機動戦士ガンダムSEED Free……Dream ―ミカイが見た夢―   作:黒瀬夜明 リベイク

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PHASE-17 深海の戦場

深海は未だ戦闘を続けているライジングフリーダムの元へとムラサメストライクを向かわせる。眼下の岸辺ではライジングフリーダムとブラックナイトスコード・シヴァが激しく斬り結んでいるが明らかにライジングフリーダムが不利だ。ブラックナイトスコード・シヴァにもフェムテク装甲が使用されていることは、恐らく間違いないだろう。そして、ブラックナイトスコード・シヴァの動きを見れば、あの機体が近接格闘戦に特化した機体であることは容易に想像が出来た。ビーム兵器をモビルスーツに搭載することが主流となっているCE.75年現在「ビームを弾く装甲」は革新的だ。ましてや、近接格闘戦を得意とする機体にこの装甲を搭載すれば、相手を自身の得意とする間合いへ強制的に踏み込ませる副次効果もある。

「シヴァが相手では、フリーダムの強みは生かせない…間に合わせてくれ、ムラサメストライク!」

深海はコックピットでムラサメストライクに呼び掛け、スラスターのペダルを踏み込み続けた。すると、深海の耳にロックオンのアラートとは別のアラートが鳴り響いた。深海は正面のメインモニターの下へ目を向けた。すると、エネルギー量を示すモニターが警告音を立てていた。エネルギーメーターはイエローラインに既に突入している。あとどれくらい、ムラサメストライクは自分の力となってくれるのか、深海は少しだけ不安を覚えた。そしてその瞬間、ライジングフリーダムがブラックナイトスコード・シヴァが放った足先からビーム刃を展開した蹴り上げで、腰部サイドアーマーのヴァイパー3レールガンを破壊されたのが見えた。そして僅かに2機の間に空間が生まれた。

「今だ!」

深海はすかさず、フラッシュエッジG-3シールドブーメランを射出した。ムラサメストライクよりも遥かに速い速度で2機の元へと向かっていくフラッシュエッジG-3シールドブーメラン。そして、ブラックナイトスコード・シヴァが地に足を付け態勢を整え、次の動きを起こそうとしたタイミングで、フラッシュエッジG-3シールドブーメランがライジングフリーダムとブラックナイトスコード・シヴァの間に割って入るように飛びすぎ、2機の動きを一瞬だけ止めた。通信が駄目になってしまっている現状、相手の反応を確認することは出来ないが、どうやら意表を突き、こちら(ムラサメストライク)へ意識と視線を向けさせることは出来たようだ。深海はその一瞬を突き、ライジングフリーダムの正面へとムラサメストライクを着地させた。

(悪いが混ぜてもらうぞ?)

深海は心の中で、相手に語り掛けた。無論キラには聞こえない。しかし、相手がこちらの思考を読んでいるのであれば、返事が来るはずだ。深海はそう睨んだのだ。

《フンッ、面白い》

(やはり、シュラ・サーペンタインだったか)

何処からともなく、男の声が聞こえてきた。声色的に昨日聞いたシュラ・サーペンタインのものだろう。深海はそう考えると、ムラサメストライクの右手に握ったビームライフルを投げ捨てた。既に相手の間合いに入ったのだ。戦いの邪魔になる物はすぐに捨てる。そして深海は、右腰のサイドアーマーに格納された、対装甲コンバットナイフ「アーマーシュナイダー」を抜いて逆手に持つと、左手を右脇へ回してビームサーベルを抜き放つ。出力されるエネルギーを調整し、ビームの刃をどんどん短くしていく。最終的にビームサーベルの刃はアーマーシュナイダーと同じくらいにまで短くなった。そしてそのビームサーベルも逆手に持つと、おもむろにアーマーシュナイダーをブラックナイトスコード・シヴァに突き付けた。

(さぁ、来いよ?)

