機動戦士ガンダムSEED Free……Dream ―ミカイが見た夢― 作:黒瀬夜明 リベイク
深海はライジングフリーダムの味方識別信号を切ると同時にライジングフリーダムをロックオンした。キラが座るコックピットにロックオンを知らせるアラートが鳴り響き、キラは振り返るようにして、驚いた声をあげた。
〈ムラサメストライク!?〉
直後深海はビームライフルの引き金を引いた。銃口から放たれた緑の光条が、ライジングフリーダムに向かって飛ぶ。ライジングフリーダムは振り返りながらフラッシュエッジG-3シールドブーメランでムラサメストライクが放ったビームを防ぐと、向かってくるムラサメストライクにビームライフルの銃口を向けた。だが、その振り向く一瞬をついて深海はライジングフリーダムとの距離を一気に詰め、モビルスーツ形態に変形。バックパックから右脇下へ突き出すようにマウントされているビームサーベルを抜き放ち、通り過ぎ際にライジングフリーダムのビームライフルを切り裂いた。
〈うわっ!〉
ライジングフリーダムの目の前で切り落とされた銃身が爆発し、キラが驚きの声をあげる。深海はライジングフリーダムの背後で180度機体を反転させ、ビームライフルの銃口をライジングフリーダムへ向け、ロックオンする。深海の表情に先程の余裕の笑みは無い。ガンダムSEEDのパイロットの中で最強格の内の1人を相手にするのだ。ましてや、その相手を殺さずに、機体だけを大破させるという、かなり無茶なおまけ付きだ。油断などできるものではない。
〈ミカイさん止めてください!なんで!?〉
「…まったく、周りを見てみろ」
キラが同士討ちを止めるように深海に迫ったが、深海は相手を諭そうとするように話しかける。深海の言葉に反応したのか、キラの駆るライジングフリーダムは周囲へ視線を向けた。そしてそこに広がっていたかつてはモビルスーツや、戦闘車両だった物の残骸を目の当たりにしたキラは驚愕した表情で言葉を漏らす。
〈どういうことだ?〉
「ミケールの夢でも見ていたのか?お前がユーラシアの部隊を攻撃したせいで、お前の撃墜命令が―――」
出たんだぞ?と深海が言いかけた時、不意に目の前の通信モニターが白黒の砂嵐へと変わった。
「なんだ!?」
おまけに、レーダーまでもが白黒の砂嵐と化してしまった。流石の深海も驚きを隠せなかった。
(通信とレーダーのジャミングか?………まさかっ!?)
深海がライジングフリーダムの背後へと視線を向けると、そこに3機の黒いモビルスーツが姿を見せていた。先頭を行くのは黒を基調としつつも胸部に赤い意匠を持つ直線的な外装と騎士を思わせる風貌の機体、ブラックナイトスコード・シヴァその後方からは、同じく黒を基調としつつ直線的な、騎士と言うよりは
(やはり仕掛けてきたか!)
ムラサメストライクに攻撃された直後にブラックナイトスコード・ルドラに襲われそうになったことにキラが混乱したのか、ライジングフリーダムの動きが鈍い。完全に対応が遅れている動きだ。深海はライジングフリーダムの元へと向かう為、咄嗟にスラスタースロットルを全開にした。瞬間、ムラサメストライカーのメインスラスターが爆発的に噴射され、機体が急加速された。直後に深海はスラスタースロットルを絞った、慣性効果を利用してライジングフリーダムの背後から激突し2機のブラックナイトスコード・ルドラの照準をギリギリのタイミングで外そうとしたのだ。そしてムラサメストライクは案の定、ライジングフリーダムに背後から激突した。
〈グウッ!〉
キラの悶絶した声が聞こえてきた。恐らくは接触回線だ。あまりの唐突な事だった事もあり、ライジングフリーダムとムラサメストライクはそのまま地上へ向かって墜落していった。先頭出来ていたブラックナイトスコード・ルドラは攻撃をすることなく上空を通り過ぎていったが、ブラックナイトスコード・シヴァはライジングフリーダムとムラサメストライクの方へと真っ直ぐ向かってくる。右手には刀身が赤熱化したジャマダハル状の武器を手にしている。直後深海は、再びスラスタースロットルを全開で開いた。ムラサメストライクの頭頂部の方向。つまりは上方向へ向かってムラサメストライクは突進した。お土産にとライジングフリーダムを右足で蹴落とし、1発の弾丸の様にムラサメストライクはブラックナイトスコード・シヴァへと突っ込んで行った。直後、ムラサメストライクのコックピットを衝撃が襲った。一瞬だけ、深海の視界一杯にブラックナイトスコード・シヴァの表面装甲が映し出される。どうやら、見事に激突したようだ。今度はスラスタースロットルを全開にしたまま上空へと離脱するムラサメストライク。すると今度は目の前にもう1機のブラックナイトスコード・ルドラが現れた。黒基調の機体色にオレンジ色を差し色とした機体だ。右手には対艦刀が握られており、今にも振り下ろしてきそうだ。
(受け、か)
その態勢を見た深海は口内で呟いた。対艦刀を振り下ろしてきそうではあるが、それは決して縦方向からの振り下ろしではない。横、もしくは下方向から攻撃が来る。深海は直感でそう感じ取り、ムラサメストライカーのメインスラスターを機体正面へと向け、それを全力で噴かした。オレンジ色のブラックナイトスコード・ルドラが左方向から対艦刀を振ろうとした直前、ムラサメストライクは逆方向へと飛び去っていく。深海の体にとてつもないGがかかり、身体がコックピットシートに押し付けられる。
(急降下爆撃が命中した時に比べれば、まだマシだな)
深海が頭の中で不意にそんな事を思い出す。自身が身に着けている艤装に爆弾が命中し、黒い煙が自身の視界を奪い、焼ける様な痛みが艤装を通じて体の表面を覆う。生身の人間なら、一瞬で五体の内のどれかと、命をあの世に持って行かれる光景を思い浮かべていながら、深海は目の前のブラックナイトスコード・ルドラに視線を向けた。
(ん?何故追ってこない?)
オレンジ色のブラックナイトスコード・ルドラはその場に静止した状態でこちらを向いているだけだ。自分ならすぐに追撃をするような動きだが何故かブラックナイトスコード・ルドラは追ってこない。深海は不思議に思いながらチラリと左方向へと視線を向けた。するとそこにはいつの間にか現れていた、ザフトの無人MS輸送機「グゥル」に乗ったジンや、ディンの姿が見えた。ファウンデーションでアウラに謁見する前にヘリポートで見たジンはそのままだったが、ディンは両腕に大型のミサイルを2基搭載した「M66キャニス短距離誘導弾発射筒」を携行している。
(後方支援部隊か……確かにあのルドラと言う機体。火力が高そうには見えなかったからな)
深海はニヤリと口元に小さな笑みを浮かべると、ジンとディンの群れの中へと突っ込んで行った。
「あの火力を発揮されると厄介だからな」
自分たちにムラサメストライクが向かってくると気づいたシンとディンの集団が、一斉にミサイルを放ったのはムラサメストライクが放ったビームライフルの1発が先頭のジンを爆散させた直後だった。そしてここにいたり、2機のブラックナイトスコード・ルドラがムラサメストライクの背後から迫ってきていた。
「今頃来ても遅いんだよ。ノロマが」
ムラサメストライクはフラッシュエッジG-3シールドブーメランを射出し、右手のビームライフルと合わせた2方向同時攻撃で並み居るジンとディンを叩き落としていったのだった。
続く