少女たちのラッシュデュエル・ストーリー   作:高科奈紗

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第7話「ギャラクシー決戦」

 

 パソコンのマウスを操作しながら、ディスプレイを凝視する侑芽。

 ディスプレイに映し出されているのは、先日撮影した集合写真とラッシュデュエル部のポスター。

 フォントやイラストの微調整をして、写真を貼り付ける。

 

「……よーし、完成!」

 

 保存の項目をクリックして、プリントアウト。

 ホームプリンターから印刷された1枚の完成品を手に取って広げる。

 

「うんっ! 我ながら上出来!」

 

 ウキウキな気分でポスターを鞄に仕舞う。

 そして大きく腕を上げて伸びの姿勢をする。

 時計に目を向けると、長針は3時を指し示していた。

 小腹が空いたな……と思い、ふと机の上に置いてある携帯端末を見遣る。

 

「っと……」

 

 携帯端末の画面を指先で操作して、電話帳の項目をタップする。

 そして、指先が通話ボタンに触れそうになった瞬間……

 

 ♪〜♪〜

 

 携帯端末が着信を知らせる音楽を鳴らす。

 画面に映っているのは《西条 未来》の文字。

 その文字が目に入ると侑芽は口角が上がりクスッと微笑む。

 

「はい、もすもす。あたすだよ」

『……………………』

「何かリアクションしてよ!?」

 

 応答ボタンを押して、巫山戯た対応をした侑芽に対して、未来は無言で応えた。

 

『……作業中だった?』

「今、終わった所だよ〜」

『そうか、おつかれさまだ』

「いえいえ〜」

 

 未来から労いの言葉を貰い、心が弾む感覚を覚える。

 声色も明らかに上機嫌な感じだ。

 

「で、何か用が?」

『いや、特には……ユメの声が聞きたいって思ったから』

「へ〜、そっか。ならちょうどよかった!」

『ちょうどいい……?』

「私もミクに電話しようと思ってたんだ。ワンコールで出たでしょ?」

『……ふふ、なるほど』

 

 互いにクスクスと笑い合う声がスピーカー越しに聞こえる。

 心地よい声に暖かい感覚を2人は覚えた。

 

「今、夕方前でしょ? 小腹が空いちゃってさ〜」

『うむ』

「この前、美味しそうなラーメン屋を見つけてね! 一緒に食べに行こうよ!」

『ラーメン屋』

 

 今は3時過ぎ。

 軽食を摂るにはもってこいの時間だ。

 ……もっとも、ラーメンを軽食と言えるかどうかは別だが。

 

『……今からラーメンなんて食べて、お夕飯を食べれる?』

「大丈夫だいじょーぶ!」

 

 何を根拠に言っているのだろうか、と思いつつも断る選択肢は未来の中には最初から無かった。

 

『まあ、構わないが』

「やった〜!」

 

 侑芽が小さく飛び跳ねて喜ぶ。

 スピーカー越しでもその姿が見て取れて、未来は柔らかな笑みをこぼす。

 

「あっ、ウラちゃんは? どうせならあの子も一緒に行こうよ」

『ウラは大会でいない』

「そうなんだ。残念」

『……ユメ』

「ん? ……なぁに?」

 

 いつになく未来の真剣な声色に、一瞬だけ肩が強張る。

 それを気取られないように、いつものように言葉を返す。

 

『先日は……八つ当たりみたいな事して、ごめんなさい』

「んぅ?」

 

 未来の言った事に心当たりが無く、首を傾げて頭の上にクエスチョンマークが浮かび上がる。

 しばらくの間、互いに静寂が訪れて……記憶の棚を漁っていると、1つの出来事がフラッシュバックした。

 

《ユメは、私よりもその人の肩を持つんだ?》

 

「あぁ〜! ……言われるまで忘れてた」

『忘れてた、って……』

 

 未来の呆れた声がスピーカーから聞こえる。

 

「だって最初から気にしてないし」

『わた……我が気にする。大切な友達にあんな事を言って……すぐに謝ろうって思ったけど、タイミングが無くて……』

「だから、気にしてないって」

『でも……』

「ラーメン屋に付き合ってくれるのでチャラにしてあげる!」

 

 先程、取り付けた無関係な約束は償いにならないのでは……? 

