機動戦士ガンダムSEED Free……Dream ―ミカイが見た夢―   作:黒瀬夜明 リベイク

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PHASE-16 戦場の深海

「墜ちろッ!」

ムラサメストライクが放った一条のビームがグゥルに乗ったファウンデーション軍のジンを撃ち抜き、爆散させる。それとは別の方向でムラサメストライクのフラッシュエッジG-3シールドブーメランが別のジンの上半身と下半身を分断する。深海はすぐに別の敵機をロックオンし、ビームライフルの引き金を引く。今度は空中を飛翔していたディンにビームが直撃し爆散させる。

(すまない時雨。約束を破ってしまった)

深海は内心でそんな事を呟いていた。すると―――

《お別れの挨拶は済んだみたいだなぁ!》

何処からともなく男の声が聞こえてきた。まるで頭の中に直接語り掛けてくるようだ。「テレパシー」そう例えて良いものかはさておき、深海は昨夜から疑問に思っていたことへの「答え」をようやく得ることが出来た。自ら答えに辿り着こうとしていた深海だったが、まさかわざわざ答え合わせをしてくれるとは思ってもいなかったため、笑いがこみ上げてきてしまった。

「フッ、ハハハハ!わざわざ、答え合わせをしてくれるとは、案外優しいじゃないか!ブラックナイツさんは!」

コックピットで笑いながらムラサメストライクを操る深海。背後からは2機のブラックナイトスコード・ルドラが迫って来ていたが、深海は一切気にしない。いずれ追いつかれるだろう、とは予想しているが、それでもブラックナイトスコード・ルドラの相手をする気はさらさらない。今はこの「無駄に数が多いジンとディン」を蹴散らすのが先だ。笑いが収まった深海は、再び別の敵機をロックオンしビームライフルを放つ。

(悪いなぁ、お前たちの相手なんかする気はないんだよ!)

深海は心の中でまるで吐き捨てるように言い放つ。勿論「相手がこちらの考えを読んでいる」事を前提とした台詞だ。その間にも飛来したフラッシュエッジG-3シールドブーメランが1機、また1機とジンを切り裂いて撃破していく。そして事ここに至り、背後からブラックナイトスコード・ルドラのビーム攻撃が襲い掛かってきた。しかし、深海の駆るムラサメストライクには当たらない。深海は背後から迫ったビームを直感で回避したのだ。元々、直感で戦うことが多い深海は、目で見た瞬間に身体が動いてしまっているのだ。勿論思考を巡らせることもあるが、それでも「急降下爆撃機から投下された爆弾を、目視で軌道を計算して回避する方向と舵を切るタイミング、その後の行動、多数の機銃の射撃指揮」これをコンマ数秒で行えてしまうのだ。コンピューターでもなければ、処理できない様な内容と速度の物を、生身の人間の頭脳に処理出来るとは思えない。例えそれがコーディネイターであっても。それが深海の結論だった。深海は背後から撃ちかけられるブラックナイトスコード・ルドラのビームを機体を振ったり、逸らしたりして回避する。そしてその合間を縫って、向かってくるジンとディンを撃墜していくのだ。飛来するミサイルもかなり正確に自機へと向かってくるが、故に頭部のイーゲルシュテルンで簡単に撃墜できてしまう。ブラックナイトスコード・ルドラ2機と無数のジンとディンに囲われているが、深海は未だに1発の被弾もしていなかった。

(どうしたブラックナイツ?ナチュラルの俺に、1発も当てられないとは…一体どう言うことなのかな?)

深海は「ナチュラルの俺に、1発も当てられない」の部分を殊更ゆっくりと頭の中で言い放つ。勿論挑発の意味を込めた台詞だ。相手が熱くなってくれることを期待していたが、ふと深海の視界端に1機のMSが写り込んだ。

(イモータルジャスティス?シンか!)

シンの駆るイモータルジャスティスが、地上から飛び立ち何処かへと向かっていく姿がそこにはあった。イモータルジャスティスの進路を即座に割りだした深海は、ほぉ。と思わず口にした。

(なるほど、キラの援護か。そっちは任せたぞ!)

