機動戦士ガンダムSEED Free……Dream ―ミカイが見た夢―   作:黒瀬夜明 リベイク

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PHASE-09 挑発の剣劇

車から降りた深海たちはそのまま謁見の間へと通されることとなった。王宮の中は荘厳な飾りや装飾で彩られている。だが深海はそんな事を気を止めてもいなかった。

(着飾ることなどいくらでもできるからな)

「ようこそ、ファウンデーションへ。アウラ・マハ・ハイバルである。この度のコンパスの迅速な対応、痛み入る」

そんなことを考えている間に玉座にちょこんと座った見た目は10歳くらいの女王、アウラ・マハ・ハイバルが口を開く。見た目は完全に少女だ、以前各鎮守府の監査の為に全国を回った時の秋雨たちに近い年齢だと深海は感じた。

「ご拝謁の栄誉を賜り、誠に光栄に存じます。アウラ陛下」

先頭に立っていたラクスが片足を開き優雅に礼をする。シンの後ろでその光景を見ていた深海も、周囲のコンパスメンバーに倣って礼をする。正直なところ、堅苦しいことが大嫌いな深海ではあったが今は(一応)仕事だと割り切っていた。

「ミケールのパルチザンには、わが国もほとほと手を焼いておる。ユーラシアには何度か申し入れをしておるのだが、どうも対応に時間がかかっているようでな」

(パルチザン、か……フッ)

深海はつい内心で微笑を浮かべてしまった。いささか、深海棲艦との戦争中に艦娘の艦隊と深海棲艦の艦隊の間に入り込んでは状況を引っ掻き回していた自分の姿と言葉の意味が何処か重なって聞こえたからだ。すると、アウラの傍に立っていたオルフェが口を開いた。

「致し方ありません。あちらは国内に多数の火種を抱えておいでですから」

(いやその火種に火をつけたのお前らだろ)

とオルフェの皮肉めいた言葉に思わずツッコミを入れてしまった深海。

(けい)らには感謝しておる。どうか、わが国の民を守っておくれ」

「身に余るお言葉です。全力を尽くさせていただきます」

アウラの言葉にラクスは再度礼をする。深海も倣って礼をしたが、目の前でシンが少し遅れて礼をしていることに気づいて思わず口元が緩んでしまっていた。

「ささやかながら歓談の席を設けさせてもらった。そこでゆっくりと、そなたらの話を聞かせてくれ」

オルフェの差し出した手に、自らの手を委ねアウラは玉座を降りた。そしてそのまま何処かへと歩いていった。どうやら謁見はこれで終わりのようだが、深海はアウラとオルフェの2人が立ち去る際にオルフェが謎に勝ち誇ったような笑みを浮かべていることに気づいた。

(いきなりあんな笑みを浮かべて、気味が悪いな。まったく、どうなっているんだこの国は?)

神経を研ぎ澄ませていたこともあってか、深海はほんの少しだけ疲労感を感じていた。

 

その後、深海たちはイングリット・トラドール国務秘書官に宮殿内を案内されていた。ラクスやマリューたちは今後についての話し合いがあるとかで別行動を取ることになったのだ。宮殿内を歩く一団の最後尾を歩いていた深海は、イングリットが宮殿内の施設について説明をしている間や、歩く彼女の後姿を見て謎の疑問を抱いていた。

(何だろうか…このイングリット・トラドールという女、何処かで見たことがあるような……)

そんな疑問だった。勿論、「機動戦士ガンダムSEEDFREEDOM」の事前公開されたキャラクタービジュアルを思い出しての事ではない。何処か別の所、ともすれば夢から覚めた現実の世界で自分は一度か二度イングリット・トラドールと言う女性に会っているのではないか。そんな疑問を深海はこのイングリット・トラドールという女性から感じずにはいられなかった。しかし今自分がいるのはガンダムSEEDの世界、ましてや夢の中だ。それを調べようにもどうすることも出来ない。まあ、いいか。と深海がその考えを止めた直後、キンキン!と金属同士、それもサーベルの様な武器が激しくぶつかり合う音が聞こえてきた。それに気づいたイングリットが兵舎のある中庭へと足を向けた。

「彼らがわが国の近衛師団です」

イングリットが深海たちの視線の先でサーベルで鋭く剣戟を打ち続ける黒ずくめの者たちを見て、キラ達に説明をする。

「噂のブラックナイツか、彼らが」

ムウがその光景を見ながら呟いた。その間にもサーベルがぶつかり合う金属音が何度か響いていたが、不意に1人が一呼吸置くように地面に着地すると再び相手の方へと向かって行きサーベルをぶつける。だが、その瞬間深海は違和感を感じ取った。

(動きが変わった?)

深海には、剣を打ち合う2人の動きが何処か鋭さを欠いた様に見えたのだ。そしてそんな疑問を抱いている間に1人の放った鋭い突きが、もう1人のサーベルを天高く弾き飛ばした。それに視線を向ける深海。

(この降下角、マズい!)