 と、心の中で思っても口に出さないでおいた。

 侑芽の厚意を無碍にしたくなかったからだ。

 

『……ありがとう、ユメ』

「どういたしまして! それじゃあ、出掛ける準備が出来たらまた電話してね〜」

 

 侑芽は通話を終了して、手荷物を整える準備に取り掛かった。

 

 *

 

 24インチの自転車に跨り、ペダルを漕いで風を切る。

 街中から少し外れた、閑静な場所。

 建物は疎らで、シャッターの閉まっている店舗が殆ど。

 

「こんな所にラーメン屋が?」

 

 侑芽の漕いでいる24インチの自転車に並走するように、未来は26インチの自転車を漕ぎながらそう尋ねる。

 

「こーいう寂れた場所にこそ、美味しいお店はあるんだよ!」

「いわゆる、穴場というヤツか?」

「そうそう! ……とうちゃーく!」

 

 ブレーキを効かせてタイヤを止める。

 未来も続いて自転車を止め、目の前にあるお店を見上げる。

 

「……宇宙軒?」

 

 紺色の暖簾に書かれた文字を、未来は淡々と読み上げた。

 いかにも古風な、こじんまりとした佇まい。

 チェーン店ではなく、個人経営なのだろうと一目でわかる。

 

「面白い名前のお店だよね」

「だが、匂いはいい」

 

 ラーメン特有の出汁の効いた香りが鼻腔を擽ぐる。

 そして腹部がキュッとなる感覚がしてきた。

 

「とりあえず、入ってみようよ」

 

 侑芽はそう言いながら暖簾を潜り、入り口の扉を開けて店内に入る。

 

「……誰もいないみたいだが」

 

 2人並んで入り、店内を見渡す。

 外から明かりが付いているのは見えたから入ってみたが……人っ気は感じられなかった。

 

 侑芽がカウンターの上に視線を向ける。

 地球儀が飾られている。

 壁に目を向けると……宇宙の写真が何枚か掛けられていた。

 

「宇宙軒って名前に偽り無し、って感じの装飾だね」

「安直過ぎでは?」

 

 そうこうして、2人で店内を見回していると……

 

「ピーポーパーペーポー」

「……ユメ、何か言った?」

「私じゃないよ」

 

 不意に聞こえた不審な声に、2人が身構える。

 

「……っ! ミク、あれを見て!」

「あれ? ……えぇ!?」

 

 侑芽が天井を指差す。

 その指先に在ったのは……アナイデンティファインド・フライング・オブジェクト、いわゆるUFOと呼ばれる物体であった。

 

「ゆ、ユーフォー!?」

「あっ、よく見たらピアノ線みたいなので吊るしてある」

 

 侑芽の言葉を受けて、未来がUFOを凝視する。

 

「……本当だ、なら飛んでないじゃないか」

 

 落胆の表情を浮かべ、肩を落とす。

 天井から吊り下げられているUFO(ノット・フライング)が徐々に降りてくる。

 そして床にまで降りると……

 

「……ピポ!」

「「えっ?」」

 

 UFOから、人間の足が生えた。

 そして次に、両腕が生え……

 

「ふぅ〜!」

「「えぇっ!?」」

 

 最後に、顔が生えた。

 UFOが、少女にトランスフォームしたのだ。

 

「地球の皆さん、はじめまして! 私はラー星雲のメンメン星からやってきた宇宙人……ヌードルソラコ、ピポー!」

「宇宙人……?」

「ソラコ?」

 

 侑芽と未来が首を傾げる。

 

「宇宙子、と書いてソラコと読むピポ」

「なるほど」

 

 侑芽は即座に感じ取った。

 この子、未来の同族だ……と。

 

「それで、キミがここの店員さん?」

「店員じゃなくて店長(⚫︎ ⚫︎)ピポ!」

「店長!?」

 

 ビックリした表情を浮かべて大きく目を見開く侑芽。

 同じぐらいの年齢に見えるのに、ラーメン屋の店長だとは……そう思考を張り巡らせていた時だった。

 

「今の時間は準備中ピポ」

「あっ、そうなんだ……?」

 

 お昼時のピークと夕方以降のラッシュの間は閉店しているラーメン屋は珍しくない。

 