すると、不意にブラックナイトスコード・ルドラの頭部がイモータルジャスティスの方へと向けられた。かと思えば、2機のブラックナイトスコード・ルドラは踵を返してイモータルジャスティスの方へと向かって行った。どうやら、キラの元へは行かせまいとしているようだ。

「押し付ける形になってしまってすまないな、シン」

ブラックナイトスコード・ルドラが、ビームに対して非常の強固な装甲を持っていることを思うと、ムラサメストライクでの援護は難しい。なら、より多くの敵機を撃墜し援護とするのが良いと深海は判断した。やがて2機のブラックナイトスコード・ルドラがイモータルジャスティスの眼前に立ちはだかると、イモータルジャスティスとブラックナイトスコード・ルドラの戦端が開かれた。

「死ぬなよ、シン!」

それを確認した深海は、シンの無事を祈りながら残存するジンとディンの元へとムラサメストライクを向かわせた。

 

 

「はぁ…はぁ…あと、何機だ?」

あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。深海は再びディンを撃墜しながら、呼吸を整えるように周囲を見渡した。何機かは背後へと抜けられてしまったが、かなりの数を撃墜したと深海は感じていた。しかし、依然として周囲では戦闘が続いている。しかも形勢は、ファウンデーション側有利に見える。レーダーが使えない以上、味方がどれだけ墜とされたのか、把握するのは難しい。しかし、見渡す限りファウンデーション所属のMSの方が多いように見える。

「奇襲を受ければ、そうなるか…クソッ」

深海は吐き捨てるように言い放った。その時だった―――

「ん?」

不意にムラサメストライクのカメラが飛翔する2つの物体を捉えた。深海はその飛翔体の光学映像をズームさせてサイドモニターに映し出した。

「なっ!あれは!?」

その飛翔体の正体はすぐにわかった。形状から見て巡航ミサイルであることは確かだが、問題はその側に描かれたマークだった。

(核ミサイル!まさか、ユーラシアの報復か?いや、それにしては対応が早すぎる!)

深海は通り過ぎていく核ミサイルを見送ることしか出来なかった。今から巡航ミサイルを追いかけても、爆発までに間に合うかもわからない。例え追いつけたとしても、空中を飛行しながら、ニュートロンジャマーキャンセラーのみを破壊して撃ち落とすことが、どれだけ難易度の高いことか深海は瞬時に判断した。

「ファウンデーションめ!」

深海は迫って来ていたディンに八つ当たりするように、ビームサーベルで斬りかかった。左からの袈裟斬りで、あっと言う間に両断されたディンが爆発する。そして深海は気づいた。いつの間にか、ムラサメストライクを取り囲む敵機はいなくなっていたことに。しかしそれは、戦闘の終了を意味しない。深海はハッとしてモニターに映し出される光景を確認した。右方向では、シンのイモータルジャスティスがブラックナイトスコード・ルドラと戦っている。そこから少し離れた場所では黒煙と炎を噴き上げるアークエンジェルが、激しい攻撃にさらされていた。そして、左方向に存在する川の畔では、キラのライジングフリーダムとブラックナイトスコード・シヴァが激しい攻防を繰り広げている。しかし、どの場所を見てもコンパス側が劣勢だ。イモータルジャスティスも、アークエンジェルも、ライジングフリーダムも防戦一方と言える光景がそこには広がっていた。

(クソッ、選べって言うのか!?)

深海が苦悶の表情を浮かべた時だった―――

「なっ!アークエンジェルが!?」

一際大きな爆発がアークエンジェルの後部を包み込んだ。真っ赤に染まったアークエンジェルは黒煙を噴き上げながら地上へと墜ちていく。二度の大戦を生き延びた純白の大天使が、その翼を遂に捥がれたのだ。そしてその直後、イモータルジャスティスに高速で迫ったブラックナイトスコード・ルドラが振り下ろした対艦刀が、イモータルジャスティスの胴体を激しく斬りつけた。上半身と下半身を分断されたイモータルジャスティスがゆっくりとその高度を落としていく。

 

 

シンッ!!

 

 

深海は我を忘れたように激しく叫んだ。だが直後、左腕を失ったギャンシュトロームが残った右腕からスレイヤーウィップを放ち、ブラックナイトスコード・ルドラの動きを止めた。かと思えば、バックパックに装備されたミサイルをイモータルジャスティスの残骸へ向けて放ち、イモータルジャスティスの爆発を隠れ蓑にしてそのまま離脱していった。

「ヒルダのギャンか!」

一連のギャンシュトロームの動きと、白ではなく濃紺に近いカラーリングから、深海はそれがヒルダの乗るギャンシュトロームであることがわかった。歴戦の猛者であるヒルダのあの動きは、シンを救助しているようにも見えた。そして深海は、そこから離脱していくブラックナイトスコード・ルドラを見やったが、ハッとして左方向へ視線を向けた。ライジングフリーダムとブラックナイトスコード・シヴァが戦っている。

「キラ!」

深海はムラサメストライクを、ライジングフリーダムとブラックナイトスコード・シヴァが戦っている戦場へと向かわせた。

 

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