TCG至上主義の世界は魔境です   作:黒霧春也

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1話・俺の相棒が大食いで食費がやばいんだが?

 TCG世界は魔境だ。

 序盤は普通にカードゲームの対戦をしていたはずなのに、命をかけた勝負や化け物が現れる世界。

 しかもトドメに勝負の結果によっては世界が滅ぶみたいなぶっ飛んだストーリーが多く、アニメや漫画として見るのはいいが現実としては体験したくない。

 まあでも、現実社会の脇役サラリーマンがそんな世界に行くわけ……なかったと思っていたが。

 

「なあ、ダンナ。定食屋のご飯の食べ放題ってほんとありがたいよな」

「それはそうだが、どうしてこうなった?」

「別にアタシがご飯をおかわりしまくっているだけだろ」

「それはそう!」

 

 全く記憶にないTCG世界に前世の記憶持ちで転生してから約10年。

 最初は3歳児の姿に頭が真っ白になったけど、なんとか割り切って周り助けもあり何とか成長して来れた。

 

「しっかしお前はよく食べるな」

「そりゃアタシは騎士だからこれくらい食べないと身が持たないぜ」

「なるほどな……」

 

 前の席に座っている大学生くらい見た目に金髪ポニーテールのモデル体型の美女・デュラ。

 彼女は人間ではなく小3の時に引いたカードバックから当てたソウルユニット……人型やSDの姿になって生活するモンスターの存在。

 カードゲーム世界であるあるの特殊なカードなのだが、反対の席に座りながらご飯を食べまくっている金髪赤目の大学生くらいの美女、俺のソウルユニットである天極の聖騎士・デュランダルことデュラはどんぶりを片手に俺のトンカツを奪って行った。

 

「ダンナが食べないならもらうぞ」

「すでに奪われたんだが?」

「あ、悪い! でもぼーとしているダンナもダンナだぜ」

「お前な……」

 

 ソウルユニットと契約を結んだ相手は特殊な能力が使える。

 そのせいで契約者は絶大な力を持つ為、一部の地域では戦争にも使われたらしい。

 まあでも一応平和な日本では戦争は起きないはずなので、今はデュラと共にショッピングモール内にある定食屋でご飯を食べている。

 

「んでさ、この後は3階のカードショップに戻るのか?」

「本音を言えば帰りたいけどな」

「ははっ! ほんとダンナはストレートすぎるぜ」

 

 ショップ大会。

 今日は4月5日の日曜日なのでショップ大会が10時から始まっているが、俺はくじ引きにハズレて観戦者になったが幼馴染の2人はあたりを引いた。

 そのため15歳以下の部でブレイブ(勝負)をしており、順調に勝ち進んでいるらしい。

 

「なあ、ダンナのスマホがなってないか?」

「ん? ああ……見なかったことにできない?」

「何が書かれていたんだ?」

 

 スマホに入ったメッセージ。

 幼馴染の2人がベスト16に進んだみたいで「早く見に来い」と入っていた。

 なのでどんぶりに入ったご飯にふりかけをかけているデュラを尻目に、俺は深くため息を吐く。

 

「俺は脇役がいいのに……」

「アタシが相方でいる時点でダンナが脇役になるのは無理じゃね?」

「お前が悪いわけじゃないが強モブかサブキャラがよかったんだよ」

「ドンマイ」

 

 カラカラと嬉しそうに笑うデュラ。

 その姿は凛として美しいが、残念系の美女さが全く抜けていないのでどうしても違和感を感じてしまう。

 なので俺はなんとも言えない気持ちになりながら、なかったとんかつを……って!?トンカツがないんだが!

 

「あ、ダンナのとんかつはいただいだぞ」

「おおう……。って、お前はしれっと5杯くらいおかわりしてない?」

「これくらいしないと腹が膨れないだろ」

「もうフードファイターになれよ」

 

 テレビで出ている大食いフードファイターレベルだぞ。

 なので嬉しそうにお茶を飲んでいるデュラに突っ込みつつ、残った味噌汁をおかずにしてご飯を食べていくのだった。

 

 ーー

  

 ショッピンモーンの三階にあるカードショップのテーブル席。

 今年で中学に入学する俺・月山和也はいまピンチに陥っている。

 それもそのはず、目の前で頬を膨らませる濃い金髪ツインテールで碧眼の少女と、赤髪ツンツンヘアーの熱血系主人公っぽい2人に問い詰められているからである。

 

「カズヤはわたし達のブレイブを見ずにご飯を食べに行っていたのよね」

「そ、そうだけど?」

「ほんとお前は昔からマイペースだよな」

「脳筋のお前らに言われたくないが?」

「「それを言ったら戦争だろうが!」」

 

 どうして俺の幼馴染は血の気が多いんだろうか?

 この世界は給食のデザートもカードゲーム、ルート・レクイエム決める狂った世界で、2人も汎用デッキケースを腰から取り出した。

 なのでデュラさんが俺の隣でケラケラと笑っているが、反対の席に座っている2人は鋭い視線で睨みつけてくる。

 

「今日こそお前に勝ってやる!」

「あ、あのさ、俺とブレイブするのはいいけど先にどっちがやるの?」

「「オレ(わたし)だ!」」

「せめてどっちが先に俺とやるか決めてくれ!」

 

 この幼馴染達は……。

 赤髪ツンツン頭こと赤羽優一郎(あかばねゆういちろう)と金髪ツインテールの高飛車少女の近衛光里(このえひかり)

 2人はまだソウルユニットは持ってないが、カードプレイヤー(ソルジャー)としての腕は高い。

 そのため2人がかりはやめてほしいので、妥協案を出したのだが……。

 

「カズヤとブレイブするのはオレだからお前は引っ込んでいろ!」

「はあぁ! わたしだってあのバカをぶっ倒したいのよ!」

「な、なあ、それならお前ら2人でブレイブすればよくないか?」

「「あ!」」

 

 コイツらの腕はほぼ互角だったはず。

 なのでどっちが勝つかわからないので見ものだと思いながら、2人が互いにデッキケースを向けながら一言。

 

「「スタート・レクイエム」」

 

 この一言と共に2人の姿が現実世界から消えたので、俺はスマホに入っている動画アプリ・ファントムを開く。

 現代の大手動画サイトに近いが、この世界で大人気カードゲーム、ルート・レクイエムの対戦専用のアプリ。

 そのため電脳世界で変身した2人の姿を見ながら、俺とデュラは顔を見合わせながら息を吐く。

 

「ダンナはどっちが勝つと思う?」

「ドラゴンキャラバンの裕一郎VSファンタジーキャラバンの光里のデッキ相性的にはトントンだからわからないんだよな」

「そうなるといつも通りの引き対決になりそうだぜ」

「ああ、俺もそう思う」

 

 先行は雄一郎らしく初手からユニットを揃えている中、2ターン目にコストを払って強力なユニットを出していく光里。

 互いの戦い方は違うが、堅実か派手さのブレイブなので動画を見ているリスナーからコメントが何個か届き始める。

 

「……ほんとこのやり方は画期的だよな」

「ん? なんか言ったか?」

「いや何でもない」

 

 ゲームでよくある賞金。

 基本的に相手のお金を奪っているスタイルが多いが、この世界では動画の再生数や接続数、スパチャのお金の一部が勝者に入るようになっている。

 そのため、このシステムは上手だと思いながら、2人のグレイズを見続けるのだった。

 

 

 

 

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