「でも今日は特別大サービス!」

 

 ヌードル宇宙子は何処からともなくラーメン丼ぶりを2つ取り出して、カウンターの上に置いて並べる。

 侑芽と未来はヌードル宇宙子に促され、席に座る。

 

「いい匂い……!」

「どうぞ召し上がれピポー!」

「「いただきまーす!」」

 

 2人は手を合わせ、箸を持ち……麺を啜る。

 

「っ!?」

「うーまーいーぞぉー!」

 

 麺を口に含んだ瞬間、未来は大きく目を開いて口から光線を吐き出した。

 

「美味しい! こんなに美味しいラーメン、食べたことないよっ!」

 

 侑芽は無我夢中でラーメンを啜っている。

 

 2人の脳内に広がる、大宇宙を思わせるような深みのあるスープ。

 その中に浮かんでいるのは、渦状銀河のようなナルト。

 焼豚はダーク・マターのようにずっしりとした味わい。

 そして麺は……

 

「コズミックストリング!」

「宇宙ヒモ!」

 

 *

 

「ふ〜、満足……」

「ごちそうさまでした!」

 

 ラーメンを完食して、満足気に箸を置く2人。

 

「それじゃあ、お腹も膨れたところで……」

 

 ヌードル宇宙子は立ち上がり、調理台の上に置いてあったデュエルディスクを手に持つ。

 

「ラッシュデュエルだピポ!」

「なぜ???」

 

 未来が至極真っ当なツッコミをする。

 

「あっ、じゃあ私がしていい?」

「構わないが……」

 

 なぜここで、この流れでラッシュデュエル? 

 という疑問が、未来の頭の中の思考という名の宇宙を漂ったままであった。

 

 

 3人が外に出て、侑芽とヌードル宇宙子がそれぞれ距離を置いて対峙する。

 

「私は清栄中学1年、ラッシュデュエル部所属の遊見 侑芽!」

「ピポポ!」

 

 互いにデュエルディスクへデッキを装填。

 そしてカードゾーンが展開される。

 

「「ラッシュデュエル!」」

 

 侑芽:LP 4000 vs 宇宙子:LP 4000

 

 掛け声と共にホログラムフィールドが展開される。

 ターンランプが点灯しているのは、ヌードル宇宙子の装着している7を思わせるような形をした赤色のデュエルディスク。

 

「私のターン、ドローだピポ!」

 

 ヌードル宇宙子が勢いよくデッキからカードを引き抜き、それを手札に加える。

 1枚のカードを手に取り、デュエルディスクの右端のスロットが展開され……そこにカードを置く。

 

「まずはフィールド魔法、宇宙を発動させるピポ!」

 

 すると辺り一帯の風景が宇宙空間に早変わり。

 

「フィールド魔法……?」

「フィールド魔法は、フィールドゾーンに置くことで発動する魔法カードだピポ! 発動した後もフィールドゾーンに残り続けて、効果を発揮するのが特徴ピポ!」

「へ〜、なるほど。説明ありがとう、宇宙子さん!」

「どういたしましてピポ〜。……さて、次はモンスターを2体セットするピポ!」

 

 ヌードル宇宙子の前に、2枚のセットカードが出現する。

 

「セットモンスター……守備表示で通常召喚されると、こうなるんだっけ」

「後はカードを2枚セットして……ターンエンド、ピポ」

「私のターン、ドロー!」

 

 ターンが変わり、侑芽がデッキからカードを勢いよく引き抜く。

 

「トランザム・ライナック、ヴォルテクス・シューター、ジャイアント・バルジを召喚!」

 

 トランザム・ライナック(星4/ATK 1600)

 ヴォルテクス・シューター(星4/ATK 1400)

 ジャイアント・バルジ(星4/ATK 1300)

 

 3体のモンスターを一斉に召喚、それぞれが侑芽の前に立ち並ぶ。

 

「ピーポーパーペーポー」

「へっ?」

「宇宙の効果、発動ピポ!」

 

 トランザム・ライナック(ATK 1600→1300)

 ヴォルテクス・シューター(ATK 1400→1100)

 ジャイアント・バルジ(ATK 1300→1000)

 

 侑芽の従える3体のモンスターが悶え苦しみ、攻撃力が下がった。

 