深海はシュラを挑発する言葉を内心で呟いた。すると、深海の挑発に応えるようにブラックナイトスコード・シヴァが突っ込んできた。右手にはカタール状の刀剣を持ち、左手にはクロー付きのシールドを持っている。右手に握られたカタールが真上から振り下ろされる。深海はブラックナイトスコード・シヴァのその動きを見て反射的にムラサメストライクの身体を左側に逸らして回避する。続け様にブラックナイトスコード・シヴァのビーム刃が展開された左足が横一直線に向かって来た。深海はまたもムラサメストライクを右に逸らしてこれを回避する。更にブラックナイトスコード・シヴァは振り切った左脚を軸にして回転し、今度は右足ので蹴りを放ってきた。深海は咄嗟にメインスラスターを逆噴射させてバックし、これを躱す。そして着地と同時にメインスラスターを正面方向へと噴射し、真っ直ぐブラックナイトスコード・シヴァへと向かっていく。

「シッ!」

逆手に握ったアーマーシュナイダーが右上段から振るわれる。ブラックナイトスコード・シヴァはそれを1歩下がることで回避したが、深海は攻撃の手を止めなかった。続けて逆手に握ったビームサーベルを左下段から斬り上げる。これも身を逸らすことで回避したブラックナイトスコード・シヴァ。だが、そのビームサーベルによる斬り上げの勢いに乗って深海はムラサメストライクをジャンプさせた。そしてブラックナイトスコード・シヴァの上空正面に到達した時、深海はブラックナイトスコード・シヴァに背中を向け、また咄嗟にメインスラスターを最大出力で噴射した。かなりの近距離だったためか、メインスラスターから吐き出された青白い炎はブラックナイトスコード・シヴァの頭部周辺を覆うように燃え広がった。

《なにっ!?》

余りに唐突だったのか、それとも予想できなかったのか。シュラの驚いたような声が頭の中に響いてきた。そして地面に着地したムラサメストライクは、ゆっくりと振り返る。勿論、なぜ自分があんなことをしたのか、相手に教えるつもりはない。振り返ったムラサメストライクのメインモニターに映し出されたのは、真っ直ぐこちらへと向かってくるブラックナイトスコード・シヴァの姿だった。深海はチラとライジングフリーダムの状況を確認した。ムラサメストライクの背後で、大人しくこちらの様子を観察している。

「ここは俺に任せてもらおうか」

深海はライジングフリーダムのコックピットにいるキラに向かって投げかけた。そして向かってくるブラックナイトスコード・シヴァがかなりの近距離までに迫った時、左手のビームサーベルを投げつけた。勢い良く、とは言えない、トスを上げるようにビームサーベルを投げたのだ。まだ僅かにビーム刃が形成されており、下手に直進すればビーム刃が装甲を焼き斬ってしまう。しかし深海はそんなビームサーベルに向かって側頭部の、75㎜対空自動バルカン砲塔システム「イーゲルシュテルン」を放った。75㎜口径の弾丸を浴びたビームサーベルのグリップは爆発を起こすと、黒い爆煙を生み出し、一瞬だけ2機の視界を奪った。

《目晦ましのつもりか!》

「………」

深海は更に黒煙の中へ、今度はアーマーシュナイダーを投げつけた。そしてそのアーマーシュナイダーを追うように、自らのムラサメストライクも黒煙の中へと突入させた。

《正面から向かってくるとは…止めだ!》

ブラックナイトスコード・シヴァが勢いよくカタール状の刀剣を右上段から振り下ろした。しかし―――

《なにっ!?》

直後、深海の頭の中にシュラの驚いたような声が上がった。それもその筈だ。ブラックナイトスコード・シヴァが振り下ろしたカタールは、黒煙を斬っただけだからだ。カタールを振り切った時の風で黒煙が晴れると、そこにムラサメストライクの姿は無かった。ブラックナイトスコード・シヴァはあろうことか、その場に立ち尽くしてしまった。レーダーがジャミングを受けているのでは、相手の位置は目視で確認するしかない。しかし、シュラの目にムラサメストライクは入っていなかった。そして―――

