機動戦士ガンダムSEED Free……Dream ―ミカイが見た夢―   作:黒瀬夜明 リベイク

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PHASE-10 ささやかな言伝

そして時間は流れ、あっと言う間に夜になった。深海たちはファウンデーションが開催した立食パーティーに参加することとなった。深海は、アウラの言っていた歓談の席か。と内心で呟きながらパーティー会場をぶらついていた。深海からしてみれば、これほどのパーティーに参加したことがないから何をどうして良いのかわからない所ではあったが、だからと言ってそれを理由に出席を拒否する訳にもいかず、結局参加することになったのだ。会場の中央の広間では着飾った男女が円舞を踊っている。しかし深海はそちらに興味が引かれることは無かった。個人的には、さっさとこんな所を抜け出して部屋に帰りたい。と願わずにはいられない。会場の反対側に目を向ければシンとルナマリア、ムウが3人で食事をしていて近くにはキラの姿もある。そんな中でシンが皿に山盛りのピラフや唐揚げを盛り付けてがっついている姿が目に入ってきた。

(フッ、まるで小学生じゃないか)

そんなことを考えていると、不意に中央の広間にラクスとオルフェが姿を見せた。どうやら、交流を兼ねての円舞なのだろう。と深海は思いながら歩を進める。やがてラクスとオルフェの2人が円舞を踊り出す。それを横目に見ながら歩いていると、ふと視線の先にある人物が入り込んできた。

(あそこにいるのは、イングリットか?)

深海の足が止まり視線が柱の陰に立つイングリットに固定された。どうやら中央の円舞を見ているようだが、何故か浮かないような顔をしているように見えた。王宮内を案内していた時の国務秘書官としての凛々しい表情は何処にもない。深海は視線を中央の広間へともう1度向けた。着飾った男女に交じってラクスとオルフェが円舞を踊ってる。見るからに華やかそのものだ。そして再度イングリットに視線を返す。すると、イングリットは円舞から目を背けていた。胸元で交差された両手がまるで何かを抑え込んでいるかのように見えた深海は、その時ハッとした。

(そうか…どこかで会った事があるかもと思ったら、そう言うことか)

何かに確信を得た深海は口元に小さな笑みを一瞬だけ浮かべた。だが、すぐにその笑みを消しイングリットの方へと歩いていった。そして傍に辿り着いた深海はイングリットに声を掛けた。

「トラドール国務秘書官殿」

「っ!?は、はい…あ、貴方は」

不意に声を掛けられたことに驚いたのか、イングリットは少しだけ驚いた表情で深海と目を合わせた。

「ヤマト隊所属のミカイ・クロノ大尉です。昼間は過ぎた発言をしてしまい、申し訳ありませんでした」

深海は、昼間のブラックナイツたち、もといシュラ・サーペンタインへの発言を詫びるように口を開いた。

「本来であれば、タオ宰相閣下にもお詫びを入れなければならないのでしょうが、いちパイロットである私では、どうもお声掛け出来なくて…トラドール国務秘書官殿が見つけられてよかった」

「…いえ、こちらこそ。危うくヤマト隊長に怪我をさせてしまう所でした……」

「そう言って頂けると、私も少し気が楽になります」

深海はそこで一旦話を区切り、中央の広間に視線を向けた。依然としてラクスとオルフェが円舞を踊っている。

「ところで、トラドール国務秘書官殿は踊られないのですか?」

「え?」

深海はチラとイングリットを横目で見やる。少し驚いた様子に見えるが、内心はどうなのかは深海にはわからない。

「円舞を踊ることが出来ない私が言えることではないのですが、トラドール国務秘書官殿とタオ宰相閣下が共に円舞を踊れば、クライン総裁にも目劣りしないのではと思いましてね」

「…いえ、私は……そんなこと…」

「………」

同じだ。と深海は感じずにはいられなかった。あの時に現実の世界で会ったあの人物がそっくりそのままこのガンダムSEEDの世界に転生してきたようだ。

(ここまで似ているとは…夢の中とは言え、驚かされるな)

内心で驚きを隠せない中、深海は背後を振り返ることなく口を開いた。

「そう自分を低く評価することはありませんよ。タオ宰相閣下の傍で宰相閣下を支えていたのは誰でもない、トラドール国務秘書官殿なのですから」

「…え?」

深海は先日調べていたファウンデーションの情報から導き出した答えを口にした。深海がみたファウンデーションの情報に掲載されているオルフェが写っている写真には、殆んどの確率でイングリットも写っていたからだ。これを見れば、イングリットがオルフェをどれだけ支えていたのかが自然と分かる。深海の言葉はそんな所から来るものだった。

「その事実は変わりませんし、変えることなどできません。だから、胸を張って良いと思います。私は宰相閣下を支えることの出来る唯一の人間なんだ、と」

「………」

深海の言葉にイングリットは黙り込んでしまった。そして深海は最後に言った。

 

いつかきっと、届けることが出来ますよ

 

「……っ」

「でわっ」

深海はイングリットに礼をすると、その場を後にした。会場は依然賑やかだったが、ラクスとオルフェの姿は既になかった。

 

続く

 

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