「攻撃力と守備力を300ポイント下げちゃうピポ〜!」

「……銀河戦士たるギャラクシー族が宇宙で弱体化?」

「そこはツッコンじゃダ〜メ、ピポ」

 

 未来の疑問へ冷静に返すヌードル宇宙子。

 

「宇宙という厳しい環境下では、生半可なモンスターは耐えられない……ってわけだね」

「そういう事ピポ」

「なら、その環境を……利用させてもらうよ!」

 

 侑芽は1枚の手札を抜き出し、そのカードを魔法・罠スロットに差し込む。

 

「デッキの1番上のカードを墓地に送って……魔法カード、千攻ロケット! 攻撃力1000以下の通常モンスターの攻撃力を、このターンが終わるまで1000ポイントアップさせるよ!」

 

 ジャイアント・バルジ(ATK 1000→2000)

 

「ピポ〜!?」

「上手い! 相手の効果を逆に利用するとは!」

「カードを1枚セットして、バトル! トランザム・ライナックで、セットモンスターに攻撃!」

 

 トランザム・ライナックが大きく飛び上がり、セットされていたモンスター……シラガネギンガーに斬りかかる。

 

 シラガネギンガー(星4/DEF 1400→1100)

 

 シラガネギンガーはトランザム・ライナックに一刀両断にされ、爆散した。

 しかし破壊されたのは守備モンスター、ヌードル宇宙子にダメージは無い。

 

「次はヴォルテクス・シューターで、もう1体のセットモンスターに攻撃!」

 

 ヴォルテクス・シューターが円盤を投げつけ、別のセットモンスター……ビッグバン・エッガーがそれを腕で受け止める。

 

 ビッグバン・エッガー(星1/DEF 0)

 

 しかし、ヴォルテクス・シューターの放った円盤を受け止めきれず……ビッグバン・エッガーは真っ二つになり爆散。

 これでヌードル宇宙子の壁となるモンスターは全て消え去った。

 

「ジャイアント・バルジで、宇宙子さんにダイレクトアタック!」

「ピ〜ポ〜!?」

 

 ジャイアント・バルジの腕に生えている光の触手が、ヌードル宇宙子に向けて放たれる。

 そして触手を鞭のように振るい、ヌードル宇宙子に炸裂する。

 

 宇宙子:LP 4000→2000

 

「ピーッ!」

 

 ジャイアント・バルジの攻撃を受けて、後ろに吹き飛ばされたヌードル宇宙子。

 

「よしっ、大ダメージだ!」

「……ん?」

「ピポ、ピポ……」

 

 吹き飛ばされたヌードル宇宙子がゆっくりと立ち上がる。

 しかし、その様子は尋常ではなかった。

 

「ピ……ポパパ……ピポペパポーッ!」

「なっ、なんだ!?」

「宇宙子さん!?」

 

 電化製品がショートしたようにヌードル宇宙子の全身に電撃が走り、壊れたラジカセの様な歪な声を上げる。

 

「ふぅ……お、お騒がせしましたピポ!」

 

 電撃が収まり、姿勢を正すが……明らかに疲弊した様子のヌードル宇宙子。

 

「えっ、いや……大丈夫ですか? デュエル、中止した方がいいんじゃ……」

「心配ご無用ピポ、UFOのエネルギーを大きく失っただけだピポ」

「ダメージでエネルギーを失う……ライフポイントが動力源とでも言うのか?」

「そーいう事ですピポ」

「そ、それじゃあ、宇宙子さんのライフが0になったら……故郷に帰れなくなっちゃうってこと!?」

「……さぁ、今はデュエルの途中。続けるピポ!」

「っ……ターン、エンド」

 

 ジャイアント・バルジ(ATK 2000→1000)

 

「私のターン、ドローピポ!」

 

 侑芽の表情に陰りが射し込む。

 ヌードル宇宙子は、少なくとも平静を保ったままプレイを進めているように見える。

 

「ギャラクシー・ナルトローラを3体、召喚ピポ!」

 

 ギャラクシー・ナルトローラ(星4/ATK 1200→900)

 

「ただ……宇宙の効果で攻撃力と守備力は300ポイントダウン、ピポ」

「ギャラクシーの名を冠するモンスター……侑芽のモンスターと同じギャラクシー族か!」

「炎族ピポ」

「……この瞬間、罠カードを発動! ギャラクティカ・ラティス!」

 