「この程度か」

深海がボソリと呟いた時、ブラックナイトスコード・シヴァの右脛をアーマーシュナイダーが捉えていた。右脛に深々と刺さったアーマーシュナイダーを手放し、ブラックナイトスコード・シヴァから距離を取る深海のムラサメストライク。ムラサメストライクが突き立てたアーマーシュナイダーが右脚の電気回路を切断したのか、ブラックナイトスコード・シヴァの爪先から出力されていたビーム刃が消失し、右脚の膝から下の動きがかなり鈍くなっている。

「こんな簡単な嘘に騙されるとは、お笑いだな」

深海がそう呟くと、先程の行動を思い出す。ビームサーベルを爆破させた後、頭の中で、アーマーシュナイダーを投げてそれを追いかけて黒煙に突っ込むムラサメストライク。を想像したのだ。相手が思考を読んでくるのであれば、それを逆手に取る。更に―――

(なんだ?近衛師団長ともあろう男が、「ナチュラルの俺」に苦戦か?そうか!そうか!お前のお仲間も、俺を墜とせなかった。つまりお前らは―――)

 

 

 

ナチュラルも殺せない雑魚

 

 

 

(って、事だよな?クククッ)

《貴様ぁ…この卑怯者め!》

深海の安い挑発を受けてシュラが激しく慟哭している様に、深海は笑いを堪えるのに必死だった。卑怯者。と言う言葉も、深海は誉め言葉として受け取っていた。

(卑怯者…シュラ・サーペンタイン近衛師団長からのご称賛、痛み入ります!)

深海は殊更嬉しそうに、笑ってみせた。だが、そんな時だった。深海の耳に別方向からの接近警報が鳴り響いた。

「なんだ!?」

深海が慌てて右側正面方向に視線を向けると、何処からともなく現れた白いギャンシュトロームが、「ファルクスG7ビームアックス」でライジングフリーダムの左腕と両膝を切り落とした様が見えた。レーダーが使えない今、突然のギャンシュトロームの接近に、キラは対応できなかったのだ。両脚を失ったライジングフリーダムが崩れ落ちるようにその場に倒れる。瞬間、VPS装甲が切れライジングフリーダムが鉄灰色へとその色を変えた。

「キラ!?」

突然の事に驚いた深海は思わず声をあげた。白いギャンシュトローム。パイロットはアグネスしかいない。裏切った。そう思う他なかったが、目の前で動きを見せたブラックナイトスコード・シヴァに深海は意識をすぐに戻した。

《フッ、隙を見せたな。貴様もこれで終わりだ!》

瞬間、ブラックナイトスコード・シヴァの胸部装甲が展開し、無数の針が射出された。

「クッ!」

深海は咄嗟に操縦桿を目一杯左へと倒し、フルスロットルでスラスターを噴射させた。操縦桿を唐突に左に倒したことで、ムラサメストライクはバランスを崩して地面に真横から倒れた。そして最大出力で噴射されたスラスターの勢いに押され、大地を削りながら、ムラサメストライクはそのブラックナイトスコード・シヴァから射出された無数の針全てを回避してみせた。

「グゥッ!」

ムラサメストライクが倒れた時の衝撃と、地面を削りながら進む振動に揺られた深海は、歯を食い縛って耐えていた。そして、ムラサメストライクの正面モニターに映っていた白いギャンシュトロームが今まさに、倒れたライジングフリーダムへ向けビームアックスを振り下ろそうとしていた。

「キラァー!!」

振動に揺れるコックピットの中で、深海が叫んだ時だった。突如、ギャンシュトロームのバックパックが爆発した。

「なんだッ!?」

スラスターの暴発か?と深海は一瞬思ったが、その答えは自ずから現れることとなった。ギャンシュトロームの背後、水煙を上げて川面を一直線にこちらへ向かってくるモビルスーツが1機。ずんぐりとした機体本体はローズピンクとワインレッドのツートンカラーで、背部にはフライトユニットを装着している。

「そんな……まさか!」

深海は思わず叫んでしまった。

 

 

 

 

ズゴックゥッ!?

 

 

 

 

と…

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