深海はサーベルが宙に舞い上がった直後に、その軌道を頭の中で計算したのだ。夢から覚めた現実の世界で深海は、航空戦艦の艤装を纏って海上を疾駆し、戦闘状態となった深海棲艦と激しい戦闘を何度も演じている。その戦闘の中で自身が飛ばした水上偵察機から送られてくる弾着観測の情報による砲撃の着弾位置の修正や、飛来する敵弾や海中を高速で突き進んでくる魚雷の位置、果てには空を飛ぶ深海棲艦の航空機への照準などを常日頃から経験している。そうともなれば、宙を舞う剣の軌道をコンマ数秒で弾き出すのは深海には造作もない事だった。そして現在、宙を舞うサーベルはキラの足元か下手すればキラ本人に当たりそうな降下角でこちらへ向かって来ている。深海の体は自然と動いた。

(クッ、間に合え!)

自分の足に力を込め、ほんの一瞬腰を落とした深海はそのまま、足に溜めた力を一気に地面へとぶつけた。その勢いに押されて、深海の体は宙に舞い上がった。そして腰裏に着けていたナイフを右手で抜いた。その時点で深海は既に宙を舞うサーベルの直前の位置まで到達しており、ナイフを抜いた勢いを乗せたまま右腕を振った。

(この角度ならッ)

深海がそう内心で叫んだのと同時に、ナイフの刀身がサーベルの刀身に激しくぶつかった。キィィン!という金属の刃が擦れ合おう音が響き渡ると、サーベルはナイフと深海の力に押されて反対方向へと弾き飛ばされて空中で回転しながら中庭端の地面に突き刺さった。そして深海はそのまま地面に着地した。その一連の深海の動きを、その場にいた全員が呆気取られたような表情で見ていた。

「ふぅ…危なかった」

着地した深海が息を吐きながら体を起こす。そしてナイフを鞘に戻しながらキラの方へ向き直った。

「大丈夫だったか?」

「……え!?あ、はい!大丈夫……です?」

余りに突拍子且つ人間離れな深海の動きに、キラは面食らったように返事をした。深海は、なら良かった。と小さく呟くと、ブラックナイツの方へと顔だけを振り向けた。

「剣の腕は見事でしたが、せめて謝罪くらいは頂けませんか?シュラ・サーペンタイン国防長官殿?」

「なに?」

深海は近衛師団長ではなく、国防長官の肩書で銀髪の男「シュラ・サーペンタイン」に尋ねた。

「あのままサーベルを放置していれば、確実にキラ・ヤマト准将に当たっていたでしょう。私はそれを早急に察知し、手を打ちました。もし私が動かなければ、ファウンデーション国防長官が世界平和監視機構組織の准将に大怪我を負わせたことになったでしょう。そうなれば、此度のミケール大佐の共同戦線も大幅な遅延を余儀なくされたかもしれません」

「…貴公は、何が言いたいのだ?」

シュラの眉間に皺が寄る。深海は内心で、分かれよ間抜けが。と呟きながら、取り繕った言葉で言った。

「大怪我になるかもしれなかった事が未遂に終わったのです。あとは国防長官殿が、謝罪すればこの件はここで決着がつく。と言いたいのです……それとも―――」

 

 

一連の行為は全て自作自演だ

 

 

「――とでも言われるのですか?」

「っ!?」

それを聞いた瞬間コンパスのメンバーたちから、え!?と声が上がった。更に、何故かブラックナイツのメンバーたちが小さく動揺したようにも見えた。そして深海がこう言うのには理由があった。それは先程、深海が「動きが変わった?」と感じたタイミングが大きな理由だ。観察力が超ド級に鋭い深海は、あの瞬間「剣戟」「剣劇」へと変わったように感じたからだ。深海にしてみれば、先程まで鋭いキレのある動きをしていたのが、そのキレが不意に弱まった。それは自分(シュラ)が最初から、キラに向かってサーベルを弾き飛ばす。と決めていた様に受け取れる。更に言えば、サーベルを打ち合っていた相手「リュー・シェンチアン」とも事前打ち合わせをしていた可能性すら、深海は疑っていた。だが、流石にそんなことは無いだろう。と深海は思い、口元に笑みを浮かべて口を開いた。

「まあ、流石にそれは無いでしょうがね……ハハハ!」

「………」

深海の言葉に何故か黙り込んでしまったブラックナイツたちだったが、やがてシュラは手にしていたサーベルを鞘に納めるとキラの元へとやって来て軽く頭を下げた。

「ヤマト准将、この度は自分の不注意をお許し願いたい」

「いやそんな!頭を上げてください、サーペンタイン国防長官。僕は気にしていませんから…」

「感謝する。明日の作戦指揮、期待させていただこう」

そう言って顔を上げたシュラは、その場を後にしていった。ブラックナイツたちもシュラの後に続いて中庭を後にしていった。

「………」

深海はそんなブラックナイツたちを不審な目で見つめていたのだった。やはりこの国には何かある。深海は、そう思わずにはいられなかった。

 

続く

 

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