 トランザム・ライナック(ATK 1300→DEF 0)

 ヴォルテクス・シューター(ATK 1100→DEF 700)

 ジャイアント・バルジ(ATK 1000→DEF 1000)

 

 侑芽がギャラクティカ・ラティスを発動した事で、3体のモンスターは攻撃態勢から守備の態勢をとった。

 

「自分フィールドにいる通常モンスターのギャラクシー族を守備表示に変更して、このターンが終わるまで守備力を、通常モンスターのギャラクシー族の数×500ポイントアップ!」

 

 トランザム・ライナック(DEF 0→1200)

 ヴォルテクス・シューター(DEF 700→2200)

 ジャイアント・バルジ(ATK 1000→DEF 2500)

 

「守りを固めたか!」

「ここは世界の到達点たる宇宙、そんな小手先は通用しないピポー! ギャラクシー・ナルトローラの効果を発動ピポ!」

 

 ヌードル宇宙子はデッキの上から3枚のカードを引き抜き、それを墓地スロットへ差し込んだ。

 

「デッキの一番上のカードを墓地に送って、攻撃力が600ポイントアップ!」

 

 ギャラクシー・ナルトローラ(ATK 900→1500)

 

「宇宙の過酷な環境下でこそ、本当の力を発揮するモンスターか……!」

「それでも、トランザム・ライナック以外なら……」

「更に! 火麺激辛レッドの術! 激辛ラーメンを召し上がれピポ〜!」

 

 ギャラクシー・ナルトローラ(ATK 1500→1800)

 

「ギャラクシー・ナルトローラの攻撃力が上がった!?」

「それだけじゃないピポ、この効果を受けたモンスターの攻撃は貫通する! 

 更に更に! 『守備』封じでジャイアント・バルジを攻撃表示に変更ピポ!」

 

 ジャイアント・バルジ(DEF 2500→ATK 1000)

 

「あぁ!? ジャイアント・バルジが……!」

「ギャラクティカ・ラティスの効果でアップするのは守備力だけ、こうすれば無意味ピポ!」

「う……」

「さあ、バトルだピポ! 火麺激辛レッドの術を受けたギャラクシー・ナルトローラで、トランザム・ライナックを攻撃! 

 火麺激辛レッドの術の効果で、攻撃は貫通ピポ!」

 

 侑芽:LP 4000→3400

 

 ギャラクシー・ナルトローラがナルトの模様をあしらった棍棒を振るい、トランザム・ライナックを薙ぎ倒す。

 

「うぅ……トランザム・ライナックが……!」

「まだ続くピポ! ジャイアント・バルジに攻撃!」

 

 侑芽:LP 3400→2900

 

 もう1体のギャラクシー・ナルトローラがジャイアント・バルジに目掛けて飛びかかり、棍棒で殴り飛ばし……ジャイアント・バルジは砕け散った。

 

「ぐぅ……!」

「今のヴォルテクス・シューターには敵わないから……バトルはこれで終了、ターンエンドだピポ!」

 

 ギャラクシー・ナルトローラ(ATK 1800→900)

 ヴォルテクス・シューター(DEF 2200→700)

 

 火麺激辛レッドの術とギャラクシー・ナルトローラ、ギャラクティカ・ラティスの効果が終了し、ギャラクシー・ナルトローラの攻撃力とヴォルテクス・シューターの守備力が元に戻る。

 

「私のターン、ドロー……」

 

 侑芽がゆっくりと5枚のカードをデッキから引き抜く。

 そして引いたカードには目もくれず、腕を降ろす。

 

「ユメ……?」

「私は……」

「ピポ?」

 

 顔を伏せたまま、侑芽は何もアクションを起こさずにいた。

 

「私は……これで、ターンエン……」

「ユメッ!!」

「っ……!」

 

 未来の大声を受けて、肩がビクッと跳ね上がり……顔を上げる。

 

「勝負はいつだって真剣勝負、手加減なんてしたら……相手に失礼だと思わないのか!?」

「でも、私が勝っちゃったら……」

「ユメが優しい人だってのは私がよく知ってる! あなたの優しさに、私は何度も救われてきた! 

