタリストがギターを搔き鳴らし、ギャラクティカ・オブリビオンに音の衝撃波を放つ。

 

「罠カード、発動! ヴァキュア ・アナイアレイション!!」

「っ……!」

「自分フィールドにレベル7以上のギャラクシー族通常モンスターがいる時に、相手が攻撃してきたら発動する罠カード! 私のフィールドにいる、ギャラクシー族通常モンスターの数だけ、相手のモンスターを破壊する! ギフトタリストは破壊させてもらうよ!」

 

 巨大な爆発が起き、ギフトタリストの攻撃諸共、消滅していった。

 琴音のフィールドに残されたモンスターはベリーシストとロミックンローラー。

 そのどちらも、今のギャラクティカ・オブリビオンの攻撃力には届かない。

 

(ワタクシの負け……ですわね)

 

 琴音は両手を下ろし、目を瞑って……大きく深呼吸する。

 そして大きく目を見開き、力強く侑芽を見つめる。

 

「ターンエンドですわ! さあ、ユメ様……最後のバトルです!」

「うんっ! 私のターン、ドロー!」

 

 侑芽は5枚のカードを勢いよく引き抜き、そのカードに目を向けず……右手を大きく突き出す。

 

「ギャラクティカ・オブリビオン! ロミックンローラーに攻撃! 

 ウォー・トゥ・ゼン! オウサム・トゥルー・グッナイト!!」

 

 ギャラクティカ・オブリビオンの放つ電撃がロミックンローラーに直撃する。

 その余波が琴音に襲いかかり……琴音は後ろに大きく吹き飛ばされた。

 

 琴音:LP 500→0

 

「ふふっ……」

 

 体が宙に投げ出される中、琴音は……静かに笑っていた。

 ドサッと背中から屋上の床に叩き付けられ、琴音の装着しているデュエルディスクのライフカウンターは0を指し示した。

 そしてホログラムフィールドが解除されると同時に、ギャラクティカ・オブリビオンとベリーシストのソリッドビジョンも消えていった。

 

「コトネちゃん!」

 

 侑芽は琴音の元に駆け寄り、身を屈めて手を差し伸べる。

 琴音は差し出された手を握り、ゆっくりと立ち上がる。

 

「してやられましたわ、ユメ様」

「私もコトネちゃんに翻弄されっぱなしだったよ〜。でも……」

 

 2人の視線が再びぶつかり合う。

 デュエルの時とは違い、近くで……そして、互いに笑顔で見つめ合う。

 

「すっごく楽しかった!」

「ふふっ、ワタクシもですわ!」

 

 パチパチ、と手を叩く音が聞こえた。

 2人はその音が聞こえる方へ振り返った。

 

「いいデュエルだったぜー!」

「……ナイスデュエル」

「うむ、白熱したデュエルであった」

 

 ギャラリーの3人が拍手をしながら侑芽と琴音に歩み寄る。

 2人は少し照れ臭そうに微笑んで、頭を掻いた。

 

「まだまだ、修練を積まなければなりませんわね」

「うかうかしてたら、あっという間に追い抜かれちゃいそうだよ〜」

「よーし、じゃあ次はアタイと……」

「あっ、申し訳ありませんけれど……そろそろ帰ってギターの練習をしませんと」

「なにぃ〜!?」

「我も、じきに門が閉まる故」

「私も帰ろうかな〜」

「……わたしも」

「それではまた明日! 顧問になってくれそうな方を連れて来ますので!」

 

 ぞろぞろと屋上を後にする侑芽、未来、理香子、琴音の4人。

 そして屋上に1人寂しく取り残された希菜。

 

「……なんなんだよもぅ〜!!!!!」

 

 彼女の悲痛な叫びが夕暮れの空に木霊した。

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