 あなたの優しさは……嘘偽りのない、心からの気持ち! 素直で、真っ直ぐで、愚直で……そんなあなただから、私はあなたを……好きになった! 

 だから……自分の気持ちに嘘をつかないで!!」

「自分の気持ちに……うん!」

 

 侑芽は腕を上げて、左手でサムズアップを未来に向ける。

 

(この2人の間に在る、強固な絆……心の中に宿るそれぞれの宇宙と宇宙が合わさりあって、まるでビッグバンのような力強さを感じるピポ……!)

 

 ヌードル宇宙子は身じろぎし、一歩後退りする。

 侑芽は手札を見遣り、ニヤリと不敵に笑って……1枚のカードを掲げる。

 

「宇宙の攻略法、見つけたよ! ヴォルテクス・シューターをリリースして、アドバンス召喚!」

 

 ヴォルテクス・シューターのカードを盤上から取り除き、1枚のカードを叩きつけるように置く。

 

「例え銀河が記憶を失い闇に包まれようと、その勇者の足跡、星となりて必ずや輝かん! 駆け抜けろ、ギャラクティカ・アムネジア!!」

 

 ギャラクティカ・アムネジア(星6/ATK 1600)

 

 侑芽が呼び出したのは、ワイバーンのような姿をしたモンスター。

 そのレベルは6。

 

「上級モンスターなら、宇宙の中でも耐えられる!」

「いいぞ、ユメ!」

「手札1枚をデッキの下に戻して、ギャラクティカ・アムネジアの効果を発動! ギャラクティック・リバイヴァー!! 

 この効果で、墓地からトランザム・ライナックとヴォルテクス・シューターを特殊召喚!」

 

 トランザム・ライナック(星4/ATK 1300)

 ヴォルテクス・シューター(星4/ATK 1100)

 

「宇宙の効果で弱体化しているとはいえ、ギャラクシー・ナルトローラなら倒せる!」

「いいや、このターンで終わらせるよ! トランザム・ライナックとヴォルテクス・シューターをリリース!」

 

 侑芽は2枚のカードを墓地スロットに差し込み、1枚のカードをモンスターゾーンに置く。

 

「記憶の舟が忘却の宇宙(そら)を廻る時、天に渦巻く星々が、胸にその名を呼び覚ます! 飛来せよ、ギャラクティカ・オブリビオン!!」

 

 ギャラクティカ・オブリビオン(星7/ATK 2500)

 

 侑芽の前に、2体の銀河龍が立ち並ぶ。

 ギャラクティカ・オブリビオンのレベルは7、これまた宇宙の効果の適応外のモンスターだ。

 

「ギャラクティカ・アムネジアとギャラクティカ・オブリビオンで攻撃を仕掛ければ……2300ポイントのダメージ! これでユメの勝ちだ!」

「罠カード発動ピポ、チャーシューティング・スター!」

 

 ヌードル宇宙子が1枚の罠カードを発動し、3体いるギャラクシー・ナルトローラの内、1体がヌードル宇宙子の手元に戻る。

 

「ギャラクシー・ナルトローラを手札に戻して、そのレベル×400ポイントのライフを回復するピポ!」

 

 宇宙子:LP 2000→2800

 

「っ……カードを2枚セットして、バトル! ギャラクティカ・アムネジアで、ギャラクシー・ナルトローラに攻撃!」

 

 宇宙子:LP 2800→2100

 

 ギャラクティカ・アムネジアの放った光線が、ギャラクシー・ナルトローラに直撃し……消滅していった。

 

「ぬぬっ……!」

「ギャラクティカ・オブリビオンで、もう1体のギャラクシー・ナルトローラに攻撃! 

 ウォー・トゥ・ゼン! オウサム・トゥルー・グッナイト!」

 

 宇宙子:LP 2100→500

 

 ギャラクティカ・オブリビオンが眩い電撃を放ち、ギャラクシー・ナルトローラを容赦なく消し去る。

 

「ピポ〜ッ! ……な、なんとか持ち堪えたピポ!」

「倒しきれなかった……ターンエンド!」

「私のターン、ドローピポ!」

 

 ターンが変わり、再びヌードル宇宙子のターン。

 デッキから4枚のカードを引き抜き、手札に加える。

 

「ビッグバン・エッガーとシラガネギンガーを召喚ピポ!」

 

 ビッグバン・エッガー(星1/ATK 300)

 シラガネギンガー(星4/ATK 100)

 

 ヌードル宇宙子が呼び出した2体のモンスターは、宇宙の効果で攻撃力が低下。

 どちらもこの状況を打破できる効果を有しているわけでもない。

 

「そしてセットしていた、火麺ドローっと濃厚返しの術を発動ピポ! 

 手札を2枚、墓地へ送って……3枚ドローするピポ!」

「手札を整えてきたということは……ヤツのエースモンスターが来るか!」

「2体のモンスターをリリース!」

 

 盤上に置かれている2枚のカードを取り除き、ヌードル宇宙子はおもむろにUFOへと変形した。

 

「ピーポーパーペーポーッ! ベントラ、ベントラ……きらめく星からこんにちは! 

 ピポピポ……アドバンス召喚! コズミックストリング・ヌードルイダス!!」

 

 コズミックストリング・ヌードルイダス(星8/ATK 2500)

 

 ヌードル宇宙子が呼び出したのは、緑色の衣装を纏った魔女。

 携わっている錫杖の先から、極太の麺が飛び出している。

 

「これが、宇宙子さんのエースモンスター……!」

「コズミックストリング・ヌードルイダスの効果を発動するには、手札の炎族を2体墓地へ送らないといけない。でも今の私の手札に炎族は2体もいないピポ」

「それなら、このターンは凌げそう……!」

「というわけで、材料を補充するピポ! 闇の量産工場!!」

 

 ヌードル宇宙子が手札から1枚の魔法カードを発動する。

 

「この効果で、墓地のシラガネギンガーとビッグバン・エッガーを手札に戻すピポ〜」

「具材の再利用とか、最悪だろ!?」

「これはデュエルだピポ!」

「あはは……」

 

 侑芽が乾いた笑いを浮かべる。

 

「手札のシラガネギンガーとビッグバン・エッガーを墓地に送って、コズミックストリング・ヌードルイダスの効果を発動ピポ! 

 お互いのフィールドのレベル7以下のモンスターを、全部破壊しちゃうピポ!」

「えっ!?」

「ブラックホール・エクソダス!」

 

 コズミックストリング・ヌードルイダスが錫杖を天高く掲げ、その錫杖の先に炎のブラックホールが現れる。

 巨大な炎の渦をフィールドに放ち、ギャラクティカ・アムネジアとギャラクティカ・オブリビオンは飲み込まれ……消滅した。

 

「くぅ……でも、この瞬間! トランザム・アライブを発動! 

 ギャラクティカ・オブリビオンを復活させるよ!」

 

 ギャラクティカ・オブリビオン(星7/ATK 2500)

 

 モンスターが破壊された時、侑芽は即座に罠カードを発動し……破壊されたギャラクティカ・オブリビオンを呼び戻した。

 

「2体のモンスターの攻撃力は同じ、これなら耐えれそうだ!」

「それはどうかな?ピポ。

 まずはギャラクシー・ナルトローラを召喚して、効果を発動! 攻撃力を600ポイントアップ!」

 

 ギャラクシー・ナルトローラ(星4/ATK 1500)

 

「それでも、ギャラクティカ・オブリビオンの攻撃力には届かない……いったい何を……?」

 

 ヌードル宇宙子が目を瞑って、最後の手札のカードを胸の前に置く。

 

「リ麺バー・ユー……あの時の熱い情熱に溢れたデュエルを、忘れたことはないピポ……」

「…………?」

「……魔法カード、火麺炙りバーナーの術! 

 私のフィールドにいるモンスターの攻撃力は、お互いの墓地に存在する通常モンスターの数×100ポイントアップするピポ!」

「互いの墓地!?」

「私の墓地にいる通常モンスターは、シラガネギンガー3体とビッグバン・エッガー3体。

 そして侑芽の墓地にいる通常モンスターは、トランザム・ライナック、ヴォルテクス・シューター、ジャイアント・バルジ、インターステライムの4体。よって攻撃力は……」

 

 コズミックストリング・ヌードルイダス(ATK 2500→3500)

 ギャラクシー・ナルトローラ(ATK 1500→2500)

 

「攻撃力3500に2500!?」

 

 侑芽が身構え、後退りする。

 

「キミたちの絆がどれだけ熱くとも……私と麺三郎の絆も、負けないぐらい熱いピポ! 

 バトル! コズミックストリング・ヌードルイダスで、ギャラクティカ・オブリビオンに攻撃! 

 トゥインクル・ヌードル・ウィップ!!」

 

 侑芽:LP 2900→1900

 

 コズミックストリング・ヌードルイダスが錫杖の先から伸びている極太の麺を鞭のように振るい、ギャラクティカ・オブリビオンを叩きのめす。

 

「あぁっ……!」

 

 侑芽のフィールドにモンスターはいなくなった。

 フィールドに残されているのは、1枚のセットカードのみ。

 

「これで終わりピポ! ギャラクシー・ナルトローラで、侑芽にダイレクトアタック!」

「ユメッ!!」

 

 ギャラクシー・ナルトローラが、侑芽に目掛けて飛びかかる。

 

「っ……罠カード、ストレンジ・ウォール! 

 ギャラクシー・ナルトローラの攻撃力を、このターンが終わるまで500ポイント下げる!」

 

 ギャラクシー・ナルトローラ(ATK 2500→2000)

 

「200ポイント足りない……!」

「最後まで諦めないその姿勢、あっぱれピポ!」

 

 ストレンジ・ウォールの効果で弱体化しても、ギャラクシー・ナルトローラの勢いは止まらない。

 ナルトの模様をあしらった棍棒を力一杯に振るい、その攻撃が侑芽に直撃する。

 

 侑芽:LP 1900→0

 

「うあぁぁっ!!」

 

 ギャラクシー・ナルトローラの一撃を受けて、後ろに大きく吹き飛ばされる。

 ライフカウンターが0になり……ホログラムフィールドが解除された。

 

「ユメーッ!」

 

 未来が急いで侑芽に駆け寄る。

 

「あはは……負けちゃった。カッコ悪いところ見せちゃったな〜」

「カッコ悪いもんか、ユメはいつだって……私の希望の光だ」

「ミク……」

 

 未来が侑芽の肩を抱きしめ、互いに視線を合わせる。

 

「お熱いピポね〜」

「「っ……!?」」

 

 ヌードル宇宙子の言葉でハッとなり、2人の世界から引き戻される。

 咄嗟に肩から手を離し、距離を取る。

 侑芽は微かに不満気な表情を浮かべ、すぐに柔らかな表情に戻る。

 

「宇宙子さん、強いですね。ただの不思議ちゃんだと思ってました」

「侑芽こそ、熱いデュエルをありがとうピポ!」

 

 互いに称え合い、握手を交わす。

 

「さて、そろそろ開店準備をしないといけないピポ!」

 

 ヌードル宇宙子が踵を返して、宇宙軒へ向けて歩を進めようとした……その時。

 

「あの、宇宙子さん!」

「ピポ?」

 

 侑芽の声を聞いて、クルッと振り向く。

 すると侑芽はポーチから1枚の写真を取り出して、見せつける。

 

「この人……見たことないですか?」

 

 写真に写っているのは、侑芽と同じライトブラウンの髪をした1人の少女。

 侑芽とは違い、後ろ髪を1つ結びにしている。

 

「う〜ん……知らないピポ。私、ここに越してきたばっかりだからこの辺のこと、よく知らないピポ」

「そうですか……」

 

 しょんぼりとした表情を浮かべ、写真をポーチに仕舞う。

 

「もし見かけたら、キミが探してたって言っておくピポ!」

「あっ、ありがとうございます!」

 

 侑芽がペコリと大きく頭を下げる。

 

 侑芽と未来は止めていた自転車に跨り、ヘルメットを被る。

 

「また食べに来ますね、宇宙子さん!」

「またの御来店、お待ちしておりま〜す!」

 

 侑芽と未来は会釈をし、ヌードル宇宙子は大きく手を振って2人を見送る。

 

「ほんとに美味しかったね、ミク!」

「うむ。次は……部活のみんなも連れて来たいものだな」

「だねっ!」

 

 心の中に宿る熱い気持ちと、充実した気持ちを感じながら……ペダルを漕いで風に乗った。

 

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